戦姫絶唱シンフォギア~希望の歌姫と欲望の王~   作:大同爽

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戦姫絶唱シンフォギア~希望の歌姫と欲望の王~、前回までの3つの出来事

1つ!響の様子に思い悩む未来。たまたま出会った映治とともにお好み焼き屋に行き、映治とお好み焼き屋の店主の両名にアドバイスされ響と話をすることを決める。

2つ!瓦礫の撤去が終了し、自身のメダルが見つからなかったアンクはあの場にいたクリス達と響達のどちらかがメダルを持ち去ったと推察。タイミングよく両者の揃った場に映治を送り込む。

そして3つ!響に追い込まれ、オーズにあしらわれたことで怒髪天のクリスは鎧を脱ぎ捨て別の力、シンフォギア『イチイバル』を纏うのだった。



Count the Medals!
現在、オーズの使えるメダルは――





014~弓と迷子と金の鎧~

 

「歌が……嫌い?」

 

 先ほどまでの白銀の鎧から黒と赤を基調としたシンフォギアに姿を変えた少女、雪音クリスの言葉に響は呆然と呟く様に言う。が、響の言葉にクリスは答えず、右手をまっすぐに伸ばす。その手についていた籠手が変形しボウガンを形成し――

 

「っ!掴まってて!」

 

「へっ?わぁ!?」

 

 いち早くそれに反応したオーズが響を抱えたまま走り出す。と、一瞬前に二人の立っていた場所へクリスのボウガンからエネルギーの矢が放たれ爆ぜる。しかもその一発だけではなく全部で五発の矢がオーズの走る後ろを追って爆ぜる。

 

「わっ!わわっ!?お、オーズさん!?」

 

「シッ!口閉じてて!舌噛むよ!」

 

 お姫様抱っこで抱えられていることに困惑の声を上げる響にオーズが言う。

 そんな二人に大きく飛び上がったクリスは再び五発の矢を放つ。

 それを避けながら駆けるオーズだったが

 

「っ!ごめん響ちゃん!」

 

 目の前にクリスが降り立ったことで上手く誘導されたことに気付いたオーズは咄嗟に響を下ろし背中に庇うように立ち

 

「っ!」

 

 右手で背後に響を抱えたまま左腕でクリスの放った蹴りをガードする。そのまま蹴りの威力を利用し後方に飛ぶ。

 そんな二人にクリスは右手のボウガンを向ける。と、そのボウガンのアーチ部分が開く様に変形し二連装ガトリングガンを形成。左手の籠手も同じ二連装ガトリングガンを形成し合計十二の銃口をオーズと響に向けて引き金を引く。ガトリングガンが回転しながら高速で弾を吐き出していく。

 響を抱えたまま高速で駆けるオーズの背後でクリスの攻撃――『BILLION MAIDEN』によって抉られ木々がなぎ倒されていく。

 さらにガトリングガンを放ちながらクリスの左右の腰部アーマーを展開し、内蔵の多連装射出器から計24発の追尾式小型ミサイルをダメ押しとばかりに一斉に発射する。

 高速で駆けて逃げるオーズの背後にクリスの放った小型ミサイル――『MEGA DETH PARTY』が続々と着弾する。追尾型の性能にチーターの能力を持ってしても徐々にその距離を詰められ、一発ごとに自分の間近で爆ぜるミサイルに

 

「っ!頭下げてて!」

 

 覚悟を決めたオーズは地面に響を下ろしながら叫び、響を背後にし大きく手を広げてミサイルが着弾しないように庇い――

 

 ズドォォォォォォン!!

 

 大きく爆発し土煙を上げる。

 それでもクリスはガトリングを放ち続け、周囲が硝煙と炎と爆発の煙に包まれる。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 先ほどの響による一撃のダメージに加え、立て続けに放った技の疲労に肩で息をする。顔には玉のような汗が浮かぶ。

 クリスの向ける視線の先で徐々に煙が晴れていき――

 

「っ!?」

 

 そこには先ほどまでなかったものが視界を塞いでいた。

 

「楯ッ!?」

 

「――剣だッ!!」

 

 クリスの困惑の言葉に頭の上から返答が響く。

 見上げるとクリスの視界を塞いでいたその大きな白銀の壁のようなものの上に一人の人物が立っていた。それは長い髪をなびかせて立つシンフォギアを纏った風鳴翼だった。

 

「フンッ!死に体でおねんねと聞いていたが……足手纏いを庇いに現れたか!?」

 

「もう何も失うものかと決めたのだ」

 

「翼さん!」

 

 翼の立つ壁――改め、剣の背後で同様に見上げる響が驚きに声を上げる。その隣でオーズも見上げていた。

 

「気付いたか立花。だが私も十全ではない。力を貸してほしい……」

 

「は、はい!」

 

「待ってくれ、風鳴さん!その子のことは――」

 

 翼に向けて何かを言いかけるオーズだったがクリスによって放たれたガトリングガンに遮られる。

 放たれた弾丸を剣から跳び上がり舞うように回避しながら地面に降り立った翼はクリスに刀型のアームドギアでクリスに斬りかかる。

 バックステップで避けながらガトリングを構えなおすクリス。が、砲身の長いガトリングガンを照準を合わせる前に翼はクリスの頭上を飛び越えて空中で身を捻りながら剣を横薙ぎに振る。それを身を屈めて避けるクリスだったが、剣の柄頭で銃身を下から叩かれ一瞬たたらを踏む。その隙に背後に回り込んだ翼はクリスに背中合わせに立ち刀を構える。

 

「翼さんその子は――!」

 

「わかっている」

 

 響の叫びに頷く翼に隙を突き、翼の刀を押し上げ対面するクリスとそれに応じて構えなおす翼。一触即発の雰囲気の中最初に動いたのは――

 

「っつぇぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 クリスはガトリングガンの照準を翼に向けようと銃口を上げ――

 

「っ!危ない!!」

 

 〝それ〟に最初に気付いたのはオーズだった。

 オーズの叫びの直後、上空から三体の鳥型ノイズがその身をドリルのように回転させながら弾丸のごとく飛来し――

 

「ッ!?」

 

 クリスのアームドギアに二体のノイズがそれぞれぶつかり破壊する。

 

「何ッ!?」

 

 突然の出来事に硬直するクリス。そんなクリスに向けて三対目のノイズが飛来する。

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

 

 それを気合いの発生とともにオーズの頭、クワガタの顎を模した額の角「クワガタホーン」から放たれた電撃が炭へと変える。

 そのままクリスに駆け寄り背後に庇いながらオーズが身構える。

 

「クリスちゃん!」

 

「待て立花!動くな!」

 

「っ!」

 

 心配して駆け出しそうになる響へ周囲を警戒したように身構えながら翼が叫び、その声に響も慌てて身構える。

 

「あ、あんたなんで……!?」

 

「だって…君に当たりそうだったから……」

 

「ッ!馬鹿にすんなッ!余計なお世話なんだよッ!」

 

「命じたこともできないなんて……あなたはどこまで私を失望させるのかしら?」

 

「「「「ッ!?」」」」

 

 響き渡った女性の声に四人が周囲を見渡す。と、上空に三体の鳥型ノイズが滑空する下で展望スペースの手すりに寄り掛かる人物に揃って視線が向く。

 その人物は喪服のような黒い服に蝶の飾りのあしらわれた黒い帽子を被った長い金髪の女性だった。夕日を背にし、顔には大きな真っ黒なサングラスをしているせいで顔はわからないが、その手には先日クリスがノイズを操るのに使っていた杖を持っていた。

 

「フィーネッ!!」

 

 クリスがその女性に向けて叫ぶ。

 

『フィーネ……なるほど、テメェが黒幕か』

 

 と、今度は先程とは別の声が聞こえる。

 

「「「ッ!?」」」

 

 響、翼、クリスが声の主を探して視線を彷徨わせる中――

 

『フィーネ、終わりを意味する言葉。そして俺の記憶が確かなら、大昔にその名を持った巫女がいたなぁ』

 

 オーズの右肩にぴょこんと緑色の物体が飛び乗る。

 それはバッタを模したカンドロイドだった。新たに聞こえてきた声もそこから発せられていた。

 

「アンク!知ってるのか!?」

 

 オーズは自身の右肩を見ながら呼びかける。

 

『ああ。先史文明期、恋慕した創造主へ思いを伝えるために作った塔を破壊され、見事にフラれた身の程知らずの哀れな巫女の名前も…確か〝フィーネ〟』

 

「フッ……カザリに聞いてた通りね、〝アンク〟。口も性格も悪いみたい」

 

『自分をフッた男を忘れられず、いつまでもいつまでも現代まで成仏できねぇ亡霊となったテメェの往生際の方が悪いと思うがなぁ』

 

「フフッ、不完全な復活のおかげで非力で何もできない、オーズに頼るしか生き残る術のない哀れな出来損ない風情が吠えるじゃない」

 

『んだとッ!?』

 

「フフフ……」

 

 アンクの煽りに乗らず、逆に煽り返し笑うフィーネ。そんな中――

 

「フィーネッ!!」

 

 クリスが自信を庇うオーズを押し退けて前に出る。

 

「確かに命令は遂行できてねぇかもしれないが、こんな奴がいなくたって……こんな奴がいなくたって戦争の火種くらいあたし一人で消してやるッ!」

 

 響を指さしながら叫ぶクリス。

 

「そうすれば、あんたの言うように人は呪いから解放されてバラバラになった世界は元に戻るんだろうッ!?」

 

「…………はぁ……」

 

 クリスの叫びに対し、フィーネは面倒臭そうにため息をつき

 

「もうあなたに用は無いわ」

 

「えっ……?――な、なんだよそれ!!?」

 

 フィーネの言葉にクリスが叫ぶ。が、フィーネはそれに答えないまま右手を上げる。その手が輝き、直後周囲に飛び散っていた鎧の破片が光の粒となってフィーネの元に集まり消える。

 そのまま四人に視線を向けたフィーネは杖を掲げる。と、それに呼応し旋回していたノイズが四人を襲う。

 応戦している隙にフィーネは笑みを浮かべながら逃げ去って行く。

 

「待てよ!フィーネェェェェェェ!!!」

 

 その後を叫びながら追うクリス。

 

「ちょっ!クリスちゃん!」

 

 ノイズの対応で出遅れたオーズが駆け出す。

 

『あ、おい!――チッ、あの野郎勝手に……』

 

 振り落とされたバッタカンドロイドから舌打ちが聞こえる。

 そのまま飛び跳ねカンドロイドは近くの茂みへ――

 

「っ!逃がすか!」

 

 入る前に翼がそれを捕まえる。

 

「おい聞こえるか!?貴様この間のやつだな!?貴様には聞きたいことが山ほどある!教えろ!貴様何故奏の姿をしている!?一体何者だ!?」

 

『…………』

 

 叫ぶ翼だったがカンドロイドからは返答はなく――

 

 カシャンッ

 

 バッタの形だったカンドロイドは缶の状態に戻る。

 

「っ!クソッ!」

 

 通信が切られたことを悟った翼はそれを憎々し気に握りしめて地面に叩きつけた。

 

 

 ○

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 夜の繁華街を走り回った映治は膝に手をつき肩で息をする。

 

「くそ、いない……。どこに行ったんだ……?」

 

 顔を上げ、額に浮かんだ汗をぬぐう映治。

 

「雪音クリス……必ず見つけないと、あの人たちのためにも……」

 

 大きく息を吐き、再び走り出そうとする映治。が、その視線がある場所で止まる。

 そこには一人の男性が何かを探すように周囲を見渡していた。その表情は切羽詰まった様子で焦っているようだった。

 

「…………」

 

 映治は顔を顰めて本気で考え込む様子で少しの逡巡の後

 

「あの、どうかしたんですか?」

 

 その男性に話しかけた。

 

「あ…実は子ども達とはぐれてしまって……」

 

「っ!それは大変だ!俺も一緒に探します!」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「ええ。困ったときは助け合いです」

 

「ありがとうございます!」

 

 頭を下げる男性に頷きながら肩に手を当て顔を上げさせる映治。

 

「とりあえずお子さんの特徴を教えてください。もしかしたら見かけてるかも」

 

「は、はい……上は男の子で身長は…このくらい。青い上着を着てます。下は女の子で身長は…このくらい。スカートタイプのオーバーオールを着てます」

 

「ん~……俺がいた方では見てないですね……」

 

「そうですか……」

 

 それぞれ自分の肘と腰のあたりを示しながら言う男性の言葉に映治は首をふる。

 

「あ、交番って行きました?」

 

「いえ、まだ……」

 

「じゃあ行ってみましょう。もしかしたら誰かが連れて行ってくれてるかも」

 

「は、はい」

 

 映治の言葉に頷いた男性。二人は繁華街の一角に設けられた交番に向かう。が――

 

「そうですか……来てませんか……」

 

 対応した警官の言葉に男性は肩を落とす。

 

「とりあえずお父さんはここにいてください。誰かが連れて来てくれるかもしれません」

 

「は、はい。あなたは?」

 

「俺はちょっと周り見回ってきます」

 

 そう言って映治は駆けだす。が、夜の繁華街、人込みを縫うようにあたりに視線を巡らせるが父親から聞いていた特徴の兄妹は見当たらない。20分ほど周囲を見回った映治は一旦交番に戻ってみることにする。

 そこには――

 

「あ、お兄さん!」

 

 交番の前で先ほどの男性が待っていた。彼の両隣には青い上着を着た男の子とスカートタイプのオーバーオールを着た女の子がいた。

 

「よかった!見つかったんですね!」

 

「はい!お手伝いいただいて本当にありがとうございました!」

 

「いえいえ!見つかってよかったです!」

 

 映治の言葉に頷いた男性はペコペコと頭を下げる。そんな男性に映治は笑って頷き、兄妹に視線を合わせて屈む。

 

「よかったね。お父さん心配してたから、これからは気を付けてね」

 

「本当にありがとうございました!」

 

「いえいえ。成り行きですから」

 

「アハハ、さっきのお姉ちゃんも同じこと言ってたね」

 

「うん。そうだな」

 

 と、映治の言葉に兄妹が笑う。

 

「お姉ちゃん?二人を送ってくれた人?」

 

「ええ。若い、高校生くらいの女の子でした」

 

「歌が嫌いなのに鼻歌歌ってた綺麗なお姉ちゃん!」

 

「っ!」

 

 少女の言葉に映治は息を飲む。

 

「あ、あの!その女の子ってどんな子でした!?」

 

 映治は慌てて父親に訊く。

 

「え?えっと……長い白髪の髪を二つ括りにしてて、赤い服を着てて、首に赤い楕円形の石のネックレスをしてましたね」

 

「お兄さんのお友達なの?」

 

「えっと、なんて言うか……」

 

 少女の言葉に映治は言い淀む。

 

「わかった!お姉ちゃん、お兄ちゃんと喧嘩したからあんなこと訊いたんだね!」

 

「あんなこと?」

 

 少女の言葉に映治は首を傾げる。

 

「僕らみたいに仲良くするにはどうしたらいいかって」

 

「仲良く……それで、君たちはなんて言ったの?」

 

「そんなのわからない、って。いつもケンカしちゃうし……」

 

「ケンカしちゃうけど仲直りするから仲良しだよって」

 

「そっか……」

 

 その言葉に映治は頷き

 

「そのお姉ちゃん、俺の知り合いで探してたんだ。どっちに行ったかな?」

 

「あっち~!」

 

 映治の問いに少女が指さして示す。

 

「そっか。ありがとう!」

 

「ちゃんと仲直りしてね!」

 

「う、うん……ケンカしたんじゃなくて……いや、そうだね。ちゃんとお話するよ」

 

「うん!」

 

「本当にお世話になりました!」

 

「いえ!それじゃあ俺はこれで!」

 

「ばいば~い」

 

 再びお礼を言う父親に御辞儀し、手を振る兄妹に笑顔で手を振って駆け出す映治。そんな映治の背中を見送りながら

 

「お姉ちゃんとお兄ちゃん仲直りできるかな?」

 

「大丈夫だよ。お姉ちゃんもお兄ちゃんも優しい人だから、きっと仲直りできるよ」

 

 妹の言葉に返す少年。

 そんな二人を優しく撫でてから父親は二人を連れて家路へと着くのだった。

 

 

 ○

 

 

 

「あたしが用済みってなんだよッ!?」

 

 大きな扉を開け放ってクリスが広間に入る。

 

「もういらないってことかよ!?あんたもあたしのことをモノのように扱いのかよッ!?」

 

 クリスの視線の先で金髪の女性――フィーネは直前まで話していた電話の受話器を耳に当てたまま黙って視線を向けている。

 

「頭ん中グチャグチャだ!何が正しくて何が間違ってるのかわかんねぇんだよ!!」

 

 クリスの叫びにフィーネは立ち上がり、いまだ通話相手が話している受話器を置く。

 

「……どうして誰も、私の思い通りに動いてくれないのかしら?」

 

 言いながらバッと振り返り、ノイズを操る杖を振るう。そこから放たれた光弾がクリスの周りでノイズとなる。

 

「っ!」

 

 咄嗟に胸のペンダントに手を当てるが、迷った様子でクリスは唇を震わせる。

 

「さすがに潮時かしら?」

 

 言いながらフィーネは優しく子どもに言い聞かせるように言う。

 

「そうね。あなたのやり方じゃ争いを失くすことなんてできやしないわ。精々一つ潰して、新たな火種を二つ三つばら撒くことくらいかしら」

 

「あんたが言ったんじゃないか!?痛みもギアも、あんたがあたしにくれたもの――」

 

「私の与えたシンフォギアを纏いながら、毛ほどの役にも立たないなんて……そろそろ幕を引きましょうか」

 

 クリスの言葉を遮ったフィーネ。その右手が青白く輝き

 

「っ!?」

 

「私も、この鎧も不滅。未来は無限に続いて行くのよ」

 

 そう言った直後右手から広がった青白い光がフィーネの身体を金色の鎧となって現れる。

 

「カディンギルは完成しているも同然。もうあなたの力に固執する必要も無いわ」

 

「カディンギル……?そいつは……?」

 

「あなたは知り過ぎてしまったわ」

 

 直後クリスの周りのノイズが襲い掛かる。

 

「っ!?」

 

 それを避け、部屋の中を転げまわるように逃げ回るクリス。顔を上げ、フィーネに視線を向ける。と、そこではフィーネが邪悪な微笑みを浮かべ、杖を掲げていて

 

「っ!!」

 

 唇を噛んだクリスは俯きその視界に見えた〝それ〟に気付き

 

「っ!」

 

 咄嗟にそれを掴む。

 

「それを戻しなさい。あなたには無用の産物よ」

 

 フィーネが言うがクリスはそれに答えず駆け出す。

 

「チィッ!」

 

 舌打ちをしながら再び杖を振るうフィーネ。杖から放たれた光弾がノイズとなってクリスに襲い掛かるが、クリスは寸ででそれらを回避し

 

「ちきしょおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 泣きながらテラスへ飛び出しそのまま逃げ去って行った。

 

「くっ……」

 

 テラスに歩み出てクリスの逃げた方向を睨むフィーネ。

 

「あららら~、持って行かれちゃったねぇ」

 

 と、そんなフィーネの背後からカザリが茶化すように言いながら現れる。

 

「フィーネともあろうものが、抜けてるんじゃない?」

 

「ふん。どうせすぐに取り戻すわ」

 

 カザリの言葉に落ち着いた様子で答え、杖を構える。杖から光弾が発射されそれが大量のノイズとなってクリスの逃げ去った方向へ走っていく。

 

「ふ~ん。ま、取り返せるといいね」

 

「あら、あなたは追わないのかしら?〝アレ〟はあなたも欲しがってたものじゃなかったかしら?」

 

「その手には乗らないよ。自分の失態くらい自分でなんとかしなよ」

 

 言いながらカザリは大きく伸びをするように腕を伸ばし頭の後ろで組む。

 

「それじゃ、俺はゆっくり見物させてもらうから、精々回収頑張ってね」

 

 そう言ってカザリは鼻で笑い去って行った。

 それを見送ったフィーネは

 

「本当に、どうして誰も私の思い通りに動いてくれないのかしらね?」

 

 舌打ちをしながら髪を払い呟くのだった。

 

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