ようこそ最強の双子がいる教室へ   作:スプラッシュ

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綾小路兄弟の実力

 茶柱先生が教室を去ると、教室内は騒然となる。

 何故自分がDクラスなのかという怒り、今月は1ポイントも支給されないという悲しみ、希望する就職、進学先が叶う恩恵を受けることが出来ないという絶望。各々の感情は様々だ。

 

「和冴くん、放課後、ポイントを増やすにはどうしていくべきか話し合いたいんだけど、和冴くんが参加してくれると助かるんだけど。どうかな?」

 

 クラスが騒然としてる中、洋介だけが、前に進もうとする。自分から話し合いの場を作ろうとするこの行動力は見習いたい。

 

「もちろん参加させてもらう」

 

「ありがとう。それともう1つお願いしてもいいかな?清隆くんと堀北さんなんだけど、和冴くんの方から話し合いに誘ってもらえないかな?」

 

「わかった、まかせろ。断られたらごめんだけど」

 

「大丈夫だよ。ありがとう、和冴くん」

 

 まあ、多分無理だと思うけど

 

 俺は清隆と堀北の席へと向かう。

 

「二人とも、少しいいか?」

 

「何かしら?」

 

「放課後、今後のDクラスがどうするべきかの話し合いをするんだが、お前らにも参加してもらいたい。どうだ?」

 

「ごめんなさい、他を当たって貰える?話し合いは得意じゃないの」

 

 即答かよ。まあ、確かにお前は話し合いが出来ないタイプの人間だな。見ればわかるよ。

 

「苦手なものは克服してなんぼだ。そんなんじゃいつまでも成長しないぞ」

 

 少し煽る言い方をする。伊吹ならこれで乗ってくるぞ。さあ、どうする?

 

「ごめんなさい、言い方が悪かったわね。頭の悪い人との話し合いが得意じゃないの」

 

 あ、そうっすか。

 

「清隆はどうする?参加するか?」

 

「悪い、俺もパスだ」

 

「わかった。でも、二人とも気が変わったら来てもいいからな」

 

「安心して、気が変わるなんてことはありえないから」

 

 そんなこといちいち言わなくてもいいから。絶対性格悪いよね、こいつ。そんなんじゃ友達出来ないぞ。

 

「悪い洋介、清隆と堀北は参加出来ないらしい」

 

 勧誘に失敗したことを洋介に報告する。

 

「……そっか。ありがとね、和冴くん」

 

 そう言って、洋介は話し合いに誘うために、色んな生徒の席に向かっていく。

 うーん、なんでこいつがDクラスなんだ?勉強や運動が出来て、行動力や責任感もあり、性格も最高に良い。Aクラスは無理だとしてもBクラスやCクラスには入れる生徒だろうに。この学校は何を基準としてランク付けしているんだ?

 

「あああああああああああああ!!!」

 

 千秋が机に突っ伏しながらいきなり叫び出した。ショックで壊れたか。ご愁傷さま。

 

「急にどうした、大丈夫か?」

 

 俺が話しかけると顔を上げ、涙目でこっちを見る。悲しいのは分かるが泣くなよ。俺すぐもらい泣きしちゃうから、泣かれると困る。

 

「和冴、ポイントどのくらい残ってる?」

 

「5万くらいだけど、それがどうかしたのか?」

 

「私は8000ポイントくらいしか残ってない。これからどうやって生活していけばいいんだろう……」

 

「8000ポイントだったら生活くらいは出来るだろう」

 

 さっき小耳に挟んだが、池や山内は2桁しか残ってないらしい。それに比べたら8000ポイントなんてマシな方だ。

 

「今月はね。でも来月は?2ヶ月後、3ヶ月後は?8000ポイントじゃ足りないよ」

 

「いつまでもクラスポイントが0ポイントなんてことはないだろ」

 

「なんで分かるの?根拠は?根拠はなに?」

 

 うぜぇ……知るかよそんなの。そもそもポイントが足りないなんて自業自得だろ。なんで1ヶ月でほとんどのポイントを使ってんだよ。バカなのかこいつは。

 

「まあ、足りなくなったら言え。少しは貸してやる」

 

「え、ほんと?ありがとう!」

 

 さっきまで泣いてたのにいきなり笑顔になりやがった。演技?今の演技なの?凄いね、お前役者向いてるよ。ウザイ役にハマると思うよ。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 放課後。朝の告知通り洋介は教壇に立ち、話し合いをするための準備を始めていた。

 俺はというと、帰りの支度を全て終わらせ会議が始まるのをぼーっと待っていた。

 それにしても、話し合いをすると言っても何を話し合うのだろうか。ポイントの増減の詳細がわからない以上、やれる事といったら中間テストで退学者を出さないために、授業を真面目に受けて放課後に勉強会を行うくらいしかないだろう。いちいち話し合わなくてもいい気もするが……いや、そういうことではないのだろう。話し合いでみんなと意見を言い合うことが大切なのかもしれない。うん、きっとそうだ。

 

『1年Dクラスの綾小路和冴くん、綾小路清隆くん。担任の茶柱先生がお呼びです。至急、職員室まで来てください』

 

 穏やかな効果音の後、そんな無機質な案内が教室に響いた。

 

 なんだ、なんか俺悪いことしたっけ?と一瞬思ったが、清隆も呼ばれたということはもっと別の何かなのだろう。

 俺は洋介に遅れると伝えて、清隆の方へ向かう。

 

「清隆、行こうぜ」

 

 櫛田と喋っている清隆を呼ぶ。清隆は櫛田と仲が良いのか。少し意外だ。それにしても、清隆も入学時の頃に比べてかなり友達が出来たな。池、山内に須藤、堀北や櫛田。池、山内、須藤はともかく、堀北や櫛田と仲が良いのは男子にとっては羨ましい限りだろう。

 

「お前と二人っきりになるのってなんか久しぶりだな」

 

「仲良くしてるグループが違うからな。しょうがないんじゃないか?」

 

「まあ、それもそうだな」

 

 職員室に着いた俺たちは、職員室の扉をそっと開け茶柱先生を探した。職員室内をぐるっと見渡したが、茶柱先生の姿が見えなかった。仕方なく近くにいる先生に聞くことにした。

 

「すみません、茶柱先生居ますか?」

 

「え?サエちゃん?えーっとね、さっきまでいたんだけど」

 

 そう答えたのは、セミロングで軽くウェーブのかかった髪型の少しおっとりした雰囲気の先生だった。ずいぶん親しいように茶柱先生の名前を呼ぶんだな。友達なのかもしれない。

 

「ちょっと席を外してるみたい。中に入って待ってたら?」

 

「どうする?」

 

「あまり注目を浴びたくないし、廊下で待とう」

 

「それもそうだな。ということで廊下で待ちます」

 

 失礼しましたと言って扉を閉める。

 

「なんか茶柱先生とは雰囲気が全然違った先生だったな」

 

「サエちゃんって呼んでたな。友達かな?」

 

「サエちゃんとは、高校の時からの親友でね。サエちゃんチエちゃんって呼び合う仲なのよ〜。あっ、私はBクラス担任の星乃宮知恵(ほしのみやちえ)って言うの。よろしくね」

 

「はい、よろしくお願いします……って、うわぁっ!!びっくりした……いつの間に」

 

 何この人、黒子のバスケ?幻の6人目(シックスマン)って呼ばれてますよね?

 

「あはは、ごめんごめん。驚かすつもりはなかったんだけど」

 

 そう言ってちょろっと舌を出す。あざとい。

 

「ねえ、サエちゃんにはどういう理由で呼び出されたの?ねえねえ、どうして?」

 

 近い近い。グイグイ来る先生だな。いい匂いするんでやめてもらっていいですか。

 

「さあ。それはまだ俺たちも聞かされてないんですよ」

 

「分かってないんだ。理由も告げずに呼び出したの?ふーん?君たちの名前は?」

 

「綾小路和冴です」

 

「綾小路清隆です」

 

「綾小路和冴くんってあの綾小路和冴くん!?この前の小テストで100点だった」

 

「よくご存知で」

 

「そりゃ知ってるよ!職員室でも結構話題になったんだよ。学年で二人しか満点解答の人はいなかったんだけど、そのうちの一人がDクラスから出たんだからね。ちなみにもう一人はAクラスだよ」

 

 へー、そうなんだ。流石はAクラス。

 

「和冴くんモテるでしょ〜?勉強も出来て顔もかなり格好いいし」

 

 会話の内容が先生というより生徒だな。しかし、こういう先生の方が案外生徒に好かれるのかもしれないな。

 

「モテませんよ。絶賛彼女募集中です」

 

「ふーん?それじゃあ先生が立候補しちゃおうかな〜」

 

 ははは、面白い冗談だ。性別が逆だったら今頃通報されてますよ。

 

「そっちの子はモテるんじゃない?君もかなり格好じゃない」

 

 ターゲットが清隆に変わった。よかったよかった。頑張れよ清隆。俺は暖かい目で見守っといてやるよ。

 

「何やってるんだ、星乃宮」

 

 清隆がいじられていると、茶柱先生が突然現れて星乃宮先生の頭をクリップボードでスパン、と響きの良い音をさせて星乃宮先生の頭をしばいた。

 

「いったぁ。何するの!」

 

「うちの生徒に絡んでいるからだろ」

 

「サエちゃんに会いに来たって言ったから、不在の間相手してただけじゃない」

 

「放っとけいいだろ。待たせたな二人とも。ここじゃ何だ、生活指導室まで来て貰おうか」

 

「指導室って俺らなんか悪いことしましたかね?心当たりが全くないんですけど」

 

「口答えはいい。ついてこい」

 

 冷たいなぁ。ほんとにこの人がチエちゃんなんて呼んでるの?絶対嘘じゃん。想像できないよ。

 

 茶柱先生の後ろについていくと、星乃宮先生が横に並び笑顔でついてきた。茶柱先生がすぐそれに気づき、鬼の形相で振り返る。

 

「お前はついてくるな」

 

「冷たいこと言わないでよ〜。聞いても減るものでもないでしょ?だって、サエちゃんって個別指導とか絶対しないタイプじゃない?なのに、新入生の綾小路兄弟をいきなり指導室に呼び出すなんて……何か狙いがあるのかなぁ?って」

 

 雰囲気が変わった。さっきまでの穏やかな雰囲気が一瞬にしてピリついた。

 茶柱先生と星乃宮先生のビリビリとした気配がぶつかり合う。

 

「もしかしてサエちゃん、下克上でも狙ってるんじゃないの?」

 

「バカを言うな。そんなこと無理に決まっているだろう」

 

「ふふっ、確かに。サエちゃんにはそんなこと無理よね〜」

 

 なんだなんだ?色々と気になる点があるぞ。

 

「おい、どこまで着いてくるつもりだ?これはDクラスの問題だ」

 

「え?一緒に指導室だけど?ダメなの?ほら、私もアドバイスするし〜」

 

 無理やりついて来ようとする星乃宮先生の前に、薄ピンク色の髪をした美人の生徒が立ちはだかった。

 

「星乃宮先生。少しお時間よろしいでしょうか?生徒会の件でお話があります」

 

 Bクラスの生徒か?1年生で生徒会希望か。Bクラスともなるとこういう優等生がいてもおかしくはないのだろう。

 

「ほら、お前にも客だ。さっさと行け」

 

 パン、とクリップボードで星乃宮先生のケツを叩く。

 

「もう〜。これ以上からかってると怒られそうだから、またね、和冴くん、清隆くん。じゃあ職員室にでも行きましょうか、一之瀬さん」

 

 そう言って、星乃宮先生は一之瀬と呼ばれた生徒と職員室に入っていく。

 星乃宮先生を見送り、茶柱先生は指導室に向かうのか歩き出した。程なくして職員室の近くにあった指導室へと入る。

 

「それで、何の用ですか?」

 

「うむ、それなんだが……話をする前にちょっとこっちに来てくれ」

 

 時計をチラチラと確認した後、指導室の中にあるドアを開く。ここは給湯室になっているようで、コンロの上にはヤカンが置かれていた。

 

「お茶でも沸かせばいいですかね。ほうじ茶がいいですか?」

 

 そう言って、清隆がお茶を用意するため粉末のほうじ茶が入った容器を手に取る。

 俺もすぐさま手伝いに行く。

 

「余計なことはしなくていい。黙ってここに入ってろ。いいか、私が出てきて良いと言うまでここで物音を立てずに静かにしてるんだ。破ったら退学にする」

 

「えっと、言っている意味がわからな――」

 

 言い終わる前に給湯室の扉が閉められた。

 

 物音を立てただけで退学って横暴すぎやしませんかね。

 

 それから少し経って、指導室の扉が開く音がした。

 

「まあ入ってくれ。それで、私に話とは何だ?堀北」

 

 どうやら指導室を訪ねて来たのは堀北のようだ。

 

「率直にお聞きします。何故私が、Dクラスに配属されたのでしょうか」

 

「本当に率直だな」

 

「先生は本日、クラスは優秀な人間から順にAクラスに選ばれたと仰いました。そしてDクラスは学校の落ちこぼれが集まる最後の砦だと」

 

「私が言ったことは事実だ。どうやらお前は自分が優秀な人間だと思っているようだな」

 

「入学試験の問題は殆ど解けたと自負していますし、面接でも大きなミスをした記憶はありません。少なくともDクラスになるとは思えないんです」

 

 すごい自信だな。確かに、この前の小テストでも俺に次いで2位だったわけだし。勉強はかなり出来るのだろう。それに、現在の茶柱先生に対する言葉遣いや態度から、面接でも失敗をしていないだろうと推察できる。

 

「入試問題は殆ど解けた、か。本来なら入試問題の結果など個人に見せないが、お前には特別に見せてやろう。そう、偶然ここにお前の答案用紙がある」

 

 絶対偶然じゃないだろ。ま、まさか!?未来予知!?茶柱先生は天帝の眼(エンペラーアイ)の持ち主なのか?星乃宮先生のミスディレクションに茶柱先生の天帝の眼(エンペラーアイ)……まさか、この学校にはキセキの世代の能力を持った先生が在籍しているのか!?

 

「随分と用意周到ですね。……まるで私が抗議のために来る、とわかっていたようです」

 

「これでも教師だ。生徒の性格はある程度理解しているつもりなんでな。堀北鈴音。お前の入試結果は自分の見立て通り、今年の一年の中では同率4位の成績を収めている。二位三位とも僅差。十分過ぎる出来だな。面接でも、確かに特別注視される問題点は見つかっていない。むしろ高評価だったと思われる」

 

「ありがとうございます。では――何故?」

 

「その前に、お前はどうしてDクラスであることが不服なんだ?」

 

「正当に評価されていない状況を喜ぶ者などいません。ましてこの学校はクラスの差によって将来が大きく左右されます。当然のことです」

 

「正当な評価?おいおい、お前は随分と自己評価が高いんだな」

 

 茶柱先生は失笑、あるいは単純に笑いなのか、を堀北に対して浴びせる。

 

「お前の学力が優れている点は認めよう。確かにお前は頭が良い。だけどな、学力に優れた者が優秀なクラスに入れると誰が決めた?そんなこと我々は一度も言っていない」

 

「それは――世の中の、常識の話をしているんです」

 

「常識?その常識とやらが今のダメな日本を作ったんじゃないのか?ただテストの点数だけで人間を評価し、優劣を決めていた。その結果無能な人間が上で幅を利かせて本当に優秀な人間を蹴落とそうと躍起になる。そして、結局最後に行くつくのは世襲制だ」

 

 うーん、身近に心当たりがあるせいか、今の茶柱先生の言葉を聞いて胸を痛む。隣を見ると清隆も同じように思っているような顔をしていた。分かるよ、その気持ち。

 

「確かに勉強が出来るのは1つのステータスだ。それを否定するつもりはない。しかし、この学校は本当の意味で優秀な人間を生み出すための学校だ。それだけで上のクラスに配属されると思ったら大間違いだ。この学校に入学した者には、それを一番最初に説明しているはずだがな。それに、冷静になって考えてみろ。仮に学力だけで優劣を決めていたのなら、須藤たちが入学できたと思うのか?」

 

「っ……」

 

 確かにこの学校は全国屈指の名門校なはずなのに、Dクラスの3バカみたいに勉強が出来ないのに入学できている生徒がいるな。

 

「それに、正当に評価されていない状況を喜ぶ者は居ない、と決めつけた発言をするのも早計だな。Aクラスともなれば、学校から受けるプレッシャーは強く下のクラスからの妬みも強い。日々重たいプレッシャーの中で競争させられるのは想像よりも遥かに大変なものだ。中には正当に評価されないことを良しとする者もいる」

 

「冗談でしょう?そのような人間、私には理解できません」

 

「そうかな?Dクラスにも居ると思うがな。低いレベルのクラスに割り当てられて喜んでいる変わり者の生徒が」

 

 これは一体誰の話をしてるんだ?俺らにはさっぱり分かりません。な、清隆。

 

「説明になっていません。私がDクラスに配属されたのが事実かどうか、採点基準が間違っていないかどうか。再度確認をお願いします」

 

「残念だがDクラスに配属されたことはこちらのミスではない。お前はDクラスになるべくしてなった。それだけの生徒だ」

 

「……そうですか。それでは、今日のところは、これで失礼します。ですが私が納得していないことだけは覚えておいてください」

 

「分かった、覚えておこう」

 

 ギッと椅子を引く音が聞こえる。ようやく話し合いが終わったらしい。

 

「あぁそうだった。あと二人指導室に呼んでいたんだった。お前にも関係のある人物だぞ」

 

「関係のある人物……?まさか……兄さ――」

 

「出て来い和冴、清隆」

 

 このタイミングで出るのはいやだ。よし、このまま待機しておこう。聞こえなかったフリだ。清隆も同じ考えのようだ。天才二人が同じ考えなんだ、確実にこれが正解の解答だろう。

 

「出てこないと退学にするぞ」

 

 えぇ……それはズルくない?

 

「どんだけ待たせるんすか」

 

 ため息をつきながら、俺たち何も知りませんよって顔をして指導室に戻る。

 

「綾小路くんに、綾小路くん……どうしてここに?」

 

 ねえ、何それ。ウケ狙ってんの?何が、綾小路くくんに綾小路くんだ。バカなの?ふざけてるの?

 

「私が呼んだんだ」

 

「私の話を……聞いていたの?」

 

「話?声は聞こえたが壁が厚くて何を話してるのかはよく聞こえなかった。なあ、清隆」

 

「ああ、さすがに内容までは聞き取ることが出来なかった」

 

「そんなことはない。給湯室はこの部屋の声が良く通るぞ?」

 

 どうやら、この人はどうしても俺たちを土俵に上がらせたいらしい。

 

「……先生、何故このようなことを?」

 

「必要なことと判断したからだ。さて清隆、和冴、お前らを指導室に呼んだワケを話そう」

 

 茶柱先生は堀北の疑問を適当に流し、俺たちへと話題をシフトする。

 

「私はこれで失礼します……」

 

「待て堀北。最後まで聞いておいた方がお前のためにもなる。それがAクラスに上がるためのヒントになるかもしれないぞ」

 

 帰ろうとしていた堀北の動きが止まり、椅子に座りなおす。

 

「手短にお願いします」

 

 茶柱先生はクリップボードに視線を落としながら、ニヤニヤと笑った。

 

「清隆に和冴、お前らは面白い生徒だな」

 

「面白いって何がですか?」

 

「入試の結果を元に、個別の指導方法を思案していたんだが、お前らのテスト結果を見て興味深いことに気が付いたんだ。最初は心底驚いたぞ。特に清隆。お前は入試で悪ふざけを行ったのか?」

 

 クリップボードから見覚えのある入試問題の解答用紙が並べられていく。

 

「まずは和冴だが、国語100点、数学100点、英語100点、社会100点、理科100点……そして今回の小テストも100点。素晴らしい。歴代最高成績だ」

 

「ありがとうございます」

 

 茶柱先生が褒めるなんて珍しいこともあるものだ。

 

「次は清隆だが、お前はさらに面白いな。国語50点、数学50点、英語50点、社会50点、理科50点……そして今回の小テストも50点。これが意味するものが何か分かるか?」

 

 全教科50点って、こいつ入試でこんなことしてたのか。初めて知った。

 

 堀北が心底驚いた様子でテスト用紙を食い入るように見て、俺たちへと視線を移した。

 

「偶然って怖いっすね」

 

 清隆、それはさすがに無理があるぞ。偶然で全教科50点揃うわけがないだろう。

 

「ほう?あくまでも偶然全ての結果が50点になったと?意図的にやっただろ」

 

「偶然です。証拠はありません。そもそも試験の点数を操作してオレにどんな得があると?高得点を取れる頭があるなら、和冴のように全教科満点を狙ってますよ」

 

「お前は実に憎たらしい生徒のようだな。いいか?この数学の問5、この問題の正解率は学年で3%だった。が、お前は間の複雑な証明式も含め完璧に解いている。一方、こっちの問10は正解率は76%。それを間違うか?普通」

 

「世間の普通なんて知りませんよ。偶然です、偶然」

 

「あなたは……どうしてこんなわけのわからないことをしたの?」

 

 堀北は未だに信じられないといった顔をしている。俺の小テストの成績は知っていたからさほど驚きはないだろうが、今までただの普通の友人として付き合っていた人が、とんでもないヤツかもしれないと分かったら困惑するのも無理はない。

 

「いや、だから偶然だっての。隠れた天才とか、そんな設定はないぞ」

 

 苦しいな。これは3バカでも誤魔化せれないと思うぞ。

 

「私はもう行く。そろそろ職員会議が始まる時間だ。ここは閉めるから三人と出ろ」

 

 結局、この先生は何がしたかったんだ?俺たちの、というより清隆の実力を堀北に知ってもらいたかったということか?まあ、人の考えなんて考えて分かるものじゃないしな。深く考えるのはやめよう。

 

「それじゃあ、俺は洋介たちの作戦会議の方に行くから」

 

 思ってたより長くなったな。少し早歩きで行くか。

 

「待って」

 

 教室に向かおうとすると堀北に袖を掴まれた。

 

「どうした?」

 

「あなたは、Aクラスを目指してるの?」

 

「……ああ、目指してるよ」

 

 ほんとは全く目指していない。ただ、ここは目指すと言えば早く解放されると思ったから俺は目指すと言った。

 

「それじゃあ、私に協力してくれないかしら」

 

「お前が洋介に協力するなら、強制的に俺はお前に協力することになる」

 

 完璧な返しだ。これだと堀北がどっちを選択しようと俺のやることは変わらない。

 

「そう……分かったわ」

 

 少し考える素振りを見せたが、恐らく洋介には協力しないという選択肢を取ったのだろう。

 

「それじゃあ俺は行くからな」

 

「ええ、さようなら」

 

「またな。清隆もじゃあな」

 

「また明日」

 

 清隆と堀北に挨拶をし、今度こそ作戦会議に参加するべく素早く教室に向かった。

 

「悪い悪い、遅くなった」

 

 俺は扉を開け作戦会議に遅れたことを謝罪する。

 

 ――が、教室には誰の姿もなかった。

 

 携帯には洋介からもう終わったから帰っていいなどのメールが受信されていた。

 

 そっか。

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