憑依先は顔芸おじさん。 作:恐怖こそが神なのだ
エネルによる天竜人のチャーミング聖に対する攻撃で、ヒューマンショップの会場は一気にパニックになった。天竜人に対する無礼は世界政府──引いてはその軍事力たる海軍が報復に来るからだ。
この場に居ては自分も疑われる。そう考えた彼ら闇の住人や有名海賊、企業の社長、どこかの国の王族達は一目散に逃げ始めた。
この世の害でしかない天竜人が馬鹿面晒して気絶しているのはいい気味だが、海軍や世界政府に追われるのは御免だというわけだ。
「だ、誰アマス!? 私の可愛い息子に対してこんな仕打ちを……!」
息子が倒れたことに対して金切り声を上げている天竜人のチャーミング宮。彼女が護衛達に喚き散らしていると、彼女の目の前にエネルが突然現れた。突然のことに動けない護衛達。そんな護衛を尻目にエネルはチャーミング宮にゆっくりと手をかざす。
「ヒッ、な……」
「100万ボルト………"
あまりにも眩い閃光により護衛達が目を思わず瞑った瞬間、バリバリッという激しい落雷音がヒューマンショップに鳴り響いた。
悲鳴を上げることも出来ずにゆっくりと倒れ伏すチャーミング宮。倒れる前に彼女の頭をがっしりと掴みエネルは盛大に笑う。
その笑いで自分達の職務を思い出したのか、護衛達が銃や剣を向けてくるがエネルは気にもせず笑い続ける。
「ヤハハハハハハ……! やはり
チャーミング宮は意識が朦朧として返事すらできない。護衛達もチャーミング宮を奪還したいがチャーミング宮が人質に取られているも同然であるため動けない。
「おいおい……たった100万ボルトだぞ。手加減してやったというのに。世界の王を気取っている一族がたった100万ボルトも耐えられないとは。天駆ける龍という名前、今すぐ私に献上したらどうだ?……まあそんな汚名要らないがな。世界政府を設立した偉大なる先祖の王達も嘆いているだろうよ」
エネルはチャーミング宮に飽きたのか、チャーミング宮を護衛達に向かって放り投げる。護衛達はまさかチャーミング宮が放り投げられると思っていなかったからか落としそうになったものの、なんとかキャッチして床に倒れているチャーミング聖を引きずりながら脱兎の如く逃げ去った。
逃げ去る天竜人達と入れ替わりに一人の若い男がヒューマンショップに入ってくる。その若い男はヒューマンショップの惨状に愕然とする。
「な、何が起こったんだ……!? ステラは無事なのか!?」
明らかにこの惨状の犯人であろうエネルを気にも止めずに何者かの名前、恐らく奴隷として売られる女の名前を叫んでヒューマンショップを探しまわろうとするその若い男。エネルは不思議に思い声をかける。
「おい、男。ステラとやらを探しているのか?」
「ああ、そうだ!俺はステラと約束したんだ、自由にして楽しませるってな…!」
若い男の言葉に秘められた真剣な思いをエネルは感じ取ったのか、突然若い男の手を取り紙切れを一枚渡す。若い男はこの島のある場所が書かれているある紙を突然渡されたことに戸惑った。今は訳の分からない男から渡されたこんな紙よりステラだ──と思って無視して探そうとすると、エネルから予想だにしない言葉を投げかけられる。
ステラは生きている。そこに書かれた場所に今すぐ行き、そこにある船に乗れば再会できるという言葉を。
訳の分からない男からの言葉だが、実際探しても奴隷一人もいないこの状況で手掛かりはこの男の言葉だけ。
若い男は藁をもすがる気持ちでその場所目掛けて走り去っていった。