戦姫絶唱シンフォギア~希望の歌姫と欲望の王~   作:大同爽

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戦姫絶唱シンフォギア~希望の歌姫と欲望の王~、前回までの3つの出来事

1つ!特異災害対策機動部2課の施設に潜入したアンク。潜入した先で見たものは、完全聖遺物を纏ったフィーネと同等以上に戦う風鳴弦十郎の姿だった。

2つ!優勢に立っていた弦十郎だったが、フィーネの罠に逆転。潜んでいたことがばれていたアンクは姿を見せ、自身のメダルを渡すようにフィーネを恐喝するもフィーネはメダルを所持していなかった。

そして3つ!その場に居合わせた小日向未来がメダルを持っていたことを知ったアンクは彼女にメダルを渡すように恐喝するも、未来との取引により弦十郎を運ぶ手伝いをするのだった。



Count the Medals!
現在、オーズの使えるメダルは――






021~正体と犠牲と掴めなかった手~

「未来ぅぅぅぅぅッ!!!」

 

 瓦解し瓦礫の山となったリディアン音楽院に響の声が響き渡る。しかし、それに答える人物はいない。

 

「……………」

 

「ん?おいどうした?」

 

「っ!な、なんでもないよ、大丈夫」

 

 そんな中呆然としていた映治にクリスが声を掛けるが映治は慌てて頭を振って応える。と――

 

「っ!」

 

 あたりを見渡していた翼が校舎の上に人影を見つける。

 

「櫻井女史!」

 

「っ!テメェの仕業か、〝フィーネ〟!!」

 

「えっ……?」

 

「フィーネ、だとッ!?」

 

 クリスの言葉に響と翼は驚き慌てて了子へ視線を向ける。

 

「フッ…フフフッ…フハハハハハハハ!!」

 

 四人から視線を向けられ、了子は高らかに笑い始める。

 

「そうなのか!?その笑いが答えなのか、櫻井女史!?」

 

「あいつこそ、あたしが決着を付けなくちゃいけないクソッたれ!フィーネだ!!」

 

 クリスの言葉に了子は笑みを浮かべたまま掛けていたサングラスを外し、纏めていた髪を解く。直後、彼女の身体を光が包み、その光が終息したとき了子の姿は黄金の鎧をまとった金髪に黄金の瞳の姿へと変わっていた。

 

「う、嘘ですよね……?」

 

 了子の変化に響は信じられない様子で声を震わせながら訊く。

 

「そんなの嘘ですよね!?だって了子さん、私を助けてくれました!」

 

「あれは『デュランダル』を守っただけの事。希少な完全状態の聖遺物だからね」

 

「嘘ですよ!了子さんがフィーネだって言うのなら、じゃあ、本物の了子さんは!?」

 

「櫻井了子の肉体は、先だって食い尽くされた……いや、意識は12年前に死んだと言っていい」

 

 そこから了子――フィーネから語られるのは衝撃的な話だった。

 超先史文明期の巫女、フィーネは己の意識を遺伝子に刻みつけ、自身の血を引く人物がアウフヴァッヘン波形に触れた際にその身体にフィーネとしての記憶と能力が蘇るように施されていた。

 そして、今から12年前、翼が偶然引き起こした『天羽々斬』を起動させた際、その場に居合わせた櫻井了子の身体に刻まれたフィーネの因子を目覚めさせた。

 フィーネは櫻井了子だけでなく、歴史の中でもたびたび目覚め、人知れず転換期に関わっていた。それは歴史上に名を刻む名立たる偉人、英雄となって世界の技術レベルの向上、パラダイムシフトに一役買っていた。そして、今回で言うところのそれは――

 

「っ!『シンフォギアシステム』か!?」

 

「フッ、そのような玩具、為政者からコストを捻出するための手段にすぎぬ」

 

 映治の言葉にフィーネは何でもないことのように答える。

 

「お前の戯れに、奏はッ!!」

 

「私を拾ったり!アメリカのやつらとつるんでいたのも!そいつが理由かよ!?」

 

「そうっ!すべてはカディンギルの為!!」

 

 怒りに震わせ叫ぶ翼とクリスの言葉にフィーネは高らかに叫ぶ。と、それを合図にしたように地が揺れ、何かが地の底から起立する。

 それは見上げるばかりの巨大な塔。

 

「これこそが!地より屹立し、天にも届く一撃を放つ荷電粒子砲、『カディンギル』ッ!」

 

 フィーネは高らかに叫ぶ。

 

「これが『カディンギル』!」

 

「これで世界が一つになると!?」

 

「ああ、今宵の月を穿つことによってな」

 

「月を……!?」

 

「穿つ!?」

 

「なんでそんなッ!?」

 

 クリスの問いに答えたフィーネの言葉に響と翼とクリスは意図がわからずに訊く。

 

「私はただ、あのお方と並びたかった……そのために、あのお方へと届く塔をシンアルの野に建てようとした。だがあのお方は人の身が同じ高みに立つことを許しはしなかった」

 

 三人の問いに答えるようにフィーネは語り始める。

 

「あのお方の怒りを買い、雷霆に塔を砕かれたばかりか、人類は躱す言葉すら砕かれた。果てしなき呪い、『バラルの呪詛』を掛けられたのだ。月が何故古来より不和の象徴として語られて来たのか、それは、月こそが『バラルの呪詛』の源だからだ!人類の相互理解を妨げるこの呪いを、月を破壊することで解いてくれる!そして、再び世界を一つに束ねる!」

 

 フィーネは言いながらまるで月を握りつぶさんとするように手を伸ばし握り込む。それを合図に『カディンギル』が輝き、エネルギーを溜め込み始める。

 

「呪いを解く!?」

 

 と、そんな中でクリスは訊く。

 

「それはお前が世界を支配するってことなのか!?安い!安さが爆発しすぎてる!!」

 

「フッ、永劫を生きる私が余人に歩みを止められることなどありえない」

 

 クリスの言葉にフィーネは鼻で笑う。と――

 

「話は終わった?」

 

 四人の目の前、フィーネの立つ校舎の真下の瓦礫の陰からゆらりとアッシュブロンドの男が姿を見せる。

 

「「っ!?」」

 

 突然の見知らぬ男の登場に響と翼は困惑しながら身構える。

 

「カザリ!」

 

「テメェもいやがったか!」

 

「カザリって……!?」

 

「だがあいつは人間……」

 

「あぁ、そっか。君らとはこの姿では初めてだったね」

 

 アッシュブロンドの男はニヤリと笑う。と、困惑している響と翼、クリスと映治の目の前でその正体を現す。

 大量のコインが覆うように銀色の小さな光が包み、男の目の前にいた優男の姿は一瞬にして変わる。

 それはまるでライオンのようなネコ科の動物を思わせる顔に、長いドレッドヘアー状に編みこまれた髪、鋭い爪を備えた両腕にトラの様な縞模様のボディを黒いパンクパッションで包んだ容姿。地肌を出しているような茶色い装飾の無い下半身に腰には黒一色のベルトのようなものを付けている。

 

「人間に化けられたの!?」

 

「一時期からグリードの目撃情報がほとんど入ってこなくなったのはこのためか!」

 

 驚く響と翼の目の前でカザリは大きく伸びをするように頭の後ろで両手を組み

 

「悪いけどここからが面白いところなんだ邪魔させるわけにはいかないんだ、だから――」

 

「ガァァァァァァッ!!」

 

 カザリの言葉とともに四人の脇の瓦礫から何かが飛び出す。

 それはライオンのような鬣に筋肉質な巨体のヤミーだった。

 

「「「っ!」」」

 

 咄嗟の事に三人は驚くが

 

「このっ!」

 

 飛びかかって来たライオンヤミーに映治が体当たりする。

 

「映治さん!」

 

「ヤミーとカザリは俺に任せて!君たちはフィーネと『カディンギル』を!」

 

 響の声に返しながら映治は懐から取り出した『オーズドライバー』を装着し黄色のメダルを三枚納める。

 

「変身!」

 

 ベルトを『オースキャナー』で読み取り高らかに声を上げる。と、映治の身体を光が包み

 

≪ライオン!トラ!チーター! ラッタ!ラッター!ラトラーター!≫

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 『オースキャナー』から奇妙な歌が響き映治はオーズラトラーターコンボへと変身する。

 雄叫びを上げ、太陽のように眩い光を発しながら映治はライオンヤミーへと襲い掛かる。

 が――

 

「わざわざ僕のメダルを届けに来てくれてありがとう」

 

 オーズの振るった拳を間に入ったカザリが受け止める。

 

「悪いけど、メダルは一枚も渡せない、なぁ!!」

 

 受け止められた拳を支点にオーズは跳び上がりカザリへ蹴りを入れる。

 

「くっ!」

 

 弾き飛ばされたカザリは蹴りを防いだ左手を振る。

 と――

 

「――Balwisyall nescell gungnir tron」

 

「――Imyuteus amenohabakiri tron」

 

「――Killter Ichaival tron」

 

 三人の聖詠が聞こえ、フィーネへと戦いを挑んでいる様子が見えた。

 

「あっちも始まったみたいだね」

 

 カザリは言いながら自身の両手の鋭い爪を構える。オーズも自身の両腕に着くトラクローを構える。

 

「ガァァァッ!!」

 

 最初に動いたのはライオンヤミーだった。

 雄叫びを上げながらタックルを仕掛けるライオンヤミーをチーターレッグの脚力で瞬時に避け、さらに背後に回り込んで背中を切りつける。

 

「ガァツ!」

 

 痛みに雄たけびを上げるライオンヤミーの背中に蹴りを入れ

 

「っ!」

 

 背後から襲いかかって来たカザリの爪をトラクローで受け止め押し戻す。

 そのままがら空きになったカザリのお腹にトラクローの突きを放つ。

 

「ぐっ!」

 

 苦悶の声を漏らすカザリのお腹から引き裂く様にトラクローを引く。そのまま蹴り飛ばす。

 が、そこで立ち上がったライオンヤミーの振るう拳がオーズに迫る。咄嗟に左腕で体を庇うがその威力に弾き飛ばされる。

 

「くぅっ!」

 

 地面を転がりながら身を起こしたオーズをさらにカザリの蹴りが襲う。

 

「っ!」

 

 すれすれで避けながら転がるように距離を取り立ち上がったオーズは身構え

 

ドガァン!

 

「っ!?」

 

 聞こえた爆発にカザリとヤミーを警戒しつつ見れば塔の近くで爆発の煙が上がり、さらに雲を引きながら夜空にミサイルが一基登っていく。

 

「あれは…クリス!?」

 

 そのミサイルの先に立つ人物の姿にオーズは困惑の声を漏らす。そして、あたりに歌が響く。

 

「――Gatrandis babel ziggurat edenal」

 

「この歌!?」

 

「へぇ…絶唱か」

 

「っ!?」

 

 カザリの言葉にオーズ――映治は息を飲む。

 

「Emustolronzen fine el baral zizzl」

 

 月と『カディンギル』間に飛んだクリスから輝く何かが無数に広がる。

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal」

 

 その輝くものから赤い光が飛び交い、まるで夜空に大きく羽を広げる赤い蝶のような輝きが浮かび上がる。

 

「そんな、クリスちゃん!!」

 

 映治は空に向けて叫ぶ。しかし、それはクリスには届かない。

 

「Emustolronzen fine el zizzl」

 

 高らかに最後の小節を歌い上げたクリス。

 彼女の構える二丁の拳銃型のアームドギアがその形を変え、合わさり、巨大な砲門となる。

 地上ではエネルギーが臨界点に達しついに放たれる『カディンギル』。しかし、上空でも同時にクリスはその砲門から赤い閃光が放たれる。クリスの周囲に展開される小さな欠片からも砲撃が放たれ、クリスの砲撃と合わさり一点収束する。

 クリスの砲撃が『カディンギル』の砲撃を押し留める。

 が、押し留めた『カディンギル』の砲撃は徐々に押し戻し始め――

 

「あぁぁ!!クリスちゃん!!!」

 

 映治の目の前でクリスは『カディンギル』の光に飲み込まれる。

 そして――月の下側全体の五分の一ほどが欠けて砕ける。

 

「っ!」

 

 直撃コースだったはずの『カディンギル』の砲撃はクリスの決死の砲撃によって反らされたのだ。

 

「クリスちゃんッ!!」

 

 光を散らしながら空からクリスが落ちてくる。

 そんなクリスの元へ映治は手を伸ばしながら走り出す。が――

 

「おっと、君の相手は僕らだよ」

 

 カザリの言葉とともにライオンヤミーがオーズを押さえつける様にしがみ付く。

 

「くっ!」

 

 背後から抱き着いているライオンヤミーの腹に肘鉄を入れ拘束を逃れると、蹴り飛ばしてライオンヤミーと距離を取り

 

「邪魔をしないでくれ!!」

 

 叫びながらオーズは『オースキャナー』を手に取り

 

≪スキャニングチャージ≫

 

 オースキャナーから高らかに音声が響き渡る。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 同時にオーズは駆け出す。オーズとライオンヤミーとの間に三つの黄色の光輪が現れる。

 オーズはその脚力で全身から熱波を発しながら光輪へと向かって行く。

 一つ、また一つと光輪をくぐるたびにオーズの纏う熱波の勢いが増す。

 ライオンヤミーの元にたどり着いたオーズは一瞬足を止め

 

「はぁぁぁぁぁっ!!セイヤァァァァァッ!!!!」

 

大きく広げたその両腕のトラクローでライオンヤミーをX字に切り裂く。

 

「がぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」

 

 切り裂かれたライオンヤミーは断末魔の声とともに大量のメダルとなって爆発する。

 

「これで!」

 

 再びクリスの元へ駆けだそうとしたオーズは

 

「だから、君の相手は僕なんだよ」

 

「がはっ!?」

 

 一瞬で距離を詰めて来たカザリに下から斬り上げられる。

 その一撃にベルトからメダルが弾け跳び変身が強制的に解除される。

 

「ぐぅっ!」

 

 地面を転がり倒れ伏しながら、咄嗟に目の前に転がっていたトラメダルを掴む。

 

「君が彼女に気を取られて冷静を欠いてくれて助かったよ」

 

 言いながらカザリは映治を見下ろして言う。

 彼の手にはライオンとチーターのメダルが握られている。

 カザリはそれを一瞬上空に放り、それを体内に取り込む。

 

「ハハハッ!これでまた復活に近づいた!」

 

 カザリは嬉しそうに叫び

 

「さ、それも渡してもらおうか」

 

「がぁ!!」

 

 映治の背中を踏み付ける。

 

「まだ…まだぁ……!」

 

「諦めが悪いねぇ。アンクがメダルを持ってるんだから、君はもうオーズに変身できないんだろ?そして、アンクもここにはいない」

 

 手を伸ばす映治に言いながらカザリはさらに踏み付ける足に力を籠める。

 

「あ、もしかして、あのシンフォギアの子たちに期待してる?」

 

 カザリはあざ笑うようにクツクツと笑う。

 

「あれを見ても、まだ彼女たちに託すのかい?」

 

「っ!?」

 

 カザリの言葉に顔を上げた映治の見たものは

 

「ガァァァァァァァッ!!」

 

 雄叫びを上げ破壊衝動に支配された一匹の獣と化した響の姿だった。

 

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