もう1人の陽だまりの親友   作:黒雪兎

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この夏はタオルや飲み物が手放せない・・・!


第3話

そして時は2週間後のツヴァイウイングのライブの日まで進む。

 

現在の時刻は昼過ぎ、そろそろ会場に向かうために身支度を整える。

服装は灰色のパーカーにジーンズ、後は自分にとってのお守りである黒いペンダントを首にかける。

バックを手に取り、中に3人分の色紙とサインペンが入っているのを確認する。

 

(サイリウムは会場で買おうっと)

 

残りは財布や携帯などをバックに入れ、窓とガスの元栓を締めて家を出る。

集合は会場だが、未来と一緒に行こうかなと思い隣の家に向かう。

 

 

 

ピンポーンとチャイムを鳴らすと申し訳なさそうな顔をした未来が出てきた。

その表情に嫌な予感を感じつつとりあえず一緒に行けないか聞いてみる。

 

「今から会場行くけど未来も一緒に行かないか?」

 

「ごめんね誠くん、行けなくなったの」

 

「なん・・・だと・・・!?」

 

「うん、森岡のおばさんが怪我をして、お父さんが今から車出すって・・・」

 

「おっふ・・・」

 

この2週間、未来は本当に楽しみにしてたのにな・・・実際、俺も未来と見れなくて残念だ。

だが、身内の不幸なら仕方ない。

今回は不幸にも(・・・・)ライブには行けなくなってしまったが、次のライブがあるなら次こそは一緒に行きたいものだ。

 

「・・・まぁ、そういう事なら仕方ないさ。未来の分まで、目一杯ライブを楽しんでくるさ」

 

「本当にごめんね。それじゃ代わりに響の事よろしくお願いね誠くん。約束(・・)だよ?」

 

「おう、約束(・・)されました。んじゃ、行ってくる」

 

「行ってらっしゃい。楽しんできてね」

 

じゃあなーと手を振り、目的の会場まで向かう。

その間に響と連絡を取る。

 

『もしもーし、どしたのせーくん?』

 

「悲報、未来は来れない模様」

 

『えー!?なんで?あんな楽しみにしてたのに?』

 

「あぁ、実はな————」

 

と言うわけで未来の状態を伝える。

 

「————-と、言うわけだ」

 

『成る程・・・はぁー、私たちってば呪われてるのかな?』

 

「呪われて・・・ないといいな、うん」

 

続いて同時に、はぁー・・・とため息をつき、未来と一緒に見たかったな(ねー)と一緒に呟く。

俺の幸運はEなのかね・・・。

 

 

 

バスと電車を乗り継いで行くこと数十分、ライブ会場にたどり着いた。

キョロキョロと辺りを見渡せば、同じくキョロキョロしてたであろう響と目が合う。

タッタッタと小走りでお互いに駆け寄る。

 

「よっ響、待ったか?」

 

「ううん、こっちもさっき着いたばかりだよ・・・ねえ、未来は本当に来れないの?」

 

「残念ながら、本当に来れないみたいだ・・・まぁ、気持ちは分からんでもないが、来れないものは仕方ないさ」

 

「うん・・・そうだね、それじゃあ今日は未来の分まで楽しもうよ!お土産とかいっぱい買ってさ、未来にプレゼントしよ!」

 

ニコニコと笑いながら響はそう言う

 

「もとよりそのつもりさ、お土産があるならアイツも喜ぶだろうしさ。それじゃあ、そうと決まれば先ずは並ぶか」

 

「うん!」

 

そして俺たち2人は今日のライブの事や未来に買ってくお土産を考えながら、列に並ぶ。

運命のライブまで後1時間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視点は変わり、ライブ会場の裏側。

 

残り後1時間程で始まるライブに向け、最終調整に入ったスタッフたちがあっちこっちと駆け巡る。

それを不安そうな顔で眺める青い髪の少女—————このライブの主役の一人である風鳴翼(かざなりつばさ)は、はぁーと小さくため息を吐く。

やっぱりこの時間は苦手だよ・・・と1人実感する。

 

「間が持たないっていうかさ。こういう開演するまでの時間が苦手なんだよなー」

 

「奏・・・」

 

後ろからトコトコと歩いてくるオレンジ色の髪の少女————翼と同じく今回のライブの主役である天羽奏(あもうかなで)は翼の隣に座る。

 

「こちとらさっさと歌い(暴れ)たいってのに、そいつもままならない」

 

「うん、そうだね・・・」

 

(ん?)

 

ここで翼の手が微妙に震えていることに奏は気がつく。

この少女が震えているときは大抵緊張している時だ。

 

「もしかして翼、緊張とかしちゃったりしてる?」

 

「あ、当たり前でしょ、櫻井女史だって今日は大事だって言っていた訳だし・・・」

 

「翼は真面目が過ぎるねー。もうちょい肩の力を、こーくいっと落としてさ」

 

背後に回り込み、素早く背中につーと人差し指を走らせる。

 

「ひゃぁ!?な、なにをするの奏・・・!」

 

「ははっ、悪い悪い」

 

と笑う奏に、相変わらず奏は意地悪だ・・・と翼は小さく呟いた。

 

「奏、翼、2人ともここにいたか」

 

「司令・・・」

 

「こりゃまた弦十郎(げんじゅうろう)の旦那」

 

「わかってるとは思うが今日は「大事だって言いたいんだろ?分かってるって」ふっ、なら大丈夫だな」

 

赤いスーツでこれまた赤い髪の男性、風鳴弦十郎(かざなり げんじゅうろう)は、ふっと笑い。

 

「なんせ今日のライブの結果に、人類の未来がかかってるって事をな」

 

なんて、軽く言い放った。

 

 

 

ライブ会場の更に地下にある研究室。

ここでも上のスタッフに負けず劣らず職員達があっちこっちと駆け巡る。

手に持つタブレットで今日やる実験の確認をしつつ、職員に指示を出している独特な髪型の白衣を着た女性、櫻井了子はガラスの向こうにある、完全聖遺物と呼ばれるネフシュタンの鎧を見つめる。

操作しているタブレットには[Project:N]と書かれており、今回の実験で完全聖遺物であるネフシュタンの鎧を起動・解析することが出来れば、人類が脅威に対抗できるカードがまた1つ増える。

 

「櫻井女史、起動実験の準備が完了しました」

 

「分かったわー。それじゃ指示があるまで待機しててね」

 

ピロロロロと白衣のポケットに入れていた携帯から連絡がくる。

このタイミングでかけてくる人は1人だけだ。

 

「はいはーい、こちら櫻井了子です。こちらの準備は完了よ、弦十郎君」

 

『分かった、直ぐに向かおう』

 

『ステージの上はあたしたちに任せてくれよ!』

 

上の方でグッと親指を立ててるであろう奏の姿を想像しつつ了子はエールを送る。

 

「ふふっ、頼もしいわねー。それじゃ頑張ってね2人とも」

 

ピッと通信を切りここでふと、そういえば誠も友達と来てるって言ってたわねと思い出し、仕事用の携帯ではなくプライベート用の携帯で、楽しんで来てねとメールを送る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ?」

 

会場に入った俺たちは売店でサイリウムと飲み物を買ってると、ピロリンと携帯にメールの着信音が鳴る。(因みに飲み物の持ち込みはOKだ)

未来からか?と思ったが連絡してきたのは了姉からだ。

 

「未来から?」

 

「いんや、家族から」

 

なんだなんだ?とメールを見れば『楽しんできてね』と書かれていた。

もちろんそのつもりなので、『もちろん、全力で楽しんでくるよ』と送り返して、会場に入る。

 

「おぉ・・・」

 

「わぁ・・・」

 

思わず2人同時に声を上げる。

あのステージでツヴァイウイングの2人が歌うんだろう。

 

「はぁ・・・遂にあのツヴァイウイングを生で見れる日が来ようとは・・・!響、ちょいほっぺをつねって。夢じゃないか確認する」

 

「じゃあ弱めで」

 

そう言い、響はぎゅーと左のほっぺを軽く抓る。

・・・うん、痛いし夢から覚めないのでこれは現実なんだと改めて認識する。

 

「・・・うん、良かったちゃんと現実だ。それじゃあ先ずは自分たちの座席に移動するか」

 

「だね、えっと私たちの座席っと・・・」

 

ドキドキと心臓が高鳴るのを感じつつ、座席を確保。

今のうちにサイリウムを取り出しておき、さっき買ったお茶を飲んで気持ちを落ち着ける。

・・・・・だが落ち着かない、胸元のペンダントをぎゅっと握りながらキョロキョロと辺りを見回したり、サイリウムをクルクル回して気を紛らわす。

ヤバイ、緊張して震えてきた。

 

「さっきから落ち着かないねせーくん」

 

「これはあれですよ、武者震いというやつですよビッキー君」

 

「武者震いって・・・ほらほら、こういう時はへいき、へっちゃらって思いながら深呼吸すると落ち着けるよ?」

 

「すーはーすーはー・・・よし落ち着いた」

 

どんとこい!と意気込むが、始まるまで後10分程だ。

このテンションのままだと確実にラスト行く前には燃え尽きそうだなと不思議とふわふわする頭でどこか他人事のような感覚でそう思考する。

だが、このふわふわとした高揚感が実に心地よい。

可笑しいなまだ始まってないんだけど、これがライブの魔力というやつなのだろうか?しかも響のこと未来から頼まれたのに、寧ろ俺の方が世話になってるような。

・・まぁ、それは兎も角として、

 

「はぁー・・・早く始まらないかねぇー・・・」

 

「せーくんさっきからそればっかだよー」

 

隣で響がそう言ってるが、この時の俺は聞く耳を持たず、まだかな?まだかな?と待っていた。

後に響は、まるで餌を待つ子犬みたいだったよー、と未来に語っていたそうな。

・・・響から見たら尻尾がブンブン振ってるように見えたのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チラリと壁にかけてある時計を確認するともうすぐライブが始まる時間だ。

奏はよいしょっと立ち上がりぐいーと伸びをする。

 

「さーてと、難しい事は旦那や了子さんに任せてあたしらは・・・」

 

翼を見れば、まだ不安そうな表情で身震いしている体を抱きしめている。

奏はフッと表情を柔らかくし、

 

「つーばさ」

 

「わっ!」

 

後ろから翼を優しく抱きしめる。

また何か悪戯されるのかな?と思ったが、奏から聞こえる声はそんな事を感じさせず、寧ろ聞く人を安心させるような声だ。

 

「そんなにガチガチだと、いつか本当にポッキリいっちゃいそうだ」

 

「奏・・・」

 

「あたしの相棒は翼だ。・・・そんな顔してたら、あたしも楽しく歌えないし、翼もきっと楽しく歌えないぞ?」

 

「・・・うん、ゴメンね。でも、どこかで失敗したらって思うと、どうしても緊張しちゃって」

 

そん時はあたしがフォローするさ、と翼の手を優しくぎゅっと握る。

そのお陰で力んでた肩の力が程よく抜けた気がした。

 

「うん・・・ありがとう。奏と一緒なら大丈夫な気がする」

 

そして2人は立ち上がる。

外にいる観客達が今か今かと待っていることだろう。

 

「あたしと翼、両翼揃ったツヴァイウイングは何処までだって飛んでいける」

 

「うん、2人でなら、どんなものだって超えてみせる」

 

そして2人は自然に手を繋ぐ。

もう緊張してないと言えば嘘になってしまうが、そんな気持ちでライブに望めば来てくれたみんなが楽しめない、そんなのは絶対に嫌だ。

・・・なら何を迷う必要がある?

私は・・・いや、私たちはこのライブを、ただひたすらに全力で楽しもうーーー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドキドキしながら待っていると、会場の灯りがフッと消え、辺りは暗闇が支配する。

先程まで喋っていた大勢の人たちの声が静まり・・・そして、流れだす曲は、逆光のフリューゲル、俺がツヴァイウイングの歌で1番気に入っている曲だ。

 

(2人は一体何処に?)

 

なんて考えていると、ツヴァイウイングの2人、奏さんと翼さんが上から飛ぶようにしてステージに降りてきた。

イルミネーションは色とりどりに輝き、多色のライトはツヴァイウイングの2人と空から落ちてくる純白の羽を虹のように照らしだす。

そして観客のペンライトやサイリウムなどが光りだす。

舞い散る羽の中心で、翼を模したドレスを纏う奏さんと翼さん。

会場を照らすライトは、左右一対の光の翼を作る軌跡を形作っていた。

 

その光景に思わず見入っていたが、ハッ、と意識を取り戻し、響とそして自分の分のサイリウムをつけ振るう。

 

(凄い、これが実際のライブ!会場にいる人たち全員が繋がるこの感覚・・・!)

 

周りと声を合わせていると、自然と口角が上がり笑顔になる。

チラリと隣にいる響を見れば、夢中でサイリウムを振っていて、こちらもすごく良い笑顔になっていた。

 

曲がサビに入ると、会場の上層が開き、夕焼けに染まった空が見える。

もしかして、この夕焼けも計算にいれてたのだろうか?

なんて事は今の俺に考えられる訳もなく、ただただ幻想的なその光景に圧倒される。

心臓はドキドキと高鳴り、俺の目は夕日によってキラキラと輝く2人から離れない。

きっと、こういうのを、心奪われるというのだろう。

さらにヒートアップする観客の声をぶち抜いてなお耳に届く唄を歌う奏さんたち。

 

(もし願いが願うなら。俺はこの光景をずっと見ていたい・・・!)

 

そして、逆光のフリューゲルが終わると辺りからは拍手が絶え間なく送られる。

 

そして夕焼けをバックに流れだすはORBITAL BEATだ・・・!

 

「まだまだ行くぞー!!」

 

奏さんの声により、この場にいる全員の気持ちはさらにヒートアップしていき———————次の瞬間、会場が爆発した。

 




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