邪神たちの生きる世界   作:紅鎌 神邪

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第110話 愛が欲しい者

サグメ「せーちゃん、神司さんのいる場所わかる?」

 

正邪「神司か…多分苅亜のところだと思う。」

 

サグメ「やっぱりか…」

 

やっぱり神司は苅亜くんのところに…もう少し聞き出す。正邪は操られていたとはいえ、今回のボスが苅亜くんの他にいる筈なのだ。それを正邪から聞き出す。

 

星花「正邪、唐突だけど、今回の異変のボスは苅亜くんかい?」

 

正邪「…違う。」

 

星花「やっぱりか。」

 

サグメ「えっ?どうして?」

 

星花「おかしいと思わないかい?あの優しい神司と心優しいサグメとの間から悪魔のようなひね曲がった心の苅亜くんが生まれてくる筈がない。でもたまたまひね曲がった可能性もあるけどね。しかし、ほぼ有り得ない。それなら、「苅亜くんを拾った人が苅亜くんの嫌な環境で育てて復讐を誓わせた」と考えると納得がいく。それならこのように苅亜くんを育てた親玉がいるということになる。つまりだ、今回の異変のボスは苅亜くんではない。正邪、これであってる?」

 

正邪「……あってる。」

 

星花「それならボスの正体とか名前はわかるかい?」

 

正邪「名前はわかる、でも能力はわからない…」

 

星花「それだけでも有難いよ。名前は?」

 

正邪「…奴の名前は“針塊 命儚(しんかい ミョウム)„。奴は…(ドラゴン)だ。」

 

星花「…マジで?」

 

 

一方神司はというと、数十分前まで遡る。

 

神司「二日ぶりだな、苅亜…」

 

苅亜「やぁ、お父さん。俺に殺されるために来たのかな?」

 

【挿絵表示】

 

神司「稀神家の目的は零愛と苅亜を連れ戻すことだ。だから、帰ってこいよ。」

 

苅亜「ヤ~ダねっ!」

 

下瞼を指で下げて舌を出してあっかんべーの仕草をする苅亜。やはりまだまだ子供だと感じてしまう。

 

神司「なら、力ずくでも帰って来てもらうぞ。」

 

苅亜「ハハハッ♪俺はお父さんを滅するのが役目なんだよ。本気でかかって来い…!」

 

邪楼剣を鞘から抜いて、自身の周りに刃を何本も創造した。

 

神司「神剣『千本刃』!」

 

刃を放つが苅亜は口笛を吹きながら簡単に避けていく。我が息子が避けていくのを見るとだんだん悔しくなってくる。ただ、洗脳されていいなければ、の話だがな。もう一度苅亜に「神剣『千本刃』」を放つ。

 

苅亜「ワンパターンですかァ?それならこっちから─うわっ!?」

 

俺の方に引き寄せられる苅亜。何を使ったかというと…

 

神司「邪脚『ブラッドストーム』、そのまま()ってくれよ…?」

 

鞘に邪楼剣を仕舞ってから一気に引き抜いて刀身を赤く光らす。

 

神司「邪刀『鬼神斬』ッ!」

 

苅亜「なっ…!?」

 

斬られた苅亜は数m飛ばされた。

当たった、というよりも苅亜がわざと斬られた感じがした。

 

苅亜「イテェな、そんじゃあこちらも…改記『瞬間記憶操作』。」

 

神司「ッ─!ガッ、ア゛ァ゛ッ…!? !?」

 

思わず地面に倒れてもがく。声にならない声を出し、叫び続ける俺。

頭の中の記憶が消えたり、入ったりと瞬時に切り替えが起こる。まるで、スムージーにスイッチが入ったかのような感覚に襲われる。一秒間ごとに消えたり入ったりしている。大事な人や大切な物事が俺の頭の中で出入りしている。痛いのもあるが、苦しいのもある。呼吸の仕方も三回忘れたため死にかけた。

 

神司「ア゛ァ゛ッ…ウ゛ェ゛ッ…!」

 

苅亜「どぉ?早く死にたくなったかな?(笑)」

 

神司「かっこまで読まなくていいんだよ…う゛ぅ…。」

 

嘔吐はするし、目眩もする。本当に死ぬ…というよりまず俺は…壊れるかもしれない…。

 

神司「誰か…助けて…」

 

苅亜「だ~れもっ助けてくれな──」

 

サグメ「神司さん!」

 

苅亜「チッ…」

 

ゆっくりと俺の名前を呼んだ人の方向を見る。そこにいた人はサグメだった。良かった、サグメのことは忘れていないようだ…嘘だ、何度か忘れてしまった。記憶というのはこんなに簡単に無くなる物なのか…。

 

?「『反転』!」

 

この場の洞窟内が上下逆になる。それで苅亜の攻撃が消えて俺は解放された。しかし洞窟内は逆になっているので地面に思い切りぶつかる。

 

神司「ッ…!正、邪…!?」

 

あのずっと消息不明だった正邪が今ここにいるのだ。もう諦めていたがやっと会えた。思わず涙が出てきた。

 

星花「大丈夫?神司。」

 

神司「姉ちゃん…」

 

正邪「たっく、情けねーな神司。」

 

神司「正邪…生きてたんだな、良かった…」

 

正邪「どうだ?苅亜は強いだろ?」

 

神司「ああ強すぎる…でも勝つ、苅亜の心が助けるまで…!」

 

ゆっくりと苅亜に近づくサグメ。すると口を開いて苅亜に話しかけた。

 

サグメ「苅亜、零愛はどこにいるの?」

 

苅亜「零愛零愛うるせぇなァ…母さん。そんなに(みんな)は俺よりもアイツのことが大事かよ!?」

 

星花「勘違いするな!苅亜くん!!」

 

苅亜「っ!?」

 

星花「そんなに大事じゃないなら君の父親は言ったか!?大事じゃないって!」

 

…初めて見た。あんなに怒る姉ちゃんの姿を。

姉ちゃんが苅亜の胸元を掴むと、

 

星花「二日目に君言ったよね、『みんなに復讐』って…何に対してに復讐だ…?」

 

苅亜「俺のことを愛してくれなかった皆に…」

 

星花「そうか、それなら質問を変えよう。どんなモノに復讐する気だ…?」

 

苅亜「そりゃあ、俺を愛さ…あれ?」

 

星花「おかしいよね、だって…お父さんに復讐しても、お母さんに復讐しても、他のみんなに復讐しても、君を愛してくる人はいない。」

 

苅亜「あっ…そん、な…」

 

絶望で膝をつく苅亜。姉ちゃんの言ったこと、そうつまり──

 

星花「そう、復讐の意味が違うんだよね?苅亜くんが今までしたことは復讐ではなく単なる答え探し。」

 

姉ちゃんはしゃがむと苅亜と目線を合わせる。そして口調を優しくする。しかし痛い口調だ。

 

星花「で、どうするの?まだお父さんの記憶をぐちゃぐちゃにする?したら苅亜くんのお父さんはお父さん…神司じゃなくなって心を壊された灰人形になるだけだよ。」

 

苅亜「うぅ…ごめん、なさい…お父さん…」

 

蹲りながらも俺に謝り続ける苅亜。まだ年は浅いんだ。これから失敗して学べばいい。俺はサグメに肩を借りてふらふらになりつつもゆっくりと苅亜のところへ歩く。

 

神司「お前が生きてればそれでいい。そして零愛もな。お前も俺の大事な息子なんだからな。」

 

サグメから離れて苅亜を優しく抱いて頭を撫でる。心が壊れかけているのならば愛を注ぐのが一番効率がいい。俺も家族を守れなかった姿を見た時は心が壊れ始めたがライムが俺を止めてくれた。そのように心を休ませる場所を作ってやると、安心するのだ。

 

苅亜「ごめんなさい…本当にごめんなさい…」

 

神司「ほら、元気出して行くぞ。」

 

苅亜「…うん。」

 

目にいっぱい溜まった涙を拭いてやってから抱っこしてやる。少し重いがこれも苅亜のためだ。パタパタと羽根を動かして喜ぶ苅亜。やっぱり子供だと改めて感じる。

 

?「おーい、神司!」

 

俺の名前を呼ばれたのでそちらの方に顔を向ける。

そこにはオーディンと強欲が走って来ていた。

 

神司「強欲!オー!」

 

強欲「おっ、その子はいつかの苅亜じゃないか。ってことは…」

 

神司「異変解決…とはいかないんだな。苅亜の上にもまだいるんだよな。」

 

オー「だろうな。」

 

苅亜「お父さん、降ろして。」

 

神司「おけ。」

 

ゆっくりと下に降ろすとジャンプして自ら降りた。

 

苅亜「皆に教えておきたいことがあるんだ。」

 

神司「どした?」

 

苅亜「今から会う奴の種族は…“吸血竜人(ドラゴニュートヴァンパイア)„だ。」  

 

神司「どらごにゅーとばぁんぱいあ?」

 

強欲「吸血能力持ちの竜人族のことだ。あの、嫉妬と同じ種族だ。」

 

苅亜「そうです。しかもアイツは…嫉妬さんの血族なんです。」

 

皆「えぇっ!?」




苅亜は愛の欲しさに一度壊れてしまい、周りを見失ってしまった。今までは本当の親からの愛を受けなかったからこそ気づいた感じですね。
親と愛は生きるために大事なんだと判る。
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