B級上位陣による熱いカナダ人いじめにチカオラ大爆発と見どころの多い回でした。帯島ちゃんちょこまかしてて可愛いかった。
「------迅」
のび太が木虎と戦っている、その時。
ドラえもんは――開発室内で、迅悠一と会っていた。
「例の装置は、もう被侵攻予定地への接続は済んだのかい?」
「バッチリ。------これで、攫われるC級隊員の数も随分と減らせるはずだ」
「------まだ、雨取千佳ちゃんが攫われる未来は見える?」
「ある。-----というか、
「------」
未来が見える。
でも、手にした力は有限かつ限定的。
全てを十全に対処することは不可能。
その手につかめるだけの”最良の”未来を拾い上げて、掬えなかったそれらは――捨てていく。
救えた未来と同じだけ――この男は救えなかった未来も、また見ているのだ。
この作戦。
何もかも救うという事は出来ない。
ある程度相手に「成果」を与えなければならない。今回相手は「トリオンを持つ人間及び雨取千佳の回収」を目的にしている為、下手に市民に手を出すことはしない。だが――成果を完全に出すことが出来なければ。つまりは、C級隊員という餌すらも与えられなければ。――餌場を、一般市民に変更する可能性もある。
今回、相手はかなりのトリオン兵と、――黒トリガー持ちの精鋭が侵攻してくる。市民へそれらが向かってしまえば、以前の大規模侵攻など比較にならない被害が出るだろう。
「ハイレイン。ヴィザ。ミラ。ランバネイン。エネドラ。ヒュース----だったかな。今回の相手侵攻メンバー。それぞれに一応対策は取っているけど、やっぱりきついね。このメンバーに加えて大量のトリオン兵も捌かなければいけない」
「一番障害になるであろう――ハイレイン、ヴィザ、ミラ、三人の対策はどうにかできてきたけど。でも、上手く嵌まるとは限らない。全部がうまく行く事は、まあまずないと考えていいだろうね」
「そう。――それで、ドラえもん」
「うん?」
「------いいのかい?」
「いい。――僕は、君たちに未来の技術とこれから先の情報を与えた時点で役割は果たした。後はどんな形でも、未来を救うために行動するだけだ」
「------」
「大規模侵攻。――未来を構成する皆には、必ず生き残ってもらわなければいけない。君もだ、迅。その為なら――もう役割を終えた僕が、まず真っ先に踏み台にならなければならない」
「ドラえもん------」
迅が言葉を詰まらせる中――ドラえもんはもうこの話は終わりだとでもいうかのように、話題を切り替える。
「――ところで。例の件について、太刀川慶は了承してくれた?」
「三日前に伝えたら即決即断で了承してくれたよ。――今、太刀川さんと技術班が協力して、調整を行っている」
「よかった。------忍田本部長は大反対してたみたいだけど」
「それはしょうがない。自分か他の誰かどちらか危険な役割を果たせってなったら、あの人は間違いなく自分でやる側の人だ。それも、それが愛弟子だっていうなら無論ね」
「-----忍田さんは、ギリギリまで指揮を執ってもらわなければいけないしね。それも解っているから、太刀川さんは自分でやるって言ったんだ」
「-----ベイルアウト機能は、どうしても付けられなかったんだね」
「鬼怒田さんも班の皆も頑張ってたんだけどね。新型の機能があまりにもトリガー容量を食いすぎて、ベイルアウトをつける余裕がないって。精々旋空入れるのが精いっぱいだってさ。ちなみに、鬼怒田さんも大反対してた。ベイルアウト機能のないトリガーで、人型近界民と戦うなんて、って」
「だろうね。――でも、多分そこまでしないとあの爺さんは止められない」
「ヴィザ、だっけ。――話を聞く限りでも、とんでもない御仁みたいだね」
「とんでもないなんてものじゃない。最悪、あの爺さん一人でボーダーを壊滅出来てもおかしくないレベルだ。だからこそ、真っ先に倒さなくちゃいけない」
「――その為の、太刀川さんか」
「うん。――ベースとなっている秘密道具そのものは、どんな素人でも扱えるけど。トリガーという形にしてしまうと、どうしても絶対的な剣の技術を持っている人じゃないと扱えないから」
元々、その秘密道具は使用者が戦いに勝つために、「最適な行動」をコンピューターが取らせ続けるためのものであった。
だが、今持っている技術では、そこまで高度な分析・行動パターンAIを組み込めるコンピューター技術がない。
その為――その技術を転用し作った新型トリガーは、トリオン体が持つ各種神経伝達を発達させ、高度化させるだけのものとなった。
故に、使用者を選ばなければならない。発達した神経を使いこなす技術を持ち合わせているものでなければ、到底使える代物ではない。
「名刀、電光丸ね。――太刀川さんはだったら名刀、旋光弧月でどうだ、とか言っていたね」
「流石。のび太にダンガーなんて言葉を教えた人のネーミングセンスは違う」
呆れたようにため息をつき、ドラえもんは言葉を続ける。
「この秘密道具を転用した新型トリガーで------相手の最大戦力を、ヴィザを止める」
※
ボーダーのブース内はちょっとした騒ぎになっていた。
――野比のび太という最年少正隊員が巴虎太郎、黒江双葉に勝ち越し、木虎藍と引き分けたという事実に。
特に木虎との最終戦。のび太は木虎の動きをほぼほぼ完璧に読み切った上で封じ込めて見せた。その戦いは個人戦慣れした隊員であっても中々見られないほどに神がかっていた事もあり、噂が一瞬にして蔓延したのであった。
「の――び――太――!!」
そんな事などつゆとも知らず、ブースから疲れた顔で出てきたのび太を迎えたのは――。
「え?ジャイアン?」
そうのび太が声を発した瞬間には――ジャイアンの巨躯がのび太のトリオン体にぶつかり、倒れ伏そうとしたその身体が今度は背中に回された太腕によって引き戻される。
「ぐええええええ」
体当たりの後、後ろへ行く身体を一気に引き戻す。完璧なまでのベアハッグを極めた――ジャイアンは、涙を流しながらのび太を抱きしめていた。
「お前!強くなってんじゃねえか!さっきの動きなんだよあれ!」
「ギブ。ジャイアンひとまずギブ」
「この野郎!俺もすぐに追いついてやるからなこの野郎!」
トリオン体ゆえに痛みはないが、圧倒的な圧迫感が実に苦しい。のび太は何とか引きはがそうと思ったが、どうにもならない。
「というか、ジャイアン。足-----」
「ん?――おうトリオン体だからな。本当に便利だなこれ」
トリオン兵の襲撃によって足が潰されていたジャイアンは、されど元気に両足で立っている。
「ボーダーに感謝だぜ全く。――これで俺の左足を壊しやがった連中をぶっ潰せる。一匹残らずぶっ壊してやるぜ、あんな奴等」
ひっひっひ、と実に邪悪な笑みを浮かべながら、ジャイアンはのび太から離れる。
「取り敢えず――出遅れたが、ガキ大将の到着だ。こっから巻き返してやるからな。あんまり調子に乗ってんじゃねぇぞ、のび太!」
「あ、うん-----」
「待ってろよ!」
そう笑顔で言うと、彼はずんずんと立ち去って行った。
何なんだと一つ溜息をつくと――眼前には、
「------あ」
「-------」
変わらぬ表情でこちらを見据える、木虎の姿があった。
「野比君」
「は、はい」
「------成長したわね」
「へ?」
思わず――ダメ出しでも食らうのかと思ったのび太は、そんな声を出してしまう。
「-----これからも、頑張りなさい。貴方には才能があるから」
沿う一言だけ残すと、それじゃあこれから広報の仕事があるから、と木虎は一つ手を挙げて立ち去って行った。
なんだなんだと周りを見渡すと、何だかいつもとブース内の雰囲気が変わっていることをのび太は察知した。
何があったんだ――そう戸惑うのび太の下に、人が荒波のように寄ってきた。
「お前すげーな!木虎に引き分ける新人とか、初めて見たぜ!」
「おっし!このままの勢いで俺ともランク戦やろうぜ!この前逃げた分取り返させてくれよ」
「野比ィ!前より格段に動きがよくなってんじゃねぇか!」
「------勝ち逃げは許さないから」
わちゃわちゃ。
わちゃわちゃ。
のび太はいつの間にか出来がった状況に混乱しつつ、周囲を見渡す。
-----何が。何が起こっているのか。
鈍いのび太には、解らない。
その後――彼は状況に流されるまま、名だたる隊員と連戦に次ぐ連戦を強いられることとなった。
最終的に、勝手に頭の中で「ダンガーさん」と名付けていた髭もじゃロングコートお兄さんにフルボッコにされるまで、三時間ばかりの死闘を繰り広げる羽目になった。
トリオン体といえども、ずっと集中し続けていたのび太の頭は、最後にはもうフラフラとなり、帰宅した時には電池が切れたように倒れ伏した。
で。
いつの間にか――連戦に次ぐ連戦の果て、彼のアステロイドのポイントは8000を超えていた。
野比のび太。
マスターランク、到達。
して
その後。
彼は――ドラえもんの姿を本部で見ることはなかった。
大規模侵攻編、書くのが楽しみだったり怖かったり。1対1ですらぐわぁぁってなっているのに、集団戦なんてどない書いたら-------。