King of chicken   作:新藤大智

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毎度の誤字報告や感想や評価ありがとうございます。大変励みになります。
今回端折りつつもなんやかんやで1万5千文字に………文章を上手くまとめる力が切実に欲しいです。超絶お暇な時にでも読んでください。


ちょいちょい端折り風味な第三話

「メルエムさん、ありがとう!お蔭で助かったよ!」

「いや、一時はどうなるかと思ったが、ホント助かったぜ」

「私からも礼を言う。本当にありがとう」

 

 ヒソカを退けた後、メルエムはゴン達を引き連れて二次試験会場へと向かった。最初はヒソカを威圧のみで圧倒したメルエムを警戒していたクラピカとレオリオだったが、ゴンのついでとはいえ助けられた恩を無視するほど無恥厚顔な二人でない。一先ず礼を言って走りながら会話を続ける内に、彼が危険人物ではない事が分かると徐々に警戒を解き、会場に到着する頃にはそれなりに打ち解けることが出来た。まあ、ゴンが全く警戒していなかったというのが一番大きいのだが。

 

「なに、余はゴンからの借りを返しただけだ」

「全然釣り合ってないよ!今度は俺が借りを返すからね!」

「そこまで気にしなくてもいいのだがな(やはり大天使、圧倒的大天使!)」

 

 気にするなと言うメルエムにゴンは借りは絶対に返すと鼻息を荒くする。それは他の二人も同様だ。

 

「いや、流石に命を助けられてお礼だけってのはな。最後まで徹底的に抵抗するつもりだったが、俺等じゃあヒソカを相手にどこまで出来たか分かんねーぜ」

「レオリオの言う通りだ。正直な所三人とも屍を晒していた可能性が高いな。この借りは必ず返そう」

 

 命の借りは命をもって返す、とまではいかないが命を助けて貰った事実は大きい。余程の無茶でない限り三人とも必ず借りを返すだろう。

 

 ちなみにメルエムは表面上はクールに振る舞っているが、内心ではゴン達に恩を売ることが出来てウハウハだ。最初から恩を売るつもりで助けた訳ではないが、結果として向こうが恩を感じてくれるのならば遠慮なく受け取るのが彼だった。もっとも、ヒソカの心情を知ってしまったら白目を剥いて四次元アパートに引きこもり、布団の中でガタガタ震える生活が待っているだろうが。

 

「そうか、ならば期待して待っているとしよう。ではな」

「ありがとう、またねー!」

 

 軽く手を上げて去っていくメルエム。せっかく仲良くなれたのだから一緒にこのまま試験を受けてもいいかなと思ったのだが、やはり厄介ごとに巻き込まれるのは遠慮したいので少しばかり距離を置くことにした。まあ、現状では彼の側にいる方が何万倍も危険なのだが、幸か不幸か本人は気が付いてなかったりする。

 

「ふぅ………」

 

 メルエムの背中が人波に消えるのを見届けると、ゴンは一つため息を吐いた。彼にしては珍しい仕草にレオリオが首を傾げる。

 

「ゴン、どうした?」

「んー、俺は今までくじら島しか知らなかったんだけど、世界って凄く広いんだなって思ってさ」

 

 ゴンの脳裏には、つい先ほどの出来事が鮮明に蘇っていた。

 

 ハンター試験の本試験に残った受験者達は、それぞれ何かしらの武を修めたスペシャリストである。世間一般的に見ればそれぞれが強者であり、誰一人として本当に弱い者などいなかった。

 

 しかし、そんな受験生達を数十人単位で紙屑のように屠ったヒソカと、そのヒソカを威圧のみで圧倒するメルエム。ゴンは彼等を間近で見て、いかに自分が狭い世界で生きていたのかを改めて実感することになった。

 

「いや、確かに世界は広いがあの二人は恐らく世界でも有数の実力者のはずだ。ハンター試験でもなければそうそう出会うことなんてないと思うが」

「そうだぜ。流石にあのクラスがうじゃうじゃ居たらたまんねーっての」

「そっか、そうだよね。あれが世界の頂点にいる人達か………」

 

 ゴンはゾクッと身を震わせる。無論、怯えた訳ではない。メルエムの圧力やヒソカの殺気を受けて恐怖を感じたことは確かだが、それ以上に自分が知らない未知なる世界への好奇心が抑えきれないでいるのだ。

 

「俺も何時かあそこに………」

 

 自らの拳を握りしめ、じっと見詰める。今はまだあの二人の足元にも及ばない。だが、その差はこれから埋めればいいだけのことだ。どれほど時間が掛かるか分からないが、絶対にあの背中に追いついてみせる。世界の頂を垣間見たゴンは、その目に静かな炎を灯して心に誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は少し進んで第二次試験終了後。第三次試験会場へと向かう飛行船の一室にて、第一次試験官のサトツと第二次試験官の美食ハンターであるブハラとメンチが食事を取りながら談笑していた。話題は今年の受験生達についてである。

 

「それにしても、今年は豊作よね。一回全員落とした私が言うのもなんだけどさ」

「ええ、本当に粒ぞろいです」

「だよね」

 

 彼等はハンター協会から無償で試験官を依頼されてここにいる。とはいえ、本当に無償といいわけではない。協会から金は出ないが、それ以外に利益があった。それは有望な新人をこの目で見つけることが出来ることだ。

 

 試験を通して有望な新人を見つけたら自らの領分に誘うも良し、また何かあった時の為にコネクションを繋いでおくもよし。この仕事をしていれば単独で手に負えないことなど腐るほど出て来る、そう言った時の為にコネを持っておくことは非常に重要だ。

 

「で、二人は誰に目を付けた?私は294番のハゲなんかいい感じだと思うのよね。馬鹿だけど」

「確かに将来有望そうですね」

 

 メンチが推すのは294番のジャポン出身の忍者ハンゾー。身のこなしやオーラの質から将来性を感じ取ったようだ。実際、念能力なしでの勝負ならメンチともいい勝負が出来るだろう。

 

「俺は新人じゃないけどやっぱりヒソカかな」

「………あいつか」

 

 ブハラも才能ある新人が多い事は認めるが、やはりその中でもヒソカの存在に目が行ってしまう。

 

 彼は一流の美食ハンターだ。美食ハンターは食べるだけが能ではなく、希少な食材を乱獲する密猟者から食材や環境を守るために武芸にも秀でてないといけない。故にその辺の武装集団なんぞには負けない自信はあるが、ヒソカと戦闘になった場合は勝ち目はほぼないだろうと自己分析している。メンチと組んでなんとか勝負になるか?といったところ。プロハンターという職は強さが全てという訳ではないが、それでもやはり一番注目されるのは武力であることは間違いない。

 

「一回メンチが全員落とした時にトードーとかいうレスラーが切れたけど、本当に切れてたのはヒソカだったよね………あの殺意は寒気がしたよ」

「情けないわねブハラ。って言いたいところだけど、正直私も生きた心地がしなかったわ」

 

 メンチは二次試験の最中、自身に向けられたヒソカの殺気を思い出して深いため息を吐く。普段は強気の彼女にしては珍しく弱気な態度ではあるが、それほどまでにヒソカから叩きつけられる殺意は常軌を逸していたのだ。

 

 第二次試験は彼女等が試験官を務めるだけあって試験内容は料理だった。ブハラは豚の丸焼き、メンチは寿司をそれぞれお題にして試験を開始。

 

 豚の丸焼きは71名が合格。簡単に思えるかもしれないが、ビスカ大森林に生息する豚はグレイトスタンプの一種のみであり、大きく頑丈な鼻で敵を叩き潰す凶暴な豚を捕獲しないといけない。下手をすれば自分が豚の餌になるという危険な試験ではあるが、ある程度の身体能力と度胸があれば豚を仕留めることは可能であり、調理は適当に焼けば後はブハラが全て美味いと言って平らげてしまった。

 

 ここまでは良かった。問題はメンチの試験だ。彼女が出したお題は寿司であり、それを知っている者はたったの2名だけ。その内の一人であるハンゾーが料理法をバラしてしまい、さらには料理を軽んじる発言をしてしまったためこれに激怒。

 

 料理を通して観察力や注意力を試すのが試験の本質のはずだったのだが、頭に血が上ったメンチは味のみで試験の合否を判定し始めてしまった。結果、美食ハンターを満足させる寿司など誰も握れるはずもなく合格者はゼロ。

 

 そこで切れて騒ぎ出したのはレスラーであるトードーなのだが、メンチもブハラもそんな小物を相手にしている暇はなかった。なにせヒソカがマジ切れしていたのである。今まで見て来た誰よりも歪なオーラ。一流のハンターである彼女等をして死をイメージさせる異常なまでの殺気。メンチ達にピンポイントで殺気を向けていたから良かったものの、無差別に撒き散らしていたら下手をすれば周囲の受験生達の精神が壊れていたかもしれないほどであった。

 

「下手をすれば我々と彼で殺し合いになっていた可能性も十分ありましたね」

「こっちは三人で向こうは一人なのに?」

「あいつがそんなの気にすると思うの?あのまま不合格だったら十中八九襲って来たわよ」

「ええ、彼は我々がブレーキを踏む場面で躊躇いなくアクセルを踏み込むでしょう」

 

 メンチとサトツにはその場面が容易に想像できる。そして殺し合いになった場合、三人で組んでも勝てたかどうかは分からなかった。仮に勝てたとしても多大な犠牲を払う事になったことは確実だ。

 

「そっかぁ、でも戦闘にならなくて済んで良かったよね」

「まあね、喧嘩を売られたら買うけど流石にこんなところで死闘なんて割に合わないし」

 

 結局、会長の登場と試験のやり直しでヒソカは殺気を収めた。でなければ今こうして三人揃って談笑していることは出来なかっただろう。

 

「あー、もう、ヒソカの話はやめやめ。思い出すだけで飯が不味くなるわ」

「うん、そうだね」

「で、話を戻すけどサトツさんは誰に目を付けたの?」

 

 話を振られたサトツは目を瞑り、少しばかり考える。

 

「そうですね、99番の彼も才能という点では捨てがたいですが、やはり406番が気になりますね」

「406番ていうと………ああ、あのやたら目付きの鋭いやつか」

「十中八九念の使い手だね。今年は彼とヒソカと301番がそうかな」

 

 ハンター試験には時々念の使い手が紛れ込んでくるが、287期はブハラが見た限りで三人だった。44番ヒソカ、301番ギタラクル(イルミ=ゾルディック)、406番メルエムである………多分歴代でもこれほど酷いラインナップはないだろう。

 

「でも、あいつサトツさんが注目するほど?」

「念は使えるけど初心者っぽいよね、色んな意味で」

 

 念の使い手ということで少しだけ気になっていたが、一つ一つの動作が一般人のそれとあまり変わりない。総評としては、多少身体能力に優れているが偶然手に入れた念に胡坐をかいている素人、というのが二人の評価である。とてもではないがサトツほどのハンターが注目するようには思えなかった。

 

「お二人がそう思うのも無理はありません。私も一次試験官でなければ彼の異常性を見逃していたでしょう」

「異常?」

 

 首を傾げる二人にサトツは思い返す。試験開始前にほんの一瞬だけ感じ取った円。そしてヌメーレ湿原で感じた異常な気配。余りに少ない情報ではあるが、ハンターとしての己の勘を交えて推察してみればとある結論に至る。

 

「これは十二支んの方々には内密にして欲しいのですが、下手をすれば彼は会長よりも強いかもしれません」

 

 二人はサトツが何を言っているのか理解できなかったが、一拍置いて言葉の意味を理解すると絶叫する。

 

「はあぁ!?」

「ええ!?いやいや、ありえないよ!」

 

 ありえないと繰り返す二人の気持ちは分からないでもない。半世紀以上に渡って最強の座を守り続けている会長より、十代の半ばに差し掛かった青年の方が強いなど誰も信じないだろう。しかし、本当に一瞬のことだが、触れた円から読み取った力量は自らの遥か上。ともすれば会長すら凌駕しているように感じたのだ。その事を伝えると二人は半信半疑といった表情になる。

 

「うーん、いくらサトツさんの言葉でも、こればっかりはちょっと信じられないかな」

「まあ、確かに私が過大評価している可能性はあります。ですが、少なくとも私よりも強いのは確実ですね」

 

 サトツはネテロの全力を見たことがないのでその部分に関しては完全に推測になってしまうが、少なくとも自分よりも強いという事だけは確信をもって言えた。自身も遺跡ハンターとして戦闘が本分ではないもののそれなりの腕は持っている。しかし、彼と戦闘になれば成す術なく蹂躙されるイメージが浮かんでくる。いや、勝つどころか抵抗できるかも怪しい。

 

「あの初心者丸出しの奴がねぇ………」

「てことは、あれは擬態してるってことか」

「ええ、恐らくは」

 

 初心者のような動きは演技だろうと考える。あれほどの力を持ちながら全くの素人ということはありえない。鍛錬もせず、生まれ持った才能だけであれほどの力を得たと考えるよりは、実力を隠す為に態と演じていると考えた方がよほど筋が通る。まあ、実際にはど素人が最強の肉体を乗っ取ってしまっただけの話なのだが、神ならぬ彼等にそれを推測しろなどとは無理というものだ。

 

「もしかすれば会長よりも強い奴か………近いうちに一波乱あるかもしれないわね」

「副会長あたりが囲い込みに入るかな?」

「可能性は大いにあるかと」

 

 現ハンター協会の副会長にして十二支んの一人であるパリストン。反会長派の急先鋒である彼が強大な力を持った新人の取り込みにかかる可能性は大いにある。長年の功績のある会長がすぐにどうこうなるとは思えないが、彼等が組めば静かだった水面に一石を投じることになるかもしれない。

 

 ハンター協会は武力と規模と信頼性でその辺の国家を大きく上回る力を有するが、会長を凌駕するということはその巨大な組織をたった一人で揺るがしかねない。もっともこれらは全て憶測に過ぎないが。メルエムとパリストンが敵対したり、会長派に入ったりするかもしれない。だが、どちらにせよ何かしらの動きはあるだろう。

 

「ちょっと不謹慎かもしれないけど面白くなってきたわ」

「兎に角、ある意味ヒソカ以上に要注意ってことだね。今後の動向に注目かなぁ」

「ええ、彼がその内に何を思い、そして何を成すのか。我々はその行きつく先を注意深く見定めましょう」

 

 サトツは近い未来に何か大きな動きがあると予想して思いを馳せるが、はっきり言って時間の無駄でしかない。様々な特権を有するプロハンターになろうともメルエムに何かを成すといった考えは微塵もなく、売れば七代遊んで暮らせるハンターライセンスも便利な保険証や運転免許証の代わりでしかないのだから。プロハンターになろうとも、いかに強大な力を有していようとも、中身があれなので宝の持ち腐れもいいところである。

 

「406番、名前は………メルエムか、その名前覚えておくわ」

 

 結局、メルエムはその強大な実力を隠し、腹の底で何かを企んでいる要注意人物であると三人から認識されてしまう。彼の本性を知る者からすれば全米が鼻で笑うような結論であるが、知らなければそう見えるのも無理はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆様お疲れさまでした。第三次試験会場はここトリックタワーです」

 

 飛行船でおよそ半日ほど航行した後、受験生達は第三次試験会場であるトリックタワーの頂上に降ろされた。トリックタワーは、見た目が円柱状の巨大塔であり、その中身は懲役100年を超える極悪犯達を収容する刑務所だ。賞金首ハンターであるリッポーが刑務所長を務めており、第三次試験はこの場所が使用される。

 

「ルールは簡単。72時間以内に生きて下まで降りてくること」

 

 試験内容はシンプルにこの刑務所からの脱出だ。制限時間の72時間以内にトリックタワーの1階まで降りることが出来れば合格となる。しかし、いくら全長数百メートルを超す巨大な塔とはいえ、脱出に三日を想定することを考えれば下まで降りるのは相当な難易度であることが予想される。受験生達は皆一様に険しい表情となった。

 

「それでは皆様のご健闘をお祈りいたします」

 

 本当に簡単に説明を済ませるとビーンズは飛行船に乗り込み去ってゆく。それを見送ると受験生達は、早速とばかりに探索を開始。

 

(さて、どうしようか)

 

 メルエムも他の受験生達に倣ってその辺を適当に歩きつつ床を調べる───振りをする。実は既に円を展開して大体の隠し扉の位置を把握しているのだが、どのルートが一番怖くなさそうか吟味している最中なのだ。素の身体能力で最強に近い力を持つと言うのにあまりに情けない理由だが、蚤の心臓以下の彼はいたって真面目に考えている。

 

「あ、メルエムさん、ちょっとこっちに!」

 

 あっちがいいか、いや、でもこっちの方がいいかも、と悩みつつ中々踏ん切りがつかないでいると、背後からメルエムを呼ぶ声。振り返って見れば、予想通りに元気一杯といった様子のゴンが手を振りながら彼を呼んでいた。犬の尻尾が見えそうなゴンにほっこりしつつ、ホイホイ誘いに乗る。

 

「ゴンか、どうした?」

「実はこの辺に隠し扉が何個かあるんだけど、まだ見つけてなかったらメルエムさんも一緒にどうかなって」

「ま、こんだけ密集してるとどれかは罠かもしれないけどな」

 

 そういえば三次試験は多数決の道だったと思い出して、しまったと内心で思う。ゴンの性格上、それなりに親しくなったメルエムを誘う可能性は十分に考えられたはずだった。基本的にあまり関わらないようにして距離を取って見守るつもりだったが、これではトンパの代わりに5人目となってしまう。

 

(悩んでないでさっさと決めておけば………って、今更か)

 

 どうするか思案するが、結局断る理由もないのでゴンの誘いに乗ることに。というか、よく考えてみれば一人でよく分からない道を進むよりかは、大勢である程度把握している道を進んだ方が怖くないので渡りに船なのかもしれない。そもそもなるべく関わらないようにしていたのも、既に何やかんやでそれなりに親しくなってしまったので今更なのだが。

 

「余は構わぬが、その前にそこの少年は?」

 

 了承しつつ視線を横にずらす。ゴン側にはいつも通りにクラピカとレオリオ、そして短い銀髪を逆立てた少年の姿があった。少年の名をキルア=ゾルディック。暗殺一家であるゾルディック家の三男坊であり、言わずと知れたハンターハンターのもう一人の主人公といっていい存在だ。本当は聞くまでもないが、一応初対面なので尋ねておく。

 

「ああ、そう言えばメルエムはまだ面識がなかったか。こいつはキルア。ちっと生意気だけど中々いい奴だぜ」

「生意気言うなよおっさん」

「お前こそおっさん言うな!俺はまだ十代だと何度言ったら───」

「あはは、まあまあ二人とも落ち着いて」

 

 レオリオとキルアが言い合い、それをゴンがなだめてクラピカが苦笑している。そんな仲のいい4人組にちょっぴり疎外感を感じつつ、無難にメルエムだと自己紹介。

 

「んじゃ、早速だがそろそろ行こうぜ。こうしている間にもどんどん人が減ってるしよ」

「あ、本当だ」

 

 レオリオの言葉に周囲を見渡せば、いつの間にか半数以上が既に屋上から脱出しているようだった。まだ70時間以上あるが、ルートによってはそれでも時間が足りなくなるかもしれないので早速隠し扉に入ることに。ジャンケンで選ぶ順番を決めて位置に着く。

 

「ハズレても恨みっこなしで」

「うむ」

「ああ」

「分かった」

「OK」

「そんじゃ、ここで一旦お別れだけど、皆地上でまた会おうね!」

 

 ゴンのせーのっ!の掛け声で全員が隠し扉を踏んで階下に落ちる。浮遊感は一瞬。軽やかに着地すると暗かった部屋の明かりが自動で点いた。

 

「………なんというか、短い別れだったな」

「………だね」

 

 そこには先程別れを告げた5人の姿。あまりに早い再会に各々苦笑が零れる。

 

「とにかく、罠じゃなくて良かったぜ。んで、ここもまた隠し扉を探すのか?」

「あ、あそこに何か書いてある」

「………ふむ、多数決の道か」

 

 五人が進むルートは原作通りに多数決の道だ。5つの腕輪が台座に設置されており、その腕輪にはタイムリミットと○と×の表示がある。この道を行く受験生達は、その名の通り多数決で全てを決めてこの試験を乗り越えねばならない。指示の通りに全員が腕輪を嵌めると最初の選択肢が現れる。

 

「なになに?この扉を開けるかどうか?って、そんなもん決まってんじゃねーか」

 

 全員がボタンを押す。結果は勿論全員が○だ。

 

 あまりに簡単な二択にゴン達は拍子抜けといった表情になるが、実の所多数決の道はかなりいやらしいシステムとなっている。一見して多数決というのは、公平な意思決定のシステムのようにも思えるが、これは裏を返せば少数意見の抹殺と言っていい。親兄弟や親友同士の親しい間柄ならまだしも、ハンター試験を受けに来たライバル同士に普通は信頼関係はない。多数決により何度も意見を封殺された者は疎外感を抱き、疎外感は不満や不信となって現れる。そうなれば信頼関係がない集団などあっと言う間に崩壊への道を進む。

 

 故にこの多数決の道は、トリックタワーに用意された道の中でもかなりの難易度を誇る試練である───まあ、そのはずだったと過去形になるのだが。実際はトンパの代わりにメルエムが参加していることで難易度は極端に下がっている。

 

 臆病な彼がわざわざトンパのように和を乱すような事をするはずもなく、またここにいる5人は短期間に大なり小なり親しい間柄となっているので多少の不満は出てくるだろうが、それが集団の崩壊に繋がる様な致命傷になることはまずありえない。

 

 事実、彼等はスタートしてから幾つかの選択肢を選んできたが、試験官側が本来想定していたギスギスした空気は微塵も感じられない。まだ序盤ではあるが、試験は極めて順調に進んでいた。

 

「………ん、なんだここは?」

 

 薄暗い通路を進んでいくと、一行はやがて開けた場所に出る。部屋は中央にある約十メートル四方のリングを除き、下が確認できない程の深い大穴が空いていた。対面には5人の人影。その内の一人が羽織っていたローブを脱ぎ捨てると筋骨隆々の大男が現れる。どう見ても堅気ではない。男の名はベンドット。試験の為に雇われた囚人の一人で強盗殺人を繰り返し、懲役199年をくらった超長期服役囚だった。

 

「俺はお前達受験生を試す為に雇われた者だ。ここでお前達は私達5人と戦ってもらう!」

 

 話を要約すれば5人で一対一を行い、3勝すれば勝利となる。戦えるのは一人一回までで戦闘方法は自由。ただし引き分けはなし。どちらかが降参するか死ぬまで勝負が続けられると言った内容だ。受けるか受けないかは多数決で決められるが、そもそも受けなければどうにもならないので全員一致で受けるを選ぶ。

 

「ふむ、ではまずは順番を決めるか。余は最後に出るが構わんな?」

 

 メルエムはまず順番決めを提案し、自分は一番最後に出ることを宣言。一応確認の形をとっているが、有無を言わさぬ強い口調で問いかける。

 

「………まあ、別にいいんじゃない?」

「私も構わない。一番強い者が最後に残るのは妥当だろう」

「うん、メルエムさんなら安心して任せられるね!」

「ま、その前にこっちの三勝で決着がつくだろうけどな」

 

 今回の試験は典型的な団体戦の形だ。故に一番強いメルエムが大将のポジに付くのは極自然なことなので、すんなり受け入れられる。もっともキルアだけは若干怪訝そうな顔をしていたが、結局追及はなかった。

 

(っしゃ!これで戦わないで済む)

 

 内心ゲス顔でほくそ笑むメルエム。彼がなぜ責任重大な一番最後に出ると言ったのか、無論それは戦いを避けるためである。いくら強くても犯罪者を相手にするのは可能な限り避けたかったのだ。だって顔面凶器の人とか人肉が掴みたいとか思考そのものが怖いし。とにかく、今回の多数決の道には足手纏いのトンパがいないので、自分の出番が回ってくる前に3勝出来ると確信してのことだった。その後、話し合いによりキルアが一番手となり、その後にゴン、クラピカ、レオリオの順に決まる。

 

 第一回戦、キルアVSベンドット。勝負方法は単純な殴り合いだ。普通に考えれば軍人上がりの大男と華奢な少年では勝負は目に見えているが、如何せん相手が悪すぎた。ベンドットもかなり鍛えているとはいえ、所詮は一般人レベルでしかない。暗殺一家のエリートであり、元プロのキルアからすれば余りにも温い相手だ。まずは喉を潰そうと殴りかかるが、二人が交差した瞬間にキルアが心臓を抜き取り、彼はそのまま帰らぬ人となった。

 

 その後は概ね原作通りに推移する。ゴンVSセドカンの試合はゴンが自慢の足のバネを活かして勝利。そしてクラピカVSマジタニ戦では地雷を踏みぬいたマジタニが無事死亡(無論本当に死んでるわけではないけど)となった。

 

 これで三連勝。勝利条件を満たしたのでレオリオは意気揚々とここを通すように要求するが、ここで相手側から反論があった。曰くクラピカVSマジタニ戦の決着はまだ付いていないと。

 

「なんでだよ、決着はもうついてるだろうが!」

「そいつは気絶してるだけ。まだはっきりとまいったも言ってないしね。だからまだそちらは二勝」

 

 レオリオが抗議の声を上げるが、確かに最初に提示された勝負方法はデスマッチであり、相手がまいったを言うかどちらかが死ぬまで続けられる。クラピカは相手がまいったを言い切る前に殴り倒してしまったので、勝利条件を満たしていない。強引ではあるが筋は通る。

 

「ち、おい、クラピカ、あいつに引導を渡してきてやれよ」

「断る」

「はあ!?」

「私は逆上して既に戦意を喪失していた相手を殴ってしまった。もうこれ以上敗者に鞭打つ真似はごめんだ」

「じゃあ、一体どうする気だよ?」

「彼に任せる。目覚めれば自ずと答えは出て来るはず。私から何かをする気は無い」

「いや、お前なぁ………ああ、もう!他人の迷惑を考えろよ!」

「悪いが、無理な物は無理だ」

 

 誇り高いクラピカらしい発言ではあるが、団体行動においては我儘とも取られかねない。特に現在は制限時間がある試験の中での無駄な時間の消費なので、レオリオが怒り心頭なのも無理はなかった。結局、キルアが俺が殺してこようか?と発言をするも一対一の勝負なのでクラピカ以外に手出しをすることは出来ず、マジタニが起きるのをただひたすら待つこととなる。

 

 そして、待つこと数時間。

 

「………なあ、あいつもう死んでるんじゃないか?」

「え、死んでる?」

「だって全然動かないぜ?」

 

 一向に起きる気配のないマジタニを眺めていたキルアが呟く。ただ殴られて気絶したにしてはあまりに長い。普通であればとっくに起きているはずだ。ここまで長いとなるとよほど打ち所が悪かったか、気絶している振りをしているのか、はたまた既に死んでいるのか。死んでいるのなら何時まで待っていても無駄でしかない。

 

「おい、そいつが生きてるのか死んでるのか確かめさせてもらおうか」

「駄目よ。さっきも言ったけどそいつは気絶しているだけ。どうしても確かめたいのであれば私と賭けをしなさい。そうすれば確認させてあげるわ」

 

 ここで苛々しながら待っていたレオリオが確認しようと動くが、事態は思いもよらない方向へと向かう。

 

「賭けだぁ?」

「そう、お互いの時間をチップにして私と勝負しましょう」

 

 マジタニの生死を確認したければ、お互いの時間をチップにして賭けをするように言って来たのだ。

 

「賭ける時間は最小で10時間単位。自信があるのなら20時間でも30時間でも賭けていい。残り時間が59時間だから50時間まで賭けられるわ。どちらかの持ち時間がなくなった時点で終了。この勝負に乗るのであれば生死を確信させてあげる」

「いや、ふざけんな!デメリットがでかすぎる上に俺等にメリットがなさすぎるじゃねえか!」

 

 レオリオの言う通り相手からの提案はハイリスクローリターンである。もしも負ければ一気に50時間も時間が失われてしまう。

 

「それに、そもそもそいつが死んでたらこっちの三勝で勝ちが確定だ。それ以上勝負する必要はないだろうが」

「あら、何言っているの?勝ち負けが決まっても全員勝負は受けてもらうわ」

「はあ!?なんでだよ!?」

「………ぇ」

 

 これには余裕の表情で腕組みをして見守っていたメルエムも思わず目が点になる。寝耳に水だった。

 

「これは試験よ。全員の実力を見せてもらうのは当たり前じゃない」

「だが、ほぼ勝ちが決まってるのに俺等にとってデメリットがでかすぎるじゃねーか」

「ふふふ、馬鹿ね。ここでは私達が試験官よ?理不尽な試験でもこの道を進んだ貴方達の運が悪かっただけのこと。プロハンターになるならこの程度の逆境は乗り越えなくちゃ話にならないわね。それに賭けに勝てばいいだけの事でしょう?それとも前の三人は力を証明したのに貴方は自信がないの?」

「ぐっ………くそ、いいだろう、この勝負受けてやるよっ!」

「ええ、そうこなくちゃね」

「………ぇ」

 

 レオリオは理不尽さに怒りを募らせるが、結局クラピカが動かない以上相手に従う他なかった。こうしていてもただ時間を浪費するだけなので渋々ながら勝負を受ける。

 

(………待って、ねえ、待って………え、俺がジョネスの相手すんの?………え?)

 

 一方で小細工が完全に裏目に出たメルエムは白目を剥いていた。どうせ出なくちゃいけないのなら狂った大量連続殺人犯の相手なんぞキルアに押し付け、セドカンかマジタニを相手にした方が全然マシだった。後悔先に立たずとは、まさにこのこと。内心頭を抱えてのた打ち回る。

 

(どうする?どうするよ、俺?もう三勝してるし、試合開始と同時にまいったって言う?いや、ジョネスがそれを許すか?………無理だろうなぁ。あいつ肉を掴みたいだけだし………)

 

 普通に考えれば負ける要素は微塵もない。そのまま戦ってワンパンお見舞いすれば決着は付くのだが、よほど切羽詰まった状況でもない限り彼にまともに戦うと言う思考は存在しない。レオリオとレルートが着々と賭けを進める中、どうにか戦闘を回避できないかと脳をフル回転させる。

 

(………………これしかないか)

 

 戦闘回避の手段は思いついたが、後はそれでジョネスが退くかどうか。ヒソカほどでないにしろ、とにかく人肉を掴みたいとか頭が逝っちゃってるので僅かな理性が働いてくれることを祈るのみ。

 

「すまん、賭けには自信があったんだが」

「………言いたいことはあるが、私も人の事をとやかく言える立場ではないからな」

「どんまい、レオリオ」

「まあ、まだ9時間あるんだからきっと何とかなるだろ」

 

 メルエムがあれこれと悩んでいる間に、レオリオとレルートの勝負はスケベ根性を出してしまったレオリオが手玉に取られてあっさり終了。まあ、レオリオでなくとも元精神科医の肩書を持つレルートが相手ではクラピカしか勝てる者がいないので致し方ないだろう。持ち時間が59時間から9時間に大幅に減らされるといよいよ5戦目に移る。残された最後の囚人の手錠が外され、ローブを脱ぎ捨てた。

 

「ああ、久々にシャバの肉を掴める」

「………っ!」

 

 相手の姿をみてゴンが僅かに息を呑む。現れたのは髭を蓄えた白人の大男。今まで相手にした4人とは明らかに違う空気を纏っていた。

 

『そいつの名はジョネス。解体屋ジョネスだ』

「ジョネス?まさかあの連続殺人犯のか!?」

 

 ご丁寧にもリッポー自らアナウンスでジョネスの名を紹介する。146人もの犠牲者を出したザバン市犯罪史上最悪の大量殺人犯で、異常なまでの握力をもって被害者を50以上のパーツに分解した狂人だ。

 

「俺には試験も恩赦も関係ない。ただ人間の肉を掴みたい。それだけだ」

 

 言いながら石の壁を掴み、素手で握りつぶす。ジョネスの握力は数百キロ、いや、トンに達しているかもしれない。解体屋の異名を持つに相応しい力だ。その力をみてレオリオが顔を強張らせながら提案する。

 

「メルエム。お前が強いのは分かっているが、何も無理することはねえ。試合開始と同時にまいったを言っちまえ。それで試験は終わりだ」

「あ、そっか、こっちはもう三勝してるもんね。ここで負けても───「駄目だ。そいつの降参は認めない」………え?」

 

 ゴンの発言をジョネスが遮る。分かっていたことだが、彼が肉を掴める機会をみすみす逃すはずはない。

 

「おい、コラ待て!最初の話と違うじゃねーか!」

「今この時は俺が試験官だ。この勝負のルールは俺が決める」

「この野郎っ───」

「まあ、待てレオリオ。余は構わん。向こうに従ってやる」

「いいのか?いや、まあ、お前が負けるとは思わないけどよ」

「ああ」

 

 いや、本当は全然よく無い。予想していたので諦めているだけだ。現在の試験官はジョネスであり、受験者に100%勝ち目のない勝負を仕掛ける等よほどの無茶でない限りそれがルールになる。抗議したところで無駄だろう。

 

「さて、ジョネスとやら。最初に忠告してやろう。余はまいったを言うつもりはないが、貴様は遠慮なく使って構わん」

「馬鹿が。これから行われるのはお前の解体ショーだ。俺が降参するなど面白くもない冗談だな」

「ほう、力はそれなりのようだが、その程度で余を解体すると?いいだろう。その強がりが続くのであれば少しだけ遊んでやる。だが」

 

 メルエムは、そう言うなりジョネスに背を向けて出口へと向かう。その先は行き止まりだ。受験者達が後戻りできないように固く施錠された扉があるだけ。

 

「メルエムさん?」

「一体何を───」

 

 不可解な行動に皆が訝しむが、次の瞬間あり得ない光景を目にする。

 

「………なっ!?」

「………嘘だろ、この刑務所内の扉は全部鋼鉄製だぞ?」

 

 何をしたのかと言えば、メルエムは閉ざされた扉に手を掛けると、僅かな出っ張りを持ってそこから扉を力任せに引き裂いてみせたのだ。ただの扉ではない。凶悪犯を閉じ込めるために作られた厚さ10cmはあろうかという鋼鉄の扉をだ。これにはキルアも目を見張る。自身もただの鉄であればねじ切ることも可能だが、あの分厚い鋼鉄を引き裂くことは流石に無理だ。

 

「脆いな。鋼鉄と言ってもこの程度か」

 

 金属が甲高い悲鳴を上げる音と共に、鋼鉄はメルエムの手により粘土細工のように形を変えていく。やがて、扉はバスケットボール大の球状にまで無理やり圧縮。囚人たちは皆一様に顔を引き攣らせ、まるで化け物を見るかのような目でメルエムを見ている。

 

「余は無駄な事が嫌いだ。降参するのであればそれでよし、でなければ───」

 

 鉄球をリングに放り投げるとドゴッと轟音を立てて床にめり込んだ。

 

「貴様の未来はこれと同じになる」

「………っ」

 

 一歩後ずさるジョネスにメルエムは手ごたえを感じる。もうお分かりだろうが、戦いを回避するための策は、単純に力を見せて脅すこと。つい先日、力を見せつけることでヒソカを撃退することが出来た(と思い込んでる)ので今回もこれで乗り切るつもりなのである。

 

「………………………まいった。俺の負けでいい」

 

 長い沈黙の後、ジョネスは降参を宣言する。彼は狂った思考を持つが、無論の事わざわざ死にたい訳ではない。己も力に自信があったとはいえ、力の差は明白。このまま戦っても相手の肉を掴む前に、自分があの扉と同様に文字通りミートボールにされてしまうだけだ。命があればまた機会は巡って来ると自分に言い聞かせて降参する位の理性は残っている。

 

「賢い判断だ。では通らせてもらうぞ(よっしゃ、上手くいった。やっぱり力を見せつけるのが一番だわ)」

 

 能天気に自画自賛するメルエムだったが、一番の危険人物には全くの逆効果だったことを知れば何と思うだろうか。時として知らないという事は幸せな事である。後で後悔するかもしれないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『受験番号301番ギタラクル 第三次試験合格者第2号 所要時間18時間14分』

 

 トリックタワー第一階フロアーにアナウンスが流れる。扉から現れたのは、顔面に無数の針を刺した薄気味悪い大男だった。名をギタラクル。もっともこれは偽名であり、変装した姿。本名はイルミ=ゾルディック。暗殺一家ゾルディック家の長男である。

 

「やあ、久しぶり、ってほどでもないか♦」

「………」

 

 イルミは合格者第1号であるヒソカの問いに、カタカタとどこから発しているのか分からない不気味な音で返す。ヒソカも慣れているのか特に反応を示さず話を続ける。

 

「実はちょっとキミに頼みがあってさ。正確に言えばキミを通して弟君に頼んでほしいんだけど♣」

「………ミルに?」

「そう、彼、調べものとか得意だろ?♦」

 

 ヒソカから出た意外な言葉に喋れない振りをやめる。これまで何度か依頼を受けたが、ヒソカがミルキに頼みごとをするなんて初めてのことだった。

 

「欲しい物と調べて貰いたい事があるんだ。勿論お金に糸目は付けないよ♣」

「………金額は物によるけど何を調べるの?」

 

 ヒソカは薄ら笑いでチョイチョイとイルミを手招きして、彼の耳元で小声で囁く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知りたいことは幾つかあるんだけど、まずは───闇のソナタについて知りたいんだ♥」

 

 

 

 

 

 

 

 




最初に言っておきますが、ヒソカは新たに音楽系の能力を手にしたりしません。闇のソナタに関しては、ご都合主義のタグ通りにご都合主義的な設定になりますので予めご了承くださいm(__)m

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