戦姫絶唱シンフォギア~希望の歌姫と欲望の王~   作:大同爽

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投稿の間が空いてしまいすみません!
だいぶ休んでしまったのでそろそろ復活します!
そんなわけで――



戦姫絶唱シンフォギア~希望の歌姫と欲望の王~、前回までの3つの出来事

1つ!ついにオーズとして変身しカマキリヤミーと戦う火野映治。そんな映治に救われた立花響だったが、瓦礫の崩壊に巻き込まれ足を負傷。ノイズから彼女を守るために庇った天羽奏の破損したアームドギアの破片に胸を貫かれてしまう。

2つ!響きを、そして、ライブ会場にひしめくノイズ達を一掃するために絶唱を唱える決意をする奏だったが、カマキリヤミーの一撃によって致命傷を受ける。

そして3つ!カマキリヤミーを打倒しノイズ殲滅を始めるオーズ。その裏で倒れる響の身体を奪おうと画策するアンク。しかし、風前の灯火だった奏によって響は翼に連れられライブ会場を脱出。奏は響の代わりに自身の身体をアンクに差し出すのだった!


Count the Medals!
現在、オーズの使えるメダルは――





028~鳥と身体と奏の安否~

 

「はぁぁぁぁぁぁぁッ!!!セイハァァァァァッ!!!」

 

 目の前で蠢いていた五匹ほど固まっていたノイズ達にオーズ――火野映治は両腕のトラクローを振るう。

 オーズによって斬り裂かれたノイズ達は灰へと変わる。

 オーズは警戒した様子でトラクローを構えながら肩で息をしながら辺りを見渡し――

 

「い…今のが最後か……」

 

 辺り一面が灰の山以外、動くものがないことを確認し、ホッと安堵の息をつく。

 そこで――

 

「奏ちゃんッ!!」

 

 そこで慌てて振り返る。

 そこには先ほど見た時と変わらず瓦礫に体を預け力なく俯く天羽奏がいた。ただし、その服装は先程までのぴったりと体を覆うボディースーツと鎧ではなく、ライブ衣装と思われる薄く赤みがかったふんわりとしたドレス姿だった。

 

「奏ちゃんッしっかりッ!!いま救急車をッ――!!」

 

 慌ててオーズは駆け寄り――

 

「え……?」

 

 その視線の先で起こった事に思わず足を止める。

 オーズの視線の先では、先程までぐったりと倒れていた奏がゆっくりと起き上がっていた。しかし、その動きは立ち上がったのではなく、まるで無理矢理引っ張り上げられたようだった。

 

「ッ!?お前ッ!!」

 

 オーズは一瞬呆気にとられながら、しかし、彼女の右腕に先程自身に戦う力を与えた異形の腕――アンクがくっついていることに気付いた。

 気付いた瞬間、映治はアンクが無理矢理に奏の腕を掴んで持ち上げているのかと思った。しかし、すぐにそれは間違いだと気付く。

 掴んでいるかと思われたそのアンクの異形の腕は驚いたことに奏の右腕の延長として一体となっていた。その異形の右腕に繋がって、まるでマリオネットの様に力なく投げ出された奏の身体が吊り上げられているのだ。

 

「ふむ……まあ悪くないな」

 

 だらりと垂れ下がる奏の身体を引き上げたままアンクが呟くように言い、直後――

 

「ッ!」

 

 先程まで固く閉じられていた奏の瞼が見開かれる。

 そのまま先程までの吊り上げられたような不安定な様子ではなくしっかりと地に足のついた様な確かな足取りで立つ。

 

「これで少しは――」

 

 直後、その異形の右腕から奏の身体を伝播するように青白い光が駆け抜け

 

「マシに動ける」

 

「なッ!?」

 

 オーズの目の前でボリュームのある赤毛だった奏の髪が顔の右側に一房を残して金髪に染まる。髪型も先程までのストレートなものではなく左側を編み込んだ髪型に一瞬で変わる。その髪の下に浮かぶ表情も少し前に見た朗らかな快活とした彼女の笑みとは似ても似つかない不敵な、どこか邪悪さの見える笑みが浮かぶ。

 驚きに固まるオーズにそいつはツカツカと歩み寄り、オーズのお腹に取り付けられたベルトを掴み斜めに傾けられたそれを水平に戻す。と――

 

「え…?」

 

 オーズの身体が灰色の光が包み、それが晴れた時にはオーズではなく、元の火野映治に戻っていた。

 そのまま驚いている映治を尻目に彼のお腹からベルトを外し彼女らしからぬ不敵な眼差しで口元に不敵な笑みを浮かべる。

 

「お前…なんで?どうやって奏ちゃんの身体を――」

 

 そんな目の前の人物に映治は困惑した様子でその右腕を掴んで目線の高さに持ち上げ

 

「え……?」

 

 その腕は元の奏の腕に戻っていた。

 困惑する映治からバッと腕を引き戻したその人物――アンクは

 

「この身体は俺が貰った。あのままじゃ何かと不便だったからな」

 

「貰ったって……奏ちゃんはどうなるんだよ!?」

 

「どうなってもいいだろ?どうせ死ぬ寸前だったんだ」

 

「そんな……」

 

 そう言って不敵に笑い、驚いたまま固まる映治を尻目に視線を外し

 

「あぁん?てめぇ何してる?」

 

 その視線の先で鳥を模したような機械が先程オーズによって倒されたヤミーがその身を変えたメダルの一枚を咥えていた。

 

「それに触るなッ!!」

 

 そんな機械の鳥にアンクが慌てて駆けよろうとするが、それより先にどこからともなく同じ機械の鳥が大量に舞い降り次々に地面に散らばるメダルを咥える。

 

「ふざけるなッ!!」

 

 慌ててメダルに駆け寄るが機械の鳥たちはメダルを咥えたまま跳び去って行く。

 

「させるかよ!それは俺のだッ!!」

 

 その中の一匹の咥えたメダルを異形の腕で掴み数秒の引き合いの後、奪うことに成功する。

 しかし、その間に残りのメダルはひとつ残らず持ち去られてしまった。

 

「チッ」

 

 異形の腕のままアンクは跳び去って行く機械の鳥たちの群れを忌々しそうに見つめ、自身の手の中のメダルに視線を移し、ヅカヅカと怒りそのままの荒々しい足取りで映治に歩み寄り

 

「おい!今のはなんだッ!?」

 

 映治の顔を掴み睨みつける。が――

 

「し、知らないよ!!それより奏ちゃんはッ!!?」

 

「チィッ!!!」

 

 その返答にアンクは忌々しそうに映治を突き飛ばす。突き飛ばされ尻餅をつく映治から視線を外し

 

「どうも妙だな……」

 

 訝しむ様に目を細め思案する。

 

「俺達が封印されてる間に、何か起こってる……」

 

「…………」

 

 思案するアンクを茫然と尻餅をついたまま映治は見つめる。

 

「まあ今は考えてる場合じゃねぇな。行くぞ」

 

 そう言って映治に背を向けるアンク。

 

「ちょッ!?待てよ!!行くってどこへ!?」

 

「どこでもいい。とにかくさっさとずらからねぇと〝コイツ〟の相棒達が戻ってくる。鉢合わせると何かとめんどくさそうだからなぁ」

 

「でも……」

 

「チッ!いいから来い!」

 

「あッ!?ちょッ!?」

 

 イラついた様子で舌打ちしたアンクは映治に歩み寄り、襟首を右腕で掴んで引き摺って行く。奏の体格に対して明らかにそれを超えた力で引っ張られ抵抗するものの引き摺られていく映治。

 その数分後、風鳴翼が慌てた様子で戻った時、そこには灰が散らばるばかりで、相方の姿は無くなっていた。

 

 

 〇

 

 

 

「――これが、あの日のライブ会場であったことです」

 

「……そうか……」

 

 映治の言葉に弦十郎は神妙に頷き

 

「アンク君、と言ったね」

 

「あぁん?」

 

 アイスを齧るアンクに視線を向ける。呼ばれたアンクはめんどくさそうに口にアイスを咥えたまま顔を向ける。

 

「その…君が憑いた状態の奏君はどういう状態なんだ?生きているのか?」

 

 真剣な眼差しでの問いに

 

「それは、大丈夫だと思います」

 

 答えたのは映治だった。

 

「こいつの話では、こいつが憑いていることで奏ちゃんの身体は生命活動を維持しているらしくて、なんならグリードとしての力が作用して常人よりも丈夫になってるらしくて、回復力も上がっているらしいんです。ご飯も――」

 

「こうやって俺が食わせてやってる」

 

 映治の言葉を引き継いでアンクは見せつけるようにアイスを齧る。

 

「食わせてやってる…か」

 

 二人の言葉に安堵した様子のモノの、しかし、アンクのいいように弦十郎はどこか腑に落ちない様子で眉を顰める。そんな弦十郎の表情に怪訝そうな顔でアンクは首を傾げ

 

「なんだ?俺も味は感じてるぞ」

 

 言いながら再びアイスを齧る。

 

「これが冷たくてウマいのはわかる。それとも――」

 

 言いながらニヤリと笑ったアンクは右手を異形のそれに変えて掲げ

 

「こうして食えば納得か?」

 

 言うやいなや、左手に持ったアイスを右手の掌に押し当てる。と、押し当てられたアイスがズブズブと右手の掌に飲み込まれていき、ものの数秒で木の棒だけになる。

 

「い、いや…信じるよ」

 

 そんな光景に頬に汗を滲ませながら弦十郎は苦笑いを浮かべる。

 そんな弦十郎の言葉にふんと鼻を鳴らしたアンクは足元に置いている、先程弦十郎の指示で二課の職員が持ってきたクーラーボックスに手を突っ込み新しいアイスを取り出して包みを開け

 

「腹の探り合いはよせよ」

 

 ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる。

 

「テメェらが訊きたいのはその先――俺が〝この身体(天羽奏)〟を解放するか、だろう?」

 

「ッ!!」

 

 アンクの言葉に弦十郎が息を飲み

 

「……ああ、その通りだ」

 

 真剣な瞳でアンクを見据え

 

「その身体は、彼女は俺達の大事な仲間だ。だから――」

 

 ゆっくりと腰を上げ、そのまま頭を深々と下げる。

 

「頼む、返してくれ」

 

「弦十郎さん……」

 

 その光景に映治は唖然と見つめ、アンクは自分に向けられる弦十郎の頭頂部を見つめ

 

「はんッ、答えはNOだ」

 

 鼻で笑ってそっぽを向いてアイスを齧る。

 

「おい、アンクッ!!」

 

 そんなアンクを映治が睨みつけ叫ぶ、が――

 

「おう、映治。てめぇだってわかってんだろ?メダル探しのためにはこの身体は必要だ。それに――」

 

 言いながらアンクは異形の右腕を見せ

 

「俺が離れるのが、〝この身体〟にとってマズいってのはお前もよくわかってんだろう?」

 

「ッ!!そ、それは……」

 

「どういうことだ?」

 

 アンクの言葉に言い淀む映治に弦十郎は困惑した様子で訊く。そんな弦十郎にアンクはニヤリと笑い

 

「さっきコイツが言っただろう?こいつは今俺が憑いていることで生命維持してるし、俺が食わせてやることで栄養を得ている。でもそれは、逆に言えば、俺が離れた途端にこの女は意識のない植物人間になっちまうぜ?」

 

「なッ!?」

 

 アンクの言葉に弦十郎は眼を見開き、確認するように映治に視線を向ける。

 視線を向けられた映治はゆっくりと頷き

 

「間違いありません。この二年間彼女が目を覚ましたことはありません。唯一少し反応を示したのは響ちゃんがガングニールを起動したときくらいで……それも多分、彼女の肉体が彼女の使っていたガングニールに無意識で反応しただけかと……」

 

「そう…か……」

 

 映治の説明にアンクの言葉が真実だと信じた弦十郎は渋面を浮かべる。

 

「……君の言いたいことは分かった」

 

 数秒の沈黙の後、弦十郎が口を開く。

 

「だが、いつまでもこのままと言うわけにはいかない。教えてくれ、どうすれば奏君は解放してもらえるんだ?」

 

 アンクの顔を正面から見据え弦十郎が訊く。

 

「そうだな……」

 

 弦十郎の問いに考える素振りを見せたアンクは

 

「俺の残りのメダルが全部揃って、完全に復活出来たら…返してやってもいいな」

 

 そう言ってニヤリと笑う。

 

「残りのメダル、と言うことは……」

 

「あと五枚だ」

 

 言いながら弦十郎に向けて異形の右腕を開き、その五指を示す。

 

「あと、五枚……」

 

 弦十郎はその手を見て唇を噛む。

 

「ま、そんなわけだから、俺達にはこんなふうにちんたらやってる時間はねぇ。さっさと解放しろ」

 

 アンクは言いながら憮然と机に肘をついて頬杖をついて面倒臭そうにアイスを齧る。しかし……

 

「それは…できない!」

 

「あぁん?」

 

 絞り出すように言った弦十郎にアンクが怪訝そうに睨む。

 

「俺としては意識のない奏君の身体にもしものことがあれば……」

 

「それは、大丈夫だと思います」

 

「なに?」

 

 顔を顰めて言う弦十郎に映治が恐る恐る言う。

 

「その、俺と約束してるんです。人の命よりメダルを優先しない、彼女の身体を雑に扱わないって……この約束が守れないときは、俺はもうコイツのメダル集めに協力しないって」

 

「だが、それは……」

 

「もちろん口約束です。でも、この二年コイツは曲がりなりにもその約束を守ろうとしてくれています。だから、俺はコイツのことを信じます」

 

「……そうか」

 

「ふんッ」

 

 映治の真剣な表情に弦十郎は頷き、アンクは不機嫌そうにそっぽを向く。

 

「……君の言いたいことは分かった」

 

 弦十郎は少し考え映治の顔を見ながら頷く。

 

「彼はともかく、君が人々を守るために戦い、響君や翼、クリス君を助ける為に戦っているところは何度も見た。俺としても君のことは信じたい」

 

「弦十郎さん……」

 

「だが、やはり俺としてはこのままはいそうですか、とは言えない。それに……」

 

 言いながら弦十郎は二人を見つめ

 

「俺達は君たちに協力できると思う」

 

「あぁん?」

 

 弦十郎の言葉にアンクが怪訝そうに顔を顰める。

 

「俺達の仲間にならないか?そうすれば君達の負担を減らせるかと思うが?」

 

「はんッ、てめぇらご自慢のシンフォギアじゃグリードどころかヤミーにだって歯が立たねぇくせに、俺達の負担を減らすだぁ?大きく出たじゃねぇか」

 

「それは……」

 

 アンクの言葉に弦十郎は言い淀み

 

「アンク、もういいだろ。そろそろ頃合いだと俺は思うぞ」

 

「あぁん、なんだと?」

 

 映治が真剣な顔で言う言葉にアンクが眉を顰める。

 

「今回の件でカザリがフィーネと共闘していたように、他のグリード達だってどこかの勢力と手を結んでる可能性だってあるんだ。そうなったら今回のように二人だけじゃきつい場面も増えてくる。俺達だって協力できる仲間を作るときなんだよ」

 

「それは……」

 

 映治の言葉に一理あると思ったらしいアンクが少し顔を顰める。

 

「確かに君の言う通り俺達の戦力ではグリードやヤミーには対抗できないのかもしれない。だが、それ以外の所ではできる限り協力する!」

 

「…………」

 

 弦十郎の言葉にもアンクはいまだ最後の決め手に欠ける様子で迷った様子を見せる。そんなアンクの様子に映治は

 

「……わかった、これだけはできれば使いたくなかったが、もうなりふり構っていられない」

 

 神妙な様子で頷き

 

「アンク、弦十郎さん達と協力しよう。協力してくれるなら……」

 

 言いながらスッと右手の指を三本立てて

 

「毎日三食の食事の後に……アイス一本ずつ用意する!」

 

「てめぇそんなことで――」

 

「しかも、なんと……全部ハーゲンダッシュだッ!!」

 

「いや火野君、残念だがそれじゃあ……」

 

「おい映治ぃぃぃッ!!!」

 

 言いかけた弦十郎の言葉を遮ってアンクが勢いよく立ち上がり

 

「てめぇ…わかってんじゃねぇか!」

 

「なんだとォッ!?」

 

 ニヤリと笑ったアンクに弦十郎が驚愕に震える。

 

「確かにお前の言うとおりだ。俺たち二人でできることにも限界はある。あの鴻上の野郎は何かと秘密が多い上に何かって言うとセルメダル要求してきやがる。まああの野郎も日本政府直轄の特機部二には協力的だ。その辺りもお前ら特機部二に協力する利点かも知れねぇなぁ」

 

「な、ならば……?」

 

「せいぜい足引っ張んじゃねぇぞ?」

 

 ニヤリと笑うアンクに、弦十郎は顔を綻ばせ、映治は人知れずホッと安堵するのだった。

 




そんなわけでオーズチームと二課、ついに共同戦線発足です!
次回でシンフォギア無印編終了です!
お楽しみに!

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