憑依先は顔芸おじさん。   作:恐怖こそが神なのだ

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遅いのにあんまり長くなくてすまない……


神の島

「ヤハハ、まさかあんなハッタリを五老星が信じるとな」

「まあ、殆ど半信半疑だろうが……今我々と直接敵対したくないという思いがあるのと、島自体は消せるならというのが本当のところだろうな。全く、守るべき民が暮らす島を消そうだなんて、なんて醜い人間だ……おれは今すぐにでも彼らも救って(殺して)あげたい」

 

スキンヘッドにサングラス、右腕に刺青の入った筋骨隆々の肉体にタンクトップの男、四神官の一人"スカイブリーダー"オームはシャボンのようなもので飛んでいる空飛ぶ小舟に乗ってエネルとともに空に戻りながら下で未だに砲撃を続ける海軍の軍艦を見ながら言った。

エネルはそんなオームを宥める。

 

「まあ、待て。オーム。今はまだ世界政府と争う時ではない。この荒れた大海賊時代……早急に救いが必要だろうが、今この程度の勢力では海賊どもを滅しながら世界政府と争うことはできないからな。故に対海軍、世界政府、海賊のための戦力の増強が早急の目的だ。信者や、救うべきものたちの為にな」

 

海賊王ゴール・D・ロジャーの死とともに始まった大海賊時代。世は無法者どもの天下となってしまっている。そこに救いはなく、民達は奪われ続ける。

ゴール・D・ロジャーは処刑される寸前に「おれの財宝か? 欲しけりゃくれてやるぜ…探してみろ、この世のすべてをそこに置いてきた!」とニヤリ笑いながら集まった民衆達に宣言したという。死ぬ間際に笑ったというのに、人としての格、"海賊王"と呼ばれるに相応しく、畏敬の念を覚える。

 

しかし、エネルは死の間際にその発言をしたゴール・D・ロジャーが嫌いだった。

その発言のせいで本来ならば海賊たちの芽を摘むための見せしめの舞台になるはずだったが、多くの観衆が湧き上がり、大海賊時代の幕開けとなった。

 

受け継がれる意思? 時代のうねり? 人の夢?

 

それがどうした。それにより普通の人が、救うべき民が苦しんでいる。許せるはずがない。

エネルは青海におりて、このワンピースの世界がいかに残酷な世界であるかを、現実を知った。常に感じるのは怒りだ。憤怒を己の内で燃やしながら、苦しむ民たちを救済するために動いている。

 

「それに、ビックマムやカイドウ……あの神敵の動きも警戒しなければ。勿論、革命軍や今年脱獄したという"金獅子"の動きもな。ホワイトベレー達に探らせてはいるが、特に"金獅子"あたりは何をしでかすかわからないのが危険だな」

「"金獅子のシキ"か。ロジャー、白ひげ等と争った大海賊。脱獄した後の音沙汰が全くない上に、ホワイトベレー達にも見つけられてはいない。あの狡猾にして豪胆な男だ、何を企んでいるのか。できれば何かをしでかす前に行方を捉えておきたいが……」

 

オームとエネルが危険分子について話していると、船は小さな空島にいつのまにか到着していた。そこは、天候を科学する小さな空島。

移動小型神島"ウェザリア"である。

 

エネルとオームがウェザリアに小船を付けて降り立つと、そこにはクローバー博士ら、オハラの人々が呆然と佇んでいた。

彼らは生まれ故郷を失ったのだ。助かったとはいえ呆然とするのも無理はないだろう。

エネル達がそんな彼らに近づくと、クローバー博士達もエネル達に気づいたようでエネルに近づいてくる。

 

「ありがとう。貴方達には感謝しかない。私たちの命が助かったのは、貴方のおかげだ…!」

「ヤハハハ、私はお前たちが理不尽にも世界政府によって殺されそうになっているのを助けただけだとも。大したことはしていない」

 

エネルに向かって感謝を述べながら頭を下げるクローバー博士に対して、エネルは手をひらひらとふって笑った。

そしてエネルは思いついたように言う。

 

「そうだ、お前たち。研究のレポートや資料や文献は全部持ってこれたのか?」

「いや、もう既にスパンダインたちに燃やされていたり、あまりにも膨大な量だったために、我ら全員でも殆ど持ってくることができなかった……」

「そうか。ならば私が全部用意してやる。燃えた研究のレポートなどは難しいが……住む場所や、研究環境、資料や道具も何もかもだ。そうだな、後でお前たちが欲しいものを紙にでも書いてオームに渡しておいてくれ」

 

エネルが何でもないことのように全部用意すると言ったことにクローバー博士たちは驚愕した。彼は、エネルは膨大な量の資料、研究環境など全てを用意すると言ったのだ。

その事実にクローバー博士は感激のあまりに涙を流しながらエネルの手を両手で握った。

 

「おお、おお……! 本当に、本当にありがたい……! 」

「ヤハハ、ま、神にとっては造作もないことだ。それと、さっきも言ったが、この島が本島に着くまでそこそこ時間がかかる。着くまでに欲しいものをリスト化してオームに渡しておけ。ではな。私は寝る」

 

エネルは島の中央部に向かって歩き始める。その後ろ姿を見ながら、クローバー博士はふと大事なことを聞いてなかったということを思い出した。

 

「ま、待ってくだされ!恩人の名前を今更聞くのが申し訳ないが、貴方様の名前を教えてはくれぬだろうか! 」

 

クローバー博士の呼び止めにエネルは振り返らず、片手を上げながら宣言する。己は雷神エネルであると。

 

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