大型の異形は完全に灰となり、風に散った。少女の
手鬼にやられたのか、血を流し地面に倒れている少年の傷を波紋で治癒していると、泣き止んだ少女が近寄ってくる。その目は随分と腫れて赤くなっていた。
「もう大丈夫なのか?」
「うん、もう大丈夫。さっきはありがとう」
少女はそう言い、にっこりと笑った。戦闘時と印象がかけ離れているが、どちらかと言うとこっちが少女の素なのだろう。その笑みは驚くほど自然で、狐の面に
「そこで提案なんだけど」
唐突に少女が話を切り出した。数瞬の間のあと、笑顔で少女は
「せっかくだから協力しない?」
と申した。そっちの方が生存率も高いと思うの、と。
ほー、へー、ふーん。え? それってありなの?
だが確かに、と思う。確かに、あの双子からは団体行動が禁止などとは伝えられていないのだ。この場において、禁止されていない全ては許可されていると同義だった。
かくして、俺と少女、そしてぶっ倒れていた少年は共に最終選別を突破することとなる。
そして七日目、早朝――。
朝焼けの姿を拝み待機場所に行けば、そこには俺たちを含めたった4人しかいなかった。最初は確かに20人近くいたはずなのに、あまりにも生存率が低過ぎる。最終選別の過酷さを痛感した。
「お帰りなさいませ」
双子が祝いの言葉を、全く感情の込められていないような声色で告げる。生気が感じ取れないあの瞳は、何度見ても不気味に思う。
それから双子は、鬼殺隊に関する説明を行った。隊服の支給や階級について、日輪刀を造る玉鋼を選んでもらうなどだ。
「さらに今からは、
双子がそう言うと、カーッ、カァァとやかましい鳴き声をあげながら、真っ黒な鴉が飛んできて、それぞれ4人の傍に寄ってくる。
そう、真っ黒な鴉が――って、これ鴉じゃなくね? 毛なんて黒じゃなくて灰色っぽいし。つーか思いっきり
他の3人の肩には通常の鴉が乗っているというのに、なぜだか一羽だけ色違いで大きいやつが俺のところに飛んで来た。こんなに大きいの肩に乗せられないでしょ……。
「ケケケケックァ~~ギャギャギャックワァ~」
ほら、この特徴的な
「ヨロシク! オネガイ!」
上機嫌そうに
「ではあちらから、刀を造る鋼を選んでくださいませ」
双子が指差す先には、こぶし大の石ころのような物が並んでいた。あれが日輪刀の原料なのだろうか……?
「鬼を滅殺し、己の身を守る刀の鋼は御自身で選ぶのです」
その言葉に、ゴクリと喉を鳴らす。そんなことを言われても、どう選べばいいのか分からない。暫く動けずにいると、少女――
「どれも同じに見えるから、どれでもいいかなって」
次に、細身の少年――この7日間行動を共にした
そして最終選別を突破したもう一人、全身の筋肉が凄い大漢が無言で端の方にあった玉鋼を掴む。この人怖い。
最後に、余った数個の玉鋼を眺めて俺は頭を悩ませる。皆、自分の勘を頼りに取ったらしいが、やっぱり命を預ける物は慎重に選びたいのだ。うんうんと唸っていると、良いことを思いついた。
波紋と一番相性がいいのにすればいいんだ、と。
○
最終選別から、十五日ほどが経った日。その男は、風鈴の音と共にやって来た。袋に包まれた刀を背負った、
「俺の名は
その男は、少し風変わりな性格をしていた。
「日輪刀はな、別名『色変わりの刀』と言って、持ち主によって色が変わるんだ。正直、理由とかは刀鍛冶の俺にもわからねえがな」
背負っていた刀を下ろし、鉄仙が言う。
「俺の打った刀が、どんな色に染まるのか見るのが楽しみでなぁ。さあさあ速く刀を抜いてみてくれ」
受け取った刀を、鉄仙に急かされ抜き放つ。するとすぐに変化が訪れた。
なんとも不思議な光景だった。元は鋼色だった刀身が、
「これは……ッ!」
その場にいた師匠が驚愕の声を漏らす。俺は呆気に取られ、鉄仙は恍惚とした表情でその刀身を眺めていた。
「なんとも美しい山吹色! まさしく太陽の色じゃッ!」
今回の独自設定
・鎹鴉が鷺
善逸の鎹鴉が雀だったので、主人公にもなにか他の鳥を採用しようと思って付けました。なぜ鷺なのかは作者の書いている他の小説に鷺が出てくるからです。
大正コソコソ噂話
同期の男二人のどちらかの名前は山田にするよ! 馴鹿と山田、トナカイとサンタ……。
後書き
真菰の苗字って鱗滝でいいんでしょうかね?