はじめて整形フォームを使ってみました。
外岡を狩り、残すところ二名。
弓場と、のび太。
――考えうる俺の負け筋は、弓場の間合いに入っての急襲。新入りと弓場が連携しての全方位攻撃。この二つだろう。
二宮にとって弓場は、力勝負の土俵に立てる相手だ。
弓場が最大限活きる間合いで勝負を仕掛けられれば、二宮とて負けてしまう。
最大火力を最速で叩きこむ。
高威力のアステロイドを早撃ちによって叩き込むあの技巧は、二宮とて準備がなければ防ぐことはできない。
その上で、――新入りの野比のび太。
辻・犬飼が倒されたのは、二つこちらが認識していない要素があったからだ。
一つ。のび太の遠方からの射撃能力。
二つ。弓場とのび太の連携の練度。
のび太の射程が辻・犬飼を大きく超える能力だったため、二人は弓場が待つ施設の中に入らざるを得なかった。その為、帯島と弓場の待ち伏せによって辻が落とされることとなった。残る犬飼も、弓場とのび太の変則的な連携によって倒された。
今までの情報を鑑みるに、のび太の援護を受けた弓場が相手との距離を詰め、仕留めるという形が基本だろう。
二宮は火力では二人に勝てる。しかし二人揃っての攻撃の手数においては負けている。
射程は弓場には勝つ。のび太とは互角。
恐らくは二宮とのび太が撃ち合っている間に、弓場が二宮に接近。そこからのび太のバイパー支援と弓場の高火力アステロイドの連撃によって、仕留める。
「成程」
要は。
弓場を近づけなければいい。のび太の支援が受けられぬように分断していけばいい。
二宮は無言のまま、ポッケに手を入れ歩いていく。
残る標的を仕留めんと。
※
二宮に、一発の弾丸が向かう。
それは、およそ七十メートル先にある高層建築物の中層から放たれたアステロイドの弾丸だった。
街路を歩く二宮はそれを当然の如く防ぎ、返す刃でトリオンキューブを作成し、その半分ほどでハウンドを放つ。
建造物が爆散する中、二宮は更に残るキューブの方向を変え自らの左手側に放つ。
街路の先。路地の間に身を潜めていた弓場は、付近の建物に逃げ込み二宮のハウンドから逃れる。
潜んだ建物でバイパーにトリガーを切り替え、二宮へ放つ。
曲線による弾道を視認した二宮は、シールドを広範囲に拡げそれを弾き――反対側へ移動していたのび太のアステロイドを瞬時にシールドを展開する事によって防ぐ。
弓場はそれを見つつ、バイパーからアステロイドに切り替える。二宮のシールドが背後に位置する事を確認し、拳銃を撃ちながら二宮との距離を詰める。
二宮は弓場との距離が縮まる事を嫌い、ハウンドから切り替えたアステロイドを細かく分割し、三回に分けて放射を行う。
一射目で弓場の足を止めさせ、二射目で弓場の足元へ。それを防がんと足元にシールドを広げた弓場に三射目はシールドの隙を縫うように。
一射目で生成した弾の三分の二程を使用し、弓場の足を止め、二射目で足元へシールドを集めさせ、残る弾で弓場を削る。
足を止めた弓場を確認しつつ、二宮はまた更にアステロイド弾を生成する。
それと同時。
のび太はグラスホッパーによる高速移動で、二宮の側面を横切り、移動しながらアステロイドを放つ。
シールドで弾く。
と同時。その奇襲と合わせアステロイドを放とうとする弓場に向けアステロイドを少し放射し牽制を入れつつ、グラスホッパーの使用後着地したのび太に向け残る弾を断続的に放っていく。
のび太はすぐさま近くの裏路地へ逃げ込み難を逃れるものの、その動きすら見透かされていたのか。逃げ込むまでは小型のキューブを放出し、路地に隠れた瞬間に大きく分割し、遮蔽物ごと圧し潰すようにアステロイドを放つ。
「------ふん」
圧し潰された遮蔽物の更に裏。路地のフェンスに飛び込み死を逃れたのび太は完全に視線を切った二宮の場所をレーダーで確認。その後バイパーに切り替え、――視界に映らぬ二宮に向け、弾丸を放っていた。
流石に、レーダー頼りの瞬時の射撃では一点に集弾する事は叶わずそれは二宮の周辺に面攻撃となって降り注ぐ。二宮はシールドの展開が間に合わなかったのか、弾丸の一部を身体に受け、トリオンの煙が肩口より舞い上がる。
――これで。
いける、と弓場は判断した。
上空からのバイパーでダメージを受けたその瞬間。弓場は瞬時に二宮との距離を詰め――アステロイド拳銃を、向ける。
が。
「――あ、がぁ---」
拳銃を向けたその瞬間――放たれたアステロイドが、弓場の胸を穿った。
――クソッタレ。シールドが間に合わなかったんじゃねぇ。二宮サンは、あの時点でシールドは解除してアステロイドに切り替えていやがったんだ。
のび太の――レーダー頼りのバイパー攻撃を冷静に予測したうえで、更にその威力と正確性まで読み切った上での選択。
シールドを解除し、アステロイドをセット。バイパーと連動して動き出す弓場の動きに合わせアステロイドを生成。そのまま弓場を撃ち抜いた。
「-------」
無言のまま、二宮は両手にハウンドを展開する。
そのままそれを上空に放ち――。
――弓場、緊急脱出。
――野比、緊急脱出。
こうして。
弓場隊とのび太の合同訓練は――二宮隊に敗北、という形で終了を迎えた。
※
「どうだった、野比ィ」
「どうだった、って-----?」
「この二日間だよ。今日の敗けも含めてなァ」
弓場は隊室内のソファで少し目を瞑り、ぐっ、と悔しさを飲み込んだ後――のび太に、尋ねた。
そうだ。
今日で――弓場隊との合同訓練は終わるんだ。
「ちったぁ成長できたか?」
「それは------勿論です」
弓場からこの二日間で教わったことは、数え切れない。
最初はとにかく怖かった弓場という男は、――今のび太には確かな感謝の対象として変化していた。
連携の基礎を叩きこんでくれた。その上で、のび太の意見をしっかりと聞き、応えてくれた。
厳しくも、目線も、立ち位置も、対等だった。対等の人間としてのび太を認めてくれた。
だから――のび太も手を抜けなかった。
手を抜いてしまったら、対等の目線を維持してくれている弓場の立ち位置まで、下げてしまうような気がして。
だから成長できた。
そう、素直にのび太は思った。
「――野比ィ。連携ってのはな、仲間のことを理解する事だ」
「------仲間を、理解する」
「おぅ。お前は俺がどういう動きをするか。俺はお前がどういう動きをするか。それを理解してからが連携のスタートだ。それから、お前が基本的にどういう思考で戦っているのか。こういう状況になったら、お前はどう動くのか。――それが解ってくればな、おのずと取るべき行動が解ってくるのさ」
「------」
「お前は俺を理解しようとしていた。だから俺も腹ァ割ってお前に全部言うべきことは言ったつもりだ。俺を理解したことで、お前も理解できたことがあるだろう。それが、成長ってやつだ。――二宮隊もな。個人プレーだけで勝っているわけじゃねェ。全員が全員、ちゃんと互いがどう動くか解っているから強いんだ。まあ、つまりさ」
弓場はソファから立ち上がり、のび太に近づく。
「これから強くなりたきゃ――自分の仲間のことを、全力で理解する努力をまず始めてみろ。それが、今回の訓練で俺がお前に伝えたかったことの全てだぜ、野比ィ」
弓場がすっと差し出した手を、全力でのび太は握り返した。
「これで俺達との合同訓練は終わりだ、野比ィ。お疲れさん」
※
その後というか。
あの事の顛末。
「――堤の兄貴、こんな感じですか!?」
「そうだジャイアン君!俺が向かう先にまず掃射を行って、道を切り開くんだ!その後、諏訪さんと俺で組んでの一斉掃射をするから!」
「おうよ!――堤の兄貴、絶対に次の対戦相手ぶっ潰してやりましょうや!うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「なあ日佐人-----」
「何ですか諏訪さん------」
「あの新入り、何であんなに堤と仲いいの-----?いや別に悪いことじゃねーけど」
「-----一緒に地獄に落ちたら、仲良くなれるんじゃないですか?」
「------」
「------」
「すげぇ!すげぇぜ堤の兄貴!息ぴったりだ!がはははははは!」
「ああ。この調子で頑張っていくぞ、ジャイアン君!」
同類、相憐れみし。
友情の土壌は、熱だけでなく地獄の果てにある艱難辛苦の中にもあるものなのだと。
そう学んだ、二人がそこにいた。
ドラフトは森君取れてすっきり。
けど奥川君欲しかったなぁ-----。