DQ8 ホイミンとマイエラのひとたち   作:ぽんぽんペイン

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マリオンにモシャスの疑いがほんの少しかかりましたが、ホイミンは間違いなく誘拐されています。


ホイミン、誘拐される

騎士団員マリオンは、団長様とククールをまんまと罠にはめたわけですが、二人ともにわかには信じられませんでした。真相を暴こうとマリオンを探しているのですが、修道院はもちろん、孤児院にも、薬草を育てている畑にもいません。さらに、ホイミンの姿もありませんでした。

 

修道院に戻ることを考えた二人でしたが、古い馬小屋が目に入った団長様は、あることを思い出しました。この馬小屋は、修道院地下の拷問部屋にあるアイアンメイデンと地下通路でつながっているのです。

 

 

「地下通路があるんですか?」

「そうだ。万が一の場合の避難経路だ。昔はよくあれを使って避難訓練を行っていたそうだが、オディロ院長様が腰を痛められてからは行われていない」

 

そんな過去があったのか、と思うククールです。ですが、あの血塗られたアイアンメイデンには入れられたくないな、と思いました。拷問器具のあの血は、もしかして演出なのかと尋ねたかったのですが、団長様がずんずん進んでいってしまわれるので、またの機会にしようと決め、後を追います。

 

 

「だいぶ古い馬小屋ですね……」

「地下通路は大事な避難経路だから、メンテナンスはきちんとしてある」

 

団長様のおっしゃる通り、馬小屋の中へ入ると、案外整っておりました。

古い干し草を分けると梯子があります。

 

「へー、こうなっているんですね。知らなかった」

「いつからあるのか、誰が作ったのかは知らん」

ククールだけには教えたくなかったと、団長様は思いましたが、マリオンのためなので仕方がありません。この落とし前はマリオンにつけてもらおうと、脳内メモ用紙に書き込みました。

 

「気をつけて……」

 

先に梯子を下りる団長様にククールが声をかけました。

団長様に続いてククールも梯子を降ります。暗くてよく見えないので、足でゆっくりと梯子の段を探りながら降りていきます。団長様はさっさとお降りになり、メラの呪文で明かりを作りました。

 

「っと、やっと降りられた。結構深い通路ですね。空気が冷たいです」

 

ククールは、明かりを持つ団長様の近くへ行きます。明かりに照らされる先には、暗いトンネルが続いているのが見えました。

 

「よく見えんな。……誰かいるか!」

 

団長様は明かりをあちこちに向けながら声をかけます。しかし、誰の返事も聞こえませんでした。ククールも団長様の後ろにつき、一緒にきょろきょろと見まわしました。すると、何かを見つけたようです。

 

「団長どの? あそこ……なんかあります」

 

ククールの示す先に明かりを向けると、二人のいる場所から10歩ほど離れたあたりに麻袋が見えました。団長様はレイピアに手をかけながらすっと近づきます。余程集中していらっしゃるのでしよう、ククールが団長様のウエストに手を添えてぴったりくっついてくるのにもお構いになりません。

 

近づいていくと、麻袋は、うぐうぐ、のような音を発し、もぞもぞと小さな動きを見せているのがわかりました。

 

「マ、マリオンかな……」

ククールはちょっぴり怖いのでしょう、小さく発した声が震えています。

 

「誰だ?」

小さな、しかし厳しい声で団長様が声をかけました。異物のうぐうぐ、もぞもぞ、が激しくなります。

 

「おい、袋を破れ!」

「え? オレ?」

腰にしがみついていたククールを振り払うと、団長様は厳しくおっしゃいました。ククールは仕方がないので、自分のレイピアをそろそろと抜き、おそるおそる麻袋に近づきます。普段あまりちゃんとお祈りしないククールですが、久しぶりに女神さまに『中身がマリオンでありますように』と願いを込めて祈りました。そしてゆっくりと袋を切り開きます。その間、異物はこれで助かると思ったのでしょう、動きを止めておとなしくしていました。

 

「マリオン!」

 

麻袋の中から出てきたのは、予想通りマリオンでした。縄でぐるぐる巻きにされています。団長様が口をおおう布を外してやりました。

 

「すまん、油断した」

マリオンは態勢を整えながら言いました。

 

「誰がこんなことを?」

団長様の眉間にしわが生まれます。

 

「わからない。でもお前だった」

「何だと?」

マリオンは困った顔をして、団長様を見ます。そして話し始めました。

 

「……今日は昼メシを孤児院で取る日だから、騎士団宿舎に取りに行こうとしたんだ。そうしたら、珍しくお前が孤児院の入り口にいて、ハーブ畑に植えてもらいたいものがあるから畑に行ってくれって言うんだ。苗は準備して置いてある、自分は忘れ物をしたから、先に行って植えはじめてくれと。午後じゃだめかと言ったら、時間はかからないだろうから、今済ませてくれって言うんだ」

「私はそのようなことは言ってない」

「ああ。お前がハーブなんておかしいと思ったが、院長様が植えたい苗だって言うから、すぐに畑に行ったよ。だが、苗は見あたらない。そうしたらお前がやってきて、ラリホーマをかけてきた……覚えているのはそれだけだ。気づいたら麻袋に入れられていた。もぞもぞ動いていたらどっかから落ちて……。……ここはどこだ?」

「アイアンメイデンからの抜け道だ」

「馬小屋に入れられたのか。でもお前たちどうして此処へ?」

 

二人は手短かにことの次第を説明しました。団長様はマリオンに騙されて院長室へ行ったこと、ククールはマリオンに騙されて地下室へ行ったこと……。

 

「俺じゃない。俺は昼前にこの畑へ来ている」

「オレたちがマリオンに騙されたのは昼過ぎだ」

 

ではあのマリオンは誰なんだ……と三人は考えます。

 

「……モシャスだ……」

団長様はおっしゃいました。

 

「モシャス? 高度な形態模写術じゃないか。モシャスまでしてオレたちを騙すなんていったい誰が?」

「おい、ホイミンは修道院にいるのか? 俺は今日は話してもいないぞ」

 

団長様とククールは顔を見合わせました。

 

「……ホイミンがあぶない!」

 

三人は抜け道をアイアンメイデンに向かって走り出しました。

 

 

「うわーっ!」

 

突然ガンガンと大きな音がしたと思ったら鋼鉄の女神様から人が現れ、ちょうど前にいた騎士団員メルソーが驚いてしりもちをつきました。

 

「おやおや、お三人様で何か楽しいことを?」

 

団長様、マリオン、ククールの三人がぞろぞろと現れたのを見て嬉しそうにしているのは、改宗担当サンソン修道士です。

 

 

「サンソン殿、今日、何か変わったことはございませんでしたか?」

マリオンもククールもまだ肩で息をしているというのに、団長様はもう落ち着き、サンソン修道士に尋ねます。

 

「はて? アイアンメイデンを内側から開けるなどという高度な技を見た、という今の事を除けば、昼前に中庭でマルチェロ団長殿があくびなさっているのを見ましたよ。珍しいなと思い、しばし見ておりましたら、これまた珍しいことに、孤児院へ向かわれましたので……」

サンソン修道士は、あごに手を当て、小首をかしげながら言いました。

 

「孤児院へ? モシャスのマルチェロだな」

「モシャスですって?」

 

マリオンは手短にこれまでの事を話しました。一緒に話を聞くメルソーも目をぱちくりさせています。

 

「ホイミン……マロウ君が危険ですね。私も探しましょう。メルソーさん、あなたもですよ」

「はい!」

 

団長様、ククール、マリオン、サンソン修道士、それにメルソーまでもが加わってホイミンを探しました。小さな修道院です、すぐに探索は終了してしまいました。

 

「マリオンを探しに行った時には、もういなくなっていたと考えたほうがいいな」

「いやククール、もっと前だよ。……ホイミンは今日、午前中に武器庫にいて、ハーブ園に行ったのを見た者がいる」

情報を集めてきたメルソーが言いました。

 

「午前中にはもう修道院からいなくなっていたのか」

団長様も厳しい表情です。

 

マリオンも心配そうに言いました。

「……そうすると、犯人は、まず誰かに化けてホイミンをハーブ園に誘い出した。それからマルチェロに化けて俺をハーブ園に誘い出した。あの時は昼前の準備でバタついていたが、孤児院と修道院を行き来するものはいない。俺がモシャスのお前と会った時も誰もいなかった。だから、俺が出かけたのは誰も知らないだろう」

 

「ホイミンを呼び出した犯人は、マリオンかマルチェロ団長どののモシャスでしょう」

「なぜだククール? 俺やマルチェロ以外ということもあるだろう」

マリオンは自信たっぷりに言うククールのほうへ顔を向けました。

 

「いや、ホイミンが一人で出かけるのは禁止されている。それなのに誰にも何も言わずに行ったってことは、マリオンか団長どのだよ。たとえばオレだったら、『本当ですか? ククールさんのおサボりの片棒担ぐのは嫌ですよ。マリオンさんに聞いてきます』とか言うだろうし」

 

「……確かにそうだな」

妙に納得するメルソー。

 

「で、犯人はまんまとホイミンとマリオンを修道院から出し、オレと団長殿の足止めをするために、マリオンにモシャスしてオレたちを騙したわけだ。もう確実に、ホイミンは誘拐されてますよ。一人で逃げ出すはずもないし」

「そうだよな。ククールの言う通り、誘拐された線が濃厚だな。逃げたって行くところないだろ、あいつ……」

マリオンは腕組みをして言いました。

 

「とにかく、院長様に報告だ。マリオン、ククールも来い。サンソンさんとメルソーは、ホイミンのことは今は伏せておいてくれ。あとで院長様か私がきちんと伝えることとする」

「わかりました、マルチェロ団長殿」

「了解しました」

団長様はきびきびと指示を出し、ククールとマリオンを連れて院長室へ向かいました。

 

報告を受けた院長は、状況を冷静に受け止め、今日のところは様子を見ようと言いました。何かの間違いで、畑のくぼみで眠り込んだか迷子にでもなっている可能性も否定できないからです。そのかわり、周辺の見回りの人員を増やすことにしました。騎士団にもホイミンの失踪のことは伝えられましたが、事を荒立てないように、と注意がされました。

 




アイアンメイデンの中に通路があるなんて、使わなくちゃもったいないです。この後は、ホイミンをどうにかして探し出さなきゃなりません。
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