響を無事自宅に送り届けた俺たちはそのまま自宅に直行した。
「それじゃまた明日ね、誠くん」
「おう、また明日な未来」
家の前で別れ、勢いそのまま家の鍵を開ける。
「あら、お帰りなさい誠」
自宅の玄関を開けるやいなや、空になった洗濯籠を持っていた了姉から声をかけられた。
いやまぁ、別に居たって良いのだが、基本的に居ないのがデフォなので。
「・・・ただいま?」
「なんでそこで疑問形なのよ?」
腰に手を当て、失礼しちゃうわねー、と言う了姉。
とここでなにやらリビングから美味しそうな匂いがする。
匂いから察するにこれは・・・カレーのようだ。
「これ、了姉が作ったの?」
「そうよ、たまには作らないと腕が鈍るじゃない」
そんなもん?と聞けば、そんなもんよ、と返され出来てるから手洗ってらっしゃいねーと、グイグイっと背中を押された。
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「「ご馳走さまでした」」
ふー、と息を吐き、後で洗っとこと思い、使ったお皿などを水に浸けておき、何となくテレビをつける。
街頭インタビューなのだろう、中年の男性がこんな事を言っている。
『政府の人達もなにやってるんですかね?早くあの犯罪者たちを捕まえてくださいよ。お陰で全然寝れやしないよ』
ピッと番組を変える、次は高校生ぐらいの女性が泣きながらインタビューに答えてる。
『私の親友はあのライブで殺されたんですよ!・・・どうして誰も裁かないんですか!?』
ピッとテレビの電源を落とし、小さくため息をついた。
どこもかしこもあのライブで生き残った人たちを非難する声が多数で、庇ってる人がいればその人たちも非難の対象者扱いになってしまう。
どうして誰も、生きてくれてありがとうって言わないんだろうか。
「はぁ・・・どうして、みんなが分かり合えないのかね?」
結局、考えたところで答えなんて出なくて、ため息と共にそう呟いた。
「それはね、人類が呪われてるからよ」
「——————ッ!?」
背筋がゾクリと寒くなる。
いつの間にか後ろに居た了姉から意外な答えが返ってきた。
だが、その声色がいつもとは全然違って、低くて、そしてなにより、とても悲しそうだった。
「呪われて・・・?」
「えぇ、それも気が遠くなるような遥か昔に、ね」
そう言い、了姉は空に浮かぶ月を見上げる。
空気はピリピリとして、肌にチクチクと刺さる。
「バラルの呪詛、それにより先史文明の人々は統一言語を失い、バラバラになったのよ。そして互いに意思疎通が出来ず・・・最終的には殺しあったわ」
ギュッと了姉は拳を強く握る。
なんだか何時もの了姉らしくないな、と思って見ていると不意に、了姉の姿が一瞬、夢の中で見た誰かと重なった。
(えっ?)
目を擦ってもう一度見ればそこには月を見上げていた了姉と目があった。
「・・・なーんてね、ちょっと真面目に言って見ただけよー」
こちらにウインクをし、何時もの明るい顔になる。
ピリピリとした空気が緩やかな空気に変わる。
「・・・ちょっとの割には結構気合い入ってたよ了姉」
「いーじゃない、たまには真面目に言ったて」
昔はもっと可愛げがあったのにーなんて言葉はスルーしてコップの水を飲んでいると、ピリリっと携帯から連絡が入る。
かけてきた相手は・・・響?
手早くリビングを出てから電話に出る。
『どうしたんだ響?なにかあったか』
『・・・えっとさ、帰り道で、お父さんみなかった?』
お父さん見なかった?その言葉に嫌な予感を感じつつ、響を送った後の帰り道を思い出すが、特に見た記憶は無い。
そう伝えれば、どうも今日は会社に来ていないと連絡があったらしく、携帯にも繋がらないらしく、このまま帰ってこなかったら明日、警察に捜索願いを出すらしい。
『・・・よしわかった、俺の方でも洸さんを探して『ねえせーくん』・・・どうした?』
響の声が震えてた。
『お父さんが居なくなったのは私のせいなのかな・・・?』
ギュッと携帯を持ってない方の拳を握りなるべく安心させる声で響を励ます。
『そんなわけないだろ?響は、なにも悪くない。それに洸さんだって、今日は疲れてしまっただけで案外すぐに帰ってくるんじゃないか?』
明るく、だが現実味が無いことしか言えない自分に辟易する。
『そう、かな・・・うん、そうだと良いかな・・・。ゴメンね、急に電話して』
『気にすんな、電話したくなったらいつでもしてこいよ?そんときゃ未来と一緒に通話しような』
『うん・・・ありがと、せーくん。また明日ね』
『おう、また明日』
ピッと電話を切り、そのまま自室のベッドに寝転がる。
響を守ると言っても何も出来てない自分に、無力だな、と自嘲する。
そのまま横になって目を閉じ・・・気づかぬうちに意識は落ちていった。
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風の音が聞こえる。
不思議に思い目を開けて見れば、彼、黒然誠は祭壇の前に立っていた。
(・・・どこだ、ここ?)
と誠は記憶を探るが、サッパリ記憶にないので、本当に知らない所なんだろうなと思い、とりあえずは祭壇を調べてみる。
全体的に少し古ぼけていて、そこの中央部には青い宝玉がついた剣が刺さっている。
・・・その剣には見覚えがある。
そう、たしかあれは———————
「竜殺しの剣さ、黒然誠くん」
「ッ!?」
背後から男の声が聞こえて振り返り、思わず距離を取る。
そこにら身長は180ぐらいの白髪で、柔和な笑みを浮かべた黒色の鎧を見に纏った男性がいた。
恐る恐る誠はあなたは?と聞けば彼は少し困った顔をする。
「んー・・・僕はこの剣に残ってる残留思念、かな?」
「残留、思念?」
「そ、あらゆる不条理を打ち払うこの剣の力を、君に託す為にね」
力を託す為、そう彼は言った。
・・・その力があれば、今の不条理な現状を打破できるのだろうか?
「なら—————」
直ぐにでも力が欲しい、そう言う前に彼から待ったをかけられた。
「でも、今はダメだ。君がそんな状態じゃ、直ぐに力に溺れてしまうよ?」
「っ、それでも!」
「・・・痛い目にあうよ?」
・・・だが、それでも諦めきれない彼は剣を引き抜く為に祭壇を駆け上がり、剣の前に立ち手を伸ばす。
力が欲しい、その一心で剣を抜こうとするが瞬間、バチっ!と勢いよく剣に弾かれ、その場で尻餅をつく。
「ッ・・・!」
指先はピリピリと痛むが、それよりも剣にすら明確に拒否された事の方が痛かった。
カツカツと音を立てながら彼も後ろから来た。
「ほら見ろ言わんこっちゃない。これで分かっただろ?今の君じゃあダメなんだ」
「なら・・・なら、どうすりゃいいんだよ・・・?」
泣きそうな顔でそう誠が言えば、彼はそうだな・・・と呟き、
「君が本当に欲しいのは力だけなのかい?」
ヒントはここまでと彼はそう言い、パチン、と指を鳴らす。
瞬間、誠の視界がぐにゃぐにゃと歪んで身体から力が抜けていき、その場で仰向けで倒れる。
「え・・・あ・・・」
「次に会うときが、君の答えを聞くときだ。それじゃあね、黒然誠くん」
バチン、とテレビの電源を消すかのように誠の意識は真っ暗になった。
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ピリリリと、目覚ましが鳴り響く。
「っ・・・」
ピリピリと指先が痺れるのを感じながら、目覚ましを止める。
・・・どうもそのまま寝てたみたいだ。
そっと目を閉じ、思い出すのは先程の夢。
あの人に拒否され、それでも諦めきれない無様な俺は剣を取ろうとしたけど、その剣にさえ拒否された。
「うん・・・カッコ悪いな俺ー」
ゆっくり目を開け、はぁー、と大きくため息を吐きながら、カーテンを開ける。
外はあいにくの曇り空で気が滅入る。
「・・・飯食べて、さっさと響迎えに行くか」
さ、切り替えていこう、なんて自分に言い聞かせながら、下のリビングに降りた。
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了姉は仕事なのか居なくて、テーブルにはトーストとハムエッグが置いてあった。
ありがとうと感謝しつつ手早く食べて、いつも通りに未来と一緒に響を迎えに行き学校に向かう。
どうも未来にも聞いてたらしいが、俺と同じで見てなく、帰ったらお母さんにも聞いてみるねとの事。
(響のお父さん、どこに居るのやら・・・)
響送ったら探してみるか、なんて考えて上履きを取ると、指先に痛みが走る。
「っ〜!?」
見てみれば、指先から血が出てる。
もしや、と思い上履きを見てみれば、踵の部分に画鋲が仕込まれていた。
「せーくん!?大丈夫!?」
「こんな痛み、へっちゃらさ。それよりそっちは?」
「・・・私たちの方にもあったよ」
聞けば2人の方にも画鋲が仕込まれていた。
実際に被害が俺だけで良かった、なんて思っていると、周りからひそひそ声が聞こえる。
「きっとさ、罰が当たったんだよ」
「可愛そうなだな黒然のヤツ。このままだともっと酷い目にあっちゃうんじゃないのー?」
「いやいや、もう酷めにあってるでしょ?あんな奴の味方なんてしてるからだよ。・・・きっと、立花響が不幸を呼び寄せてんだよ」
「違いないね、このままだと小日向も危ないんじゃないの?」
修正、ひそひそ声じゃなくて普通に聞こえる音量で騒いでた。
未来は何か言おうとしたが、響が俯いて小さく、2人ともゴメンと謝る。
未来と顔を合わせ、別にお前のせいじゃないかんな、と少しばかり乱雑にワシャワシャし、仕込まれた画鋲を取ろうとするが、接着剤でつけたのか上手く取れない。
(クソっ、接着剤なんて使いやがって、やるにしてもテープでやれテープで・・・)
はぁ、と小さくため息を吐き、教室で取ろうと諦め、3人で教室に向かう。
「ほら、行こう響?」
「うん。・・・・どうしよう、私のせいで2人が・・・」
この時、響のこの呟きをきいてたら少しばかり、未来は変わったのだろうか?
———————————そしてこれより先の数日後、響が俺たちの前から姿を消してしまった。
それでは皆様、良いお年を。