もう1人の陽だまりの親友   作:黒雪兎

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やっぱりこういうシーンは心が痛くなる・・・


第8話

「ぶえっくし!っ〜、寒いな・・・」

 

「そうだね・・もう新しいマフラーとか買ったら?」

 

早朝の、誰も居ない道—————強いて言うならランナーの人たちが時折走ってるぐらいか—————をボロボロになってきたマフラーを口元まで上げつつ、自転車を押す俺とその隣を歩く未来。

トコトコ歩く事数分、とある家の前にたどり着く。

 

「はぁ・・・また書いてあるよ」

 

「だね・・・」

 

窓ガラスは割られ、壁には、人殺し、税金泥棒、生きてて恥ずかしくないの?など様々な罵詈雑言が所狭しと書かれてたりしていた。

それを手慣れた感じに張り紙を引っぺがしてはそれをカゴに入れておいたゴミ袋に突っ込んでいき、これまたカゴに入れておいた白色のペンキを壁に塗りたくり、見えるところから片っ端から消していく。

心の中で少しばかり、なんだかなー、と思いつつ1週間前のことを思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—————1週間前、学校にて

 

 

「なんで・・・なんであんたなんかが生きていているのよ!?」

 

「・・・えっ」

 

響が教室に入った瞬間、メガネをかけた女子生徒のヒステリックな叫び声が響くと同時に胸ぐらを掴まれる響。

先程まで騒がしかった教室はピシャりと静かになる。

 

「どうしてあんたなんかが無事なの!?——————人殺しの癖に!?・・・なんで、なんでなのよぉ・・・」

 

ポロポロと涙を流す女子生徒に、困惑する響。

そこから更に追い討ちをかけるように、周りからボソボソと小さな声が聞こえる。

—————それはとても、嫌なぐらいに鮮明に聞こえる。

 

「おい、人殺しだ」

「税金泥棒だ」

「そういや沢山お金、貰ったみたいだよ」

「人を殺して金貰えるとか・・・ほんっと、サイテー」

 

周りの空気が異質な感じになり敵意のようなものを身体にヒシヒシと感じ——————タラリと、嫌な汗が背中に流れる。

 

「返してよ・・・あの人を・・・返してよ・・・!」

 

 

響は俯き、なにも言えなかった。

 

そんな彼女の悲痛な言葉と行動に、ゾワりと産毛が逆立ち、教室内の空気が変わる。

周りを、クラスメイトたちを見る。

 

周りの視線が強くなる。

 

周りの人が響を見る。

 

周りの人が異質なものを見るような目で響を見ている。

 

周りの空気が嫌な流れを作り出し————————そして、誰かが立ち上がる。

 

「そうよ・・・そうよ!なんであんたみたいなのが、平然と生きているのよ!」

 

その言葉に、また1人立ち上がる。

 

「いっつもボケーとして、学校の行事なんかじゃ碌に活躍もしてないアンタが!茅根(かやね)くんのように他のみんなから慕われてる訳でもないアンタが!——————なんで、生きてるのよ!」

 

立ち上がったクラスメイトもまた涙を流し、その言葉には響に一言も喋らさせないぐらいの気迫と激情—————そしてなにより、悲しみが込められていた。

 

その言葉に感化されたのか、クラスの奴らもまた立ち上がり、1人、また1人と響を責め立てる。

 

「この人殺し!」

「税金泥棒ー!」

「人でなし!」

「学校から出て行けー!」

「————死んで詫びろー!」

 

周りの皆が————生きてる人たちが、(生き残った人)を責め立てる。

そんな、最悪の光景が目の前に広がっていた。

—————そして、その日を境にクラス・・・いや、学校内や、その周りの人達が変わっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

————とつい1週間前の事を思い出していると壁に書かれた文字が全部消えた。

 

「っ、と消し切ったか・・・・・むっ、そろそろペンキを補充しとかないとな」

 

「あ、じゃあ私も出すよ」

 

次からはもう少し多目に買っとこうと、話しているとガラリと玄関が少しばかり開かれる。

そちらに目を向ければ、響がいた。

 

「「おはよう響」」

 

手を上げて声を揃えて響に、なんでもないような感じに挨拶を、声をかける。

 

「・・・おはよ、未来、せーくん」

 

「それにしても、今日も寒いぞ。朝方は温かめな格好にしてたほうが良さげそうだ」

 

「・・・そう、だね。少し寒いや・・・」

 

そう言えば、少しばかり肩を竦め、うっすらとだが笑ってくれる響。

だが、その笑顔はぎこちなく、目の下には薄くだが、隈ができている。

 

「・・・ごめん、こんな朝早くから」

 

響の目が申し訳無さそうに言う。

————ズキリと、罪悪感が駆け巡る。

 

「うん?あぁ、気にすんな、俺たちがやりたいからやってるだけさ」

 

————響をこんな状態にしてしまったのは他でもない、俺の、・・・俺たちの所為なのだから。

 

「それじゃ行こっか響」

 

「・・・うん」

 

—————だから、俺たち2人が響を守らないと行けないんだ。

 

きっとそれが、響をこんな目に合わせてしまった俺たちが出来る、精一杯の贖罪なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校について先ず始めにやる事は机の上に書かれた色んな罵詈雑言を濡らした雑巾で消していくことだ。

これがまだ油性で書かれてないだけまだマシだと思う・・・まぁ、書かれないのが1番だが。

 

(と言うかいつの間に書いてるんだこれ?・・・俺たちが帰った後にでも書いてんのか?)

 

マメな事で・・・と心の中で愚痴っていると他の人達が入ってきた。

 

どこか申し訳無さそうに目をそらす人やジロリと睨んでくる人、関係無いねとばかりにこちらのことを無視する人。

そして後は・・・

 

「まだいたのか?」

「いい加減学校に来ないでくれる?」

「空気悪くなるでしょ、この人殺し」

 

このように実際に言ってくる人たちだ。

スッと響を背中に庇う。

・・・それにムカついたのか苛立った声を出す。

 

「んだよ・・・まだそいつを庇うのか!?」

 

「あぁそうだが。・・・それに、響は人なんて殺してなんかいないさ」

 

そう言い放ちそのまま睨めば、チッと舌打ちをし、そいつらはそそくさと自分の席に座った。

ふー、と小さくため息をつき、また2人でゴシゴシと机を拭いて落書きを落とす。

・・・これがかれこれ1週間続いてる今の現状だ。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

あんなにイヤだなーと思ってた授業が、今や安心できる時間になってしまうとは思っても見なかった、と立花響は1人思った。

現在の時間は数学で、チラリと隣を見ればスラスラと問題を解いている黒然誠の姿があった。

・・・彼は自分を助けてくれているしその点は凄く感謝してる。

自分がまだ人を信じれるのは彼ともう一人、小日向未来のお陰だ。

それでも、ふとこう思ってしまう。

 

(あの2人の平穏において、私は邪魔なんじゃないかな?)

 

2人に助けられるたび、そう思ってしまう。

そんな事を言えば彼らはきっと邪魔なんかじゃないと言ってくれるだろう。

——————それでも、2人に庇われるたびにそう思ってしまうのだ。

 

そんな事を考えてたら、キンコンカンとチャイムの音が鳴り渡り、今日の授業の終わりを告げる。

 

「はぁ、やーと終わったー」

 

途端にグダーと机に突っ伏す誠。

その顔には疲れたーと大きく書かれているのがわかる。

お疲れ様、と声をかければ、響もお疲れさん、と返してくれた。

 

「それじゃあ、3人で帰るか」

 

「・・・うん」

 

鞄に教科書類を入れ込み、そのまま未来と合流して帰路につく。

 

 

 

「—————でさ、それをご飯にザバーッてかけるとか言ってさ、それは無しだろってなったな」

 

「そうかな?私は意外とありだと思うよ?」

 

首を少しコテンとしながら未来がそう言えば、マジかーと天を仰ぐ誠。

 

「響はどうだと思う?有りか無しか」

 

「・・・えっ?あぁ、うーんと・・・有り、かな」

 

「じゃあ多数決で私の勝ちね」

 

ふふーん、と少しばかりのドヤ顔する未来に、くっ負けた!と悔しそうに拳を握る誠。

それがあまりにも悔しそうだったから思わずふふっと笑う。

 

それを見ていた周りの人達からひそひそ声が聞こえる。

 

「おいあれってよ・・・」

「なんで笑えるのかしらね・・・」

「ほんと、常識知らずな・・・」

 

 

「ッ・・・」

 

聞こえてきたそれに思わず手をギュッと握りしめ、笑顔は引っ込み顔を俯かせる・・・すると両隣からフワリと優しく両手を握られた。

 

「大丈夫、大丈夫だよ、響は笑ってもいいんだよ」

 

「そうだぞ、周りの言葉なんか気にすんな。・・・どっかの誰か達から笑うなと言われても、俺たちは笑ってもいいって響に何回でも言ってやるさ」

 

なんてったて友達だからな(ね)と2人は笑ってそう言った。

 

「2人とも・・・・・うん、ありがとう。ちょっとだけ、元気でたよ」

 

そりょ良かった、そう言って両手が離される。

離れていった手の温もりに少しばかり名残惜しいな、なんて思っていると自宅に着いた。

 

「おっ、珍しくまだ書かれてはいないっと・・・それじゃ響、また明日」

 

「うん・・・また明日ね2人とも」

 

そう言い2人も自宅に向かって歩き出す。

 

「っ・・・」

 

本当はもっと一緒に居たい。

だが、あまり迷惑はかけれない。

出かけた言葉を飲み込み、響はそっと玄関を開けて家に入った。

 

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