ドラえもん のび太の境界防衛記   作:丸米

52 / 58
那須隊①

「――転送位置は、皆可もなく不可もなく、といった感じだな」

「はい。僕はマップの中央地点にいるので、このままスパイダーを張っていきます」

「了解。――オサム。俺とのびたは割と距離が近いがどうする?」

「空閑はそのまま辺りを索敵しつつ、敵を釣りだしてくれ。野比君がスパイダーを張る手伝いをするんだ!」

「わかった。――とはいえ、ここじゃ中々索敵は難しいな」

 

玉狛第二はマップ中央にのび太、そこから北上した地点に遊真、東の外れに修が転送する形となった。

マップは工場地区。気候も時刻も設定は特に変えられていない。

のび太はバッグワームを起動しながら周囲に動きながら、スパイダーを張っていく。

マップは工場プラントへと続く幾つもの通路と、それらの通路と連結する大きく開いた場所の二つで構成されている。

 

本来玉狛第二には千佳という狙撃手がいるが、今回は不在だ。

それ故に、スパイダーを張った上でそこに待機をする、という選択肢は出来ない。それは、スパイダーの内側でもたついていたり、外周しようとする敵を撃てる人間がいてはじめて出来る事だから。

 

今回のスパイダーはあくまで相手が合流した後に動きにくくするためのものだ。

マップを選択した柿崎隊が合流地点に選ぶであろう地点は、ある程度予想できる。

その周辺にスパイダーを撒いていけば、――柿崎隊の動きに大きく制限をかけることが出来る。

 

「のび太君。マーカーを付けておくから、その場所にスパイダーを張っていってね」

「はい」

 

周囲六方向。

柿崎隊の通り道となる可能性が高い地点を栞の指示に従いながら、スパイダーを着々と埋めていく。

 

その時であった。

のび太は、かつての記憶が回帰する。

 

「のび太君!その場を離れて!」

 

ひゅう、という音。

天から聞こえてきたその音に、脊髄反射的にバッグワームを解きグラスホッパーを装着。そのままそれを発動し、瞬時にその場を離れる。

 

空爆が、訪れた。

それは障害物の間を縫うような軌道の弾丸がゆったりとした動きで訪れ――そのまま降り落ちた。

破裂音と爆音を残し、スパイダー地点を破壊する。

 

「ごめんなさいくまちゃん。仕留めそこなった」

「了解。――このまま連携して仕留めていくよ」

 

のび太は、見た。

色白の美しい女性が、貨物プラントの上からこちらに狙いを定めてトリオンキューブの狙いを定め、刀を構えた女が正面から斬り込んでくるのを。。

 

「――のび太君!後ろ!」

そして。

またその場を離れようとするその方角から。

 

狙撃銃の弾丸がこちらに来る。

シールドで防ぐと同時。

 

――あ、足を止めちゃった。

 

正面から攻撃手の刃。

背後から射手の弾丸。

この状況下で、足を止めてしまうことの意味を、のび太は重々知っていた。防御は不可能。シールドを張ったところで全方位から訪れる那須の鳥篭と旋空のコンビネーションに仕留められる。

 

のび太は通路から斬り込む熊谷にバイパーを撃つ。

こちらも那須と同じように。正面からの弾丸とは別に障害物を迂回するような弾丸も複数発を放つ。

 

――まずは、熊谷さんの足を止めて。

 

そして襲い来る全方位からのバイパー弾。

 

――大丈夫。まだ周囲をあのバイパーが飛んでいるうちに。

 

のび太はトリガーを切り替え、熊谷の左斜め横の地点を目視。

テレポーターを起動する。

 

バイパーの鳥篭がのび太を取り囲む直前、のび太の姿は消え熊谷の横へと移動する。

そして。

 

「-----く!」

移動直後にのび太はすぐさま熊谷へと身体を向け、バイパー弾を撃ち込んでいく。

シールドが正面に張られることまで想定し、足元から背後へと撃ち込む軌道で。

 

が。

 

「――その手は、大規模侵攻の時に見せてくれたわね」

 

正面に張られたシールドとは別に。

足元に張られたシールドが、熊谷の前に生成され、弾丸の通りを塞ぐ。

 

――那須さんか!

そうだった。

テレポートからのバイパーの撃ち込みは、もう那須隊の前で見せていたコンビネーションだ。

 

「-----く」

のび太はテレポーターを切り替えアステロイド拳銃をセット。バイパーを解除しシールドを装着。

放たれる那須のバイパーをシールドで防ぎながら、旋空を放とうとする熊谷へそうはさせまじと弾丸を撃ち込んでいく。

高威力の弾丸を那須のシールドも分け合いながら防ぎ、のび太に斬り込んでいく。

――何という対応力。そして、連携。

のび太の手数と同等の攻撃を放ちながら、前衛の熊谷の防御能力も連携で増加させる。

斬り込む熊谷の防御の硬さに合わせ、那須の援護機能。この二人が組み合わさると、隙が本当に見えなくなる。

 

「のびた。援護に向かおうか?」

 

一連の攻防の報告を受け、北にいる遊真がそう提案する。

が。

 

「――こっちは、大丈夫!遊真君は狙撃手を倒しに行って!」

のび太は、そう主張した。

「――僕が野比君の援護に向かう。空閑は日浦を仕留めてくれ」

そう、修もまたそう指示を出した。

 

「ここで野比君を生き残らせたうえで日浦を倒せれば、一気に僕等が有利になれる。――耐えてくれ、野比君」

「了解---です!」

眼前に、熊谷。

その後方に、那須。

それら全員を見据え、のび太は銃を構えた。

 

 

注:氷見実況は非常に混乱状態に陥っております。実況周辺の描写は敢えてカットとして送らせていただきます。悪しからず。

 

「――スパイダーは便利ですが、同時にこの付近に自身が存在する事のアピールにもなってしまうんです」

木虎は実に得意げな表情を見せながら、そう主張する。

「今回、那須隊の二人の位置関係が近かった為、合流した上で索敵に当たれた。野比隊員はマップの丁度中央に近い場所でスパイダーを張っていたため、居所は掴みやすかったと思いますね」

「ある程度、狙われるのも織り込み済みの上での行動だと思いますね」

「でしょうね。玉狛第二は初戦から、貪欲に点を取っていく姿勢を見せていました。――今回、野比隊員の行動によって狙撃手の日浦隊員も釣りだせました」

「そして、エースの空閑をここで野比に当てるのではなく、日浦に当てていく辺りもかなり攻めの姿勢を感じます。――ここで野比がどうこのピンチを切り抜けるのか、見てみたいと思います」

 

「で、で、では、かか、柿崎隊----に」

 

「柿崎隊は初期位置が巴と柿崎先輩が近く、照屋が反対側に転送されています」

 

柿崎隊の転送位置は、柿崎と巴が東端の位置におり、照屋は西南の貨物コンテナの上であった。

照屋は自らが孤立していると知るや周囲を索敵しつつ、柿崎と巴の方向に向かう形でじりじりと西へと歩を進めていた。

 

「柿崎隊員と巴隊員が即座に合流し、照屋隊員を迎えに行っているような形となっていますね。――とはいえ、その道中には野比隊員と那須隊との戦いがあっていますが」

「――那須先輩の爆撃が見えた辺りで、迂回していますね。合流までは徹底して交戦を避ける腹積もりでしょう」

「よく言えば慎重、悪く言えば少し消極的ですね。――野比隊員と那須隊がぶつかっている横合いから漁夫の利を取れる可能性もありますでしょうに。その上で反対側の照屋隊員を増援させれば、一気に形勢を取れる」

「それが柿崎隊ですからね。合流してからの多様な陣形が強みの部隊故に、その最初の条件を満たさない限り余計な戦闘をしたくはないのでしょう。ここで玉狛第二と那須隊とが削りあい、お互い消耗させたうえで合流出来たら盤石の態勢を作れますからね。――さて」

烏丸が、ジッとマップ北側を見つめる。

「空閑が、日浦に近付いてきました」

 

 

「――茜!クガ君が近づいてきてる!」

志岐小夜子から、茜に警告が飛ぶ。

「――解った!」

「その場を離れ――」

「ううん!」

茜は、一瞬で理解した。

ここはその場を離れるよりも――。

 

「――那須先輩!一回だけ、フルアタックでの援護をお願いします!」

 

そう茜が那須に告げると同時、那須は瞬時にバイパーのフルアタックをのび太に浴びせる。

そのタイミングと合わせ熊谷も斬りかかり――またのび太は、それらを回避する為にテレポーターを使用する。

 

「――志岐先輩!」

「――了解」

小夜子は、のび太の視線からテレポートの移動先を複数マーキングし、茜に転送する。

 

のび太が、現れる。

 

「――これで!」

瞬時に照準を合わせたため、しっかり急所は狙えない。

だが、構えたライトニングは、しっかりのび太の足先に突き刺さった。

 

「――これ、で----!」

その瞬間。

 

「----一歩遅かったか」

背後から現れた空閑遊真によって首を斬り落とされる。

 

「――オサム。のびた。狙撃手は倒した。すぐに援護に向かう」

 

 

「――りょう、かい!」

のび太は足を削られた事で、この場を逃げ出すことは不可能と悟る。

 

――僕の、ミスだ。テレポーターは狙撃手の射線が通る場所で使っちゃいけないって、迅さんに習ったはずなのに------!

だが、ミスを悔やんだところで仕方ない。

まだ自分は生きている。

 

バイパーを放つ。

那須からも、バイパーが放たれる。

たん、たん、と豊富な障害物の間を蹴り上げ、跳ね回る那須の動きは簡単に捉えられない。

――機動力と射撃能力を併せ持つ、と言う事は、ここまで厄介なのか。

 

射手が銃手に劣っている部分は、弾丸を生成してからそれを放つまでどうしても時間がかかる事であろう。

銃を構えて引き金を引けば撃てる銃手よりも、攻撃にかかる時間が多い。

 

二宮は豊富なトリオン量から来る防御力でその時間を埋め合わせるが、那須は機動力でそれを埋め合わせる。

 

周囲の建造物を盾に攻撃を防ぐ間に弾を生成。機動力で自身の身体を守りながら、変幻自在の弾丸を放ち標的を追い詰める。

銃手ならば射線の邪魔にしかならない障害物が、那須にかかれば自らの心強い味方となる。

 

自在に軌道を設定できるバイパーにとって障害物はむしろ弾丸を視界から隠せる武器ともなる。

 

――足が削れている今、機動力で那須さんに追い縋れる訳がない。

そして、前衛の熊谷が更に厄介。

隙が見えづらく、更に那須の援護によってこちらの足が止まるせいで距離を取る事も出来ない。

――どうにか。どうにか熊谷さんだけでも倒せれたら。

 

「――野比君!」

そして。

バッグワームを解いた修が、交戦地域からほど離れた場所からアステロイドを放つ。

 

それは熊谷の横合いから到来する。

「――く!」

熊谷がその対処の為にシールドを拡げた瞬間、のび太はアステロイドを瞬時に構える。

シールドを収縮させるよりも早く、弾丸を熊谷の懐に叩き込んでいく。

 

「――くまちゃん!」

那須がシールドの補助を行いのび太の弾丸を防ぐ。

それでものび太の銃口は向き続ける。

 

「――先輩!空閑君が増援に来ています!」

 

「-----残念だけど引き時ね」

 

那須はそう言うと、周囲にメテオラを撒く。

のび太も爆発に巻き込まれじと即座にその場を離れ、爆発から身を防ぐ。

その後には――そこに那須隊の二人はいなかった。

 

「――野比君、無事か?」

「うん。どうにか。でもごめんなさい。足が削れちゃった」

「いや。その程度で済んだなら十分。空閑もこちらに向かってきている。――狙撃手の日浦を倒せたから、狙撃の心配はしなくていい。この周辺を、スパイダーで固めよう」

「了解です」

 

ひとまず。

最初の那須隊との交戦を終え、足が削れる程度のダメージで済んだのは奇跡と言える。

 

「――柿崎隊がこちらにやってきている。野比君は指定された場所に向かってくれ」

修の指示に、一つ野比は頷き――走り出した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。