カイロス   作:桜エビ

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スランプ…


夜無き夜明け

『こちらナイト1-1。結構奥まで対空陣地をを潰した。AWCSを飛ばせる状況か確認したい。』

 

「ビショップ2隊に対地攻撃ついでに確かめさせろ。出来る限り念入りにな。」

 

司令部の喧騒はいまだに止まない。

AWCSなど中央基地ならともかく、ここに関してはどうして配備されているのかという品物。故に予備などない。

 

『こちらナイト4-1!ナイト4-3左腕部破損!!一時後退の許可を!!』

 

「許可する。フェイズ1終了の確認が取れ次第先に基地に戻れ。」

 

例えこの作戦が成功しても、損害が大きければこちらから動くことができなくなる。

過剰な損害はいかなる状況でも回避しなければならない。

 

『こちらビショップ2-1。AWCSの予定航路を飛んだが弾が来ない上、陣地も見えない。潜んでる可能性はあるが絨毯爆撃の真似事をするには爆弾が足りない。』

 

「了解、残った爆弾を適度にお見舞いして帰ってこい。」

 

AWCSの離陸シーケンスを開始しながら、目の少ない状況から出来る限りの俯瞰を試みる。

敵の陣地の分布は想定より手前だったが、接敵数と密度から鑑みるに戦力の総量の予想と実情の誤差は大きくないだろう。

万が一伏兵がいても、今の2倍でない限り現状搭載しているフレアとチャフでどうにかなりそうだ。

だが最悪は嫌なタイミングで来ると相場が決まっている。

AWCSが墜ちたら、次はより複雑なBプランで行くしかなくなるのだから用心に越したことはないのだ。

地上戦力が足りないのなら航空戦力を。

敵は何を出してくるのか分からない連中だ。予測とて今迄からの推察の域を出ないものしかできない。

 

護衛の戦闘機はできる限りつけてある。

それでだめというなら、敵は恐らく東側は隠密性を捨て本隊などを投入してきているはずだ。それに孤立した一基地が立ち向かうのは無謀。

だが、その利点は薄い。

 

 

一番の頭痛の種が、よりにもよって敵の取る一番確率の高いものなのが嘆かわしい。

 

「…敵機接近!!恐らくは…」

 

そしてそういう思考はよく現実になる。

 

 

「くそっ!!!当たらねぇ!!!やっぱりライフルでも見切られるのか!!」

 

残像すら残して高速機動を行う相手に森林の真ん中で遭遇したナイト2小隊。

まるで空気を掴もうとするような感覚で射撃するが、全く攻撃も当てられず翻弄され続ける。

そして、敵影_アステリアは思い立ったかのようにパルスサブマシンガンを3番機に向け引き金を引く。

 

「ぐぉあぁああっ……」

 

「ヨアキムゥウウウウ!!!!!」

 

光弾がAGを襲い、胴体を中心に10個前後の穴が開いた。

数発命中したあたりで悲鳴を流していた通信がぶつりと切れ、その一拍後に攻撃を受け終わった機体が崩れ落ちた。

ミラムのコックピットは背中から飛び出しているが、そのコックピットにも貫通弾がった。

生存は絶望的。

 

「ちくしょぉおお!!!マザー!こちらナイト2-1!!やられた!ナイト2-3ダウン!!ナイト2-3ダウン!!」

 

半狂乱になりながら追撃を行うナイト2-1のエドヴィン中尉。

先程の焼き増しのように攻撃は見切られ命中はない。

今の奴を足止めするにはが弾幕が、物量が足りな過ぎる。

 

エドヴィン機の上空で弧を描くように離れ再び接近、一気に彼我距離が縮みエドヴィンから見たアステリアの姿が肥大化する。

その右前腕部から光の刃が解き放たれ、袈裟斬りに斬ろうとする姿が目の前いっぱいに広がった。

 

「うわぁあああああああ!!!!!」

 

『させない!!!』

 

アステリアの光の刃が振り下ろされると認識したその刹那、少年の声が通信機から流れエドヴィンの目の前からアステリアは消えていた。エドヴィンの動体視力では追いきれないほどの速度でカイロスが体当たりしたためだ。

 

カイロスが急減速し、アステリアは体勢を立て直す分だけ吹っ飛び続けた。生まれた僅かな時間にエアルはアステリアとの間にカイロスを割り込ませ、これ以上やらせはしないと立ちはだかる。

 

「こちらシルバーリング。すいません…間に合いませんでした…」

 

「いや…助かった…悔しいが俺達じゃ太刀打ちできない。後を頼むぞ。」

 

そう言ってナイト2小隊が撤退していく。

それを見送りながら、カイロスは改めてレーザーライフルを構えた。

 

『…やっぱりそっちにつくんだ…兄さん…』

 

アステリアはゆらりと立ち上がる。

俯き気味で、どこか怨霊のような不気味さを醸し出す。

 

『この分からず屋……!!!!』

 

次の瞬間、瞬間的に加速するとエドヴィンを狙ったプラズマブレードをカイロスに向けて振り下ろす。

だが、エアルもカイロスで戦うのは3度目、アステリアについては先日戦ったばかりだ。

両手のブレードで余裕をもって防ぎ、弾き返す。

 

『…応急修理はできるパーツがそろっているみたいですね。』

 

「ああ、だがいくつか足りてないのか…」

 

今の交錯の間に、二人は時間を引き延ばしてアステリアの状態を確認していた。

破損していた左足と大きすぎる胴体の傷こそ修復されていたものの、右肩の装甲と左腕のブレードの修復はまだのようだ。

このような状況でも引っ張り出されたと思うと僅かに同情してしまいそうになるが。だが、罠の可能性も考慮するととてもそんなことしている余裕はない。

 

『そのような状態で戦うとは、舐められたものです。』

 

『うるさい!!!』

 

カイロスが煽ることで鎌を掛けるつもりのようだ。

その言葉にさらに怒りをましたアステリアはブレードの使えない左手でレーザーサブマシンガンを乱射する。

 

それを回避しながら応射するカイロス。

距離を保ったまま銃撃し合い、高速で木々を掻い潜りながらの機動戦に発展した。

だが、先程まで怒りに満ちていたにもかかわらず、アステリアはどこか若干後退が多い。

 

「カイロス…これ…」

 

『誘い込まれてますね…ですが罠があると言うならそれはそれで大問題です。ここから私達を墜とす気の罠なら、AWCSが墜ちかねません…エアル。』

 

「なんだ、カイロス」

 

エアルは、アステリアとの銃撃戦をしながらカイロスと話す。

手慣れてきたのか、捜査には淀みがなくカイロスとこうやって会話できる余裕が出来てきた。

 

『最悪アドアームズの展開を考えましょう。ここで私達は死ねませんし、AWCSも失うわけにはいかない。』

 

「食い破れ、か。好みじゃないけど、やるしかないな」

 

その瞬間だった。アステリアが森から一気に上昇する。

カイロスがそれを追って銃口を上に向けた瞬間、コックピットに警報が響く。

咄嗟に左への回避行動。

一拍前までカイロスの胴体があり、今は右手のライフルがある場所をレーザーが貫いた。

すぐさま無用の長物となったレーザーライフルを投げ捨て、他の装備を持てるようにする。

レーダーが、周囲に今までなかった反応を捉え敵を示す光点が包囲網を作るように増えていく。

 

「カイロス…これは!!」

 

『…私達の格下の量産兵器、今の言葉で訳すならアルケーといったところですね…まさかここまで発掘しているとは。アステリアの指揮下の元待ち伏せですか…』

 

一つが森の闇から姿を現す。

足はなく、スカートのようでホバーのように浮いており上半身に関しては両腕は肘から下がレーザーライフルだ。頭は平べったく、単眼がこちらを覗いている。

 

『…ごめんね兄さん。あれから考えて兄さんが守ろうとしている人たちが悪い人ってわけじゃないのは分かったの。』

 

まるで勝利が決まったからすべてを話そうと言わんばかりにアステリアは話しかける。

 

『ならばどうしてこう再び戦うのです?』

 

『でも寝返っちゃったり戦うのをやめたら…私を見つけてくれたキール…私の今のランナーの立場がなくなっちゃうから。』

 

暗闇に包まれた遺跡から助けてくれた恩人。その人への恩返しなんだと彼女は続けた。

 

「こんなろくでもない作戦に参加するろくでなしの兵士なんだけどな…悪いが…俺にも後ろには国民がいる!!!!」

 

アステリアは右手を天高く上げる。

それは号令だった。取り囲んでいたアルケーたちが一斉に銃口を向ける。

 

「…あなた達の戦う理由を否定するつもりは一切ない。だが、ただ一つだけ。」

 

エアルはそんな中、必死に敵の攻撃予測を頭に叩き込み起死回生の一手に備える。

そんなエアルから発した言葉の続きをカイロスは彼に代わって言い放つ。

 

『…最後の一手は相手に隙を与えない方がいいですよ!!俗にいうフラグです!!』

 

『…!!!』

 

アステリアは焦るように攻撃の号令を放つが、その瞬間カイロスが輝いた。

その閃光にアルケーたちのレーザーが突き刺さる。

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