戦姫絶唱シンフォギア~希望の歌姫と欲望の王~   作:大同爽

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戦姫絶唱シンフォギア~希望の歌姫と欲望の王~、前回までの3つの出来事

1つ!風鳴翼の奮闘によりカディンギルの破壊に成功する。しかし、それによって立花響の心は折れ立ち上がる力を失くしてしまう。そんな響にアンクと合流し再び戦う力を得た映治は立ち上がる力を思い出せるように声をかけ続けるのだった。

2つ!映治の呼びかけに加え、放送から聞こえて来た親友たちの歌う校歌の歌声に響は再び立ち上がる。その思いの力は響のみならず倒れたはずの雪音クリスと翼にも再び戦う力を与えるのだった。

そして3つ!復活した三人はその思いの力でエクスドライブを使い、フィーネが生み出す大量のノイズを退ける響達だったが、追い込まれたフィーネはその身に『ソロモンの杖』を突き刺し一体化し、加えて『デュランダル』の力を用いてその身を黙示録の龍へと変えるのだった。


Count the Medals!
現在、オーズの使えるメダルは――





024~龍退治と月の欠片と特等席~

「「「「っ!!?」」」」

 

 大きく首をもたげ、振りかぶるような動作をした赤い龍に四人は一瞬早く反応し飛び退く。

 先ほど街を焼いた赤い光線が四人の一瞬前にいた場所を飛んで行く。

 

「このぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

 避けながらクリスはスラスターから攻撃を放つ。が――

 

「っ!?」

 

 着弾する前にフィーネの本体が露出するする部分を防御壁のようなものが覆い、クリスの攻撃を防ぐ。そして、直後に羽のような部分を大きく広げ、光線を放ちクリスを襲う。

 

「ガァッ!?」

 

 苦悶の声を漏らすクリスを尻目に

 

「このッ!!」

 

 大剣状に変化させたアームドギアを大きく振りかぶり龍目掛けて『蒼ノ一閃』を放つ翼。

 その攻撃は龍の頭部を斬りつけ傷を付ける。しかし、その傷も一瞬で治癒してしまう。

 

「ッ!?」

 

「ハァァァァッ!!」

 

 続いて響が龍の腹部を殴るがそれもたちまち治癒する。

 

「ハァァァァ!!」

 

 『タジャスピナー』を構え光弾を放つオーズ。しかし、それも先の攻撃と同様に龍へのダメージとはならなかった。

 

「いくら限定解除されたギアと言えど、所詮は欠片から作られた玩具!!コンボの力を発揮するオーズであっても、完全聖遺物に勝てると思うてくれるな!!」

 

「「「ッ!」」」

 

 フィーネの勝ち誇って叫ぶ言葉にクリスと翼、オーズが顔を見合わせる。

 

「今の聞いた!?」

 

「もういっぺんやるぞ!!」

 

「だが、そのためには……」

 

 言いながら三人は振り返る。

 そこでは響が一人キョトンとした表情でいた。

 

「え、えぇっと……」

 

 三人の視線を受けた響は

 

「と、とにかくやってみます!!」

 

力強く頷いた。その答えに三人は頷き返し

 

「「「「ッ!!」」」」

 

 龍から再び攻撃が飛ぶ。

 四人は攻撃を躱しながら龍へと向かって行く。

 

「俺とクリスちゃん、それに――」

 

「私たちで露を掃う!!」

 

「手加減なしだぜ!!」

 

「わかっている!!」

 

「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 応じた翼に頷きながらクリスとオーズは速度を上げて龍へと向かって行く。

 その背後で大剣状のアームドギアを構えた翼が剣に力を込める。と、その剣がさらに肥大化し元の倍以上の大きさになる。

 それを大きく振りかぶった翼は

 

「はぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 先ほどの物よりもさらに強力な一撃――『蒼ノ一閃 滅破』を放つ。

 その攻撃は龍の腹部フィーネのいた場所を穿つ。その攻撃でその身を覆っていた防壁に穴をあける。しかし、それもすぐに塞がっていく。が、その穴がふさがりきる前にクリスとオーズがその穴に飛び込む。

 

「なっ!?」

 

 目の前に現れた二人の姿に一瞬動きが遅れるフィーネ。

 その目の前で構えた二人は

 

「「はぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

 クリスはスラスターや両腕のアームドギアから幾重もの攻撃を放ち、オーズは背部に光の羽根を展開し『タジャスピナー』からも光弾を乱れ撃つ。

 

「くっ!?」

 

 閉じられているせいで煙が充満する中、悔しげな表情で防壁を開くフィーネ。

 閉じられた防壁の向こうから日の光が差し込み、同時に正面に構える翼の姿が現れる。

 

「なっ!?」

 

 驚愕の表情を浮かべるフィーネの目の前で大きく振りかぶた翼はフィーネへと攻撃を放つ。

 防壁を開いた直後のせいで防御が間に合わなかったフィーネは咄嗟に目の前にシールドを張るが、大きく爆発する。

 もうもうと上がる煙の中から黄金の光を放つ何かが飛び出す。

 

「そいつが切り札だっ!!勝機を溢すな!!掴み取れ!!」

 

 それは先程までフィーネの握っていた完全聖遺物『デュランダル』だった。

 それが響の方へと飛んで行く。響のところまで届く前に落下しそうになるも、狙撃によってその軌道を修正、何度も何度も『デュランダル』に狙撃が加えられ確実に響へと向かって行く。

 

「ちょっせいっ!!」

 

 アームドギアを構えクリスは何度も引き金を引いてデュランダルを狙い撃つ。

 その光景に顔を引き締めた響は『デュランダル』へと手を伸ばし、柄を伸ばした左手で掴む。

 

「『デュランダル』をッ!!?」

 

 フィーネの驚きの声の直後

 

「うぅぅぅ……」

 

 響が呻き声を漏らす。

 同時に響を黒い何かが覆っていく。それは先程退けたはずの破壊衝動だった。

 

「うぅぅぅ!うあぁぁぁぁぁ!!」

 

 柄を両手で握り必死に自身の内からあふれ出てくるものを抑え込むように歯を食いしばって苦悶の声を漏らす響。

 と、彼女たちの眼下でシェルターの扉がはじけ飛ぶ。

 

「正念場だぁ!!踏ん張りどころだろうがァァァ!!」

 

「ッ!!?」

 

 直後聞こえた声に響は視線を向ける。

 そこにいたのは弦十郎だった。弦十郎に続いて誰か俯き加減で顔はわからないが女性と思われる人物を背負った緒川が、次いで藤尭達二課のメンバーや未来達リディアン音楽院の生徒たちが飛び出してくる。

 

「強く自分を意識してください!!」

 

 緒川が

 

「昨日までの自分を!!」

 

 藤尭が

 

「これからなりたい自分を!!」

 

 友里が、二課のメンバーが響へエールを送る。

 そんな響のもとに翼とクリスも寄り添うようにやって来る。

 

「屈するな立花!お前の奏でた胸の覚悟、私に見せてくれ!」

 

「お前を信じ、お前に全部賭けてんだ!お前が自分を信じなくてどうすんだよ!」

 

「うぅぅうぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

 翼とクリスの声に響はさらに苦悶の声を漏らす。

 

「あなたのお手伝いを!!」

 

「アンタの人助けを!!」

 

「今日は、あたしたちが!!」

 

 三人の友人たちが叫ぶ。

 しかし、そんな中でも龍は今までのダメージを確実に癒していく。

 

「姦しい!!」

 

 フィーネの苛立ちの籠った声が響く。

 

「黙らせてやる!!」

 

 声と同時に龍から触手のようなものが伸びる。

 しかし――

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

 それららの触手に『タジャスピナー』から放たれた光弾が撃ち込まれ響達から逸れる。

 

「彼女たちの邪魔はさせない!!」

 

 オーズは叫びながら『オースキャナー』を構える。

 

「俺から言うことは変わらない!響ちゃん、君は君自身の願いを忘れないで!!手を伸ばすことを躊躇わないで!!」

 

 叫びながらオーズは『オースキャナー』でベルトをスキャンする。

 

≪スキャニングチャージ≫

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

 ベルトから声が響と同時にオーズは雄たけびを上げながらさらに上空へと飛び上がり龍に向けて急降下する。そのまま急降下しながらクルリと身体を捻り足を開きながら龍へと向ける。と、その両足がまるで猛禽類の足のように変化する。そのまま急降下するスピードを乗せて燃え盛る猛禽類のようなツメで両足蹴りを叩き込む。

 

「グアァッ!!?」

 

 爆発を起こしフィーネから苦悶の声が漏れる。

 直後

 

「グォォォォォォォォッ!!」

 

 獣のような雄叫びを上げ、眩いまでの光を放つ『デュランダル』を振りかぶる響。

 そんな響に地上で見上げる未来は

 

「響ぃぃぃぃぃぃッ!!」

 

 声を枯らさん限りに親友の名を叫ぶ。

 その声の直後、響の口から獣のような声が止まる。

 同時にその顔つきが苦悶の表情から穏やかな、しかし、力強い表情へと変わる。

 

「そうだ!この破壊衝動に、塗りつぶされてなるものか!!」

 

 響はゆっくりと呟く様に言う。同時に響の背に黄金の翼が広がり、『デュランダル』が光りを増す。その光は天を貫くほどの光だった。

 

「その力、何を束ねた!!?」

 

「響き合うみんなの歌声がくれた、シンフォギアでぇぇぇぇぇぇぇすッ!!!!」

 

 フィーネの問いに答えながらその眩い光を響は振り下ろす。

 その光は紅い龍を頭部から両断していく。

 光が切り裂いた龍は大爆発を起こし、あたりへと煙を広げたのだった。

 

 

 ○

 

 

 

「……お前…何を、バカなことを……」

 

 響に肩に片手を背負われて引き摺られるように歩くフィーネは呟くように言う。

 そんな光景を見ながら、しかし、彼女の仲間たちは微笑ましげに笑っていた。

 

「みんなに言われます、親友からも変わった子だぁって」

 

 フィーネを近くの瓦礫の上に座らせた響は苦笑いを浮かべながら言う。

 フィーネの身を包んでいた鎧は以前の黄金の輝きは失せ真っ白になっていた。それはまるで、燃え尽きた灰のようだった。

 

「もう終わりにしましょう、了子さん」

 

「私はフィーネだ……!」

 

「でも、了子さんは了子さんですから。きっと私たち、分かり合えます」

 

「…………」

 

 響の言葉に無言でフィーネは立ち上がる。

 

「ノイズを作り出したのは先史文明期の人間。統一言語を失った我々は、手を繋ぐことよりも相手を殺すことを求めた」

 

 言いながらフィーネはゆっくりと歩みを進める。

 

「そんな人間がわかり合えるものか」

 

「人が、ノイズを……」

 

「だから私は!この道しか選べなかったんだ!」

 

 言いながらフィーネは鎧から伸びる鞭を握り締める。

 

「おい!」

 

 一歩踏み出し止めに入ろうとするクリスに、隣に立つオーズが手で制す。

 全員が見守る中で響がゆっくりと口を開く。

 

「人が言葉より強く繋がれること、わからない私たちじゃありません」

 

 自身に満ち溢れた声で言う響。そんな彼女の言葉にフィーネは息を吐き

 

「ゼアァッ!!」

 

 響に向けて鞭を振るい、一直線に伸ばす。

 それを寸でで躱した響は踏み込みフィーネへ拳を構え、しかし、それをフィーネに触れる直前で止める。

 響に当たらなかった鞭はしかし止まることなく伸び続け

 

「私の勝ちだぁぁぁッ!!」

 

『ッ!!?』

 

 その言葉に全員が鞭の軌道を見れば、それは上空へと延びていく。

 その鞭を握り締めながら

 

「ゼアァァァァァァッ!!!!」

 

 まるで一本背負いでもするかのように雄叫びを上げながらフィーネはそれを引っ張った。

 その威力に地が裂け鎧が砕ける。

 

「なっ!?月がッ!!」

 

 上空を見上げていたオーズが驚愕の声を上げる。

 空に浮かんでいた月、『カディンギル』に穿たれたその欠片が徐々に元の場所から離れ、こちらへとやって来るようだった。

 

「月の欠片を落とす!!」

 

『ッ!!?』

 

「私の悲願を邪魔する禍根は!ここでまとめて叩いて砕く!!」

 

 勝ち誇ったように叫ぶフィーネ。しかし、その身から鎧がボロボロと砕けて崩れていく。

 

「この身はここで果てようと、魂までは絶えやしないのだからなぁッ!聖遺物の発するアウフヴァッヘン波形がある限り、私は何度だって世界に蘇る!!どこかの場所!いつかの時代!今度こそ世界を束ねるために!!フハハハッ!!私は永遠の刹那に存在し続ける巫女、フィーネなのだぁぁぁぁッ!!」

 

 狂ったように叫び続けるフィーネ。そんな彼女の胸に響がコツンと拳をぶつける。

 

「うん、そうですよね……」

 

 響は穏やかに言いながら拳を当てた姿勢から体を直立へと起こす。

 

「どこかの場所、いつかの時代、蘇るたびに何度でも、私の代わりにみんなに伝えて下さい。世界を一つにするのに、力なんて必要ないってこと。言葉を超えて、私たちは一つになれるってこと。私たちはきっと未来に手を繋げるってこと。私には伝えられないから。了子さんにしか、できないから」

 

「ッ!お前……まさか……」

 

 響の言葉にフィーネは目を見開き

 

「了子さんに未来を託すためにも私が今を守って見せますね」

 

「…………」

 

 響の言葉にフィーネはフッと微笑み、直後その表情を柔和な笑みに変える。

 

「ホントにもう……放っておけない子なんだから」

 

 言いながら響の胸を指さす。

 

「胸の歌を、信じなさい」

 

 その言葉を最後にフィーネの身体はボロボロと崩れ去った。

 彼女の死をみんなが見守る中

 

「おい映治!!テメェ何考えてる!?」

 

 一人の叫び声が静寂を切り裂いた。

 その場の全員の視線が声の発生源を探して見渡され、直後に緒川を突き飛ばして彼の背中に負ぶさっていた人物が空を右手で指さしながら叫ぶ。

 それは右手を異形の物と変えた金髪の人物――アンクだった。

 彼の視線の先には背負向け空中に浮かぶオーズの姿があった。

 

「ごめん、アンク。でも、もうこれしかないから」

 

「ふざけんな!!それは俺のメダルだぞ!!テメェ何勝手に――」

 

「大丈夫!きっとなんとかなるから!」

 

 言いながらオーズは振り返る。

 

「だからさ、ちょっと行って来る」

 

「テメェふざけんな!そんなことこの俺が許すと――」

 

 しかし、アンクの言葉を最後まで聞かず、オーズはそのまま落下する月へと向かって飛び去って行った。

 

 

 ○

 

 

 月の欠片へと一人向かって行くオーズ。彼は前方――月の欠片を見据えてただ真っ直ぐに飛んで行く。と――

 

「一人でカッコつけてんじゃねぇよッ!」

 

「ッ!?」

 

 背後から聞こえた声にオーズが息を飲み振り返る。

 そこには三人の人物がこちらへと飛んでくるのが見えた。

 

「クリスちゃん、風鳴さんに響ちゃんも……」

 

 三人はオーズに追いつくとそのまま寄り添うように一緒になって月の欠片へと飛ぶ。

 

「三人とも、なんで……?」

 

「映治さんひとりに任せて、私たちが指をくわえて見ていられるワケが無いじゃないですか」

 

 響がオーズに笑みを浮かべて言う。

 

「それに、いくらお前が強くてもあの月の欠片を一人で破壊するなんて、簡単なことではないはずだ」

 

「それは……」

 

 翼の言葉にオーズは言い淀む。

 

「お前にはまだ奏の事やあのアンクとかいう奴の事について、訊きたいことが山ほどある。戻ってきてもらわなければ困る」

 

「あたしだって、アンタには借りがあんだ。返す前にいなくなられちゃ困るんだよ」

 

「私も、映治さんには何度も何度も助けてもらいました。だから――」

 

 言いながら響はニッコリと微笑み

 

「だから、私たちにも手伝わせてください」

 

「風鳴さん、クリスちゃん、響ちゃん……」

 

 三人の顔を見渡したオーズは

 

「でも、本当にいいの?」

 

「まったく、くどいな。こんな大舞台で挽歌を歌えるのも悪くない」

 

「まぁ、一生分の歌を歌うにはちょうどいいんじゃねぇのか?」

 

「だから私たちの歌、一番近くで聞いていてください」

 

「そっか……」

 

 三人の言葉に頷いたオーズは

 

「じゃあ、ありがたく聞かせてもらうよ、三人の歌!この特等席で!」

 

 力強く答えた。

 

「ありがとう、三人とも!一緒に、みんなの未来を救うために!!」

 

 言いながらオーズはさらにスピードを速める。

 響たち三人も互いに手を繋ぎ合い、オーズの後を追う。

 

「解放全開!!行っちゃえ!!ハートの全部でぇぇぇぇッ!!」

 

 響の叫びが響き渡り、四人は四つの流星となって月の欠片へと翔けて行く。そして――

 

 

 

 

 

 月の欠片は砕かれ、その砕かれた欠片がまるで雨あられのように降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

「あぁぁぁぁぁ!!」

 

 地上ではその光景をボロボロと涙を流しながら未来は見上げていた。

 

「響ぃぃぃぃぃぃッ!!!」

 

 そしてその隣では苛立たし気に空を見上げるアンクが

 

「チッ、あのバカが、冷や冷やさせんじゃねぇよ」

 

「え……?」

 

 その言葉に未来は呆然とアンクを見る。

 

「あ、あの、それってどういう……?」

 

「どうもこうも……」

 

 言いながらアンクが空を指さす。

 そこには他の流れ星とは違う一層輝く赤い光が下りてくるのが見えた。

 

「もしかしてアレって!」

 

 その光に未来は目を見開く。

 そして、見守る未来達の目の前に彼は降り立った。

 

「え~っと、ただいま?」

 

 そう言ったのは背中に翼を背負い、右手にクリス、左手に響を抱えたオーズだった。

 

「響ッ!!!」

 

「大丈夫、三人とも命に別状はないよ。気絶してるだけ」

 

心配して駆け寄る未来たちにオーズは優しく答える。

 

「チッ、まあちゃんと帰ってきたことには良しとしてやる。とりあえずとっとと俺のメダル返せ」

 

「あ、う、うん」

 

 三人をゆっくりと地面に下ろしたオーズはベルトに手をかけて変身を解除。ベルトからメダルを抜き取りアンクに差し出す。

 

「フン!」

 

 それを引っ掴むように取り戻したアンクは

 

「おら、さっさと行くぞ。もうここに用はねぇ」

 

「ま、待ってくれ!」

 

 踵を返すアンクだったが、弦十郎が呼び止める。

 

「き、君たちには聞きたいことが山ほどある。我々に同行してくれないだろうか?」

 

「ハンッ!誰がテメェらとなんか!」

 

 しかし、アンクはその言葉を鼻で笑いながらあしらう。

 

「ま、約束のセルメダルだけは今度受け取りに来てやる。じゃあな」

 

 言いながらアンクは歩き出し

 

「あ?おい映治、何してる?さっさと――」

 

「悪い、アンク……最近コンボにもだいぶ慣れてきてたけど……さすがに、今回は俺も、ちょっと無理したかも……」

 

「あぁん?」

 

「ごめん、俺、限界……」

 

 言いながら映治は脂汗の浮かんだ顔に笑みを浮かべ、そのまま地面に倒れ伏したのだった。

 


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