Fate/stay ナイトミュージアム   作:三流笛吹き

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stay.forever

 吹幸市自然博物館の館長室の椅子に座っていた時臣は、リモコンを使いテレビの電源を入れた。

 

『⋯⋯朝のニュースです。今朝は一面の雪に覆われた吹幸市ですが、街は別の話題で持ち切りとなりそうです。雪道に続く様々な動物の足跡です。現場の映像です。ゾウの様に大きな足跡がくっきりと残っています。その他にも、馬の蹄の様な足跡や猛獣のものとみられる足跡が無数にあり、その全てが真っ直ぐ自然博物館へと向かっています。さらに、街では【昨日の深夜に自然博物館の方角から狼の遠吠えの様な音が聞こえた】【空にプテラノドンが飛んでいるのを見た】など様々な情報が飛び交っています。ここ最近来館者の低迷が続く自然博物館に、思い掛けず注目g』

 

 時臣は無表情でテレビの電源を切ると、目の前で立っている切嗣に顔を向け語り出した。

 

「⋯⋯何か言う事はあるかな」

 

 そう言う時臣はいつも通りの落ち着いた表情でありながら、内心では憤激しているだろうと察せられるオーラを放っていた。

 

「いえ、ありません」

 

 切嗣は時臣の問いに観念した様な、そしてどこか達成感に満ちた顔をして答えた。

 

「そうか」

 

 時臣は椅子から立ち上がると切嗣の前に来て、

 

「では、鍵とライトを返しなさい」

 

 と言いながら自分の右手を切嗣の前に差し向けた。

 これに対して切嗣は特に抵抗する事もせず、腰帯から鍵とライトを取ると、大人しく時臣に渡した。

 

 切嗣から鍵とライト受け取るとそのまま館長室の外へ出る時臣。

 同じく切嗣も黙って時臣の後について館長室を後にした。

 

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 廊下を渡り博物館の玄関ホールへ出た切嗣と時臣。するとそこには、

 

「これが狼の剥製? でっかいなぁ〜」

 

「このお人形さんかわいい!」

 

「あれ、アフリカ哺乳類のホールって何処だ?」

 

 老若男女、沢山の来場者が殺到しており場内は活気に満ちていた。

 この光景を目の当たりにした時臣は、切嗣の方へ向くと無言でライトと鍵を切嗣に手渡し、その場を後にした。

 

 切嗣は来場者でいっぱいになったホールを見渡すと、感慨深かそうに微笑んだ。

 

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「ただいまー」

 

 夜警の仕事に備えて自宅へと戻って来た切嗣は、先に帰宅している筈の士郎に向けてそう言いながら玄関の扉を開けた。すると、

 

「おとーさん!!」

 

 奥の方から、銀髪赤眼の少女が元気良く声を上げながら切嗣の元に飛び込んで来た。

 

「えっ! イリヤ!? どうして此処に!?」

 

 自分の元へ飛び込んで来た少女を目を丸くしながら受け止める切嗣。

 彼女は切嗣の一人娘のイリヤ。しかし彼女は今、海外にある妻の実家に妻と共に帰省中である筈であり、目の前の出来事に切嗣は驚きを隠せないでいた。

 

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「あら切嗣、おかえりなさ〜い」

 

 イリヤを抱えながら居間へと入って来た切嗣に、イリヤと同じ銀髪赤眼の女性がくつろいだ様子で和かにそう言った。

 

「アイリ!? ドイツの実家に居たんじゃ⋯⋯」

 

「明日は士郎の授業参観日でしょう? だからあの頑固オヤj⋯コホンッ、お父様に無理言って戻って来ちゃったの」

 

 切嗣の問いに、アイリはニコニコしながら応える。

 

「はは、相変わらず大胆だな。でも、どうして事前に連絡してくれなかったんだい? そうしてくれたら空港まで迎えに行ったのに」

 

 切嗣はイリヤを抱えながらアイリのそばへと寄り、腰を下ろした。

 

「急いでいてそんな暇無かったのよ。それに、驚いた切嗣の顔も見たかったし」

 

 そう言いながらアイリは悪戯っぽく微笑むと、テーブルの上に置いてある煎餅を取り口に運んだ。

 

「全く、君には敵わないな。⋯⋯そう言えば士郎は?」

 

「士郎なら今、この家の案内をしているところよ」

 

「え、誰に?」

 

 二人がそんな会話をしていると丁度そこへ、士郎が二人の少女を連れて居間へと入って来た。

 

「あ、おかえり父さん」

 

 居間で座っている切嗣を見て、そう声を掛ける士郎。

 

「あぁ、ただいま⋯⋯えっと、そちらの二人は⋯⋯」

 

 士郎の後ろにいる二人の見知らぬ少女に困惑する切嗣。

 

「ふふ。私から紹介するわ」

 

 アイリはそう言って立ち上がると、二人の少女を切嗣の前に連れ出し、

 

「はーい、彼女はセラ、そして彼女はリズ。二人ともアインツベルンのメイドで今日からこの家で暮らすことになったの。さぁ二人も、ちゃんと切嗣に挨拶して」

 

 と笑顔でセラとリズの二人に促した。

 

「どうも、リーゼリット、です」

 

「こらリズ、もう少しちゃんと挨拶しなさい。⋯⋯はじめまして。アインツベルンから参りました、セラです。ここでは家事全般と旦那様のお目付け役を本家より命ぜられて来ました」

 

「⋯⋯あぁ、どうも。これからよろしく」

 

 丁寧にお辞儀をするセラとリズに対して、切嗣はセラの最後の言葉に多少引っ掛かりながらも慌ててお辞儀を返した。

 

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 翌日。

 穂群原学園小等部の5年1組の教室で、子供達が授業の始まりの挨拶をしていた。

 教室の後ろの方では、授業参観に参加している親御さん達が集まっており、その中に切嗣とアイリの姿があった。

 切嗣はこの授業参観の為に買った1200万画素のデジタルカメラを持って行こうとしたのだが、それをアイリに止められた為、手持ち無沙汰な様子で士郎を見守っている。

 

「なぁアイリ、やっぱりカメラを持って来た方が良かったんじy」

 

「キ リ ツ グ?」

 

「⋯⋯はい、マナー違反です」

 

 小声でアイリに話し掛けるも呆気なくアイリに一蹴すされ、項垂れる切嗣。

 

 そうこうしていると、士郎が『両親の仕事』についてのスピーチをする順番が来ていた。

 士郎は自分の席から立ち上がると、真剣な面持ちで原稿を読み始めた。

 

「『両親の仕事』。衛宮士郎。僕のお父さんは吹幸市自然博物館で夜の警備員として働いています⋯⋯」

 

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 その日の夜。

 吹幸市自然博物館の玄関ホールでは、石版の力で命を吹き込まれた展示物達がそれぞれ思い思いに(常識の範囲内で)好き勝手な事をして楽しんでいた。

 

 警備服を身に纏った切嗣は、二階の吹き抜けからそんな彼らの様子を見守っていたのだが、

 

「⋯⋯おや?」

 

 何がきっかけか展示物達の一部が喧嘩をし始め、乱闘を起こしていた。

 そして、その騒動が次第に周りにも広がり、玄関ホールはいつのまにか阿鼻叫喚を極めていた。

 

 その様子を見て切嗣は頭を抱える。

 

「はぁー⋯⋯全く、まだまだ安心出来ないな」

 

 ぼそりと愚痴をこぼす切嗣。しかし彼は、何処か嬉しそうな表情を浮かべながら、展示物達の騒動を落ち着かせる為に玄関ホールへと向かう。

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