「葵枝さん、これは食べられますか?」
ある昼間の山の中。葵枝さんと禰豆子ちゃんとで山菜取りに来ていた。
そこでちょっと背の低い木から生えている山菜を見つけた。
棘が多かったけれど、見た事がある山菜だった。えーっとなんだったかな?
「あら、それはタラの芽ね。炭治郎が大好きなのよ?」
「あ、炭治郎くんが……」
そっか……タラの芽、好きなんだ。
「取って帰りましょう。あ、ウルシっていうタラの芽と似ているモノもあるから、見分け方を教えてあげるわね。他に見つけたら教えてね?」
葵枝さんは、他にも似ているハリギリっていう芽も美味しいからどんなのか教えてあげましょうね。そう言ってくれた。
「はい!」
沢山取れたら喜んでくれるかな?
そう思って周りを見渡し、見つけると葵枝さんに聞いて採れる高さから、棘に気を付けて摘んでいく。
摂り過ぎてしまうと、次の季節に取れなくなってしまうとの事で少し残して摘んだ。
危うく全部取ってしまう所だった。気を付けないと……。
「ふふっ、調は本当に炭治郎の事が好きなのねぇ」
「え!」
驚いて思わず持っていた籠を落としてしまう所だった。
な、なんで知って……!?
「驚かせてしまったかしら」
「え!あ、いえ!大丈夫でひゅっ!」
い、いたい……噛んじゃった。
葵枝さんの言葉に驚いて動転していると後ろから抱き着く形で禰豆子ちゃんが
「母ちゃん!私だって、兄ちゃんが大好きよ?勿論、調姉さんも大好き!」
「禰豆子ちゃん……」
っと、とても嬉しい事を言ってくれた。
ああ、そうか。そういう意味かーっと納得。
男の子としての好き?って聞かれた訳ではなくて、家族としての好き?って聞かれたのか。
すっごい早とちりしてしまった。
「私も禰豆子ちゃんの事、大好きよ?勿論、炭治郎くんの事も大好き」
「わあ、私達両想いだ!」
「だね?ふふふっ」
私達がそう笑い合っている時に
「あら?」
っと、不思議がる葵枝さんがいたらしい。
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山菜取りから帰ると丁度夕飯を作る時間だったので、葵枝さんと料理を開始することになった。
そこで、私の日記帳の登場である。
確か、タラの芽で作る料理が二種類ほど会ったハズ、っと思って紙をめくっていくと
「あ、あった」
そこにはタラの芽のきんぴらとタラの芽のゴマみそ和えの作り方が書いてあった。
それを葵枝さんにも見せてみた。炭治郎くんに作ってあげたかったから。
「おひたし以外の作り方もあるのね?皆、喜ぶわ」
そう聞いてすごくやる気が出た。今度は炭治郎くんだけではなくて、竈門家の皆さんの好物を聞いて作ってあげたいな……。
あ、禰豆子ちゃんの好きなモノは金平糖って言ってたから、今度町へ行った時にでも買ってきてあげようと心に誓う。
そうして一品一品作っていき、お腹が空いたのかちらちらと顔を半分出して覗きに来る竹雄くんと茂くん。
つまみ食いしようとお皿に盛りつけされた料理に手を伸ばそうとするので軽く手でペンッっと痛くない様に叩く。
お互い顔を見つめ合って、バツの悪そうな顔になったけど、おかしくて笑ってしまった。
盛り付けの最中だったけど、お箸で小さな煮物を摘み、竹雄くんの口に持っていく。
すると目を輝かせてぱくりと食べた。
私はそれを見て、口に人差し指を当ててしーっという仕草をする。
竹雄くんも、もぐもぐ食べながら口を手で押さえてうんうん頷いた。
するととんとんと私の腰を叩くてに気付いてそちらに顔を向けると、茂くんが自分にはないのかと、無言で訴えて来た。
なので、竹雄くんにした様に小さな煮物を摘んで茂くんの口に持っていく。
竹雄くんと同じくキラキラと目を輝かせてぱくり。
また人差し指を立ててしーっとすると、とんとんと肩を後ろから叩かれて、振り向いたら、にこにこ笑顔の葵枝さんがいて。
あ、バレちゃったっと、二人を背に隠し、私が勝手にした事なのでー!っと言おうとしたら、葵枝さんがお箸でタラの芽のきんぴらの小さな欠片を摘んでいて、私の口に持ってきた。
「味見をしてくれる?」
っと、言われてそろりと口を開けて食べる。
すると後ろに居た二人から
「つまみ食い仲間だ!」
「なかまだー」
って言われて、葵枝さんから直々の味見だから、ちょっと違う気がするけど、笑ってしまった。
葵枝さんを見るとにこにこ笑顔で、美味しい?って聞いてきたので
「美味しいです。なんだか懐かしい味がします」
そう答えると、良かった。そう一言言ってお皿に盛り付け始めた。
私も盛り付けてる所だったので急いでお皿に盛る。
後ろに居た二人はいつの間にかいなくなっていて、とたとたっという音がしたので二人共居間に向かったようだ。
机拭きもなくなっていたので、多分、拭いてくれるつもりなのだろうと予想する。
「調は私の知らない料理を知っているから、献立が決めやすくて助かるわ」
「え、いえ!私は知っているというか、記憶の片隅にうろ覚えで覚えていたと言いますか!なんと言いますか……」
つい慌てて返事をする。知っているだけで味は食べてみないと分からないから、もし失敗したら……なんて思うけど、何故か大丈夫だなんて確信もしてるんだよね。なんでだろう??
「ああ、そうだ。調、ご飯食べた後に何か用事はある?」
「いいえ、何もありません」
「だったら、後でお話があるの。私達の部屋にいらっしゃい」
そう言われて、分かりましたと答えた。
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皆で夕飯を食べ終わった後に私は炭十郎さんと葵枝さんの部屋に向かった。
私が部屋に着くと炭十郎さんが居たけど、葵枝さんがまだみたいだった。
「すぐ来ると思うから待っていてくれるかい?」
「はい」
炭十郎さんの正面に座る。
なんの話だろう……?胸をドキドキさせながら葵枝さんを待つ。
そういえば、炭十郎さんと炭治郎くんてそっくりだから炭十郎さんを見ていると、炭治郎くんが大きくなったら、こういう感じになるのかな?なんて思った。
ふと、炭十郎さんと目が合った。にっこりと微笑まれる。
ちょっと恥ずかしくなってきた。葵枝さん、早く来てー。
そう願っていると、丁度良く横の襖が開かれて葵枝さんが入って来た。
「遅くなってごめんなさいね?」
「いいえ、全然遅くなんてないですよ。大丈夫です」
そう言うと、そう?って葵枝さんは首を傾げた。
すると炭十郎さんが最近はどうだ?と聞いて来たので、毎日充実しています。と答えた。
次に子供達、炭治郎くん達の事を聞かれた。皆、分からない事があれば優しく導いてくれて、不安な事があれば温かく包んでくれる。
涙が出てしまいそうな程の優しいぬくもりをくれた。
そこまでは話していないけど、多分伝わったと思う。
そして最後に、この質問には正直に答えてほしいと言われたので、はいっと答えると
「炭治郎の事をどう思う?」
なんて事を聞かれた。
「……炭治郎くんの事はとても大事な家族だと思っています」
目を逸らして当たり障りのない解答をする。
流石に好きだなんて言えない。二人の反応がどうなるか分からなくて怖かったから……。
そう答えると二人はきょとんとした顔で私を見つめていた。え?何か変な事を言った?
「調?」
「……はい」
「”異性”として炭治郎の事をどう思う?」
え?っと、驚いて逸らしていた目線を二人に戻す。
炭十郎さんも葵枝さんもとても優しく私を見つめて言った。
「もし、調が良ければ将来、炭治郎のお嫁さんになってくれないか?」
そう言われて、私はビックリし過ぎた様で……静かに気絶してしまったと、後から聞いた。
いきなりの両親からのお言葉。
炭治郎はどう反応するのか……。