それも終わりましたら本編ですわ。
あっそれと、本章で最終章と言いましたが、まだもう一章続きそうです。構想ができてきましたので。
それでは本編へどうぞ。
天井は空ではなく無限に広がる岩肌。奥には煌びやかな街道が広がっている。そんな場所だが、気にするところはそこではない。ここは何より、
「暑い!」
そう、汗が止まらないほど暑いのだ。今日の朝から俺の家に遊びに来ているシロが巫女服を着ていたことに後悔していた。もちろんこの場にドラもいる。今回は俺も含めて3人が旧地獄に用事があってきたのだ。用があるのは俺よりも
ドラとシロが唐突に来て──
◆
『
ノックもせずに早朝にマレット兄妹が賑やかに登場してきた。現在朝の七時を回りそうだった。仮にもお前たちは俺の従者だろ、とはあえて突っ込まず何かしら要件があるからだろう。
一呼吸着いてから少々説教兼ねて怒りつつ二人に要件を聞き出す。冷静な顔してるだろうが、二人からすると恐怖そのものだろう。
「まず、ノックせずに入って来たのは許してやろう。」
ちょーっとだけ妖気を出して話してみる。するとドラとシロは少しビビった様子に「ヒッ⋯!」と声を漏らす。…⋯そこまで怒ってないんですけどね?そんなことできる仲だからこそのジョークはほどほどにしといて、改めて要件を聞き出すことにする。
「それで?どしたんだ急に。しかも地底って旧地獄のとこか?」
「え、えぇ、それがクロム様がお気に入りの茶葉が切れたそうなのですよ。それを聞けば、強欲さんから貰った茶葉とのことらしくて、それで強欲さんの所へ伺うと──」
「さとりさんから譲ってもらった茶葉なんだってさあ〜!それならマスターも一緒に来れば楽しいんじゃないかなぁ〜って!」
「一応止めたんですよ?それでも尚連れていくって言い出したっきり止まらなくて⋯」
苦笑しながら呆れている。そりゃそうだろう。無邪気に暴れまわる妹をどうにか制御しようと兄らしくドラの努力が目に見える。毎度毎度この獣人妹は他の人の苦労も知らないで⋯おっと、これは失言だな。
地底となると、さとりの家となるのか⋯最近旧地獄に行くこともなかったし久しぶりに伺ってみるのも良いかもしれない。
「⋯はぁ〜仕方がねぇなっ!行こうぜ、地霊殿!」
◆
──ということで経緯はこんな感じだ。別に断る理由も無いし行かない理由も無い。二人がアドラやクロムが居る
あの事件*1から七年ほど経つ。クロムが昔言っていた『神ノとの契約』*2の期限も三年前に終了したらしい。だからこそ今は共に行動していないし、お互い家族が大事で優先するため今は別行動ということにしている。クロムとはまた会いたいものだ。
『我がいるだろう、忘れるでない。』
⋯クロムが居ないことにより、夢*3の動ける範囲が大きくなった。今更、俺の体を乗っ取ることはしないが、俺の精神世界でくつろぎ、暇を持て余すようになり、頭の中で直接話しかける雑談ぐらいなら話すようになった。これもある意味俺の中に幽閉することでコイツが少しでも大人しくなったということになる。昔の夢とは大違いだ。
『勝手に我を容易く見るでない。』
慢心なのは一生変わらなさそうだ。
旧地獄の街並みのことなどでドラとシロとついでに夢と雑談をしていると、いつの間にか地霊殿に到着していた。地霊殿に来るのもいつぶりだろうか。1年ほど前にサグメと一緒にお茶を飲みに失礼したぐらいだろう。旧地獄に来るのも基本的には用は無いし、街もあるのでサグメとのデートぐらいでしか訪れない。
「さてっと、お邪魔しますかな。」
門を3回ノックし応答を待つ。すると数秒後に門が開き、お燐が出て来てくれた。お燐は俺らに気付くとすごい笑顔になる。
「まぁ!神司さんじゃありませんか!ドラさんとシロさんもご無沙汰してます!今日は何用でですかにゃ?」
「今日は用があるのは俺じゃなくてこっちのマレット兄妹がさとりに用があるんだとさ。」
「ふむふむ、では立ち話もあれですし
猫でもあるお燐だから語尾とかに猫語入ってしまいがちだが、実際俺たちがお気に入りであるため堅くならずにラフな彼女で居れるのだろう。さとりとの会話の時はだいたい敬語で猫語はあまり使用してないように見える。
お燐の案内でさとりの部屋まで誘導してもらい、お燐が扉をノックする。
「さとり様、神司さん達がお見えになられました。」
「…通して頂戴。」
お燐が静かに扉を開け、俺たちはさとりの部屋に入ると、そこにはさとりとは別の人が座っていた。
白髪で青色の綺麗な目をした凛々しい強欲の悪魔 マモンが魔導書を読みながら俺らに気付くと左手をヒラヒラさせながら挨拶をする。
「やぁ、神司。ドラくんもシロちゃんもさっきぶり。」
「ご、強欲!?なんでここに居るんだよ!」
「ドラくんとシロちゃんから聞いてないかい?茶葉は俺が元に提供してるんだよ。鍛冶屋は本職、裏では茶葉をな。」
「マモンさんにはお空の制御棒のメンテナンスを、私はそのお礼に茶葉の提供をという訳です。マモンさんとはWinWinな関係を保って行きたいですから。私も書類まとめに一段落を終えましたので休憩がてら読書中だったのですよ。」
本を持ちながら強欲の意見に肯定するさとり。仕事途中であるためか、メガネを付けながら読書に勤しんでいた。強欲も紅茶を嗜みながら読書している。
「それで?神司は何用で来たんだ?まぁ、何となく察するが。」
「あぁ、それなら2人から聞いてくれ。今日の俺は保護者だからな。」
「何言ってるんですか…僕たちはもう100歳超えてるんですよ?」
冗談を言うとドラに苦い顔をされシロは苦笑している。あれ?俺のジョークは2人にはもう効かないのか?2人も大人になったってことか。獣人からして100歳越えを人間の年齢に例えると約23歳。つまりは成人しているのだ。ちょっと待て、どういう計算の仕方だよ。無理やりだとしてもそうなるのだろうか。まだ獣人には分からない事ばかりである。
「実はですね、クロムさんの茶葉が切れてしまったらしいのですよ。強欲さんに聞いたじゃないですか。『茶葉はさとりに譲ってもらってるんだ。』って。」
「あぁ〜確かに言ったぞ。だから地霊殿に向かったのかと思ったのだが、来てみると居ないじゃないか…なるほど、神司を誘いに行ったワケだな。そりゃ俺よりも遅くなるか。」
自分で勝手に納得して紅茶を再び口にする強欲。2人の目的はここに居る強欲とさとりが解決してくれるだろう。というより、強欲が今地霊殿で仕入れてきたのならここで買うことも可能なのか。強欲はビジネスが得意だと聞く。鍛冶屋を個人営業しながら茶葉を売っているとなると、相当上手い商売だろう。
…俺もその手の商売した方が儲かるんじゃないか…?妖怪探偵兼退治専門家よりも捗る気がするが…血の荒い俺は今の本業が性に合っているかもな。
「うーん…ドラくん、今財布は持っているかい?」
「はい、いくらになりますか?」
「そうだねぇ…どれくらいの量を邪神王が欲しているかによって金額は変わるねぇ…」
「では、とりあえず一月分頂戴しても宜しいですか?」
「ほほぅ、一月分となると結構するよ?軽く20万程になるけど。」
「結構しますね…シロ、お前は?」
どうやらこれほどの高金額はドラは持ち合わせていない様子だ。すかさずシロにも持ち金を確認する。するとシロは首を横に振り無理だと表した。
「さすがにその金額は持ち合わせてないよ、お兄ちゃん。強欲さん、半月になれば10万程になりますよね?」
「まぁな。それだと持ち金は足りるのかい?」
「そう、ですね…僕と妹の
「待て待て待て、なら俺も出してやるよ。」
思わず口を出してしまった。成人済みとはいえ、この2人の全財産を出してまで茶葉を買うことはない。今の立場の俺は保護者と言ってるんだ。それと俺は2人の主だ。主人なんだぞ。少しは戦闘面以外の俺も2人の手助けをしてやられねば。
「ってことで残りの10万は俺が払う。」
「りょーかいっ、毎度ありがとう。」
強欲が布袋を開きそこに俺と2人のお金を入れる。強欲の顔がなかなかな笑顔になっている。これでも金を出せる堕天使だ。金に目がないのは当たり前だろう。
すると俺は一つ疑問を抱く。
「そういや、提供している茶葉は何の葉っぱなんだ?」
「“チャリティーローズ”、別名『我欲の花』。この花の葉は何もしないままだと、ただの苦味しかないが、乾燥させてから熱湯をかけると甘くなり、上品な味わいになるんだ。」
「ほう・・・」
少々苦い系の一種かと思っていたが、意外と甘みもあるのか・・・今度俺の家でも作ってみようか。
そう考えていると、強欲が続けてチャリティーローズの説明をする。
「だが、チャリティーローズの茶葉は一般の人には飲まさない方がいい。」
「それは何でだ?」
「コイツは麻薬の一種になりかねないからだ。先程乾燥させると言ったが、熱湯をかけずにそのまま飲むと、幻覚・幻聴作用や身体が麻痺する恐れがある。たまに魔界にいる悪魔たちが煙草にして吸っているが、それはアイツらが異常だからだ。」
「危ね、俺家で飲もうか考えてたぞ。」
「止めておけ、後戻りできなくなるからな。チャリティーローズは、甘すぎるが故に猛毒なのさ。」
「『美しい薔薇には刺がある』ってことですもんね。」
「そうそう。」
強欲の説明にさとりが捕捉をする。そうか、上手い話には裏があるとよく言われるがそういうのもある訳だ。それにしても麻薬と来たか・・・煙草もだが、俺には無縁の物だな。あと煙草なんて子供たちにも悪影響だろうからするつもりはさらさらないけど。
そう考えているとふと一つ疑問が浮かぶ。
「そんな危険な茶葉を人里で提供しているのか?」
「言っただろ?“裏”で茶葉を売っているんだ。まぁ、裏社会というか、そういう奴らが欲しがるんだよ。」
「私も自家栽培ですし、自身や旧地獄街道の皆さんに飲ます訳では無いですし。外の世界だとこういう煙草や茶葉を『合法麻薬』と呼ばれていると、八雲紫に説明されました。要は悪用しなければ大丈夫とのことです。」
「欲しがりな奴も居るもんだな・・・」
溜息混じりで呆れたように声を漏らす。そんな中でも社会があるなんて今後の幻想郷はどうなる事やら・・・。まぁ、そこは幻想郷の賢者である紫や自警団の人達に任せよう。俺がそこまで関与する理由は無いからな。しかし、頼れるものが無くなり最終的に縋ってしまうのが麻薬となると、外の世界ではそれが合法と言われていると言うのならまだ幻想郷には救いがあるということだろう。
俺にはまだ、頼れる仲間や家族がこの幻想郷に居るんだ。頼っていきたいし、頼れる存在として今後も生きていくことにしよう。
時間を見ると昼頃になりかけていた。俺は急用を思い出す。
「あっ、バイトの時間じゃねーか・・・」
「さてと、今回はちょいちょい闇深い話ですな。」
「合法麻薬だなんて・・・それ幻想郷の世に出して良いんですか?」
「この回が結構重要なキーになるからしゃーないしゃーない。」
「チャリティーローズがですか?」
「あぁ、強欲はチャリティーローズが麻薬になるって話しかしなかったが、育ち方も教えといやろう。」
「必須事項ならまぁ聞きますけど・・・。」
「チャリティーローズは地上では育ちにくい花なんだ。というよりか、まず日差しを嫌うんだよね。それで極度に暑い地底や、まず日が当たらない地獄や魔界に花を咲かすことが多い。ってことで、強欲が頼み込んで友人のさとりの居る地霊殿で育てさせてもらっているってこった。」
「成程・・・僕でも飲めるのかな?」
「大丈夫だろ。基本、悪魔や邪神には良薬になっているからな。摂取のしすぎに気をつければ全然害悪じゃねーのよ。」
「そういう事でしたら今度採取しに行きましょうか。新しい実験にも使えそうですし。」
「程々にな?んじゃ〆ますか。」
「ですねっ!ではまた次回に会いましょう!」
「縁の歯車シリーズが終わったらこの後書きともお別れだからよろしくな〜。」
「えっ・・・?」