番外個体の獣は少女と旅す   作:星の空

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第7話 再会

カルデアと通信連絡をしてから2週間が経過した。

だが、一向にハジメは穴から出てくることがなかった。

 

「………………ねぇ、流石に不味いよね?」

「うん、ほんとに不味いね。」

「あぁ、不味いな。」

「Grrrrrrr」

「「「2週間も飲まず食わずでは引き籠もれない。」」」

 

そうすると流石に餓死してるのではないかと心配をして、鈴はウロウロし、武蔵はゾロゾロと雪崩込もうとする魔物の大群を両手に持つ刀で切り続けて、ヘラクレスと詩音はパンクラチオンと中国武術で稽古をしていた。ちなみに2人は武器を霊体化中。

最初は皆でどうやって助けるのかを話したりしていたのだが、案を出してもその悉くが却下。今のこのメンバーでは不可能な話だったのだ。

 

「だあぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!もおぉぉぉぉぉぉぉう!!!どないせぇっちゅうんじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

とうとう鈴は口調が崩れてしまい、女の子にあるまじき座り方をして、詩音用の酒……ウォッカを呷る。

 

「南雲ハンはどないして出てこぉヘンの!?まさか餓死しとるんとちゃうんか!引き篭ぉとらんでとっとと出てこんかい!!!!」

 

丸々一本を飲み干し、空瓶を穴に向けてぶん投げた。

第3特異点封鎖終局四海にて敵として現れたヘラクレスを500メートル先の海に(・・・・・・・・・・・)ぶん投げた(・・・・・)実績を持つ鈴が本気でぶん投げた空瓶は酔っていたせいなのかかなり精度が良く、見事に穴の中へと入って奥底へと消えていった。

 

「「「………………」」」

「うち、悪ぅなけんけな?」

「じゃあ酒飲むな未成年。」

「むぅ。」

 

その頃穴の先に居たであろうハジメは急な不意打ちに対応出来ず、股間にクリーンヒットし、のたうち回っていたのだがそれを知ることはないだろう。

瓶自体は粉々となったため証拠も残らず、ハジメからしてみれば迷宮入りの謎であった。

 

酒で酔った鈴の暴走は止まらない。

もう待ちくたびれたのか、こんなことを宣ったのだ。

 

「南雲ハン真反対の壁から出たんとちゃうん?せやったらこの2週間無意味なるで。ほな、皆片して行くで!!!」

 

何時もは面倒くさがっていた片付けを率先して行い、まとめた荷物をヘラクレスに預けると武蔵が相手をしていた魔物郡に突撃をかまして火遁や土遁、風遁、果てに中国武術の未だ未熟な无二打で一撃必殺を食らわせながら前に進んで行く。

サーヴァント2人は溜息を吐きながらも続いた。残りの1人は地味にウキウキしていたのだが知る由もないだろう。

進んでいるとその先で本来ならば有り得ない音が鳴り響いてきた。

そう、銃声である。

 

「ッ………………錬成術で!?」

 

鈴はそれが何かを知っており、何故ここにあるのかを一瞬で理解した。ハジメがオタク知識を駆使すれば銃を作ることなど造作もないだろう。逆に魔力量を増やす鍛錬にすらなる。

一向は走って行く。そして、その目に映ったのは黒髪から白髪になって右腕に銃を持って左は魔物の毛皮で覆い隠している南雲ハジメの姿があった。

しかも、壁を何度も切りつけ、傷つけたであろう魔物に圧倒していた。

部屋中を縦横無尽に駆け回り、風の刃で切りつけてくる魔物の攻撃を躱して銃を放つ。

ヒット&アウェイ戦法ではあるが確実に魔物の体力を減らしてゆき、閃光弾で目眩しをしたらレールガンで左腕をぶち抜き、暴れ回る魔物に距離を取らせたら落ちた魔物の左腕を喰らった(・・・・・・・・・・・・・)

 

「「「ッ………………!?!?!?!?」」」

 

3人は驚いた。

 

「うっそぉ、喰ったよ。」

「あ、あぁ。喰ったな。」

「かぶりついてくねぇ。」

「「「落ちたのを。」」」

 

魔物の肉は毒となる。という事ではなく、地面に落ちた生肉を喰らったことに驚いていた。

というより、この4人も既に魔物を喰っていたりする。義手が宝具であるゲテモノ調理師とP氏の合作を何度も食わされている彼らには耐性が着いたせいか一切危機的なことにはならなかったのだ。

 

しかし、そのような経験を一切した事の無いはずのハジメはどうであろうか?

急に蹲り、痛みに堪えるように動かなくなった。それをチャンスと見たのか魔物がハジメに飛びかかった。

しかし、血という液体を通した紅い電流により体の神経を麻痺させて倒れこんだ。

最後に銃を魔物の頭部に付けて一言呟いてから留めを刺した。

 

あの無能というレッテルを貼られた気弱で優しかったハジメはどこに行ったのか。今は真反対の存在と成り果てていた。

それ程辛い思いだったのだろう。

彼にとっての孤独と絶望、恐怖は。

だからこそ生への渇望が強いのだろう。

誰も救いに来ず、見捨てられたと感じた彼は。

そして、周り全てが敵だと認識しているのだろう。

現に

 

「そうだ……帰りたいんだ……俺は。他はどうでもいい。俺は俺のやり方で帰る。望みを叶える。邪魔するものは誰であろうと、どんな存在だろうと……殺してやる。」

 

そう宣言して、ずっと見ていた鈴達にその銃口を向けていた。鈴は詩音達に手出しは無用とだけ告げて前に出ていた。

 

「えらい変うぉうたな南雲ハン。」

「あ?なんで谷口がここにいんだ?」

「んなもん一緒に落ちたからに決もうとろうが。ヒック」

「………………酔ってんのか?」

「なわけあるか。酔っとらせぇへんで。それで?俺のやり方で帰る。なんて言うとるけどどうやって帰るん?」

「は?そんなの探して見つけるだけだ。」

「ふぅん………………無理やね。」

 

酔っ払いの鈴は酔いと共にハジメの宣言を否定した。

 

「あ?てめぇも俺の邪魔をするのか?」

「そんな迷いありありな目したまんま突き進んだってその辺で野垂れ死ぬだけや。それに、女の子にカリを貸したまま行くなんて男の恥っしょ。」

「邪魔をするんなら────────」

 

偏に邪魔をするという鈴に向けてハジメは銃を発砲した。その弾丸は見事に鈴の顔面に当たり、鈴は倒れ込む。

 

「───────殺す。」

 

ハジメは真面目なのだろうが、周りから見るとドヤ顔に見えるその表情は倒れかけたままで止まった鈴を訝しんだ。

そして、撃たれたはずの鈴はゆっくりと元の体制に戻ってハジメを驚愕させた。

 

「ほんはほははほはへへほふんほふひゃあはんはんひほへはへふほ。(意訳:そんなドヤ顔されても分速じゃあ簡単に止められるよ。)」

 

今ので目が覚めたのか口調が戻るが、ハジメを驚愕させたのはそんな事ではなく、明らかに超速……音速の域にあった弾速を分速と宣った挙句に歯で弾丸を止めていたのだ。

自分でもほぼ不可能な芸当を成した鈴にハジメは違和感を覚えた。例え見切れたとしても100を越えるか越えないか辺りの耐久値でも、確実に歯は折れて喉を貫通するはずだと。

なのに受け止めれていたのは何故なのか?その疑問が渦巻き続けた。鈴はその疑問を聞いたかのようにサラリと答えた。

 

「ん?あぁ、銃弾を止めれたわけか。03桁を超えてるからじゃない?」

「ッ…………!?」

 

思考が読まれた事と今の言葉に更に驚愕した。

 

(おいおいおい、03桁を越えてるって…………軽く1000以上のステータス値はあるって事だろ!?なんでそんな馬鹿げた数あるんだよ!?団長なら驚愕して天之河より褒めたはずだッ!?)

「それはね、ステータスプレートって内容隠したり偽造出来るんだよ?」

 

更に思考を読まれた事に驚愕してどんどん沼に嵌って行くハジメ。取り返しがつかなくなる前に鈴は話を切り出した。

 

「南雲君、驚いて思考の波に呑まれたらどんどん読まれてっちゃうよ?」

「ちっ…………ならなんでてめぇはまだここにいる?」

「そんなの2週間前から南雲君が出てくるのを待ってたからじゃん。」

「は?」

「君が左腕を失くした日からずっと穴の前で出てくるのを待ってたの。あの穴の大きさじゃあ私も通れないから待ってた。まさか穴のあった壁とは真反対から出てたとは思わなかったけどね?」

 

ハジメは今世紀最大の驚愕を受けた。自分が空腹と孤独、絶望を感じていた間、ずっといたのだ。起きて直ぐに元の道に戻れば早く助かり飯にありつけていたのだ。

 

「は、はは、ハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!!!!!!!!!!!クソがぁッ!!!」

 

なんとも言えない事実に呆気なさとか色んな感情が混ざり合い、地面を踏みつけた。地団駄を踏むと言う奴である。

そして、先程撃ち殺した魔物にやたらめったら銃を乱射し続ける。

しばらく暴れてスッキリしたのかさっぱりしたが、ハジメはその場に座り込んだ。

 

「くそっ…………今までの我慢はなんなんだってんだよ。」

「最初はトラウマでしばらく出そうになかったから待ってたんだけど2週間も飲まず食わずで引き篭もり続けてたら餓死してんじゃないかって思ったよ。まぁそれにヤケ酒をしたのは馬鹿だろうけど。それよりどうするの?」

 

鈴はこれからハジメがどうするのかを聞く。それは進むか帰るかというものである。

それが分かったのか、ハジメはこう返してきた。

 

「俺は止まらねぇ。」

「そっか。南雲君は進むんだね。だったらいつでもいいから生きてる内にかおりんにカリを返すんだぞ?」

「なんの事だ?」

「此処に入る前日の夜に南雲君、かおりんと密会してたでしょ?」

「なぁッ!?!?」

 

迷宮攻略前夜のあの出会いを知られていたことに驚くハジメ。それを見て笑いながら続ける。

 

「私は一旦ホアルドに戻るよ。クラスメイト達の様子も気になるしかおりんに南雲君の無事を伝えないといけない。それにいずれ来る全面戦争に備えないといけない。やることがいっぱいあるからね。」

「?分かった。取り敢えずは此処を脱出した方がいいんだが、それには下層を進まないと出れそうにない。」

「あの高さの崖を登るくらいなら下る方が楽だしね。」

「それはいいんだが………………あいつら誰だ?」

 

今後の予定の目処が立ったのはいいが、ハジメは先程から此方を無言で見つめてくる3人が気になった。

1人は和服に身を包んだ4つの刀を持った身長が割と高い女性と薄碧色(暗いため)に見える長髪を伸ばした身の丈以上の大盾と木の棒を持ったギリシャ風の鎧に身を包む少女。

最後に鉛色の巨人。巨人である。通路が狭いせいかより一層大きく見えるのは気の所為だろう。

 

「あぁ、あの3人か。もう大丈夫だよ。」

「済んだっぽいね。マスターも沼への嵌め方が上手くなったじゃん。」

「あぁ、武蔵に聞いたが勇者君にソクラテスの無知の知を叩きつけたそうじゃないか。手を出せなかったのが悔やまれるな。」

「Garrrrrrr」

 

一向はそのまま迷宮攻略に勤しむのであった。


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