ドラえもん のび太の境界防衛記   作:丸米

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今月号SQ読了

オッサムどうやって合流すんのこれ-----。


玉狛支部⑤

「――よ、メガネ君。元気?」

「あ、迅さん----」

玉狛支部を囲む川を、ぼぉっと眺めていたのび太に、そんな声が聞こえてきた。

ゴーグルを手に当て、いつものように笑っていた迅悠一が、その声の先にいた。

「ぼんち揚げをあげよう」

「あ、ありがとうございます」

迅はのび太にぼんち揚げの袋をそのまま手渡し、川べりに座るのび太の横に同じように座る。

「強かっただろう?うちの遊真は」

「------強かった」

今日、あと一つ、紙一重で勝利を逃した相手。

だけど、のび太は自分と彼を対等とみていなかった。

もし五本勝負でなく、十本勝負ならば。恐らくはのび太の動きのすべてが読み取られ、後半のほとんどの試合に負けていたであろうと思う。あの時、村上鋼相手に一本も取れなかった試合みたいに。

のび太は、言うなれば曲芸で戦っていくタイプの銃手だ。

逃げながらワイヤーを張り、隠れ、唯一の長所である射撃で相手を近づけさせずに倒す。この戦い方は嵌れば強いが、対応力のある強者相手では次第にしっかりと攻略されてしまう戦い方でもある。

遊真は、この試合―ーシールドとスコーピオンのみで戦っていた。

スパイダーをはじめ、グラスホッパーにカメレオンとふんだんに補助トリガーを使い相対していたのび太に、楯と矛の二つのみで完璧に対応していた。

あれこそが、本物の強者というのだろう。

 

「気にするなメガネ君。――君も、十分に強い」

「------」

「遊真はちょっと年季が違う。本当の命の取り合いを知っている奴だ。君に分が悪いのは正直、しょうがない」

「------でも」

「何でもかんでも、全てで勝とうとしなくていいんだ。メガネ君。メガネ君は小学五年生だろう?」

「うん」

「俺達も、メガネ君に全てを背負わせようなんて思っちゃいない。君がカギになることは確かだけど、君をちゃんと開けるべき扉の前に立たせるのは俺たちの役目だ。俺や、遊真や、もう一人のメガネ君の。――だから、焦らなくていいんだ」

「-------」

 

でも。

それでも。

 

「迅さん」

「ん?」

「迅さんが見る未来って、絶対ではないんだよね」

「------ああ」

「その中で、助けたくても助けられなかった人もいるんだよね?」

「------そうだね」

「迅さんは------迅さんを助けてくれる人って、いるの?」

未来を見る。

不確実な、未来を見る。

のび太の頭で理解したことは――迅とドラえもんは、言ってしまえば同じ立場だと言う事。

最悪の未来を回避する為に、過去を変える。やり方は違うけど、やっていることそのものは同じなんだ。

迅はいつも未来と現在を行ったり来たりしている。

未来を見て、未来から見た過去を振り返って、ダメならば再試行。

そんな事を繰り返しながらそれでも現実の時間は進んでいって、強制的に何かしらの判断を下すことを強制される。

 

「-----何でそんな事を?」

「僕、思うんだ。――もしあの時に戻れるなら、きっと戻るんだろうなって。ジャイアンもスネ夫もしずかちゃんも、周りの人たちも学校の先生も、みんなみんな大事な人やものを失わないようにするんだろうな、って。

------でも。同時に怖いとも思うんだ。僕が戻ったことで、もっと悪い結末になったりしないのかなって。その時失った以上のものが、僕が余計なことをしたことによって、失うんじゃないかって」

そして、気付いたんだ、とのび太は言う。

ずっと、ずっと、迅はこれを繰り返していると言う事に。

未来が見えて、そこから現在の行動を変えていく。その行動の先にある未来が何処に行きつくかはわからない。もしかすれば、未来を見てしまったからこそ失うものだってあるかもしれない。

 

そんな、繰り返し。

得たもの、失ったもの。

人は、一度きりの今を生きているから――失ったものや取りこぼしたものを嘆いたり、悲しんだりしながら――それでも糧にすることができる。自分の無力さを刻む罪業として。自分を奮い立たせる標として。

 

でも。

今を変えるだけの力を得た人が、変えた結果失ったものに対して――それを糧に進むことなんてできるのだろうか。

 

「--------」

迅は、力なく笑って、無言のままのび太を見た。

そして――その顔を見て、のび太は言った。

 

「迅さん」

「うん?」

「もし――。僕と、他の誰かを選ばなくちゃいけない時が来たら――僕を選ばなくて、いいから」

「--------」

「それが、遊真君との約束だから。――三雲修君を、僕は守る。その為に何かを犠牲にしなければいけないのなら、僕を犠牲にして」

彼等の顛末が、ボーダーの未来を変える。

それを変えるための材料が、のび太。

だとするならば。

誰かが犠牲にならなければならないのならば。

 

犠牲になるべきは――。

 

「参ったなぁ------」

迅はぽりぽりと頭を掻く。

「メガネ君」

「うん?」

「本当はさ。こんな事言うべきじゃないんだろうけど。――安心してくれ。俺は、絶対に誰も失わせない。メガネ君二人も、遊真も、千佳ちゃんも。絶対に」

「約束してくれる」

「おう。――実力派エリートとの、約束だ」

 

 

その後。

のび太は玉狛の隊員と改めて挨拶をした後、玉狛を後にする。

その後烏丸との訓練が予定されていた三雲修とも話をし、後日にまた時間を作って遊真も交えて三人で話をすることを約束し、のび太は再度ドラえもんと共に本部に戻った。

そして。

やってきた場所は――ブースであった。

 

「----本部に戻ってどうするのさ、のび太。今日は防衛任務はないだろう」

「大規模侵攻までに、少しでも実戦経験を積んでおこうと思って」

その言葉に、驚愕を覚える。もう、いきなりのび太の頭が粉砕爆破したかの如き驚きようであった。

「どんな心変わりがあったんだい、のび太?可哀そうに頭でも打ったかい?」

「うるさい」

「------何か、あったんだね」

「うん。――今度、話す」

それ以上、ドラえもんは何も言わなかった。

さすがに――何かを覚悟して、新しい事を始めようとするのび太を小馬鹿にするほどドラえもんもひねていない。

 

「だったら、君の足りない所を埋めてくれる相手と積極的に戦うべきだろうね」

「足りない所-----」

それは、幾らでも思いつく。

とっさの対応力や、近づかれた後の対応。もしくは機動力のある相手に対しての決定力------等々。

「のび太に足りないのは、攻撃よりも防御面だ。近づかれたらもう成す術がないから、近づかれないように方策を取る。これは別に間違いじゃない。でも、ある程度まで近づかれた後に、また自分の距離に持っていける方法も持ってなければいけない」

「----じゃあ、攻撃手の人と戦うべきかな?」

「だね。銃手同士の戦いは、マスタークラスでもなければ君でも十分に勝てるだろう。だったら、出来るだけ強い攻撃手――それも、機動力に富んだ人であればあるほどいい」

「うーん-----じゃあ」

誰かいるだろうか――そう周りを見渡し。

そして、見つけた。

弧月とハウンド拳銃のポイントが明記されている対戦パネルを見て、万能手の隊員であると判断。入る。今まで戦ったことのない相手である事を踏まえ、まずはここから勝負をかける事にした。

パネルから入室の許可を得ると、のび太は入る。

「お邪魔しまーす-------」

のび太は、恐る恐るといった感じで、入る。

「――こんにちわ!柿崎隊、巴虎太郎です!よろしくお願いします!」

利発そうな顔をした小柄な少年が、そこにいた。

彼は実に溌溂とした声音で、明らかに年下であろうのび太にもしっかりと礼儀を通し、一礼をする。

「の、野比のび太-----です。よろしくお願いします-----」

のび太はその様子に――何だか苦手だった優等生の顔を思い出し軽く心理的に一歩引きながら、弱弱しい声を上げる。

 

挨拶を終え、互いの得物を抜く。

弧月と、拳銃。

二丁拳銃。

それぞれ違うスタイルであることを互いに明示し――勝負は、始まる。

 

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