戦姫絶唱シンフォギア~希望の歌姫と欲望の王~   作:大同爽

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戦姫絶唱シンフォギア~希望の歌姫と欲望の王~、前回までの3つの出来事

1つ!警備員のバイト中、火野映治はトップアーティスト・ツヴァイウィングの片翼である天羽奏に遭遇。言葉を交わし親しくなった。

2つ!警備員の業務に戻った映治は突如会場で起こった爆発に慌てて中に入ると、ライブ会場にはノイズが溢れ、さながら地獄絵図の様相が広がっていた。

そして3つ!その会場で謎の異形のバケモノと遭遇した映治。しかし、映治は同じく右腕しかない異形のバケモノ、アンクとの取引によってオーズへと変身する力を得るのだった。


Count the Medals!
現在、オーズの使えるメダルは――





027~命の唄と契約と守るもの~

 

「大丈夫かい!?」

 

 鎌を受け止めながら響へ振り返って映治――オーズは叫ぶ。

 

「え…あ…あの…はい……」

 

「ならよかった!じゃあ早く――」

 

「生キタイ!!オ前ガ死ネ!!」

 

「逃げるん――だ!!」

 

「ぐあっ!」

 

 気合の声とともにオーズはカマキリヤミーを弾き飛ばす。

 

「さあ行って!」

 

「は、はい!」

 

 オーズの言葉に促され、少女は走り出すが

 

「きゃぁぁぁ!?」

 

 少女の足元が崩れ、少女は下へと落下する。

 

「ッ!」

 

 その光景にオーズは少女を救うために駆け出そうとするが

 

「死ニタクナイ!」

 

「グッ!?」

 

 弾き飛ばしたカマキリヤミーによって羽交い絞めにされ阻まれる。

 

「くっ!邪魔だぁ!」

 

 オーズはそんなカマキリヤミーの足を踏み付け一瞬緩んだ拘束の隙にヤミーのお腹に肘鉄を入れる。

 

「ハァァァァッ!!」

 

 拘束から逃れたオーズは振り向きざまにトラクローでカマキリヤミーの身体を切り裂く。ヤミーの身体から鮮血の如く銀色のメダルが飛び散る。

 そのままヤミーに蹴りを入れ吹き飛ばす。

 急いで視線を向ければそこではへたり込む少女を庇って奏が迫りくるノイズを槍を回転させて防っていた。

 

「ッ!」

 

 奏たちを救出しようと踏み出したオーズだったが

 

「キェェェェ!!」

 

「ガッ!?」

 

 背後から飛んできた斬撃と衝撃に地面を転がる。

 慌てて体勢を整えればカマキリヤミーがその両手の鎌を掲げていた。

 

「キェェェェ!!」

 

 再び奇声とともに飛ばして来た斬撃をトラクローで弾き落とす。

 同時に飛びかかって来たヤミーの鎌を受ける。

 

「ハァァッ!」

 

 ヤミーの振るう鎌をトラクローでさばきながらちらりと視線を向ければ、そこではノイズの攻撃を拘束で回転させて防いでいるが、かなり追い詰められている。奏が槍の回転速度を上げながら雄たけびを上げる。しかし、奏の纏う鎧がボロボロと崩れ始め――

 

「ッ!?」

 

 その破片が逃げようとしていた背後の少女を襲った。

 破片を胸に受けた少女から鮮血が飛び散る。

 

「そんなッ!?」

 

 その光景に一瞬気を取られたオーズは

 

「ガッ!?」

 

 カマキリヤミーの攻撃を受けて弾き飛ばされる。

 

「生キタイ!!オ前ガ死ネ!!」

 

 倒れるオーズに追撃を放つカマキリヤミー。寸でのところでそれを回避するもオーズはさらに追撃を受ける。

 

「クゥ……」

 

 カマキリヤミーの猛攻にオーズが苦悶の声を漏らす。と――

 

【――Gatrandis babel ziggurat edenal 】

 

 透き通るような歌声がその場に響いた。

 

【 Emustolronzen fine el baral zizzl 】

 

「いけない奏ぇっ!!!歌ってはダメェェェ!!!」

 

 知らない少女の悲痛な叫びが聞こえた。

 

【 Gatrandis babel ziggurat edenal 】

 

 その歌声に一瞬気を取られたことで、オーズは初動が遅れた。

 

「キェェェェ!!」

 

「ッ!」

 

 カマキリヤミーの飛ばした斬撃をオーズは飛び退いて回避し、その軌道を追ったオーズはその先で槍を天高く構える少女がいることに気付いた

 

【 Emustolronzen――】

 

「危ない!!」

 

 オーズの叫びに、しかし、奏は気付く前にその斬撃を背中に受けてしまった。

 

「ッ!!」

 

 その光景にオーズは息を飲み

 

「うわぁぁぁぁ!!!」

 

 グッと踏み込むように足に力を込める。と、オーズの両足が緑の輝きを発しオーズは大きく跳躍する。その勢いのままヤミーへと駆けるように蹴りを五発叩き込む。

 その蹴りで吹き飛んだヤミーをさらに追いかけ両腕に力を込める、トラの雄叫びのような音と共にオーズの胸と腕が黄色く輝き――

 

「セイヤァァァァァ!!!」

 

「ガァァァァァッ!!!」

 

 腕を交差させるように振るう。オーズの斬撃を受けたヤミーは断末魔を上げながら大量のコインに代わる。

 

「奏ちゃん!!」

 

 その光景を見た瞬間にすぐに跳んだオーズはすぐさま奏に駆け寄る。

 彼女は地面にうつ伏せに倒れ伏して動かない。

 

「そんな……!」

 

 急いで彼女を倒れる少女のそばまで運び二人の様子を見る。どちらもかなり危険な状態だった。

 

「クッ!早く二人を運ばないと!でも――」

 

 言いながらオーズは視線を巡らせる。まだこのライブ会場にはノイズで溢れている。

 

「クソッ!どうすれば……!」

 

 まだ大量にいるノイズたちと目の前の少女二人、そのどちらを優先するかオーズの中で葛藤が起こる。数秒の逡巡の末

 

「頑張るんだ奏ちゃん!それに君も!すぐにノイズを片付けるからそれまで頑張ってくれ!」

 

 オーズはノイズへと駆けだした。

 

 

 ○

 

 

 

「――ほう?こいつはいいもん見つけた」

 

 オーズがノイズへと向かって行ってからすぐに倒れる二人の少女の下にアンクは現れた。

 まるで品定めするように二人の間を飛んだアンクは

 

「こっちがいいな」

 

 二人の中でより幼い方の少女へ向く。

 

「だ…れ……?」

 

「なんだ、まだ喋れるのか。死にかけのクセにな。まあいい、どっちにしろ関係ないな」

 

 少女の呟く様な問いに少し驚いたもののそのまま少女に向かって行き

 

「さて、さっさと――」

 

「待て……!」

 

「あぁん?」

 

 しかし、今度は先程の少女よりも弱々しい声が聞こえる。

 見ればもうひとりの少女――奏がアンクを睨みつけていた。

 

「その子に…何する気だ……?」

 

「関係ないだろ。他人の心配するより自分の心配したらどうだ?お前、こいつよりもよっぽどヤバいだろ」

 

 奏の問いにアンクは嘲るように答える。

 

「いいから…答えろ……!その子に何する気だ!?」

 

「見りゃ分かんだろ。見ての通り俺は物入りでなぁ。こいつはそれにぴったりってわけだ」

 

「そんなこと…させるか……!」

 

「ハンッ!死にかけは黙ってそこで見てろ」

 

 言いながらアンクは少女へと向かって行く。が――

 

「――おい、何してやがる?」

 

 そんなアンクを奏が掴んでいた。

 

「その手を放せ。邪魔だ」

 

「その子はもう一度生きようとしてるだろ……!」

 

「今にも死にそうなやつは黙ってろ」

 

「その子に手を出すな……!」

 

 アンクの言葉に奏は力強く叫ぶ。

 

「だったらどうする?お前が身代わりになるか?」

 

 そんな奏にアンクは問いかける。

 

「そうだ……!」

 

「ほう?」

 

 しかし、それに奏が応じたことでアンクは感心したように、興味を持ったように声を漏らす。

 

「面白い。その言葉、忘れるなよ?」

 

「もちろんだ」

 

「いいだろう。契約成立だ」

 

 奏の真剣な表情の言葉にアンクは楽し気に答えた。

 

「名前も知らない誰か……」

 

 アンクの答えに安心したように微笑んだ奏は少女へと視線を向ける。

 

「生きるのを諦めないでくれて、ありがとう」

 

 そう言って微笑んだ奏は

 

「ッ!」

 

 自身の体を無理矢理に引き起こし瓦礫に背中を預けて座ると

 

「ちょっとの間、黙ってろよ……!」

 

「何す――グエッ!?」

 

 アンクを自身の下に押し込んだ。

 

「翼ぁぁぁぁ!!」

 

 そして、少し先にいた相棒の少女へと呼びかける。

 

「奏、大丈夫なの!?」

 

「ああ、この程度なんてことはねぇよ」

 

 心配げな顔で駆け寄ってきた少女――風鳴翼に奏は不敵に笑ってみせる。

 

「それよりも頼む、この子をすぐに外に連れ出して治療を受けさせてやってくれ」

 

「で、でも奏だって!それにノイズも!」

 

「ノイズは大丈夫だ。あいつがいる」

 

「あいつ……?」

 

 奏の言葉にノイズの方へ視線を向ければ少し前からこの戦場に突如現れ圧倒的な速度と力でノイズを屠っていく存在の姿があった。

 

「でも、あいつが味方かどうかもわからないじゃない!?ノイズを倒してるからって人間の味方とは――」

 

「大丈夫だよ」

 

 翼の心配そうな言葉に、奏は笑顔で言う。

 

「あいつは、きっとあたしらの味方だ」

 

「なんでそんなことがわかるの!?」

 

「……なんでだろうなぁ、でも、なんかわかるんだよ」

 

 奏は翼の問いに答えながらオーズへ視線を向ける。

 

「あいつはきっとすげぇお人好しの、あたしたちの味方なんだよ」

 

「奏……」

 

「だから、翼!あいつがノイズの相手をしているうちにこの子を頼む!」

 

「でも……!」

 

「あたしたちが槍と剣を振るってきたのは何のためだ!?この子たちのような命を守るためだろう!」

 

「ッ!」

 

 奏の言葉に翼は息を飲む。

 

「大丈夫だ。あたしも少し休憩したらすぐに動けるようになるからさ……」

 

「…………」

 

 そう言ってにっこり微笑む奏の言葉に翼は頷く。

 

「わかった……この子は絶対に死なせない。この子を預けたらすぐに戻って来るから待ってて!」

 

「ああ…頼んだぜ……!」

 

 傍らに倒れる少女を抱えた翼は奏に言う。

 

「絶対に戻るから!だから……!」

 

「わかったから……早くその子を外へ避難させてやってくれ」

 

「ッ!」

 

 奏の返事に頷いた翼は少女を抱え、駆けて行った。

 翼が去って行くのを見送った奏。そんな彼女の下から

 

「~~~ッダァァァ!いい加減どけやぁ!」

 

 怒声とともにアンクが這いだす。

 

「いつまで乗ってんだ!重いんだよ!そのでけぇケツ邪魔なんだよ!!」

 

「こ、これでもあたしも女だぞ!人のお尻をでかいとか言うな!――ッ!?ゴホッゴホッ!!」

 

 アンクの言葉に反論する奏だったがそこで大きく咳き込み口から血を吐き出す。

 

「たく、今にも死にそうだってのによくあそこまで平気なフリしてられたな?」

 

「翼は…泣き虫だからな……あたしがこんな状態だってわかってたら、絶対私を置いてなんかいけねぇよ……」

 

 アンクの問いかけに瓦礫に力なく背中を預けた奏は応える。その声には先ほどまでの覇気がない。

 

「で?ほんとにいいんだな?テメェが身代わりになるんで」

 

「ああ、二言はねぇよ……」

 

 アンクの言葉に頷く奏。

 

「ハンッ、いい返事だ」

 

 そんな奏にアンクは機嫌よさそうに答える。

 

「まあ安心しろ」

 

 言いながらアンクは奏によっていき

 

「テメェの身体は俺が大事に使ってやるからよ」

 

 そっと寄り添うように奏の右腕へ身を寄せた。

 

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