ようこそ最強の双子がいる教室へ   作:スプラッシュ

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今回は少し短めです


打ち上げ

 放課後、俺たちDクラスはカラオケで打ち上げをすることになった。大勢で行けて、騒げる場所といったらカラオケくらいしかないから妥当な判断だろう。

 

 適当にいろんな料理を頼んでそれを摘みながら談笑したり歌ったりするようだ。ポイント不足の俺たちがやることじゃねえな。払えないやつとか絶対いるだろ。

 

「乾杯!」

 

「「「乾杯!」」」

 

 洋介の合図と共にみんなで叫ぶ。

 早速、軽井沢たちが歌を歌い始める。そしてなかなか上手い。さすが女子高生。

 

 洋介は女子と会話するのに忙しそうだし、話す人がいない。

 

「お疲れのようだね、和冴くん」

 

 暇そうにしてる俺の隣に小野寺が腰を下ろした。

 

「お前ら赤点候補組のせいでな」

 

 小野寺は赤点候補組の1人だ。そのせいもあって、小野寺とはそれなりに仲良くなることができた。

 

「あはは、その節はどうも。でも、和冴くんのおかげで点数ものすごく上がったから感謝してるよ」

 

 そのせいで須藤が退学になりかけたんだけどね。

 

「これからは自分で勉強出来るようにしろよ。水泳も大事だけど、学生の本分は勉強だ」

 

「もちろんだよ!赤点取ったらそれこそ大好きな水泳が出来なくなるしね」

 

「そういえば、今日は部活休みなのか?」

 

「うん、顧問の先生が今日は休めって」

 

 なかなかホワイトな部活だな。もしかしたら部活というのは意外とホワイトなものなのかもしれない。部活動をしたことがないからわかんないけど。

 

「そうだ、連絡先交換しない?和冴くんとはまだ交換してなかったし」

 

「いいぞ」

 

 俺は携帯を出して小野寺と連絡先を交換する。しかし、女子の連絡先が異様に多いな。千秋、軽井沢、佐藤、篠原、森、前園、市橋、櫛田、小野寺と9人もいる。ほとんどが千秋繋がりの軽井沢グループの連中だけど。

 それに比べて男子は洋介と清隆だけだ。女子の連絡先が多いというより圧倒的に男子のが少ない。

 

「それじゃあ、私はこの辺で」

 

 そう言って小野寺が立ち上がる。

 

「ああ、じゃあな」

 

 小野寺はバイバイと手を振って友達の方に向かった。

 

 また1人になってしまった。

 

 そういえば櫛田の姿が見えないな。もしかしたら清隆たちの方に行っているのかもしれない。櫛田のおかげで須藤たちが勉強会に参加してくれたって清隆が言ってた気がする。

 

「やっほー和冴、元気?」

 

 歌い終わった千秋がこっちに近づいてきた。その後ろに洋介と軽井沢グループもいる。

 完全に洋介がハーレム状態だ。羨ましい。

 

「元気なわけないだろ。くたくただよ」

 

「今回は和冴が1番頑張ってたもんね。お疲れ様」

 

 俺なんかより洋介や堀北、櫛田の方が頑張っていた気がするが、褒められるのはなかなか気分が良いから黙っておこう。

 

「お前は勉強サボってたみたいだけどな」

 

「え、なんで?サボってないよ」

 

「へー、そうか。だったらお前がテスト期間中にも関わらず深夜まで電話してるっていう情報はデマだったのか?」

 

 俺の言葉を聞いた千秋が驚いて振り向くと、佐藤が手を合わせて謝っている。この情報は佐藤から聞いたものだ。佐藤は赤点候補組だったから会話する機会があり、その時に千秋と2時くらいまで電話していたことを聞いたのだ。別にテスト期間中に夜中遅くまで勉強をせずに過ごすのは悪いことではない。それは本人の自由だ。しかし、それをずっと続けていると、この学校ではいつか必ず痛い目にあう。手遅れになる前に正すべきところは正さなければならない。

 

「う、うん、そうだよ、デマだよ。誰よ、そんな適当なこと言った人は」

 

「目が泳いでるぞ」

 

「……うっ」

 

 千秋はやれば出来るタイプの生徒だ。頭の回転も早く、テストの順位もクラスでは上位だ。しかし、勉強へのやる気が少ないから勉強が出来ない人と思われがちだ。それなりに勉強をすれば学年でも中の上は狙えるだろうに。

 

「別に責めるつもりはないけど、この前お前が俺に退学して欲しくないって言ったように、俺もお前に退学して欲しくないんだ。だから、勉強はちゃんとしてほしい」

 

 俺の言葉を聞いた千秋が少し俯いてた顔を上げて俺の顔を見る。そして何故かニヤつき始めた。

 

「なんでニヤニヤしてんだ?大丈夫か?」

 

「いやー、和冴は私に退学して欲しくないと思ってるって知って、ちょっと嬉しかった」

 

 自分で言うのはなんとも思わないが、人に言われるとなんか恥ずかしいな。顔が赤くなりそうなのを必死に抑える。

 

「普通だろ、友達なんだから」

 

「うん、そうだよね、普通だよね。分かってるって」

 

 分かってるならそのニヤニヤをやめろ。くそ、失敗した。注意のつもりが、逆に千秋を調子に乗らせてしまった。

 

「前々から気になってたんだけどさ、2人って付き合ってるの?」

 

 軽井沢がニヤニヤしながら聞いてきた。おい、なんでお前までニヤニヤしてんだよ!しかもなんだその質問は!今の会話でどうやったらその質問が出てくる。

 

「付き合ってるわけないだろう」

 

「えー、ほんとに?その割には凄く仲良いよね。名前も下の名前で呼び合ってるし」

 

 なんだその薄い考察は。仲が良いから、名前で呼び合ってるから付き合ってるって発想はおかしいだろ。それだと俺と洋介も付き合ってることになるぞ。

 

「それを言うなら、お前らだって付き合ってるくせに苗字で呼び合ってるじゃん。ほんとに付き合ってんのか?」

 

「あたしたちにはあたしたちのペースがあるの。ね、平田くん」

 

 なんか違和感があるんだよなこのカップル。この2人は1年の中でもかなり有名なビックカップルだ。誰もがお似合いだと思う組み合わせだろう。俺もそう思う。けど、少しラブラブ感が足りたい気がする。俺が恋愛経験が少ないから理解していないだけで、カップルなんて案外こんなものなのかもしれない。

 

「私、付き合うなら年上がいいから。同級生は対象外なんだ」

 

 何故か俺の方を向いて言ってくる。安心しろ、俺もお前のことを好きじゃないし、付き合えるとも思ってないぞ。

 

 少し話をして軽井沢たちがまた歌を歌うためにマイクがある方へと向かう。洋介も軽井沢に腕を引っ張られて連れていかれる。軽井沢の彼氏は大変そうだなぁ。

 

「お前は行かなくてもいいのか」

 

 俺は何故か残った千秋に話しかける。

 

「もう少し和冴と喋りたかったから」

 

 千秋さん、そういう言い方は世の男子を勘違いさせてしまうからやめなさい。

 

「そういえばさ、須藤くんの退学ってどうやって取り消したんだろうね」

 

 まあ、気になるわな。教室ではどれだけ茶柱先生に抗議しても全て跳ね返されたのに、なんで急に退学が取り消しになったのか、ほとんどの生徒にとっては意味不明な出来事だっただろう。

 

「買ったんだろ」

 

「買った?どういう意味?」

 

 意味がわからないって顔をして俺の方を見る。

 

「覚えてないかもしれないけど、入学式の日に茶柱先生がポイントで買えないものはないって言ってたんだ。だから、テストの点数もポイントで買うことが出来るってことだ」

 

 しかし、これはあくまでも俺の想像。これが正しいのか正しくないのかは、清隆と堀北、そして茶柱先生の3人にしかわからない。

 

「入学式の時点でヒントが隠されてたってことか。なるほどね。でも凄いなぁ、堀北さん。それと和冴も。そんなことに気がつくなんて」

 

 気がついたのは恐らく堀北ではなく清隆だろう。しかし、あいつは目立つことを嫌っている。俺がここで気がついたのは清隆だよって千秋に暴露したら、明日くらいに清隆にボコボコにされるな。清隆にはどう頑張っても勝てないし。

 それに、これはちゃんと茶柱先生の言ってたことを聞いていれば誰でも気づけたことだ。もしかしたら、真面目なAクラスの連中は全員気づいているかもしれない。

 

「それにしても、和冴が点数下げなかったら須藤くん絶対退学だったよね」

 

「気づいてたのか」

 

「そりゃあそうだよ。結構和冴のことは見てるからね」

 

 ストーカーですか?

 

「まあ、今回はテスト範囲が変更されたってトラブルがあったしな。それに、次は過去問もないだろうし平均点はさほど上がらないだろう」

 

 今回みたいなトラブルが今後起きないとは限らないが、恐らく大丈夫だろう。こんなことが何回も続いたらさすがに問題だ。これは勝手な予想だが、茶柱先生はテスト範囲が変更されたことをわざと伝えなかったのではないだろうか。このままでは確実に退学者が出てしまう状況に追い込んで、何らかの方法でそれを回避させることが目的だった。つまり、櫛田が持ってきた過去問を、Dクラスが見つけられるかを試したのではないだろうか。これは、なんの根拠もない俺の推測だが、もし、これが当たっていたら、茶柱先生は意外と俺たちのことを考えている良い先生なのかもしれないな。

 

 それから千秋と談笑したり、知らない歌を歌わされて赤っ恥をかいたり、なかなか充実した打ち上げを送ることができた。さっきは行きたくないと言っていたけど、終わってみれば案外楽しかった。明日が休日だったら最高だったのになと思いながら俺は寮に帰宅した。




次回から二巻の内容に入ります
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