ドラえもん のび太の境界防衛記   作:丸米

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剛田武 
トリオン11
攻撃11
援護・防御7
射程3
機動4
技術5
指揮1
特殊戦術2
total 44




剛田武①

剛田武は実に解り易い武器をもってB級昇格を果たした。

彼は、ボーダー全体を見渡してもトップクラスに近いトリオン量を持っていた。

その上、筆記試験の出来はともかく(入隊に関して根付メディア対策室長が頭を抱える羽目になったレベルであったが、まあとにかく)、実技試験は悪くはなかった。

という訳で、彼も初期に分け与えられたポイントが3000と多かった。

彼は重機関銃型のアステロイド突撃銃を手に、歯向かうC級を粉砕していった。

 

もはやそれはトリオンの暴力とでもいおうか。正面から挑もうと防御は不可能。たとえ物陰に潜もうと物陰ごと粉砕する滅茶苦茶な威力の弾丸を撒き散らし、多くの隊員の心にトラウマを刻みB級に昇格した。

 

その後彼は、突撃銃型アステロイド、ハウンド。レイガスト及びスラスター。シールド、バッグワーム及びメテオラと思い切り攻撃に振った編成でトリガーを構成した。

彼が持つアステロイド・ハウンド突撃銃は威力と速度に大きく振られており、射程圏内に入ってしまえば最早防御不可能の暴風と化す。

 

「-----こんな編成にしてみたぜ!」

本部ブース内。ジャイアンは――自身のトリガーをある人に見せていた。

「思いきった編成だねぇ。ゾエさんもビックリだよ」

そんなボーダー随一の有望株である剛田武――愛称、ジャイアンは、C級の時から親交のあるB級隊員のガンナーと話し込んでいた。

「メインが、アステロイド銃、バッグワーム、シールド、メテオラ。そんで、サブが、ハウンド銃、レイガスト、スラスター、シールド----かぁ。トリオン貯蔵庫のジャイアン君らしい編成だね。攻撃だけを考えれば割とレパートリーがあるし」

「本当はバッグワーム外してゾエさんみたいなグレネードメテオラ入れてみたいんだけどな」

「やめときなさい。ゾエさんや君みたいな図体でかい系ヘビーガンナーの天敵はスナイパーだから。すぐに補足されて撃たれて終わっちゃうよ。せめて仲間と合流するまでは身を隠しておかなきゃね。だからバッグワームは必須レベルだと思っておいた方がいいよ。マジで」

「うっす」

「でもこれはこれで。近距離での面制圧に特化したガンナーって割と新鮮だし、ここまで威力に振ってたら被弾が怖くて容易に近づかれないだろうし。------でも、せめてハウンドくらい射程伸ばしてもいいんじゃない?」

「どうせ戦うなら、あれじゃないすか。敵がぶっ飛んでいるところしっかり見たいじゃないですか。だからこれでいいんです」

「わぁお。カゲもビックリな好戦的なセリフだ」

ゾエさん――本名北添尋は変わらぬほんわかとした表情のまま、ジャイアンと会話をしていた。

 

ジャイアンは、一度彼の姿を見たことがある。

車椅子で外を出歩いていた時だっただろうか。河原の土手の上で――いつものほんわかとした彼の表情に似ても似つかない表情で、細身で如何にもガラの悪そうな青年と殴り合っている姿であった。

その姿は、クマのような体系と出で立ちも相まって凄まじい迫力が伴う姿だった。

あの時彼は遠巻きながら「すげぇ!」と思わず声を出したものだった。それ程までに、彼とその相手との殴り合いは容赦のない、真剣な殴り合いだったから。

その後、彼はボーダー入隊後に再度彼と再会することになる。

多分怖い人なんだろうなー、と想定していた彼の目の前。覚悟をもって思い切って声をかけてみたら――怖い人かと思っていたその人は、実のところ非常に親切なほんわかプーさんだった。

その後重ね重ね親切な彼は、同じく機関銃型の銃トリガーを使っていたジャイアンにガンナーとしての立ち回りや撃ち方を懇切丁寧に仕込み始めた。彼は確かにプーさんであるが、ボーダーでも有数の銃の腕を持つプーさんであった。

その教え方も優しいの一言。調子に乗りやすいジャイアンを、戒めるのではなく上手く乗せてあげて、モチベーションを下げさせることなく基礎訓練をしっかりと叩き込んでいた。理解力がいいとはいえない小学生のジャイアン相手でもしっかりと目線を合わせてかみ砕き実践させ教え込む姿は、何だか父親のようでもあった。

その結果として、彼はB級にかなり早い段階で昇格する事となった。

彼はジャイアンのB級昇格に大いに喜び、その後に友達の両親が経営しているお好み焼き屋に連れて行かれ、奢ってもらった。

そこには――以前ゾエさんと殴りあっていた“友達”がいて、大いに驚いてしまった訳なのだが。

 

よって。

北添尋はいつの間にやら、ジャイアンの師匠となっていたのであった。まる。

 

「けど今年は本当にすごいね。小学生隊員が二人も誕生するなんて。それも、飛びっきりの有望株が。ゾエさん思わず感動しちゃった」

「ええ?俺はともかく、あいつも有望株なんですか?」

「野比君?あの子は本当に凄いよー。もうあり得ないくらい射撃が早くて正確で。ボーダーのトップランカー相手でも一歩も引かずに戦えているしね。――あ、ほら。丁度あそこで戦っているっぽいね」

彼はその太い腕で、ブースを指差す。

「どれどれ------うわぁ。相手は木虎ちゃんかぁ。きつそうな相手------ってええ!」

ゾエさんは戦績を調べた瞬間に、大きな声を上げていた。

「うわ。マジかー。-------木虎ちゃんとあと一戦勝てば五分かー」

ジャイアンの目にも、その姿が移る。

まるで忍者のように空間を飛び跳ねる女隊員に――その動きに遅れることなく、凄まじいスピードで銃弾を撃ち放っているのび太の姿。

 

ごくり、と生唾を飲む。

――あの臆病者ののび太が。一歩も引かずにしっかりと相手と向き合い戦っているその姿に。

 

――やっぱり、そうだ。

今、ここにある現実は――あんな臆病者でも覚悟を決めなければならない程のものなんだと。

 

いつの間にか――ジャイアンはその戦いを食い入るように見つめていた。

 

 

最後。

これが、最後。

 

トリオン体だというのに、何故だか目が血走っているような気がする。

それでも、最後の最後に――頭も冴えてきている感じもする。

 

解る。

木虎の動きが。

最初は読めなかった彼女の動きが。

 

多分、そこだろう。

そう思いバイパーを路地の一点へ走らせる。

その弾丸が、木虎の左手を貫く。

 

――段々、解ってきた。

機動力があって、こちらに近づいてくる攻撃手への対応が。

 

基本線は逃げ、自分の有利な射程で戦う。そこを守りながら――自身の強みである射撃の正確さをフルに利用し、その上で「読み」を行わなければならないのだ。

バイパーでシールドを広げさせ、アステロイドで貫く――という従来の戦いに加えて。

相手が動いてくる箇所をあらかじめ封じ込め、そこに弾丸を「置く」という戦い方。

機動力がある故に、相手は直線ではなく多角的に攻めてくる。ならば、多角部分に弾丸を走らせ直線に誘導する戦い方をする必要がある。

狙うべきは手足。攻撃手段と機動力を削ぎ落していき、追い込んでいく。

 

――射程ではこちらが勝っている。その上で、距離が開いている間は手数もこちらが圧倒できる。だったら、機動部分を弾丸で埋めていく。

 

上から。

横から。

足元から。

 

バイパーを走らせる。

相手を視認出ずとも、やれることはある。

相手の行く道を塞いでいくんだ。

 

バイパーで逃げ道も通り道も塞いでいく。その上で相手を一か所に押しとどめておき、追跡していく。

一つ学習したことがある。

弾丸を一度「置いた」場所を辿っていけば、基本的に相敵することはないのだ。

道を塞ぐために弾丸を放った場所。そこは攻撃手の脳裏に危険地帯として記憶される。だから、相手の動きを読んでいけば、自身の安全圏も次第に増えていく。

 

撃つ。

撃ちまくる。

大丈夫。自分が放つ弾丸のトリオン消費より、削られることによる相手の消費の方が多いはずだ。焦る事はない。

 

――どういうシチュエーションの戦いであろうと、基本的に「型」に嵌め込める戦いを相手に押し付けられる方が勝つんだ。

木虎は、その意味でいえばとても多様な「型」があった。

相手よりも自分が勝る点で構成された即興の「型」を構成できる器用さが。

 

ならば。そんな器用さを持たないのび太ならば。

彼は、こういう「型」を作る。

 

射撃の速さ、正確さをもって自分の有利な射程距離、状況を固定させる。

相手の行動を読み、読んだ個所に彼の特性を生かし弾丸を「置いていく」事によって、型に嵌め込んでいく。

 

 

 

「------負け、ね」

そして。

最後の十戦目。

そこで―ー木虎ははじめて一撃ものび太にダメージを与えることなくベイルアウトした。

行く道来る道全てをバイパーとアステロイドを置かれ、削られ、接敵できぬままに――トリオンが、なくなってしまった。

 

「それも、読みで負けた。------この一戦に関しては完敗よ。野比君。認めてあげるわ」

そう言うと――ブース控室で、悔し気に表情を歪め――それでも、少しだけ笑っていた。

 




もうそろそろ大規模侵攻編の復習をしようと思います。
-------あれ、読み返すたびにサラッと出てきた隊員のヤバさがわかるからすごく面白いんですよねー
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