カイロス   作:桜エビ

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書き溜め尽きた…


太古からの弾丸

 

「…で、操作方法は?」

『あなたが知ってるものに近づけたほうがいいでしょう。幸いコンフィグは自由に選べますから。』

「この手の操作なんてやったことはないから、デフォルトで構わない。」

 

そういって両サイドの球体状の操縦桿らしきものに触れる。

スイッチの位置を確認し、フットペダルも確認しながらセットアップ作業に入ってることを確認する。

 

『…体感的に操作しやすいでしょうから、AGに近い操作方法に変更します。正直こちらの方がなじむでしょう。』

「ッ!…分かった。頼む。」

 

俺のAGとの因縁を知ってか知らないかは分からないが仕方ない。

パッと見まともなルートで作られてない機体だ。デフォルトが操作しやすい物か分からない。

それに家にあったAG操作マニュアルを気まぐれに読んでた時期があるからなおさら早い。

操作説明を受けながら出撃準備は着々とすすむ。

幸いここは時間が遅くなっている。多少の猶予はあるだろう。

 

『時間操作反転…慣性操作グリーン…上部ハッチ開きました。上昇し出撃を!』

「エアル!!」

 

その時、俺は日本で定番だった台詞を無意識に口に出していた。

アニメとはいえ、一応軍でも似たような申告はするらしいしな。

 

「エアル・フェルド。アンゲルスフレーム、カイロス。出る!!!」

 

地中深くから、長年をかけて堆積したであろう埃を吹き飛ばしながら一気に遺跡上空まで飛びあがる。

 

青空高く、町も山も一望できる高度まで上昇し、有機的な頭部のセンサーアイがあたりを見回していく。

 

「さて…状況は…」

『襲撃した勢力は森まで後退、どうやら国軍が押し返したようです。』

「そうか…でも遺跡を漁られる寸前だったわけか…」

『…襲撃勢力によるロックオンを検知。敵対勢力とみなし…っていらないですね。攻撃、来ます。』

 

AGによる対空射撃が行われ、地対空ミサイルやアサルトライフルが俺達めがけて飛んでくる。

 

が…

 

「…銃弾ってこんな遅い物なのか…?」

「そんなこと言ってないで切り込んで。敵は破壊して回収する気。」

『射撃面は不安が残ります。性能差で押せるので接近戦を提案します。』

 

言われて咄嗟に接近するが違和感が拭えない。

銃弾が見切れる。

素人操作ですら簡単に回避できる。

 

下降している最中に横槍の如く向かってくるミサイルを危なげもなく回避し、一番近いAGに迫る。

アサルトライフルによる必死の迎撃も、射線すら見切れるのでバレルロールのように回避し懐に潜り込む。

手持ちの盾で吹き飛ばそうとする敵だが、それすらとろい。

カイロスを左回転させながら、ブレードで敵の腰辺りで両断し無力化する。

 

『「後ろ!』」

「にゃろ!」

 

咄嗟に左に跳ぶと、一拍遅れて先の尖った盾が俺がさっきまでいた地面を突き刺す。

二人の警告がなければ直撃だっただろう。

 

俺は咄嗟に振り向きざま、射撃トリガーを引く。

何処からともなく右手に現れた大型のライフルのような銃が、攻撃したばかりのAGに向けられ射撃。

 

そのAGは左肩から右肩までを青い光に貫かれて、崩れ落ちて機能停止した。

 

『初陣で二機連続撃破。お見事です!射撃センスも問題なさそうですね。』

「なんだよ…この性能は…」

『先程言ってた弾丸が遅い…ですが、アンゲルスフレームはざっくり言ってしまえば当機及びランナーの時間を加速および鈍化させることが可能です。慣性制御も可能ですし、AGとは比較になりません。』

 

なんて兵器だ…

 

「じゃあ、カイロス、君が遺跡の時間を鈍化させていたのか。」

『はい。地下に居たので地上の鈍化に気づくのに時間がかかりましたよ…その時にはもう手遅れで…』

 

そこでカレンが俺の胸を軽くたたく。

 

「…まだ危険な状態だから。話すのはまた後で。」

「そうだった…」

 

呟くように言葉を吐き出すと、こっちに弾幕を張っている敵AGにレーザーライフルを撃ち込む。

 

 

『敵がみるみるうちに減ってく…』

『なんだあれは…化け物…?』

 

目の前でAGの反応が次々と消えていく様を呆然と見つめるアモル。

だが、それは兵士として許されない。

 

「…マザー!こちらジャッカル2!不明機に通信し敵味方を問え!攻撃ができない!」

『…ぁ!了解です!』

 

『こちらテンポシルワ基地司令部、マザー。そこの不明人型兵器、聞こえるなら応答願う。繰り返す、こちら…』

 

『…申し訳ございません。そちらへの配慮を怠っていました。こちらは軍への害意はありません。コックピットにそちらの街に住んでいる少年を保護させていただいてます。』

 

「害意はない、か。」

 

口先だけなら何とも言える上、テロリスト同士が仲間割れしたフリでこちらを罠にかけるかもしれない。

疑いはそう簡単に晴れるわけがない。

 

『確かに相手にしてるのはテロリストの連中だしな。』

『簡単信じるなジャッカル3、まあ確かにそうだがな…』

 

そうきっと…とアモルは気を取り直して通信に耳を澄ます

 

『仮で構いませんのでコードとしてカイロスと登録していただけませんか?味方機情報が無いと誤射しかねないので、敵味方の識別をしたいのですが…』

 

『…正体不明機に渡せるものでは無い。』

『ここの賊の狙いは当機です。ですが大人しく鹵獲されるつもりはありません。救援を求めます。』

 

「あれが目的の物だと!?」

 

山の上で超常現象にも思える戦い方を見せる巨人を見上げる。

なるほど、なら納得がいく。

あれを東側の勢力が欲しがりここら辺一体の反政府勢力に金と兵器を渡して手に入れる価値のある物だということは確かだ。

 

『…渡せば退いてくれるかもしれんが…テロリストに兵器を渡すなどたまったものでは無いし、あの性能はシャレにならん。マザー!こちらジャッカル1!』

 

『司令官もGoサインです。カイロス、識別信号とIFFシステム一式を送りました。ジャッカル隊と協働しテロリストAGを撃退してください』

 

『カイロス了解。ジャッカル隊には右翼のAA(対空)タイプの多銃身機関砲隊を優先的に撃破していただきたいです。そのまま地形を生かして電撃的に本隊を叩けるはずですから!』

 

『提示されたプラン…承認されました。』

 

俺らから見て左側に当たる部分は傾斜や崖が多く、戦車は立ち入りできなければ地形にさえぎられて射撃もままならない地形。

そこからの弾幕はたとえあの機体であっても鬱陶しいらしい。

それに立体物の多いところでの高機動戦はAGの十八番だ。

 

 

『おいおい!正体不明の相手の作戦を飲むのかよ!!』

 

「お前はあいつらを支持するのか敵対的なのか不安定だな…理にかなってるし、罠も張れる状態でもあるまい。相手にこちらの位置を晒してるなら食い破るまで。」

 

『そういうことだ。ジャッカル隊全機、パルクール森に入り次第傾斜を利用しパルクール機動による電撃戦を行う!』

 

デットウェイトとなる長距離兵装をパージしつつパージ指定された地点へと向かう。

 

 

 

『システムのマニュアル部分を一段階増やしてみますか?』

「どうなるんだ…?っていうかどの辺りなのか…マニュアル化するの…」

『攻撃武装の選択と、ロール方向の制御…要するに側転する方面の補助を弱めます。」

「一気にやり過ぎじゃないか…?」

 

一連の会話は、戦闘の合間に行われているわけではない。

むしろ敵の弾幕を掻い潜る際に行われているのだ。

いくら隔絶した性能を持っていても、被弾は極力避けるべきである。

何しろ装甲まではそこまで大きな差はなく、大きさ故少し厚い程度の物らしい。

そんな最中にこんな話を持ち掛けられれば反論も当然だ。

 

そして返答が来る前にカイロスは敵機の懐へと達し、プラズマブレードを振り上げて右手足を奪い二の太刀で左手も奪う。

 

『あなたなら出来ますよ。防御もできるようになりますし…にしても始めたばかりなのに器用ですね…』

「別に正規ランナーになろうってんじゃないんだけどなぁ…一般人らしい戦い方だろ…?不満かい?」

『戦い続けるならまだしも、今だけというのならこれでも文句はありませんよ。』

「エアル!まだ来る…!」

 

新しい敵の射撃を右から受け、回避行動をとりながら手にレーザーライフルを呼び出し照準する。

 

「なら結構!」

 

トリガーを引くと、青白い光がレパールの右肩を溶かして消し飛ばす。

攻撃手段の一つを失った敵は一拍の隙を生み出してしまった。

その一拍は時間が引き延ばされているカイロスにとって大きな隙と大差ない。

 

間髪挟まず放たれた二筋の光がAGの残った四肢をもぎとり戦闘能力を奪っていった。

 

「…まあいいか、マニュアル化を進めてくれ」

『了解!レディ…』

 

制御の複雑さが増した機体を駆ける。

自らを脅かす存在を蹴散らす天使がそこにいた。

 

 

「反撃してくるとはいえ、やはり的だな…」

 

『AGの砲台、戦車的運用ってのはあくまで一兵器で様々なことをこなすゲリラ的思考から生まれた運用法だ。直接的な強さという面では理にかなってるというわけではない。』

 

ジャッカル1がその言葉を言い終わる前に、アモルのミラム・サーペントが崖を壁面にしたウォールランを経由して、敵機関砲型のレパードを踏み倒す。

肩を踏みつけられそこを床のように扱われたレパードは、突き付けられたライフルから放たれる弾丸によって沈黙した。

 

『さすがに俺でも分かりますよ!隊長!!』

 

『ジャッカル2、お前一応そういうこともできる重積載型だっていうの忘れてないか?』

 

『わかってますって!』

 

そういう間にジャッカル2は取り出したショットガンを操作し、HEAT弾を装填して引き金を躊躇いなく引く。

射出された大型の弾頭が突き刺さった瞬間、爆音と共に敵は胴体部に穴をあけられ沈黙する敵レパール。

その直後、ジャッカル2の背中から大型の機関砲を捨てたレパールが高周波ナイフで襲い掛かる。

気づいたジャッカル2は左回転をしながら回避して彼我距離を僅かに広げる。

その最中にショットガンをコッキングしながら手元のレバースイッチが切り替え、一回転半してショットガンを向ける。

発射されたのはフレッシェット弾、つまりは対装甲散弾。

レパールはそこら中に穴をあけられ、ナイフを持ち突き出された右手は捥げ、ゆっくり仰向けに倒れ機能停止した。

 

『にしてもこの新型ショットガンいいなぁ!』

 

ジャッカル2がもつこのショットガンは、弾を入れるチューブが二つあり二種の弾を切り替えて発射できる。

といっても彼のように二種別々で使うもの好きはほとんどおらず、基本的に同じ弾に統一して使うのが主だ。その上特殊部隊用としてしか配備されていないものでもある。

 

「雑に扱うと壊れるぞ。元にした銃も複雑だったって話だ」

 

『う、うるさいやい!!』

 

『おーい、とっとと片付けて帰るぞ!』

 

「了解」

 

『あ、了解!』

 

そのまま三人はのろまなAGを一方的に掃討し続けた。

 

 

 

『対空砲火、減少しつつあります。そろそろ上昇して離脱しましょう』

「了解…。」

 

そこら中に散らばる戦闘不能になったAGだったものを尻目に、機体を上昇させる。

自ら作り上げた光景に恐怖を抱かなくもないが、すくんでいては死ぬというのが現実と理解するのに時間はかからなかった。

 

なにせ、鈍化している時間の中でも、意識外からの攻撃は寸前の対応になった。

全体的に、俯瞰的に戦場を見る。これがどれだけ重要か…。

 

『対空ミサイル接近!』

 

それが分かっても実行するのはまた別である。

接近するミサイルは軍の居る右翼とは逆側から十数発放たれている。

上昇していた機体を強引にダイブさせたのち、ミサイルの下に潜り込むように前進してミサイルをやりすごす。

 

『敵影3、うち2機が先行して接近してきます』

 

目視でも確認したその姿はレパードではなく、その次の世代の機体であるシーツ。そのカスタムされたものである。

どちらも雪山用と思われる白い迷彩だが、こっちに来る二機は足などの側面の装甲を一部排除した軽量機と、装甲の形状が一部異なる機体。

左右に若干の迂回をしながら迫ってくる。

 

『左の軽量機をα、右の装甲改修型をβ、奥にいる機体をγと呼称します。

 

__二方向からの同時攻撃。

 

それに対応すべく、後退しながら二機が飛び掛かってくるタイミングを撃ち抜くためレーザーライフルを両手に呼び出す。

 

そして、二機は同時に飛びあがり手に持つ火器をカイロスに向ける。

それにシンクロするようにレーザーライフルの銃口が二機を追尾し、確実に破壊できるような瞬間を狙う。

 

『攻撃正面から!!!』

「くっ!」

 

咄嗟に機体の上半身を左回転するように捩じると、銃弾が左肩の装甲に傷跡を刻み込みながら通過する。

 

そのまま後ずさるように飛びたち、二機の射撃を強引に避けた。

 

「クソッ、二機の接近は罠…!本命は今の三機目の射撃か…!」

「まだ来る…!」

 

逃がさないと言わんばかりに追撃のミサイルと弾丸の雨。

たとえ圧倒的な機動性を持とうとも、面制圧には大きく回避せざるを得ない。

 

「なら考えはある…!カイロス!」

『了解しました』

 

手加減をかなぐり捨てたレーザーライフルが空間を貫く。

その射線上にあったミサイルとβの小型機関砲が熱で融解する。

βに関しては墜とすつもりで撃ったのだが、射線を読み機関砲を切り捨て紙一重で回避したといったところか。

 

それをカバーするようにαが一気に加速。

弾幕の密度を上げる為に余った左手にサブマシンガンすら持ち、躊躇いなく発砲される。

 

しかし

 

「シールド。」

 

エアルはそれを待っていた。

カイロスの演算領域が余るようになったため使えるようになった防御兵装。

原理はエアルにはまだ分からないが、エネルギーがある限り正面180°の射撃を無効化できる。

しかもその間相手からはカイロスがよく見えない。

 

そこでエアルはカイロスの後退から前進に転じる。

シールドの裏側で右手のブレードを用意しながら。

圧倒的機動性を持つカイロスの前進に反応しきれなかったのか、それとも姿が見えず判断を誤ったか、βは一層加速する。

 

「あんたは強いから…手加減なんてぇえええ!」

 

二機はすれ違う。

 

『なるほど…』

 

カイロスが言葉を漏らす。

ベータは右肩が少し焦げただけで健在。

 

弾幕を張ったままの単調で思考の感じられない攻めで回避しないと思いこませ、シールドを直前で解除したカイロスの姿から、袈裟斬り見切って回避したのだ。

 

つまり、袈裟斬りを空振りしたカイロスの後ろを強引に取ったのだ。

そして、もらったと言わんばかりにライフルが無防備な背中に向けられる。

時間が加速しているカイロスとて、この攻撃への対処は苦しい。

 

「…だが」

 

『俺たちがいることを忘れてはもらっては困る』

 

βの背後から黒い影が宙に舞い上がる。

アサルトライフルの弾丸の雨がβの頭上から降り注ぐ。

急いで左前に全力疾走するが、数発が装甲を打ち据えた。

致命傷では無いものの、必殺の位置取りを失ったβはそのままカイロスともミラム・サーペントとも距離を取る。

 

『こちらジャッカル1。カイロスであってるか?』

『ジャッカル3だ。待たせた。』

 

更に同じところから二機の別タイプのミラム出てくる。

カイロスを後退させ続けたのには、ジャッカル隊との合流という意図もあったのだ。

そして同時に、ジャッカル隊が奇襲作戦をするための囮でもあった。

今の攻撃で弱らせていられれば尚よかったが 、ならなかったのなら仕方ない。

 

『こちらジャッカル1。すまない、仕留め損ねた。』

『こちらカイロスAIです。相手は熟練度が高いようです…仕方ありません…』

『AIだと…?パイロットは…』

 

余りにも淀みない応答に思わず息をのむ。

高度なAIと戦闘能力、それはあまりにも驚異的過ぎた。

 

『そちら、AG同様ランナーで構いません。現在正規ランナーは負傷しており、操縦は保護した少年です。補助は入れてますが。』

「…すいません…こんな…」

 

エアルは唐突に兵器を扱い戦闘を行ったことへの罪悪感が湧く。

それに今は相手が強いが故に手加減をかなぐり捨てた殺す気の攻撃を放っていたのだ。

 

『法律上問題ある行為なのは分かっているな。』

「はい…覚悟の上です。」

 

完全に理解していたわけではない。

だが、そうなることは頭では分かっていた。

 

『…状況から鑑みてもある程度の情的酌量の余地はある。そう酷い事にはならないだろう。』

『お二人とも、まだ終わっていません。』

 

αとβが集合し、こちらを振り向くように旋回し停止。

睨み合いし始める。

 

『γ、急速接近。』

 

まだ終わっていない…

AGへの認識を新たにした俺は、再度敵と定めた相手へと意識を集中させた。

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