もう1人の陽だまりの親友   作:黒雪兎

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ギリギリ年越す前に投稿できた・・・!


第22話

二課の車を一台借り、その荷台に翼さんのバイク乗せ、俺たちは件の遺跡へと向かう。

 運転席には森近さん、助手席に翼さん、後ろの席には友里さんと俺が座る。

 現地の遺跡から送られてきた位置情報を下に車は目的地に向かって走り出す。

 二課は結構道の面で優遇されてるらしく、専用の抜け道が使え、有事の際には緊急車両として扱える、と隣で友里さんが教えてくれた。

 へー、と感心した声を出しつつ、視線を外に移すと、外では何かが舞って落ちている、アレは・・・

 

「・・・雪?」

 

「むっ、積もらなきゃいいんだがな」

 

「でも、これぐらいなら強さなら積もらないかと」

 

 だと言いがな・・・と森近さんは車を走らせる。

 

 

 

 

「ッ、寒っ・・・」

 

 車のドアの隙間から入ってきた空気がチクリと肌に突き刺さるのと同時に持ってきた上着のチャックを1番上まで閉める。

 

「確かに、まだ4月の半ばってのに、この寒さはちと変だなぁ・・・。それに・・・」

 

 森近さんは空を見上げ、顎髭を摩る。

 俺もつられて上を見れば、空は雲一つ無い快晴だ。

 だが視線を戻せば、道は凍り、植物は凍り、道端には凍った野良猫の死体が転がり、更には駐車場の隣にある池は完全に凍りつき、ありとあらゆる物が凍りついている。

 太陽の暖かい陽の光は当たり一面に降り注いでいる筈なのに、地上は一向に暖かくない。

 快晴の空に似つかわしくない凍りつく世界に不気味さを覚える。

 

「何、この光景・・・?」

 

「・・・早く行きましょう」

 

 早足で遺跡に向けて歩き出す。

 歩く事数分、遺跡入り口の仮設テント前で屯する10数名の聖遺物探索チームの中から、隊長と思われる人がコチラに気付いて歩み寄るがいた。

 

「皆さんこっちですよ」

 

「お疲れさん。んで、現状の状況は?」

 

 森近さんが労をねぎらうと、隊長さんが手早く状況を説明してくれる。

 

「現状この遺跡の最深部まで特に苦労なく進み、その最深部でゴーレム『リリティア』を発見しました。ですがそのリリティアに枷のような鎖が付いてまして」

 

「鎖、ですか?」

 

 友里さんがそう言えばノートパソコンを開き、1枚の写真を見せる。

 よく見ればリリティアの腕と足の部分に氷のような素材で作られた枷が付けられ、先端部分が地面に突き刺さっている。

 聞けばどうにもこの遺跡と鎖は先史文明で作られた特殊な金属で出来てるらしく、通常の器具では歯が立たないようだ。

 

「この鎖のせいで遺跡上部から大穴からリリティアを運べず、さらに言わせてもらいますと、リリティアの周囲一帯の気温は0℃を下回り、通常の作業は困難を極めます。そこで——」

 

「シンフォギアの登場って訳か、成る程な。確かに寒さ程度ならギアのバリアフィールドでどーにかなるしな。そう言うことで、行けるか2人とも?」

 

 耳にインカムを付けつつハイと返事をして、俺たちは遺跡内部のマップを片手に隊長さん先導の元、遺跡を案内される。

 遺跡内部は外部より温度はより低くなり、底冷えする寒さだ。

 吐く息は気温相応に白くなり、冷気は体中に突き刺さり、寒いを通り越して痛い。

 さらに内部は所々凍っていて、最深部に進めば進むほど、凍ってる比率がドンドンと高くなっていく。

 滑らぬように歩く事数分、目的の最深部、その手前の扉まで辿り着く。

 

「この先にゴーレム『リリティア』が・・・」

 

「写真で見たと思いますけど、実際に見るとため息が出るくらいキレイですよ」

 

「そんなにですが?ちょっと楽しみですね」

 

「・・・貴方ね、遊びに来た訳じゃないのよ」

 

 ズバッと鋭い視線と共に、翼さんから注意を受けてしまう。

 分かってますよと言えば、本当かしらね?とあまり信用して無い感じに翼さんの無言の視線を感じる。

 小さく肩をすくめつつ、隊長さんは扉を開けて中へと進み、俺たちもその後をついていき、リリティアのいる部屋へと足を踏み入れる———瞬間、ピシリと何かが割れる音が聞こえた。

 

 

————————————

 

 

 

 熱源を五つ感知 ———熱源から奏者及び■■■の反応を二つ検知。

 システムをスリープモードから戦闘モードに切り替えます。

 

 

次のプログラムを実行しようとしています。

 

 

G:LILITEA実行を許可しますか? <Y/N>—————[Y]

 

 システムLILITEA機動します。

 

 

————————

 

 

 

 ピシリと何かが割れる音が聞こえる。

 なんだ?と思う間もなくその瞬間、地面が揺れる。

 立って居られないほど、と言うわけでは無いが

森近さんが、全員伏せろ!と言うと同時に、その場の全員姿勢を低くする。

 

「っ!アレは!?」

 

 友里さんが驚いた声を出すのと同時に音の発信源に視線を向ける。

 視線の先にはリリティア、ただし写真で見た鎖のような物は外れていて、視線は此方を見ている、ように見える。

 そして、コレは何となくだが・・・あのリリティア、俺を見てないか?

 

「——————」

 

 無言、無音、されども何かの意思を感じさせる音を立てて、リリティアは片手を上に掲げる。

 うなじの辺りがピリリリと感じると同時に聖詠を歌う。

 

「beet up gram tron」

羽撃きは鋭く、風切る如く(Imyuteus amenohabakiri tron)

 

 1秒とかからずに変身完了、生成と同時に射出された氷の槍を、俺は炎の槍で、翼さんはアームドギアで、それぞれ迎撃する。

 

 

 

————————————

 

 

 

 氷の槍と炎の槍、相反する二つが真正面から衝突し、相殺。蒸発された氷の槍は白い気体となり、霧となって視界を覆う。

 

「っ・・・森近さんたちは!?」

 

『もう部屋から徹底済みよ!後はお願い2人とも!』

 

 ピピっと耳に付けてたインカムから友里の声が聞こえる。

 幸いと言うべきか、他の3人は入り口に近い所にいたお陰で、直ぐにその場から避難出来た。

 

「ッ!」

 

 背中のブースターを吹かせると同時にリリティアの正面、ではなく背後に移動、それと同時に炎を爆発させ、リリティアに向かって拳を振るう。

 だが、突如として背後に出現した氷の盾によって防がれる。

 

[絶刀・天羽々斬]

 

「硬っ・・・!」

「——————♪!」

 

——蒼ノ一閃

 

 歌いながら、飛び上がった翼がリリティアの側面に向かって蒼ノ一閃を放つ。

 だがしかし、リリティアに向かって放たれた蒼ノ一閃は徐々に勢いを失っていき、勢いを無くした青色の刃は凍りつき、砕け散る。

 なっ・・・!?と翼さんが驚くと同時にリリティアが巨大な氷の剣を生成し、それが1人でに動き横に振るわれる。

 そのスピードは早くは無いが、とにかくデカい。まともに受ければタダでは済まないであろう。

 故に2人は回避に移る。

 誠はブースターを吹かせ後方に、翼も持ち前の機動力で後方に、それぞれ回避する。

 ブォン!と振るわれた氷剣を避け、2人は同時に反撃に出るためな前に出る———その瞬間、振るわれた氷剣の刃から何かが射出されるのが微かに見えた。

 

「「っ!?」」

 

 氷剣を避け、近づこうとした2人に向かって放たれたのは数千発の氷の刃だ。

 音速で放たれたそれは、たったの一発ですら鉄板を軽く打ち抜く破壊力をもち、ダメ押しとばかりに、透き通った氷のように見えづらいと言う極悪性能を持ったものだ。

 広範囲に射出された氷の刃は2人に逃げ場を与えず、やむなく2人はその場で迎撃する。

 誠は炎を纏わせた両手を出鱈目に振るい、翼はアームドギアで、それぞれ氷の刃を迎撃する。

 2人の前の空間が透明な炸裂によって何度も弾けていく。

 

「っ・・・今っ!」

 

 そして氷の刃が止まった瞬間を逃さず、両手に炎を圧縮、それを槍の形に変え、リリティアの正面に炎槍を10本生成、まずは半分放つ。

 ガキン!と音を立て、炎槍が氷の盾に防がれ、視界を白い霧が覆い、残りの炎槍をリリティア、ではなくてリリティアの足元に放ち、足場を崩す。

 グラリとリリティアが体制を崩れ、そこを逃さずブースターを吹かせ、リリティアの背後に移動、背中のブースターをアームドギアに切り替え、瞬間的にフォニックゲインを叩き込み、チャキリと肩に乗せ、横に振り下ろす。

 

———GRAM∞ZAMBA

 

「—————♪!!」

 

 さらに、それと同時にリリティアの背後に飛び上がった翼はフォニックゲインをアームドギアに叩き込む。

 

———天ノ逆鱗

 

 巨大化したアームドギアをリリティアの背後から見舞う。

 正面からは誠のGRAM∞ZAMBA、背後からは翼の天ノ逆鱗。この一撃なら仮に止められたとしても、防いだ上で打ち抜ける、そう確信を持って2人は今放てる必殺の一撃を放つ。

 

—————やれる

 

 その確信をもって2人はアームドギアを振るう。

 

 そして数秒の後、2人の渾身の一撃はリリティアに直撃する。

 

 

 

————————————

 

 

 遺跡からリリティアが見つかる少し前の事だ。

 

「起きなさいリリティア」

 

 聞こえてきた変わらぬ冷たい声に、数千、数万年の時を経て、リリティアは自身を本機動させる。

 リリティアは静かに自身を目覚めさせた者を認識する。

 自身を目覚めさせたその名を、主を、リリティアは知っている。

 フィーネ・ルン・ヴァレリア。

 終わりの名を持つ者。

 

「奏者と器と戦い、器の中にいる『■■■』に力を付けさせなさい。でももし器が想定より弱かったら・・・仕方ないけど、殺しても構わないわ」 

 

 そう言い、フィーネはリリティアにコードを送り、リリティアのシステムをスリープモードにする。

 そして、システムがスリープモードに切り替わる刹那、

 

「あの人の元へ行く為に・・・今度こそ、お願いね、リリティア」

 

 主の願いを聞いた。

 

 

 

————————

 

 リリティアの体から、光が溢れる。

 その瞬間、時が止まった。

 えっ?と言う言葉はどちらから漏れたのだろうか。

 大技を放った2人はまるで時が止まったかのようにピタリと空中で固まって動けなくなり、2人のアームドギアは凍りつき、砕け散る。

 

(なんっ・・・!?)

 

 完全聖遺物の動きすら止める空間凍結。

 リリティアの持つ二つ切り札のうちの一つ、コールドスリープと呼ばれる、概念攻撃。

 体を動かせぬ誠に向かってリリティアは氷剣を生成し、横凪に振るう。

 

(あっ、まず——————)

 

 氷剣が脇腹から当たり、バキッと嫌な音が誠の体の内側から聞こえると同時に、誠は翼のいる方に飛ばされ、そのまま2人揃って壁に叩きつけられる。

 

「ガっ・・・!?」

 

「っぁ・・・!」

 

 動かせない体ではまともに受け身なんて取れるわけもなく、肺から息が漏れる。

 コレで終わりにするつもりか、リリティアは、胸の装甲が花のように開き、そこを中心に空間がミシリ、と音を立てて歪む。

 リリティアに搭載された最後の切り札。

 リリティアの持つコールドスリープを一点集中、それを対象に向けて放つ絶殺の一撃、アブソリュート・ゼロ。

 直撃すればギアを纏った2人とて死に至る一撃が振るわれ、戦場に壮絶な爆発音が響き渡る。





それでは皆様、良いお年を!

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