番外個体の獣は少女と旅す   作:星の空

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プロローグ ー2ー

月曜日

 

それは日曜日と火曜日の間にある一週間の始まりであり、殆どの人間を憂鬱にさせる1日である。

 

そんな憂鬱な日に少女、谷口鈴(たにぐちすず)17歳は久々の帰省であり月に1度しかない登校週間だからか、物凄いはしゃぎ様である。

疑問点が多々あるのは、鈴が唯の一般人では無いからだ。

今では「空白の3年間」と言われている3年間にある種の大冒険をしたのだ。

その大冒険についてはおいおい話すとしよう。

 

「それじゃあお父さん、お母さん。行ってきます!!!!」

「あぁ、行ってこい。」

「あらあら、気をつけてらっしゃい。」

 

鈴は久々に会った父と母に挨拶をして、▪▪高校に通う。▪▪高校には、15歳の頃に出会った今尚親友関係にある友達が通っているのだ。

大冒険時に培った技術を駆使して▪▪高校までの最短距離を通り、その途中で親友達を見つけたら、先回りしてゆっくり歩く。

そうすると、あたかも先行していた鈴に親友達が追い付く構図が出来上がった。

 

「あ!あれって、鈴ちゃんじゃない?おぉい!!」

「ん?あ!かおりん!!久しぶり!!!!」

 

鈴に声を掛けてきたのは▪▪高校の二大女神と呼ばれる同クラスのマドンナ兼天然の白崎香織(しらさきかおり)

彼女に声をかけられたら鈴は振り返り、香織だと気づいたら飛び込んで抱き着いた。

 

「…………何さ。」

「?どうかしたの?」

「ううん。なんでもないよ。皆もおはよう!そして久し振り!!!!」

 

鈴が声をかけたのは、香織と共に登校していた所謂いつものメンバーとなる、鈴と香織の親友である二大女神の片割れ兼苦労人の八重樫雫(やえがししずく)と雫の幼馴染である子供(・・)天之河光輝(あまのがわこうき)、そして光輝の親友である脳筋の坂上龍太郎(さかがみりゅうたろう)である。

 

「……えぇ、おはよう。久し振りね。」

「あぁ。鈴はいつも元気があっていいな。俺も明るくなるよ。」

「逆に有り余ってんじゃねぇか?よくそれで疲れねぇな。」

 

雫は慈愛の目で挨拶し、光輝はキザな言葉を発し、龍太郎は元気な点を疲れないのか心配する。

鈴はそれらを気にすることなく香織を抱き締めたまま香織の邪魔にならないよう器用に後ろ歩きをしながら光輝に返答した。

 

「それが私の取り柄だからね。それよりも私のいなかった間のことを教えてよ。」

「うん。鈴ちゃんの土産話も聞きたいかな。」

「それは後でちゃんと話すよ。」

 

和気藹々と話しながら歩く。横断歩道や通行人がいるのに後頭部に目があるのではないか?そう思わせるような器用な歩き方をしながらいつの間にやら▪▪高校に到着していた。

ちなみに鈴の行動を皆注意するのは諦めていたりする。

2ーAの教室に入り、荷を降ろした後は久し振り2に会ったクラスメイトたちと会話の花を咲かせる。

ホームルームまであと5分といった所に、1人の男子生徒が溜息を吐きながら入って来た。

その男子生徒の名は南雲(なぐも)ハジメ。某ゲーム制作社社長の一人っ子で跡取り息子。今はその台固め中といったところだ。

入ってきたハジメの姿を見たクラスメイトの殆どが侮蔑の視線を送った。大半の男子はあること(・・・・)での嫉妬、女子はあること(・・・・)に対する軽蔑である。そして、4人の男子がハジメを取り囲んだ。

それはリーダー格の檜山大介(ひやまだいすけ)と下っ端Aの斎藤良樹(さいとうよしき)と下っ端Bの近藤礼一(こんどうれいいち)と下っ端Cの中野信治(なかのしんじ)の4人はいつもハジメにつるみ、虐めているのだ。

そして、4人は言葉責めを始めた。

 

「よぉ、キモオタ!また、徹夜でゲームか?どうせエロゲでもしてたんだろ?」

「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」

 

このようなことは不快に思う。しかし、大半の者が高みの見物か無視を決め込む。

鈴に関しては制服に仕込んだマイクロカメラとボイスレコーダーで諜報していた。

後で教師に渡すつもりなのだ。

 

「…………全く、何が面白いんだか。」

 

鈴はホームルーム前なので席に着いてのらりくらりと大介達を躱して席に着くハジメを遠目に見る。

男子達が嫉妬し、女子達がハジメを軽蔑する主な要因は彼女である。

 

「南雲くん、おはよう!今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」

 

クラスのマドンナである香織がハジメにいつも声をかけているのだ。それが原因で男子達はハジメに嫉妬して、その香織の親身な態度を聞く素振りの無いハジメに女子達は軽蔑しているのだ。

そしてそこに光輝が入り込むせいでやや混沌としてくるのだ。

事態が悪化する前にチャイムが鳴り、皆が席に着いて担任の葛城宗一郎(かつらぎそういちろう)先生が入って来てホームルームが始まった。

その時点でハジメは夢へと旅立ち、それを香織は見て和み、雫は苦笑い、光輝はムッとして、龍太郎は無視を決め込み、大介達はイライラしていた。

高校卒業という功績があればハジメはどうでもいいと教師陣には通達されているため、葛城先生は気にせず話だした。

 

:::::::::

 

時間は経ち、今は昼休み。鈴は親友の1人である中村恵里(なかむらえり)と昼食を取っていた。

恵里が光輝に病んだ恋心を抱いているところは既に知ってはいるが、隠している様なので此方から明かす様なことはしない。

 

「ハムハム…………ゴクンッ。珍しいねぇ。南雲君が出遅れるとは。」

「確かにね…………………。何時もは鳴った瞬間に何処かに行って香織ちゃんがしょんぼりしながらこっちに来るんだけど。」

「あ、かおりんが突った。」

「…………天之河君も行っちゃったね。」

 

事態が混沌とし始めた時、それは起こった。

光輝の足元を中心に魔法陣が展開され始めたのだ。

 

「ッ!!!!!!!!」

(セイバーは待機して!ランサーはカルデアに報告した後追って来て!)

 

唐突な事態だが、大冒険時に培った技術のうち1つで瞬時に指示を出して不測の事態に警戒をする。

この教室に残っていた社会科の担当の葛城先生と副担当の畑山愛子(はたやまあいこ)先生……通称愛ちゃん先生が対処に当たるが時既に遅し。

魔法陣がカッ!!!!と光り輝いて、収まった頃には人1人おらず、食い掛けの弁当や散乱した机椅子しか2ーA教室には残ってなかった。

 

この事件は、政府が隠蔽しようとしたが間に合わず世間に晒され、集団神隠し事件として挙げられることとなった。

そして、鈴の言うランサーがカルデアというところに報告したことで、ある組織が動き出すこととなった。

 


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