始まりの風
…………そもそも。ここまで放浪してきたが、別に目的があったワケでもなく、むしろそれを探すための旅だったのかもしれない。いわゆる、自分探しというヤツだ。
小さい頃に父と各地を旅してきた経験があったゆえに、半ば癖になってしまったものだが(母は悪癖と言っていた)、体感二度目の人生ともなればアイデンティティとやらもブレるもので、とりあえず旅というのは性に合っていたのだろう。
新しい発見。そういった新鮮さを求めての旅でもある。そういう意味では意外とか想定外などということは歓迎すべきだと認識しているが…………
「ああ、ちょうどよいところに。勢いで飛び出したとはいえ、案内がなければ観光もできぬというもの。ガイドをして下さるかしら?」
なんてことはない平原で。
異質に映える銀の巨人に乗った女から。
「はいぃぃ?」
そんなことを言われるのは予想外もすぎるだろう。
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まるで上質な絹のような金糸。穢れを知らぬ無垢を例えるような白い肌。
……………まるで。月のような。そんな風に思えた。
「何をしていらっしゃるのですか。私は案内をしてほしいと言っているのですよ?」
「いや、いきなりそんなことを言われてもな」
目の前にいる(とはいっても距離はあるが)女が銀のモビルスーツ、もとい機械人形のコックピットから、急かすようなことを言っている。
(こりゃ、スモー………だよな? しかもこの女、なんかディアナ・ソレルに似てるしよ)
昔見たアニメ(前世のことだが)で見覚えがあるような顔とMSだった。そこで1つの推測が頭をよぎる。
(いや、考えすぎだ。当たってたら面倒事どころじゃ済まないだろう)
「あー、案内してほしいって話だが、他を当たってくれ。こう見えて忙しいんだ。忙しいんだよ、うん」
「なるほど、分かりました。とりあえずはマウンテンサイクルという場所に行ってみたいのですが」
「話聞いて!?」
つくづく。頭の痛いファーストコンタクトだった。
彼女は空から現れた。降ってきた、というよりは、降りてきた、といったかんじだったが。
空より現れた月の最高指導者似の女性、というか少女が機械人形に乗って、しかも飛び出したなどと発言している。
明らかに面倒ごとだ。しかも何故か、自分を指名している上に、見るからに押しが強い。自分のような主体性の無い人間からすれば、断れるハズもなく。
「……………分かった。不服だが、マウンテンサイクルまでは案内してやる。後は自分でどうにかするか新しい案内を雇ってくれ」
「マウンテンサイクルの次はノックスという所にあるパン屋に行きましょう。それから…………」
「頼むから少しは遠慮して!?」
前途多難。その言葉を思い出す。はたして自分はここまで運が無かっただろうか。疑問が浮かぶが、どうにも父も女性関係で苦労したと聞くし、遺伝だろう。とりあえず父を恨んでおく。
「ああ、そういえば、一つ忘れていました」
「…………何を?」
「名前です。名前」
言われて思い出す。たしかに忘れていた。お互いに名乗ってもいなかったか。仕方がない、どうせ短い付き合いになるだろうし、名乗ってもいいだろう。
「リオス。リオス・ハイムだ。アンタは?」
「ルーナ・ソレ………ルーナと申します」
それは、始まりの風