ダブル魔王総進撃 ぐだぐだトータス本能寺2068   作:リューオ

57 / 70
57:最後の埴輪とリッカと亀

今日は日が照る

 

「ノッブ、このままじゃ稲が…」

 

「育てた稲がなあ…」

 

「ですなあ…」

 

そんで住居内

 

「それで芹沢さんの根拠地ですが、心当たりは?」

 

「うーん、多分だけど壱与を名乗っているのなら、あたしがいた神殿じゃないかな」

 

「卑弥呼、行ける?」

 

「あたしの神殿へは、例の凶つ闇がかなり濃く渦巻いてて近寄れないのよね」

 

「鬼道でできないの?」

 

「全盛期のあたしならともかく、いまいち調子が出ないし、ちょっと無理かも」

 

「こりゃ、手詰まりだな…」

 

一蔵は酒を飲む

 

「あー!ダーオカ君お酒飲んでる!ちゃんとお米も食べないとダメでしょ!」

 

「何言ってんだお前、これでも一俵は食ってるぞ」

 

「いや、食べすぎです。家庭教師の生徒の一人を思い出しましたよ」

 

ハジメが卑弥呼を呼ぶ

 

「卑弥呼ー、集落の人が来てるぞー」

 

「あたしに?なにかな?」

 

「卑弥呼様、ここのところ日照りが続いて稲が…」

 

「どうか雨を降らせていただけませんでしょうか」

 

「いや、雨なんて天気次第だぞ?そう簡単に降るわけが…」

 

「普通はそうでしょうなあ」

 

「はいはい、じゃあ、しばらく待ってね」

 

うわ軽

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「ホントに降らせることができるんですか?ノッブはできそうですけど」

 

「できるわけねえだろ」

 

「概念魔法でできると思うんですけど」

 

「んー、そうねー…」

 

卑弥呼は寝る、これ前に見たわ

 

「急に寝たけど、どうしたんだ?」

 

「寝ているようにしか見えませんが、姉上が託宣を受ける時はいつもこうでして。現役の頃は割と威厳が損なわれるので神殿の奥でやっておりました」

 

既に威厳もクソもない件について

 

「…。…っ!よし、明日は皆で浜辺まで遊びに行きましょう!」

 

「雨の件はどうしたんですか!?」

 

「いいのいいの、とにかく遊びに行くのをなるべく楽しみにしないと効果ないし」

 

「いや、そんな事してる場合じゃないわよ!?」

 

「まあまあ、とにかく今日の所はこの辺で」

 

「どういう事だよノッブ…」

 

「卑弥呼の言う通り、明日まで待つしかないさ」

 

「それじゃ、僕は埴輪の方を調べときますかね」

 

「ああ、私もそうするとしよう。一蔵君はどうするんだい?」

 

「…酒を貰ってくる」

 

「一蔵さんは最近働き詰めでしたからね、休んでてください」

 

「そんじゃ、俺も」

 

「影也さんは好きにしてください!」

 

 

 

 

 

~翌日~

 

今日は雨が降ってた

 

「嘘だろ…!」

 

「降ってますね…」

 

「さすがっすね」

 

「あちゃー、やっぱりねー」

 

「どういう事なのよ、これ」

 

「実は姉上は昔から大事な事があると雨に降られやすい体質でして…。遊びに行く予定を立てた日などは特に、というわけです」

 

「半端ない雨女って事ですか?」

 

「楽しみにすればするほど振られちゃうんだから困っちゃうのよねー。雨乞いの巫女なんて聞こえはいいけど現実はこんなもんよ、はぁ…」

 

「雨じゃ!雨じゃ!さすがは卑弥呼様じゃ!」

 

「はぁー!ありがたや、ありがたや!」

 

「アイツらも喜んでるし、いいんじゃねえか?」

 

「いやあ、これは凄い…。邪馬台国の女王は伊達ではないね」

 

「おかげでこっちはずぶ濡れですけどね。てなわけで、例の埴輪が居座ってる神殿、見つけましたよ、と。とにかく中で話そうや」

 

俺達は住居の中で話す

 

「森の奥まった所に、今回は埴輪一体だけだ」

 

「ただ、地面に総一君を描いてたのが気になるけどね」

 

(…あー、あの人ですかー…。あはは…)

 

「よーし!遊びには行けなくなったけど、この怒りを埴輪にぶつけるとしましょう!」

 

「ソレジャアイキマスカー(白目)。ダーオカは…、いませんね」

 

「んじゃあ俺達だけで行くか」

 

「一蔵、どうしたんだか」

 

「こっちは私と亀に任せて」

 

「じゃ、俺も残るぜ。アイツらがいつ襲ってくるか分からないからな。せっかくだ、集落の人の一部を兵として万が一に備えておこう」

 

「それはいい考えだ。ましてあの謙信公の子孫が率いてくれるならこれ以上ないだろう。それじゃあ私達も行こうか、…斎藤君」

 

「…了解でーす」

 

 

 

 

 

~神殿~

 

「おのれ!たかが埴輪如きに何を梃子摺っている!囲みを狭めて一斉に斬りかかれ!」

 

「…ハニョッ!」

 

…何だこの光景

 

「ノッブ、埴輪と隊士が戦っているみたいです」

 

「変だな、偵察に来た時は地面に総一君を描いてたんだが」

 

あー…、何となく分かった

 

「くそっ!何という事だ、一旦退け、退けい!」

 

隊士は撤退する

 

「すげえな、あの埴輪。新選組を追い返したぞ」

 

「…ハニョッ!」

 

「いけない、こっちに気付いたようだよ!」

 

「…来ます!」

 

「ハニョオオオオ!」

 

 

 

 

 

========================================

 

 

 

 

 

埴輪を割ると、中から土方一海(ひじかた かずみ)が出てくる

 

「ふはーっ、やっと出れたー!」

 

「やっぱ一海さんでしたか…」

 

「何?また知ってる人?」

 

「総一くううううん!会いたかったよおおおおおおお!」

 

土方はおき太に抱き着く

 

「もうお姉さん寂しかっ…っ!総一君、後ろ!」

 

それを聞いたおき太は振り解いてアタッシュカリバーで山南の刀を受け止める

 

「さすがだ、総一君。だが…!」

 

「おいノッブ!」

 

「―――残念、遅かったな、南雲君。悪く思うなよ、信彦!」

 

斎藤さんは俺に斬りかかるが、一蔵が乱入する

 

「てめぇ…!」

 

「とうとう本性現したな」

 

「…いつからだ」

 

「俺はお前らを信用してねえからな。だが、お前の型が見えねえ。どういう事だ?」

 

「そりゃこっちのセリフだ、猿真似野郎。だが…、確かに少し舐め過ぎたかね」

 

「これでも、護衛とかの仕事でしくじった事は一度もなかったからな。政府公認のアサシンってわけだよ俺は」

 

「やっぱ敵でしたね」

 

「おき太、この二人が敵だって事に気づいてたのか?」

 

「敵は新選組ですよね?つまりそういう事ですよ」

 

なるほど、今回は『新選組=敵』だから、新選組である斎藤さんと山南さんも敵って事なのか

 

「ねえちょっと、どういう事?お姉さん、ついていけないんだけど…」

 

土方だけは訳が分からなかった

 

「どういう事も何も、私は局長の命で動いているだけです。―――そう、芹沢局長のね」

 

「芹沢って誰?局長って何?」

 

「ここまでだ、退くぞ、斎藤君」

 

「ま、やることはやりましたしね」

 

「やる事って…」

 

「埴輪を壊した事か」

 

「へぇ…」

 

「それでは失礼しますよ、斎藤君」

 

「これ苦手なんですがね」

 

二人は消える

 

「…総一君、新選組が敵ってどういう事?」

 

「それはですね―――」

 

 

 

 

 

~住居内&リッカサイド~

 

私と亀は留守番をしている

 

「おや、軍神殿はどちらに?」

 

「さあ?酒でも貰いに行ったんじゃない?」

 

「…」

 

「…ねえ、亀、いつになったらこの雨止むの?」

 

「さあ、それは姉上にでも聞きませんと」

 

「ねえ、アンタの姉上って本当に女王だったの?そうには見えないけど」

 

「ははっ、これは手厳しい。確かに私の姉上はあの通りの方ですからなぁ。とはいえ姉上もなりたくて女王になったわけではありませんから…」

 

「それってどういう…」

 

「その昔、この地の民達は狩りや木の実を集めてその日暮らしをするのが精いっぱいでした。いつ飢えるとも分からぬ不安と戦いながらそれでも毎日を必死で生きるしかなかった。ですがある日、外つくにから米が伝わりました。やがて我々も米を作れるようになり、飢えに怯える事も減りました。豊かに…、そう、豊かになったのです。…するとどうなったと思いますか?」

 

「その口振りから、良くなったわけじゃないのね?」

 

「そうです。豊かになった途端に、皆が争うようになったのです。聞く所によると、信里香殿の時代も争いが起きているとか。人の(さが)とでもいうのでしょうか」

 

それは人の(さが)じゃなくて人間の悪意よ。悪意がある限り、争いは絶えないわ。永遠に

 

「とはいえ、やがて争いに疲れた私達は救いを求めました。人でなく神の如き力を持つ裁定者を求めたのです。―――それが姉上でした」

 

だから卑弥呼はルーラー(裁定者)なのね…

 

「姉上は小さき頃から、何かが遠くから声が聞こえると内緒で私に教えてくれていました。それは色んな事を教えてくれると。それこそ明日の天気から戦の行方まで、まるで未来を見通しているかのようでした。とはいえ姉上はそれを私以外に教えるまでもなく、私達、姉弟は仲良く暮らしていました。ですが日照りの続く年に、私はうっかり周りの者に姉上の力の事を話してしまったのです。後はもう、あれよあれよという間に姉上は女王に祀り上げられました。実際、姉上の託宣は神の如きもので、争いにせよ、天災にせよ、姉上の言いつけ通りにすると全てがうまくいくようになったのです。皆が姉上を崇め、国は一つに纏まる事ができました。こうして邪馬台国という国は争いのない平和な国となったのです」

 

「…争いのない平和な国…ね」

 

「ええ、私もこれでよかったのだと思っておりました。ですがある日、神殿の奥で一人で祈る姉上を見てふと思ってしまったのです」

 

「何を?」

 

「―――私は何という事をしてしまったのかと」

 

「…お兄ちゃん…」

 

この時、私は壱与を名乗る魔王のお兄ちゃんを思い出してしまった

 

「女王になってからの姉上はまさしく神の如く扱われ、人との交わりも無く、ただただ託宣の為に生かされるだけのモノ…。私と仲よく野を駆け回っていた姉上は、邪馬台国という国の為の人柱となったのです」

 

「何でよ!嫌ならやめてもよかったじゃないの!」

 

「私もそう言った事があります。ですが、姉上は…、『皆が幸せならそれでいいでしょ』…と、私に笑いかけるのです」

 

「何なのよ!それじゃまるで…!」

 

「あの優しい姉上をそんなところに祀り上げてしまったのがこの私です。この身が亀をなったのも天罰かもしれませんな」

 

「…ねえ、何でそんな話を私にするの?」

 

「はは、少し昔話をしすぎましたかな。ただ、信里香殿も偉大な兄上をお持ちのようだ。同じ境遇として、少し話したくなっただけです」

 

「お兄ちゃんは偉大じゃないわ。お兄ちゃんは、この世にいるたった一人の私の『お兄ちゃん』なんだから」

 

「いや、そんな事はありませんぞ。兄妹というのは()()()()ものなのですから」

 

助け合う…ね

 

「…どうやら雨が止んだようですな。そろそろ姉上達も戻られる頃でしょうか」

 

突然、地震が起こる

 

「地震?」

 

「信里香殿、外へ!」

 

私と亀は外に出る。何なの、あれ…!?

 

「周りの黒い靄が…、晴れてゆく…」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。