戦姫絶唱シンフォギア~希望の歌姫と欲望の王~   作:大同爽

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戦姫絶唱シンフォギア~希望の歌姫と欲望の王~、前回までの3つの出来事

1つ!紅き龍となったフィーネを倒した火野映治たち。フィーネへ手を伸ばす立花響だったが、フィーネはその手を取らず、最後の力を用いて月の欠片の軌道をずらし地球へと落とそうと画策する。

2つ!月の落下を食い止めるべく飛び立つ映治。響と風鳴翼、雪音クリスも後を追い、四人は協力して月の欠片の破壊に挑む。

そして3つ!満身創痍の三人を連れて戻った映治だったが、彼もまた長時間の戦闘のダメージにより気を失ってしまうのだった。


Count the Medals!
現在、オーズの使えるメダルは――





025~取り調べとアイスと警備のバイト~

 

「気分はどうだい?」

 

「お陰様で回復できました。ありがとうございます」

 

「……チッ……」

 

 弦十郎の問いかけに机を挟んで向かいに座る映治は笑顔で頷き、アンクは頬杖をついてそっぽを向いたまま不機嫌そうに小さく舌打ちする。

 

「すみません、二日もお世話になってしまって。ご飯まで出してもらって」

 

「何を言うんだ。君に助けられたことを思えばこのくらいなんてことはないよ」

 

「だったらさっさと俺たちを解放しろよ。これじゃあ犯罪者への取り調べじゃねぇか」

 

「おいアンクッ!!す、すみません……」

 

 そっぽを向いたまま厭味ったらしく言うアンクの言葉に映治が慌てて弦十郎に頭を下げる。

 現在三人がいるのは先程アンクが言った通り、まるで刑事ドラマなどで見る取調室のような一室で一つの机を挟んで対面して座っている状態だ。

 アンクの言葉にバツが悪そうに頭を掻く弦十郎。

 

「それに関しては弁解のしようもない。本当にすまない。俺個人としては君らには十分な待遇を用意したかったんだが、何分君たちの素性が知れない以上、上層部は慎重にならざるを得ないようでなぁ」

 

「まあ二年も正体明かさずにいたわけですから仕方ないですよ」

 

 映治も苦笑いで頷く。

 

「……はんッ!いい加減腹の探り合いはやめろよ」

 

 そんな二人のやりとりにアンクが舌打ちしながら弦十郎へ視線を向ける。

 

「テメェらの事だ。もう既にこいつに関しては調べつくしてんだろ?」

 

「え?」

 

「あぁ……」

 

 アンクに指さされ映治は呆けた顔をし、弦十郎は図星を刺された様子で苦笑いを浮かべる。

 

「その……すまない」

 

「い、いえ……まあ当然ですよ。俺みたいなどこの誰とも知れない相手、警戒して当然です」

 

「…………」

 

 苦笑いを浮かべて頷く映治に申し訳なさそうに黙る弦十郎。そんな二人を見ながらため息をついたアンクはため息をつく。

 三人の間に少しの間沈黙が流れ――

 

「それで…こうして俺たちを呼んだってことは、何か聞きたいことがあるんですよね?」

 

「……ああ」

 

 映治の問いに弦十郎は頷く。

 

「火野映治君、君の事を調べて君の来歴、君の過去についてはある程度はわかった。しかし、この二年間のことがほとんど情報がない。――いや、違うな」

 

 言いながら弦十郎はかぶりを振って、言い直す。

 

「この二年間、君がリディアンで用務員として働いていたことや、数度海外に出向いていることなどについてはわかっている。だが、オーズの事、グリードとの事、それに――アンク君の事」

 

 言いながら弦十郎はアンクに視線を向ける。視線を受けたアンクは一瞬視線を向け、しかし、すぐに視線を外す。

 

「教えてほしい。アンク君、君はいったい、誰なんだ?」

 

 弦十郎の問いにアンクは大きくため息をつき

 

「800年前、三人の錬金術師によって生み出されたグリードは五人。そして、二年前復活したのも、五人」

 

「二年前のライブ会場に加え、現在も世界各地で目撃情報の上がっている連中だな。だが、それらは四人だけだ。つまり――」

 

「ああ。お察しの通りだ」

 

 弦十郎の言葉を引き継いで、ニヤリと笑みを浮かべながら答える。

 

「俺がその五人目だ」

 

「やはり……」

 

 アンクの答えに弦十郎は重々しく頷く。

 

「だが、余計にわからないことがある。グリードである君が何故オーズである火野君と行動を共にしている?それに……」

 

「なんで天羽奏の身体を使ってるか、だろ?」

 

「っ!……ああ、その通りだ」

 

「他の四人と違って、俺は不完全な復活しかできて無くてな」

 

 言いながらアンクは見せびらかすように右手を異形の物に変える。

 

「俺が復活できたのはこの右手だけでなぁ。それじゃあ何かと不便だったんだが、あの日たまたま目の前に死にかけのこの身体があったもんでな。有効利用させてもらった」

 

「…………」

 

 アンクの言葉を呆然と聞いていた弦十郎は意を決したように口を開く。

 

「奏君は、生きているのか?」

 

「さぁな」

 

 アンクは肩を竦めながら嘲笑うように笑みを浮かべる。

 

「この二年間一度も目覚めていない現状で生きてるって言えるのかねぇ?あんたはどう思う?」

 

「それは……」

 

 アンクの問いに弦十郎は言い淀むが、意を決したように顔を上げる。

 

「……教えてくれ、二年前のあの日、一体何があったんだ?」

 

「……話します。全部話します」

 

「おい映治、てめぇ!」

 

 頷いた映治にアンクが机を叩いて立ち上がる。しかし、そんなアンクを見据えて映治は返す。

 

「アンク、もういいだろ。そろそろこの人たちにちゃんと事情を話して協力し合うべきだ。もともと俺たちは対立する理由は無かったんだから」

 

「………チッ!」

 

 映治の言葉にアンクは頭を忌々しそうに掻き毟り大きく舌打ちするとドカッと椅子に座り直し映治から顔を背けて頬杖をつく。

 

「勝手にしろ」

 

「ああ。ありがとう」

 

 素っ気なく言うアンクの言葉に嬉しそうに頷いた映治は弦十郎に向き直る。

 

「話します。二年前のあのライブの日から、何があったのかを」

 

 言いながら映治は弦十郎を正面から見据え

 

「その代わり、一つお願いがあります」

 

「……なんだね?可能な範囲で実現するよ」

 

「ありがとうございます」

 

 映治は頭を下げ、口を開く。

 

「今からする話を風鳴翼さん達にも聞いてもらいたいんです。全部話すって、約束したから……」

 

「なるほど……」

 

 映治の頼みに弦十郎は頷く。そんな弦十郎に映治は頭を下げる。

 

「お願いします。直接が無理なら中継でも録画でもいいので、どうか、どうか!」

 

「……お前、気付いてなかったのか?」

 

 必死で頼む映治の様子に呆れたようにアンクが言う。

 

「は?気付くって何が?」

 

「……はぁ~」

 

 大きくため息をついたアンクは立ち上がり映治の座っている側の壁に歩み寄り、映治に向き直る。

 壁には大きな鏡がはめ込まれている。その鏡をアンクは右手でノックし

 

「この向こうで風鳴翼、加えてあのガングニールのガキと、あの生意気なチビガキ、他にも何人かいるな」

 

「……へ?」

 

 アンクの答えに映治は呆けた顔をする。そのまま弦十郎の方に視線を向けると、弦十郎も驚いた顔のまま感心したように言う。

 

「すごいな。確かにその鏡はマジックミラーでその向こう、隣の部屋には翼に響君、クリス君、それに未来君ともう一人がいる。俺たちの会話は全部向こうにも聞こえている」

 

「っ!?」

 

 弦十郎の言葉に再びアンクと件の鏡を交互に見る。

 

「なんでわかったんだ!?」

 

「グリードの感覚がお前ら人間と同じだと思うなよ?不完全な身体でもこのくらいは感じとれる」

 

 ドヤ顔で自慢するように言ったアンクは再び椅子に腰掛ける。

 

「あぁ~……まあその、と言うわけで君の願いには答えられると思うんだが……他に何かあるかね?」

 

「あ、えっと、はい。とくには――」

 

「あるぞ」

 

「え?」

 

 アンクの言葉に映治が驚いた顔をする。

 

「君は何が望みだ?」

 

「そんな難しいことじゃねぇ」

 

 弦十郎の問いにアンクはフッと笑みを浮かべ答えた。

 

「アイスを用意しろ。棒付きのやつがいい」

 

 

 

 ○

 

 

 

「二年前のあの日――」

 

 弦十郎の持ってこさせた棒付きのアイスキャンディーをうまそうに齧りつくアンクの横で映治は話し始める。

 

「あのライブの日――俺もあの場所にいたんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……暇だなぁ。まあ暇なのはいいことだけど」

 

 大きく伸びをしながら青年――火野映治はひとり呟く。

 映治は青い胸元に警部会社の名前の縫い付けられた制服に身を包み、大きな建物の外で扉の前に立っていた。

 高校を卒業と同時に海外を旅してまわっている映治は日本に帰って来た折には旅費を稼ぐためにバイトに明け暮れる日々。この日も映治はそのバイトの一つ、警備会社の仕事でとあるイベントの警備に当たっていた。

 警備の仕事とは言ってもそれほど重要性は高くないようで映治が配置されてから人一人通らない。それならこんなところに人を配置しなくてもいいのでは?と映治はちらりと考えたが、どうやら今回のイベント――行われるライブでやって来るアーティストはかなり人気があるようで、万が一にも不審者が侵入してはいけないらしい。海外にいることが多い映治には残念ながらそのアーティスト――『ツヴァイウィング』の名前は訊きなじみがなかった。

 

「俺が学生の頃には聞き覚えなかったし、最近人気が出たのかな?こんな大きな会場でライブするくらいだし。こんな端っこの出入り口にまで警備置くくらいだし。結構流行ってるんだなぁ」

 

 映治はぼんやりと呟く。そんな彼の耳に

 

「~~♪~~~♪~~♪」

 

 どこからか歌が聞こえた。

 それはアカペラの、しかし、澄んだよく通る声だった。

 

「???」

 

 映治は首を傾げながらあたりを見渡す。しかし、周囲には相変わらず誰もいない。

 歌声の出所を探って声の聞こえる方へと歩いて行く。

 それは先程まで映治のいた場所からほんの数メートルの場所にある資材などの搬入を行う場所だった。大きなトラックも入れるように大きく開けたその場所、その少しせり上がった段の上にその歌声の主はいた。

 

「~~~♪~~♪」

 

 年の頃は映治よりも少し下、まだ学生くらいと思われるその少女はふんわりとボリュームのある赤毛に白いマントのようなものを羽織っていた。マントのせいで服装や体形は見えないがスラリと延びる脚などからスタイルの良さがうかがえる。

 

「~~♪~~♪~~~♪」

 

 少女はとても楽しそうに歌っている。

 映治はその場でその少女の歌に聞き入る。

 軽やかに楽しげに歌う少女のその歌声はそれほど音楽に詳しい訳ではない映治でも上手だと感じた。少女の歌には希望が満ちていた。少女が心の底から歌が好きなんだと感じる、そんな歌声だった。

 

「~~♪~~~~♪……」

 

 少女は最後の詩をのびやかに歌い切った。

 そして――

 

 パチパチパチ!

 

「っ!?」

 

 映治は思わず拍手していた。

 まさかギャラリーがいるとは思っていなかった少女は映治の拍手に驚きの顔を浮かべるとすぐに警戒したように映治をジロジロと爪先から頭の先まで見て

 

「なんだ、警備の人か」

 

 ホッと息をつく。

 

「アハハハ、ごめんね。驚かせたよね?でも、とっても上手だったよ」

 

「そいつはどうも」

 

 映治の言葉に少女は嬉しそうに笑う。

 

「でも、誰か来る前にすぐに逃げた方がいいよ?」

 

「ん?なんでだ?」

 

「なんでって……ここ関係者以外立ち入り禁止だよ?本当なら俺も不審者ってことで連絡した方がいいんだろうけど、さっきの歌が上手かったから特別に見逃してあげるから――」

 

「プッ…アハハハハハ!!」

 

 映治の言葉の途中で少女は笑い声を上げる。

 

「ど、どうしたって言うんだい?」

 

 そんな少女に映治は困惑する。

 

「いやぁ~…なんて言うか、あたしらもかな~り有名人になったと思ってたけど、まだまだなんだなぁって。まさか自分たちのライブの警備員に知られてないなんてなぁ。アハハハハハ!」

 

「え……?それじゃあ…もしかして……!?」

 

 大笑いする少女の言葉に映治は眼を見開く。

 そんな映治に二ッとイタズラっ子のような笑みを浮かべ

 

「あたしの名前は天羽奏、今日このドームでライブをする『ツヴァイウィング』の片翼だ!」

 

 少女――天羽奏は楽し気に笑うのだった。

 

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