「賊の引き渡し、感謝する。……相も変わらずやっているようだね、リオス」
旅の道中にて賊に遭遇した自分たちは、今その引き渡しを行っている。
それに際して出向いてくれた知人、名をマシュー・ゲルン(階級はたしか大尉だったはずだ)という。精悍な顔つきをした男で、かなり優秀な人物だと記憶している。
……イングレッサ・ミリシャの現場指揮官といった立場になるのだろうが、まさか本人が出向いてくるとは思ってもいなかったもので、少し驚いている。
「久しぶりです、マシューさん。…あぁ、こちらはルーナといって、俺の雇い主です」
「ルーナと申します。マシュー・ゲルン殿、話はリオスから伺っております。どうぞよしなに」
「マシュー・ゲルン大尉です、レディ・ルーナ。こちらこそ、どうかよろしくお願いします」
この人は前イングレッサ・ミリシャの司令官であるミハエル・ゲルンの息子にあたる人物で、そのためか、次期司令官として周りから期待されているらしい。本人もそれに応えられるよう努力していると聞いた。
20年前の争乱の後、ルジャーナ領主導の下でウィルゲムの修理を行った時の縁があって、ルジャーナ領にて教育を受けたらしい。なんでも、リリ様も関わっていたそうで、相当厳しくされたらしい。だが、そのお陰あってのこの傑物と考えれば、納得もいくものだ。
「まさか直接出向いてくるなんて、思っていませんでしたよ」
「久しぶりに顔を見たいと思ったからね。それに、新しく発掘された機械人形の件もある。自分で確認したかったのさ」
後者が本音なのだろう。この人物は、誰の影響か現場主義的なところがある。好奇心も多少なりとあるようだが。
「たしか、グゥフ、と言っていましたが…」
「月のデーターベースとやらに、そう記述があったと聞いたから、そう名付けられたんだ。けど調査をする前に盗まれてしまってね。こちらの失態だ、申し訳ない」
「いえ。それは致し方のない事、あなた方に責任は無いでしょう」
「感謝します、レディ。彼らは、我々が責任をもって裁くことを誓いましょう」
破損している(させた)機械人形を運搬用の車輌や機械人形を使って運んでいく光景が見える。賊は別途で檻の中に詰められているが、まあ自業自得だろうと無視する。
「リオス、少しいいかい?」
「………ルーナのことですか?」
さすがに気付いているのだろう。誤魔化す気はさらさら無いが、そういう鈍感な人ではないのはよく知っているので、とりあえず事情を説明する。
「やはりそうか。………君の巻き込まれ癖も相変わらずのようだね?」
「言わないで下さい。自覚したくないので」
「ハハ、そういうことにしておくよ。……ところで、月の方には連絡したのかい?」
「はい。繋がりのある人に連絡はしておきましたし、ポゥさんの方でも行ってると思います」
「なら、よかった。……月との関係の悪化は避けたいからね」
「それはみんな同じですよ。向こうだってそうでしょう?」
「そうだといいけどね。そこはもう、リリ様に任せるとするよ」
暫く話していると、どうやら作業が終わったらしい。ミリシャの方は出発の準備をしている。こちらもそろそろ、旅を再開する頃合いだろう。
「それじゃあ、そろそろ行きます。ありがとうございました」
「こちらも、ありがとう。少しは働いてみせないと、イングレッサ領も治安維持ができないからね。道中、気をつけて」
「リオス、準備できました。……ではマシュー殿、ごきげんよう」
「はい。お気をつけて、レディ。……あぁそうだ、リオス」
「何か?」
「いや、少し気になってね。次はどこを案内するんだい?」
「そうですね………。なら、そろそろ…」
「繭を、見てこようかと」
それは、行き先の風