ドラえもん のび太の境界防衛記   作:丸米

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ごめんなさい。
前話のあとがき通りおじいちゃん書きたかったんです。
------思った以上に、その、あのぅ-----何というか。文字数がかさんじゃって。
すみません。


大規模侵攻②

恐らくは、この襲撃を玄界は「読んで」いたのではないか。

ハイレインはそう推測を立てる。

 

今まで玄界側に一度たりとも派遣していない新型トリオン兵ラービットの対策が立てられていた、というのも有力な証拠であるのだが。

金の雛鳥の配置。

そして、整然と配置された玄界の兵士たち。

断続的に行われたラービットの襲撃によって「駒を増やす」のではなく、「駒を配置する」動きで対処したこと。

それぞれの兵士がラービットの特性を理解し、効率的に排除している様子も見えた。

 

――最悪の場面を、想定しておかねば。

ここにおける最悪の場面とは黒トリガーの情報までも玄界側に知られている状況だ。

 

玄界側にどれだけの上方が出揃っているのか。

その試金石を、放つ。

 

「ミラ」

「はい」

「エネドラを――そうだな。この地域に送ってもらおう」

ハイレインは――基地周辺の一区画を示す。

 

「基地が近い事もあり、兵同士が区画同士で連携がしやすい場所だ。兵が密集しやすい。奴ならばさぞ喜ぶだろう」

「――了解しました」

 

 

「――黒トリガーが出たぞおめーら!気合入れろ!」

影浦隊オペレーター、仁礼光の活発な声が響くと同時――。

“窓”が開かれた。

 

「――よぉ、玄界の猿共。遊ぼうぜぇ」

 

空間上に刻まれた黒色の穴から、這い出てきたのは――黒い蜃気楼とでも言うべきトリオン物質に身を包んだ、角を生やした男であった。

黒く変色した片目を、ぐぃ、と吊り上げ笑みを浮かべる。

兵士、というよりも、快楽殺人者といった風情の様相の男は黒いトリオン物質を、周囲に巻き上げる。

 

「------おーおー。随分と不愉快なもんをぶつけてくるじゃねぇか」

そんな男の前に。

影浦雅人は、一歩踏み出す。

 

「よぅ黒目野郎。相手してやるよ」

恐れもなく。

影浦もまた――楽し気な笑みを浮かべ、エネドラの懐へ入っていった。

 

 

「北添と剛田は左右に散会し影浦を援護。緑川は黒トリガーの背後を取りつつ、影浦と連携を取れ。俺と出水のハウンドでポイントまでの誘導路を作る。波状攻撃で影浦を援護しつつ、奴を指定ポイントまで追い込め」

「了解!」

二宮の指示に、北添、緑川、出水の返事を聞きながら、ジャイアンは尋ねる。

「ゾエさん!あんな所で弾幕張っちまったら、カゲさんが巻き込まれるじゃねぇか!」

「大丈夫!カゲはこういう乱戦は大得意だから!」

どういうこった――そう思いながらも、ジャイアンは北添の対角線上に位置取り、挟撃の準備を行う。

 

トリオンが収束し、ブレードを形作る。

作られたそれらが、弾き出されるように影浦へと向かう。

身に纏う黒色のトリオンは、攻防一体の性質を持つ物質。液化させ自らの肉体ごと流動性を持たせ、それらを固体化させることも、気体化させることもできる。

その質量は通常のトリガーの比ではない。揺らめく蜃気楼から吐き出される硬質化されたブレードの山は、必殺の面攻撃として影浦に襲来する。

 

されど。

影浦は至極当然とばかりに、それを避ける。

 

「どうしたぁ?その程度かぁ黒トリガー」

ニヤニヤと笑みを浮かべながら、影浦は右手からマンティスを出す。

左右それぞれのスコーピオンを数珠繋ぎしたそれは、蜃気楼の間隙を縫うようにエネドラの体内に突き刺さっていく。

「ち。ダミーか」

影浦はそう毒づく。

――エネドラは全身を黒トリガーの液状化トリオンでトリオン体を構成しており、攻撃のほとんどを無効化される。

その中に存在するトリオン伝達脳及び供給機関という明確な弱点をカバーする為に、彼は体内の至る所にそれらのダミーを形作り、液状トリオンの流動によって本物ごと動かしているのだ。

今影浦はそのダミーを断った。

本物の反応は、まだ見えていない。

「――カゲ!足元気をつけろ!」

オペレーターの仁礼の声に、影浦はバックステップでその場を離れる。

瞬間、その場にブレードが生え出る。

液状化したトリオン物質を地面に潜らせ、硬質化させて串刺しにするつもりだったのだろう。

 

「手の内はバレてんだぜ。どうした?もっと別の手を見せてみろ」

影浦は、楽し気に挑発していく。

「------ピョンピョン飛び跳ねるだけが脳の猿が----!」

「ならこっちも別の攻め口を見せてやるよ」

そういった瞬間、影浦はぐっ、と足先に力を入れ――エネドラに飛び掛かるかと思いきや、サイドに飛び去る。

「あん?」

そうエネドラが口に出した瞬間。

ジャイアンと北添の集中砲火がエネドラに突き刺さる。

機関銃特有の、ど、ど、ど、という振動のような音と共に弾幕が張られていく。

 

「――は。無駄だぜこのデブ共!」

エネドラがその方向へブレードを出した瞬間、

 

「緑川。やれ」

二宮の指示が飛ぶ。

「りょーかい」

 

背後より――緑川より急襲される。

グラスホッパーをエネドラの円周上にグラスホッパーを多数設置し、高速で跳ね回る。

跳ね回る動きの中で、エネドラの肉体にスコーピオンを潜らせる。

「うーん。四つかぁ。全部ダミーだった」

グラスホッパーからグラスホッパーへ高速移動しつつ跳ね回る技法――“乱反射”を使用し、攻撃を完了した緑川は、影浦と合流しつつエネドラに向き合う。

 

「------鬱陶しい!」

エネドラは――内心手応えがなく気に入らない攻撃方法へ変える。

トリオンを気体に変え、ガスとして分散させる。

 

「出水。トリオンが気体化している。――メテオラだ」

「了解っす。二宮さん」

 

すると。

出水と二宮はトリガーを切り替え、互いにメテオラをセット。エネドラの前にそれを落とし――爆風を発生させる。

爆風に撒かれ、気体化した泥の王のトリオンは背後に吹き飛んでいく。

 

「バーカ」

「ほい隙あり」

パキン。パキン。

 

その隙に間を詰めた影浦のマンティスと緑川のスコーピオンにより、また一つずつダミーが潰される。

「------」

エネドラは、怒りに身体を震わせる。

手の内はばれており。

攻撃はどれも対策がなされ。

――これをコケにされていると言わず何という。

「この------クソ小癪な猿共がァァァァァァァァ!」

ブオン、と音を立てて黒いトリオンを身に纏い。

影浦と緑川に向け、動き出す。

「報告にあった通りだね。本当に頭が悪いや」

「------挑発すれば乗って来るなんて冗談かと思っていたがなぁ。刺さる感情の強さが明らかに変わっていた。こんなバカもいるもんだな」

緑川と影浦は、せせら笑い――怒るエネドラの向き合いながら、引いていく。

「俺と出水で援護する。ポイントまで奴を誘い出せ。剛田は中衛だ。弾幕を張りながら、あの黒トリガーの余波が来たならレイガストで防げ。北添はグレネードにトリガーを変更し、黒トリガーが気体化したタイミングで撃て」

「あったぼうよ!」

ジャイアンはしっかり返答をしながら、指示通り出水と二宮の前に立ち、レイガストを構え、機関銃を構える。

 

影浦が。

緑川が。

ハウンドが。

アステロイドが。

メテオラが。

 

エネドラが持つ黒トリガーの特性を潰していく。

様々な特殊機能を持ち、初見での対策が難しいという特性を持つ泥の王が――完全にその性能が潰されていく。

 

影浦も――ずっと前衛に立っているからか、やはり無傷とはいかないものの、それでも致命傷は受けていない。死角からの攻撃も――彼が持つ特殊機能によって全て察知し、一足早い回避行動がとれる。

影浦が前衛に立っている間に弾幕を張り、ハウンドによって側面を潰す。気体化すればメテオラを使用し爆風で吹き飛ばす。

 

影浦が持つ特殊機能――感情受信体質という副作用を利用した戦術だ。

彼は自身に向けられた感情を感じ取れる。

エネドラの殺意も。背後から援護をされる際に北添から発せられる合図代わりの視線に込められた感情も。その全てを感じ取れる。

だからこそ。いくらでも乱戦状態を作れる。気体化した瞬間に迷うことなくメテオラを叩き込める。その瞬間にその場を離れる事が出来る能力を、影浦が持っているから。

 

「――ポイント、とうちゃーく!」

こうして。

影浦と射手二人組の誘導によって――オペレーターが指示したポイントまで到着する。

 

そこは。丈の高い壁に高層建築物が周囲に存在する地域。

コンクリの山に阻まれ、エネドラは笑う。

 

「は。こんな障害物塗れのところに追い込んでどうするつもりだ猿共」

障害物が増えれば、それだけ死角が増える。泥の王を持つエネドラにとっては非常にやり易い条件だ。

 

「緑川」

「わかってますよ二宮さん。――“スケーリングライト”!」

ここで。

緑川は――新型のトリガーを使用した。

 

「あん?」

それは、光だった。

エネドラごと照らしたその光は――されどエネドラを除いた全てを、()()()()()()()()

 

壁が巨大化し、厚みが増していき――エネドラの身体を押し込んでいく。

 

「――冬島さん!“ユビキタス”で本部に待機している射手か銃手をこっちに持ってきて!二人くらい!」

出水の声に、はいよ、という声が響く。

 

すると。

ガトリングを構えた木崎レイジに、加古望がその場に出現する。

 

「あら。便利ねこのトリガー。――じゃあ、ちゃちゃっとやっちゃいますか」

「ああ」

壁に挟まれたエネドラは、身体を液状化させその場から離れようとする。

が。

それよりも速く。

 

その標的に向け。

ジャイアン、北添、二宮、出水、木崎、加古の一斉放射が――エネドラに襲い掛かる。

「あがああああああああああああああこの猿がああああああああああああ!」

穿たれていく穴。砕かれていくダミーの山。

それらを実感しながら、エネドラは叫ぶ。

 

「氷見さん。供給体の場所の解析お願い」

ばきばきと大量のダミーが砕かれていく音を聞きながら、出水がそう言う。

 

砕かれていくダミーの反応を探る。

その中に含まれている本物を探さんと。

 

「――ここよ」

オペレーターは、唯一硬質化された反応を発見する。

本物の供給体を硬質化させ、ダミーから隠したうえで、更に守っていたのだろう。

 

「くたばれ」

 

その反応を見ながら――影浦が背後からマンティスを突き刺す。

「あ------が-------」

 

その瞬間、トリオン供給体が砕かれる音が――エネドラの体内に、脳裏に直接響いた。




次こそ。おじいちゃん超ハッスル編になるはず。
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