✳︎9月16日加筆修正
重い体を引きずるように、俺は暗い闇の中をただひたすらに歩く。
「はぁ・・・はぁ・・・っ・・・」
呼吸は荒くなりズキリと少しばかり頭が痛む。
進むごとに頭痛は激しさを増していくが、関係ない、とばかりに足は、前に前にと進んでいく。
どれくらい進んだだろうか?
・・・ジーと見れば前方から薄くだが何かが見えてきた。
「あれは・・・?」
近づくに連れてその姿が露わになっていく。
それは全身を黒い鱗に覆われた黒色のドラゴンだ。
何だろう、俺は昔、こいつを見たことがあるような・・・?
なんだか気になって近づくがドラゴンとの距離が近づくにつれ、頭痛は激しさを増していく。
だが足は止まってくれなく、
「ぐっ・・・っぁ・・・!?」
ドラゴンまで後目と鼻の距離で最終的に立っていられなくなり、その場で頭を抑え膝をつく。
頭痛はより激しさを増していき、ジリジリと俺の精神を蝕んでいく。
「っ・・・!」
途切れそうになる意識を必死に繋ぎ止める。
そして気づけば、すぐ側でこちらを見る黒いドラゴンは、俺と同じ赤い色の瞳でジッとなにか値踏みするように俺を見つめ
—————————————-オマエヲエランデヤル
なんて一方的に言ってきた。
どういう事だ?と言う間も無く、ドラゴンは目を瞑ると、徐々にその姿を黒い球状に変化させていく。
球状になったドラゴンは音もなく俺に近くによると、すっと俺の中に入ってきた。
ドクンと体に、得体の知れない何かが入ってくる
「はっ・・・ぐぅっ・・・ごふっ!?」
口からは血が流れ、バキバキと、激痛と共に自分の体がエタイノシレナイナニカに変わってイク感覚にオチイル。
手を見れば、爪はカギヅメになっテいき、腕からは黒い鱗がバキバキと音を立てながらハエテキタ。
堪らずソノバにうずくまり、バタリと仰向けにタオレル。
(・・・しぬのか?)
漠然と、そんな事を考える。
(嫌ダ・・・)
ギリっと歯噛みする。
(もう、会えないのか・・・)
未来や響、それに了姉たちが頭をよぎる。
視界はどんどん暗くなっていき、視界はくらヤミニ包まれていく。
体からは力が抜けていき、意識も朧げにナッていく。
もうダメか、と諦めたときーーーーーーーーー
『生きるのを諦めるな!」
———————奏さんの言葉が、脳裏をよぎった。
(・・・そうだ、諦めて、たまるかよ・・・!)
ぐっ、と拳を握りしめ朧げになった意識をはっきりとさせると、
「そうだ、ここで死んではこちらが困るのでな」
「りょう・・・ねえ?」
「残念だが、私は櫻井了子では無い。・・・私の名はフィーネ。終わりの名を持つものだ」
白色のローブを着た金髪、フィーネと名乗った。
フィーネはこちらに近づき、両手を広げると、ぽうっと何かが光り輝いた。
(なんだ・・・?)
それを見る。
それの長さは大体170cmほどで、のっぺりとした竜の鱗のような両刃の赤黒い刀身に、柄の部分には青い宝玉のようなものがついた剣が暖かな光りを発しながら、ふわふわと俺の側に浮かんでいた。
「それ、は・・・?」
「お前の体に埋め込まれた
「・・・」
なんでそんな物が自分に?と思う間も無く、フィーネは言葉を続ける。
「だが、あくまでも抑制だ。抑制したソイツの力を使えば、抑えは効かなくなるだろう」
力を使う・・・あの再生能力のことだろうか?
「・・・・・その剣があれば、俺はまだ生きれるのか?」
痛む体に鞭を打ち立ちアガる。
「あぁ、それを手に取ればな」
「だったら・・・!」
迷いなく、痛みで震える両腕で、その剣に手を伸ばす。
剣に触れると、剣は光の球状になり、自分の中に入ってくる。
体の中でカチッと鍵のかかるような音が聞こえ、暖かな光りが俺の全身を包み込む。
すると、体の激痛が治り、爪は元に戻り、腕の鱗はスゥと消えた。
「戻った・・・?」
あれ?と思う間も無く体から力が抜け、前に倒れこむ。
「全く、世話がやける・・・」
ボフッとフィーネに抱えられる。
瞼がどんどんと重くなっていき———————瞼が完全に閉じる瞬間、フィーネの後ろに鎧を身に纏った男性が見えた気がした。
小日向未来は今日も親友たちが眠る病院に足を運ぶ。
『あれから1週間、未だにツヴァイウイングのライブで—————————』
(あれからもう1週間経ったんだ・・・)
あのライブの事件から1週間が経ち、今尚テレビのニュースではライブの事で、あーだこーだと専門家と名乗る人たちが何かを言っている
それを横目に、はぁー、とため息を吐く。
親友たち————立花響と黒然誠が入院したと聞いた時は、私も盛岡なんて行かずに一緒に行けば、一緒に行って私が代わりに2人の傷を受ければよかったなど、頭の中でもしもあの時・・・と何度思って枕を濡らしただろうか。
(早く目が覚めてるといいけど・・・)
学校でも授業中はぼーとしてる事が多くなり、さらには部活にもあまり力が入らない。
このままだとダメだなと思い、暫く部活を休むと顧問の先生に進言し、それからと言うもの学校が終わり次第に病院に行ってはいるが、1週間経っても2人共ピクリとも目が覚めない。
もしかしてこのまま一生目が覚めないのでは?と嫌な思考が脳裏をよぎる。
そう思うと体が震え、私のせいだ、私のせいだと、罪悪感に苛まれる。
『次は○○病院前、○○病院前ー、降りの方は—————」
(・・・あ、着いた)
バスに揺られること数十分、最早見慣れた病院にたどり着く。
そして怒られない程度の早さで病室に向かう。
(先ずは響の病室かな)
ガラリとドアを開ける。
体の所々にはまだ包帯が巻かれているが呼吸は安定しており、今にも目を覚ましそうだ。
イスに座り、響の手を握る。
(どうか無事に響の目が覚めますように)
だからお願い神さま、といるかも分からない神さまに祈る。
・・・だが響は目を覚ましてはくれない。
わかってはいるが、その現実に視界が滲みそうになるが必死に堪える。
「・・・平気、へっちゃら、だよね響。私ばかり泣いてちゃ行けないよね」
涙を堪え、それじゃまた明日も来るね、と言い病室を後にする。
未来が病室を出て行くと、ピクリと微かにだが響の手が動いた。
エレベーターに乗り込み、誠が寝ている病室の階のボタンを押す。
ふとここでエレベーターに付けられた鏡が目に入る。
(・・・ちょっと目にクマができてるや。ここの所、あんまり寝れてないからかな)
壁に寄りかかり、ふー、と1つため息をつく。
(誠くんの所に行く前に自販機で何か飲もう・・・)
ピーンとエレベーターが目的の階に着いた。
トコトコと自販機があるエリアに向かう。
(・・・お茶でいいかな)
お財布から小銭を取り出し、お茶を買う。
「はぁー・・・」
「あらあら女の子が暗いため息なんてしちゃダメよー」
「っ!?」
お茶を飲んでため息を吐いていると、後ろから声をかけられる。
びっくりしてお茶をこぼしそうになるが寸での所でなんとか溢さずにすんだ。
「あらら、ごめんなさいね。未来ちゃん」
この独特の髪形に、白衣を着たメガネの女性、誠の義理の姉で、確か名前は・・・櫻井了子だ。
「・・・いえ、大丈夫です、了子さん」
少し・・・いや、かなり申し訳無さそうに未来は目線を晒す。
「もしかして、誠のお見舞い?」
「・・・はい」
勿論、迷惑じゃなければ・・・と、小さく付け加える。
「全然迷惑じゃ無いわよ。ありがとね、誠のお見舞いに来てくれて」
「いえ、私に出来ることなんて、これぐらいしか無いですから」
俯き、視線を下に晒す。
正直に言って、今は目を合わして話せる気がしない。
「いやいや、来てくれるだけでも嬉しいわよ。誠だって、きっとそう言うはずよ」
そうですか?と聞けば、絶対そうよーと言う。
「だって、誠と電話するときは大抵貴女の事を良く話してくれてたのよね」
「・・・そうなんですか?」
「そうよー。それも、結構楽しそうにね。・・・だから、あまり自分を責めないであげて。きっとあの子もそう言うに違いないから」
「そう・・・ですね」
少しだけ気持ちが軽くなる。
「あの子が起きたら、お帰りって言ってあげなさいな。きっと喜ぶでしょうから。それじゃ、先に誠の病室に行ってくれる?私もちょーとだけ用事を済ませたら向かうから」
それじゃあねー、と手をヒラヒラさせながら了子は席を立ち、白衣から携帯を取り出しどこかに電話をする。
(そういえば、何かの研究者って誠くん言ってたけ・・・)
そう言った本人も、まぁ俺もよく知らないけどね、と言ってたけれど。
お茶をカバンに入れておき、誠が眠る病院に向かう。
(起きたらお帰り、か・・・)
でもお帰りと言う前に泣きそうかなと思いつつ、ガラリと病室のドアを開ける。
「あっ・・・」
少しばかり寝ぼけた目の黒然誠と目があった。
(——————————-)
思考が空白になる。
「んっ?み——————」
そして気がつけばダッと駆け寄り、誠を思い切り抱きしめていた。
「んっ・・・・あれ・・ここは?」
気がつけば見知らぬベットの上にいた。
・・・何だろう胸の辺りに違和感がある。
具体的には胸の辺りが押さえつけられてる感覚がする。
(そういや、なにか夢を見てたような気がするが・・・思い出せないな)
そして体の至る所には包帯が巻かれているが、痛みは無い。
またあの再生能力が働いたのだろうか?
「時間は・・・まだ10時ぐらいか」
さらに腕を見れば点滴が付けられている・・・・・・もしや病院かここ?と思っていると、ガラリとドアが開けられる。
音のした方を見ると、そこにはなにやら驚いた顔をした未来がいた。
服を見るに、私服のようだ。
「あっ・・・」
「んっ?み————」
ダッ!と高速で駆け寄られ、ギュッと思い切り抱きしめられる。
嬉しいやら恥ずかしいやら思ったより柔らかいやらで、思考がぐちゃぐちゃになる。
「え、ちょっ、未来!?」
「よかった・・・このまま目を覚まさないんじゃないかって・・・!」
震える声でそういった。
見れば、抱きしめている手は震えてる。
・・・どうにも、心配をかけすぎたみたいだ。
「・・・悪い、心配かけて」
「・・・お帰り、誠くん」
「・・・ただいま、未来」
ぽんぽんと、安心させるように軽く頭を撫でる。
そしてそのまま数分ぐらいギュッと抱きしめられるがままになっていると、
(・・・んっ?)
何やら開けっ放しのドアから誰かがニヤニヤと笑っている。
・・・チラチラと見えるあの特徴的な髪型は了姉だな間違いない(断言)
「あー・・・その、未来?」
涙目になっている未来と目が合う。
それに思わずドキリとしながら後ろを指差す。
未来は頭だけ動かして開けっ放しのドアを見る。
扉の隙間からニヤニヤしていた了姉と目が合う。
数秒の間を開け、ボフンと音を立ててると顔を赤らめ、シュバっと素早く抱きしめを解除し、あわあわしだす。(可愛い)
車椅子を部屋に入れながら了姉は、青春ねぇー・・・と呟いていた。
「これも若さがなせるものかしらねー?」
「え、あ、えと・・・」
「いいわよ気にしなくて。でも、ちょーと大切なお話があるから、席を外してくれると助かるわね」
「あっ・・・はい、それじゃあね誠くん。また明日もくるね」
「おう、また明日な」
ちょっと名残惜しそうに未来は病室を後にした。
そして未来が去ったのを確認した了姉はふーと息を吐き一言。
「で、あの子が誠の気になっている子でしょ?」
「・・・まさかそれ聞きたいが為に未来を帰したの?」
ジトーと半目で睨むがどこ吹く風と言わんばかりに、まぁそれもあるけど、とのたまうが、でもね、と続ける。
「これから話す事は、ちょーと他の人には言えない事なのよね」
いつになく真面目な表情をする了姉。
思わずこちらも背筋が真っ直ぐに伸ばす。
「でも先ずは、一旦場所を変えましょうか?」
「ここじゃあダメなの?」
「詳しい事は別のところでね。ここよりかは説明しやすいのよね」
車椅子を近くに寄せてくる、乗りなさいって事だろう。
別に自力で動けるが、ここはお言葉に甘えて車椅子に乗る。
「それじゃ、一名様ご案内〜」
「安全運転でお願い!」