DQ8 ホイミンとマイエラのひとたち   作:ぽんぽんペイン

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カッサンドラの魔法学校へ入り込んだククールのお話。


スパイ大作戦その8

ついにカッサンドラの魔法学校を見つけた団長様たちでしたが、不用意に魔方陣に触れてしまったククールが地面の中へと吸い込まれてしまいました。

 

 

ドスンと鈍い音。

 

「……って、いてて」

滑り台を滑ってきたような感覚が終わると、その先、落ちたところは固い石の上。派手にしりもちをつき、あまりの痛さにしばらく動けずにいました。

 

「誰だ、お前!」

人の声です。

どうやら複数の人がいるようでした。彼らは、いきなり人が魔方陣から飛び込んで来たので、ちょっとしたパニック状態です。数十人が一斉に杖を向けました。

 

ククールはその気配にさっと身構えました。

 

──おいちょっと待て! 何人いるんだよ!

 

地下砦は薄暗く、目が慣れるのに少し時間がかかりました。ゆっくり見回すと、同じような年齢の子どもばかり。間違いなく、カッサンドラの学校です。皆、真剣な目をしてククールに杖を向けています。それほどの魔力はなさそうですが、大勢で攻撃されればちょっとわからないな、とククールは思いました。仕方がないので両手を上げます。

 

砦は洞窟を利用して作ってあるようです。天井はあまり高くなく、遠くで水音がします。ククールの落ちてきた場所は、円形のスペースでした。あまり広くはありません。この場所から何本か通路とつながっているのがわかりました。

 

ククールは子どもたち全員の顔を確かめます。この中にホイミンはいません。

 

「カ、カッサンドラ様に取り次ぎを……」

ククールは両手を上げたまま言いました。

 

誰も杖を下ろしません。さすが、よく訓練されているようです。

 

「お前、何者だ? ここがカッサンドラ様の学校と知って来たのか?」

「入学希望者か?」

何人かが警戒しながらも声を上げました。

 

よく見れば、ククールを囲んでいるのは10歳くらいの子どもばかりです。

 

「ああ……そうだ、入学したい。それで年齢制限があるのか聞きに来たんだ。オレ、君らより大分兄さんだからな」

ククールはにこりと笑顔を見せ、おどけてそう言いました。

 

「あたし、連れてってあげるよ」

子どもたちの中から一人の少女が出てきて言いました。杖は下ろしています。

 

「サンキュー。でも、いいのかい? 練習中だろ? 場所を教えてくれれば一人で行くよ」

「大丈夫よ。昼休みだし」

少女は、こっちよ、と言ってククールの前をすたすた歩いて行きます。

 

「助かるよ、お嬢さん。オレはククール。キミの名前は?」

「あたしパメラ」

「よろしくな」

「よろしく」

パメラはにっこり笑ってククールを振り返ります。

パメラの青い瞳の色は、ククールのサファイア色に負けないくらい鮮やかでした。

 

 

「パメラ、魔法使いにはなれたのかい?」

「まだ。杖がないとできないの。ククールはなにか魔法できる?」

「おう。オレ、バギっていう風を起こす魔法が得意だぜ」

「へぇー! ねえ、杖なしでできる?」

「もちろんさ」

すごいのね、と言ってパメラは歩をゆるめました。

 

砦の中は複雑でした。通路はくねくねと曲がっていて分かれ道もたくさんあり、いくらも進まないうちにもうどこからきたのかわからなくなってしまいました。

 

「パメラ、道わかるのか?」

「うん。大丈夫。秘密があるの。ククールには教えてあげられないけどね」

パメラはいたずらっぽくウインクします。

 

──かわいい子だな。10歳くらいだと、ホイミンよりちょっと下だな。でも身長はあんまり変わんないな。

 

「やだ、ククール、今くすくす笑ったでしょ」

「え? ああ、ちょっと思い出し笑い……って、パメラすげえな、気配でわかったか?」

 

「あ、うん。あたし、魔法っていうより、なんだろう、占い? それが得意なの」

「へえ。じゃ、オレのこと占ってよ。さあ、オレはどんなヤツ?」

 

パメラは、そうねえ、と言って立ち止まり、ククールをまじまじと見つめました。

 

「……そうね、ククールは嘘つき」

「お、おお、そうか……」

 

──なんか当たってんじゃん。

 

「あとは、さみしがりやさん」

「そ、そうかな」

 

──そうなのか?

 

「それで、頼まれたら断れない」

「ほ、ほう……」

 

──うん。断れない。

 

「どう? 当たってる?」

「うん、そうだな。すげーな、パメラは。そんで魔法もできるんだろ? 何が得意?」

「そうね、ラリホーとかメダパニは確実よ。今は攻撃呪文練習中なの」

「へえ!」

 

二人はおしゃべりしながらまた進み始めました。

 

「……なあパメラ、魔法はオレくらいでも習えるのかな? もっと年上の人はいないの?」

「いるわよ。よくできる人は、カッサンドラ先生とお城へ行くの。でも、もっとできる人は先生と一緒にいて、あたしたちに教えるの」

「ふうん。……あんまりできない人は? オレ、ちょっぴり自信ないんだよ。怒られちゃうかな?」

「そうね……あんまりできない人はいないから、あたしわかんない。ごめんね、ククール」

パメラは切れ長の一重の瞳を向け、すまなそうに言いました。

 

「そっか。じゃあ、パメラもよくできる生徒なんだな?」

「うん、多分。でも、お姉ちゃんのほうがすごいと思う。先生と一緒だから」

「へえ! パメラはお姉ちゃんがいるのか。いくつ? 綺麗?」

「やだ、ククール。エロい!」

パメラはけらけら笑いながら言います。

「お姉ちゃん、あたしと同じ。あたしたちね、双子なの」

 

──双子! カッサンドラめ、どんだけ双子好きだよ。

 

「そうなんだ? せっかくなのにお姉ちゃんと一緒にいられなくてさみしいな」

「うん。でも、いつも会えるし、ご飯一緒だから平気。……ククールも双子なの?」

「いや。8歳も上の兄貴がいるよ」

「ふうん。双子だったらよかったのにね。……あのね、この学校、双子ってわりと入りやすいのよ。どうしてかわかんないけど。時々、お姉ちゃんみたいなすごくできる子がいるんだって。あっ、先生の部屋ここよ。頑張ってね」

「パメラ、ありがとう。あれ? 一緒に来てくれないの? 先生に紹介してくれよ。キミが一緒なら先生もオッケー出してくれそうだ」

 

パメラは少し寂しそうな顔になり、言いました。

「うん、行ってあげたいけどダメなの。この線から先は行けないの。どんなにしてもね」

「線?」

 

パメラは足元に目をやりました。パメラの言う通り、銀色の線が引いてあります。

 

──結界か。カッサンドラめ、根回しいいな。

 

「じゃあ、オレも行けないじゃん」

「平気よ。お客さんだもん。行かれない魔法かかってないから」

 

──へえ。そういうわけか。

 

「なあパメラ、魔法使いになりたいんだろ?」

「ええ、まあ……」

パメラの青い瞳がちょっと下を向きました。

 

「ここにいるのは楽しいか?」

「……」

パメラは少し困った顔になりました。

 

「ご、ごめん、変なこと聞いたよな、オレ。……楽しくないならさ、やっぱやめようかと思って」

「あたし、行くところないもの……。他に。ペトラは先生と一緒だし」

「お姉ちゃん、ペトラってのかい?」

「うん」

「な、ホイ……、マロウって知らねえ? 友だちなんだ。魔法が上手で……」

「マロウ……知ってる。ペトラと一緒に練習してる。だけど、全然ダメなの。なのに、先生、すごく厳しくて。ククール、マロウと知り合いなら助けてあげたら? マロウ、やめたほうがいいよ。どうしてここに来たのかわかんないくらいだもん」

「わかった。助けるよ」

「あと、もし……、もしでいいんだけど、外に行くならあたしも行きたい。ペトラも。ホントは……」

パメラはしくしく泣き出しました。

 

「よし、わかった。マロウと、ペトラと一緒に出ような」

「ありがとう、ククール。でも、あの先生、怖いよ。すごく」

「おう、大丈夫だ。待ってろ。さあ、さっきのところに戻って。今話したことは内緒にするんだぞ?」

パメラは、力強くうなずいて走って行きました。

 

パメラの姿が見えなくなったのを確認し、ククールはカッサンドラの部屋の前に立ちました。

 

「さあて、どうするかな……」

 




次は団長とニコラスのお話です。
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