山椿さんに連れられて来た山、狭霧山で岩を切る試練を与えられて一週間。
ただいま私、四季森楓は悩んでます。それは……
「あ、義勇」
「……!」
「おは…」
ガタガタ、ガタンッ!
日課にしている朝一の走り込みから帰ってくると、鱗滝さんの家の扉が開いて義勇が出て来たんだけど、私が朝の挨拶をしようとしたら扉を閉めてしまった。
正直この反応は寂しい。かれこれ一週間も続いているのだ。長いなぁ。
一体義勇に何があったのか。まぁ、理由は分かってる。
実は義勇がこういう行動しだしたのは、私が原因なのだ。
話さなくっても雰囲気や、仕草で相手の言いたい事が分かる特技(全ては妹の為)を持つ私。
錆兎の話だと口下手だけど、鱗滝さんと錆兎相手なら大体喋るが、他の人にはあまり話さないらしい義勇。(私と初対面だった時、少しは話せてたから”らしい”と付ける)
つまり、義勇にとっては衝撃的というか驚きで混乱してしまった。と、いう事みたい。
うーん、それに加えて私が女だからって事もあるんだろうか?流石に関係ないか。
あと少し身近で仕草とか見れれば、ちゃんと分かるんだけどなぁ。
それに多分だけど義勇の年齢もあるよね?十三歳の男の子って繊細と言うか思春期に入る頃だったよね?
まぁ、簡単に言ってしまえば難しいお年頃という事かな。
もう少しだけ様子を見ようと思う。
錆兎も義勇の事気にしてるし、何か話してる姿も見てる。ここは任せよう。
さて、朝ご飯は鱗滝さんが用意してくれるって言ってたから、今日のお昼はどうしようかな?
男の子だから結構食べるだろうし、そうだなぁ。
あ、そうだ。梅干しをおにぎりに入れよう。鍛錬や、岩切りで汗かくしね。
付け合わせにたくあんとか。
あ、そうそう、ご飯を少し残して米せんべいでも作ろうかな。味付けに少し塩を付けて焼くと良いかも。
…………あれ、私何しにここに来てるんだっけ?……まぁ、いっか!
ぺしーんっ!!
「いったぁっ!!」
いきなり後頭部を思いっきり叩かれた。こんな事するとしたら一人しかいない。
「……あんたねぇ、目的を一瞬で忘れすぎやしないか?」
「山椿さん、おはようございます!洗濯日和ですね!」
「聞いてんのかい?」
その言葉と共にアイアンクローを食らわしてくる山椿さん。
この人の手って意外と大き目だよね!あいたたたたたたた!!
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それから更に一週間後、義勇が申し訳なさそうに謝ってくれた。
ちなみにその時、木の陰で義勇を見守っていた錆兎が居る。
某巨人のスターの姉ポジかな?あれは草場じゃなくて電柱だったけど。
「じゃぁ、仲直りの握手!」
「え」
「ほらほら、片手を出す!」
「ああ、うん……」
義勇がそう返事をして、そっと右手を出してきた。
私はその手を両手で握り、上下に軽く振る。
「はい!なーかなーおりー!」
「な、仲直り……」
「っというか喧嘩してないんだけどね!」
あははははーっと笑うと、義勇は顔を赤くしてはにかんでいた。
……この子、この年で可愛い顔してるから将来はきっと、イッケメーンな感じになるのでは?なんて思ってみる。あ、そうだ。
「義勇、酷かもしれないけど言わせてね」
「?」
「言いたい事はなるべく声に出して言おう」
「!」
私は両手に握っている義勇の手を自分側に引っ張って、顔を近付ける。
すると目を見開いて驚いた顔をした義勇が目の前にきた。
「悪いけど、この数日君の事を見させてもらったよ。とにかく自己評価低い!すんごくひっくい!!もっと自信持って良いんだよ!まだ岩は切れないけど、錆兎に負けない位は十分強いからね!?その辺分かってる?」
「で、でも」
「でもも、カカシもない!何事も精進あるのみ!悪い所があるなら直そう!それでもダメだったら私が助けるよ。お互いに補っていこう!」
私は義勇に微笑んで、その綺麗な深い青の瞳を見つめながら言った。
しばらく義勇はそんな私を見て、驚いた顔のまま固まっている。
にこにことそんな義勇を見つめ返し、顔を離して手も離す。
そんな私達を見ていた錆兎は近付いてきて、私に片手を上げて挨拶した後に義勇の肩を叩いた。
すると気が付いたのか、横に居る錆兎を見つめて
「錆兎……」
「良かったな。仲直り出来て」
「うん」
「仲直りと言っても、喧嘩してないんだよね!」(大事な事なので以下略)
「鍛錬していても、気まずい雰囲気では集中できないからな」(スルー)
「錆兎が無視する……」
「気のせいだ」
「あ、ハイ」
これは逆らってはいけない雰囲気!楓、ちゃんと分かってる!
こうして無事に義勇の気持ちも落ち着いて、鍛錬と岩切りに集中する私達なのでした。
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あれからもう少しで半年になる頃。
私と義勇に遠慮と言う言葉はなくなった感じだろうか。
最近私の事を呼ぶ時の事なんだけど、肝心の主語がないし、なんていうか会話をサボってる。
まぁ、分かるから良いんだけど……これって私と話すのが面倒くさいとかじゃないよね??大丈夫だよね??
錆兎と鱗滝さんに聞いてみると、ただ甘えてるだけだと言う。
どのあたりが……?山椿さんにも話しをして聞いてみた。
「鱗滝さんが言うんだからそうなんじゃないか?」
あ、この人。完璧に面倒くさがってる。聞いた相手が悪かったわ。
仕方ないので義勇本人に言ってみた。
「あのさ、義勇。ちゃんと私と会話してよ。言葉も時には必要なんだよ?」
そう言うと、ごめんっと言って直接会話をしてくれた。
最初からそうしてください。
「楓が俺の言いたい事をはっきりと分かってくれるのが嬉しかったんだ。ごめん……」
…………はぁ、もう!仕方がないなぁ。
「せめて、たまには会話してね!私が困った時は助けてくれるならいいよ」
義勇がしっかりと頷いて、わかったと言ってくれたので、これからもよろしく!と私から言った。
我ながら甘い気もするけど、まぁ、いいよね?そう思う事にした。
更に数日後、錆兎と義勇は無事に岩を切れる様になり、最終選別に行ける事になった。
そして、今、私は岩の前に立っていた。まずは深呼吸。
落ち着いた所で深呼吸した時に、閉じていた目を刀を振り下ろした瞬間と同時に開いて下の地面に刀がある事を確認。
あれ?空振りしちゃった?なんて思っていたんだけど……
「あ……切れてる」
そう、岩は刀が刃こぼれして欠ける事なく縦に切れていた。
これで三人共、最終選別に行ける。
思わず嬉しくて、義勇と錆兎に飛びついちゃった。
岩を切って二、三日過ぎた後、まだ最終選別まで少し日にちがあるから一度山椿さんの家に帰る事にした。
次、会う時は現地集合。絶対に合格しようと三人で誓い合った。
さて、最終選別では何が待ち構えているか……。
とにかく、頑張ろう!調、お姉ちゃんは頑張るからね!
無事に岩を切る事に成功しました。
さて、最終選別では運命の時です。
姉が居る事でどう変わるのか。さてはて、どうなるでしょう?