なんなんだろう、この山……。
今、山椿さんに連れられて来た山に来て、知人らしい鱗滝さんという人に会いに来たかと思えば、私の修行の最終試練を受けさせる為らしい。
何をさせられるんだろう……。
そして、二人に付いて来いと言われて山を登っているんだけど、目の端に破壊されてる沢山の罠があった。
正直ドン引きである。
それから歩いて進んで行くと大きな広場になっている場所に着いた。
中央に大人より大きな大岩があった。
もしかして、さっきの切るって言ってた岩の事かな?
「楓」
「はい」
「岩、切れ」
…………。
「は?」
「岩を切れと言ったんだ」
いわをきれ……岩をきれ……岩…を切れ……岩を切れ!?
「……え?切れるんですか?この岩」
「普通の方法じゃぁ無理だね」
”普通の方法”じゃ無理?っという事は……
「呼吸を使えば出来るんですね!」
「いや、別に人によっては使わなくても切るヤツは居る」
「うおぉーい!?」
山椿さんは切れるんですか!?って聞いたら
「あたぼーよ」
即答だった。
ちょっと不貞腐れそうになったけど、平常心、平常心。
そう思って胸をポンポン叩いてたら私達が来た方向から人が二人、こちらに近寄って来た。
「「鱗滝さん」」
「錆兎、義勇」
その二人は私と同年代っぽい感じだった。
意思の強そうな目をした宍色の髪の少年と、深い青い目をした青みかかった黒髪の少年だ。
鱗滝さんに向けていた視線をこちらに向ける。
「 ? 鱗滝さん、そちらの人は?」
「ああ、こいつは山椿紅。それからそっちがその弟子の……名前はなんという?」
「ああ、楓だ。四季森楓」
「だ、そうだ」
すると二人は身体もこちらを向き、元々姿勢が良かったけど、改めて姿勢を整えはっきりと告げる。
「そうですか。はじめまして、錆兎です」
「ぎ、義勇です」
その名乗りにうむうむと、何故かふんぞり返っている山椿さん。
思わずため息も出るよね。
すると山椿さんは後はお若い人達だけで良いだろ。っとか言って鱗滝さんの背を押して下山して行った。
そして、二人は残った私を見てなんで残ってるんだ?と聞いて来たから、岩を切る試練に私も加わる事を話した。
「ん?という事は四季森も半年後の最終選別に行くのか?」
「うん。あ、私の事は楓で良いよ。私も呼び捨てにしても良い?」
そう聞くと二人は頷いて、じゃぁ、楓で。そう言って言葉を続ける。
「楓は強いのか?」
「うーん、分からないんだよね」
「分からない?」
今までの修行の事や、山椿さんとの模擬戦、片足を動かせなかった事を包み隠さず話す。
「何より、山椿さんしか相手にした事がないから、分からないって言ったの」
「なるほど……」
私はふと思った事を聞いてみた。
「あ、そうだ。錆兎と義勇は岩をもう切れるの?」
すると二人はお互いを目だけで見つめ合って直ぐに逸らす。
何々?どうかしたの?
「……だ」
「ん?」
「まだ、切れない」
「義勇も?」
「うん」
そっかーっと空を仰ぐ。って、当たり前か。そう簡単に切れたら苦労はしないよね。
あ、そうだ。
「ちょっと私も試しに挑戦してみても良い??」
「構わない」
ここに来る時に山椿さんから預かっていた刀を抜いて、岩に集中する。
後、自分に対してリラックス、リラックス。呼吸を整え、自然体になる様に言い聞かせ刀を振り下ろす。
そして――。
キンッ!
っと甲高い音がして岩に弾かれる。
まぁ、ですよねー。っと、頭で理解し、弾かれた事によって体制が崩されたので整える。
やっぱり、前に教えてもらった【全集中の呼吸】を使った方が良いのかな?っと思い、改めて教えてもらったやり方を思い出していると
「あ、欠けてる」
そんな義勇の言葉に驚いて切り付けた場所を覗きに行く。
……確かにほんの少しだけど、切り口みたいなものが出来ている。うそぉ。
あ、もしかして無意識に呼吸を使っていたのかもって、思っていると隣でぷるぷるしている錆兎が映った。
ど、どうしたんだろう。
「お」
「お?」
「男として負けてたまるか!!」
うおっ!?なんだか錆兎の背後に炎がっ。
「ちょっと待って、この岩って元々錆兎が切り付けてた岩でしょ!?錆兎が付けたキズかもよ?」
「いや、このキズは今、楓が付けた切り口だよ」
義勇ぅー!余計な事は言わないでぇー!!
「義勇!楓に負けていられないぞ!俺達もやってやる!」
も、燃えてるぅー!
これってもし最初っから【全集中の呼吸】を使ってたら切れてたのかな?もしそれで切れていたら……。なんだか嫌な予感。
「楓!」
「はい!」
「どちらが先に岩を切るか勝負だ!!」
「えー」
「”えー”ではない!男として負けられない事があるんだ!」
そんな、私、女なんですけどー?
「ぎ、義勇ぅ~」
「お、お互いがんばろう」
がーん、可愛い顔してお見捨てになるの?義勇少年!なんて言ってみると
「~~」
「……?」
むむ、この仕草は……
「『俺にはどうしようもない。錆兎は男であることに誇りを持っているから、仕方ないんだ。俺も錆兎の事、尊重したいし。ごめん』?」
「「!?」」
義勇と錆兎が驚いてる。なんだろう?
「楓、義勇の言いたい事が分かるのか!?」
「え、うん。私、妹が居るんだけど、訳があって喋れなかったんだよね。それでなんとなく仕草とか雰囲気で何を言いたいか分かる様になって……」
へぇー、すごいな。なんて錆兎が言ってくる。そうかな?
大好きな妹の言いたい事を理解したいって言う理由で努力した結果なんだけど。
ふと義勇を見ると顔を真っ赤にさせていきなり立ち上がり、走って下山してしまった。
え!?本当にどうしたの!?どこ行った!?
「いや、多分だが、恥ずかしかったのと、理解されたのが衝撃過ぎて驚いたんだと思う。気にするな」
「う、うん」
大丈夫かな?義勇……。
義勇と錆兎出せたぁー!
でも、妹と違って恋愛のれの字もない。
これから!これからじゃー!