邪神たちの生きる世界   作:紅鎌 神邪

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少し時が戻ります。
サグメの心情の次は神司の心情ですね

先に言っておきます。神司くんは察する能力がクソ低いです。戦闘面以外は...なんて言うんでしょう、鈍感?
(バレンタインの日になんて内容を...)


第145話 再会

 サグメが俺に詰め寄る前の話に戻るが⋯レミリアが泣き疲れて少しの休息をとっていた。俺はレミリアの頭を撫でながら黙っている。対してレミリアは呼吸を整え、切り替えたかのように未来(つぎ)のことを考えているようだ。

 

「...どうだ?落ち着いたか?」

 

「...えぇ、もう大丈夫よ。神司ありがとう。」

 

 涙で顔が赤くなっているが、いつもの冷静さを取り戻している。この感じなら本人の言う通り、大丈夫なのだろう。なら当初の目的・・・とは行かなくなったが、命儚が居たであろう地下牢に向かいながらレミリアに質問していく。

 

「そういやみんなには相談しなかったのか?」

 

「...できなかったわ......私の失敗であの子たちを巻き込みたくなかったもの...」

 

「そりゃそうか。まっ、勇気を出して俺に話してくれてありがとな。」

 

「それはこっちのセリフよ。本当にありがとう。」

 

 そんな感じに話していくと命儚が居た筈の牢屋の前まで着いた。見た感じ本当に居ない。レミリアに錠を開けてもらい中に入るが、気配も感じない。更に牢屋をこじ開けた形跡も見つからない。しかし、一つ分かったことがある。

 

「...魔力の残り香があるな。」

 

「魔力...確かにあるわね。でもそれだけだと瞬間移動したぐらいでしかないわね。」

 

「・・・・・・」

 

 命儚が瞬間移動した戦闘を見せたことは無い。しかし、アイツの能力は確定していないが少しだけ分かることはある。それはクーちゃんのような模倣能力ということだ。あの死闘の時、命儚はオーのGravity能力と苅亜の記憶操作、というよりも洗脳に近い能力を持ち備えていた。あとはシンプルな接近戦なり吸血竜人(ドラゴニュートヴァンパイア)の吸血能力。なので魔術を使うような奴ではない。では、あの一味の中に魔術を使う者が居たということになる。正邪とアドラエル、そして苅亜はもちろん除外する。ならあの触手剣士は⋯いや、魔法を使うところのイメージがつかない。ザキは脳筋であり筋力だけで戦っていたから違う。ならば誰が──

 

「ダメだ、予想がつかない。」

 

「私もさっぱりだわ。パチェなら何か知ってるかもしれないわね...」

 

「言えるのか?」

 

「何言ってるのよ、私はこれでも紅魔館当主よ...!」

 

 レミリアが自信満々に答える。先程まで泣いてた彼女とは思えないほどだ。そこまで言い切れるのなら安心した。涙を拭いたあとは残っているところが成長したと思える。

 そんな自信満々な彼女に俺はニヤリと笑いながら揶揄う。

 

「さっきまで泣いてたのにか?」

 

「うるさいわね!」

 

 恥ずかしそうに俺をポコポコと殴ってくるレミリア。俺は軽く笑いながら、そろそろ戻るか、とレミリアに提案する。

 

「それもそうね。」

 

 そう言って頷くレミリア。まだ解決していないことが多くあるが、今日は一旦バイトの方を再開することにしよう。階段を上がり終えるとレミリアが錠に鍵をかけ、2人で館内にいるサグメたちを探す。レミリアと談笑しながら探していると、個室から賑やかな声が聞こえてきたのでそちらへ向かうと、サグメが飛び出してきた。

 

「神司!貴方何してたの!」

 

「うえっ!?い、いや...」

 

 急に俺に向かって怒鳴ってきたサグメ。俺は思わず変な声を出しあたふたしている。

 なんで怒ってるの?!俺なんかしたっけ⋯!

 思い当たる節はある。今日の遅刻があるのだ。確かに俺の遅刻でサグメが不機嫌になっているなとは思っていたが、もしかしてそれが原因で何かの沸点が溢れて怒っているのか?

 俺が焦りながらも考えているとサグメが俺に詰め寄ってき来た。

 

「まさか私に言えない内容なの...?」

 

「いや、いやぁ...」

 

 本当に俺は何をしでかしたのだろうか。そういえば、髪を乾かしてとサグメに言われたが一回も乾かしていないぞ。そのまま着替えて合流してからレミリアに呼ばれて地下へ行った⋯風邪を引いてるかもしれないという心配もあるのだろうか。

 ならば本当のことを言うしかないのだろうか。そう決心したところでレミリアが仲介に入ろうとしてくれた。

 

「あのね?神司は──」

 

「レミリアは黙ってて。」

 

 しかしサグメに一蹴されてレミリアが黙り込んでしまった。本当のことというのは、命儚が脱走したことをサグメに話すということになる。あの悪夢が繰り返されるということをサグメに話せば嫌な気持ちにさせてしまうかもしれない。

 

「...そこで黙るのは違うと思うけど?」

 

「あ、あのそれがですね...」

 

「はっきり言いなさい!!」

 

『ッ!?』

 

 サグメが急に俺に喝を入れるように叫ぶ。サグメが憤りで叫ぶ姿を初めて見たこの場のみんなが思わず足を引いてしまった。

 確かに今日の俺は遅刻するし、まだメイド仕事をしていない俺を否定できないが、いつも温厚であるサグメがここまで怒るのはおかしい⋯⋯沸点をそこまで察せなかった俺の責任でもあるか⋯

 俺がサグメの勢いで謝罪しようとするとこの静寂の中、サグメがボソッと呟くのが聞こえてしまった。

 

...なんでこんな人を好きになったんだろう......

 

バチンッ─!

 

 間髪入れず姉ちゃんがサグメの頬を引っぱたく。怒る時は怒る姉ちゃんだが、人を叩くところを始めてみてまた俺は驚愕する。サグメは何が起きたのか一瞬固まっていたが、何かに気づくと顔が真っ青になり涙を流していた。俺は何も出来ずにこの場で固まることしか出来なかった。

 すると姉ちゃんがサグメにいつもの優しい声で話し始めた。

 

「ねぇサグメ、ちょっと頭を冷やして来なよ......」

 

 姉ちゃんの声はいつもの優しい声なのだが、何か切ない声にも聞こえた。サグメを思う気持ちと、俺を思う気持ちの現れなんだと一瞬で理解した。改めて何も出来ない俺を憎んだ。

 

「......そうね...」

 

 姉ちゃんの言う通りにサグメは俺たちに背を向けてゆっくりとその場を離れた。俺は思わずサグメに向かって手を伸ばしたのだが、足は動かなかった。

 今俺が行くのはダメな気がする。だけどサグメが心配なのは変わらないのだが⋯

 気づくとサグメの姿はもう、見えなかった。俺含めてみんなが黙り込んでしまった。この場の空気が異様に重い。黙り込んでいる中、姉ちゃんが俺に少し強い口調で話し始めた。

 

「...神司、何でサグちゃんが怒ったか判る? 」

 

「......いや...」

 

「......じゃあ問う人を変えよう。レミリア、何で怒ってたか判る?」

 

 レミリアは少し考えた末に何か思いついたようにハッとした。

 なぜレミリアなのだろうか、その疑問はレミリアの口から語られた。

 

「私が泣いていたから...サグメがそれで神司に...っ!」

 

 サグメは誰よりも早く俺の前に迎え出てすぐ怒り出した。多分、俺とレミリアの話す声が聞こえてきたことに気づいたからだろう。レミリアは先程の一件で疲れるまで泣いていた。それでレミリアの顔に涙を拭いた跡を見てしまったのだろう。それでサグメの中で“神司がレミリアを泣かせた”と解釈してしまったのだろう。

 

「そういうことになるだろうね...神司!」

 

「っ!はい!」

 

 姉ちゃんに急に呼ばれて返事するとサグメが走っていった方に指を指す。俺に行けということなのだろう。俺は無我夢中廊下を走る。赤いカーペットの上ということもあり躓きそうになるも走り続ける。

 『頭を冷やして来なよ』⋯サグメはきっと外に出ている。しかもメイド服を着たままなのでそう遠くは行っていない筈。

 玄関の扉に着く頃には息切れしているが、そんなことは関係ない。扉を開くと門が見えるだけでレンガ状の壁のところにもサグメは見当たらない。もしかして外へ⋯と考えていると引きつっているような声が近くで聞こえた。

 少し扉から外に出てからくるりと後ろを向くと、扉と階段のある横の角に体育座りしながら泣いているサグメの姿があった。俺はゆっくり近づいてからサグメの頭に軽く手を置いた。

 

「...無事で良かった......」

 

「ううっ...」

 

 腰を下ろしてサグメの横に座り込む。頭を撫でるのはもちろん継続中だ。サグメの涙を流す姿を見るのは久しぶりだ。彼女は本当に我慢強い子だと思う。そこに惚れたのは紛れもない俺なのだから確実だろう。

 数分ぐらい横に座っていると俺の方に頭を倒してきたので無でるのを止めてサグメを全身で抱くような形になる。

 

「......落ち着く...///」

 

「俺はどこにも行かないからな...」

 

 こくりと頷いてまた黙り込むサグメ。俺は背中をトントンと優しく叩いて安心させる。泣きながら鼻をすするサグメを見て俺は優しく声をかけようとしたその時──

 

「よォ、神司。」

 

 俺の前に白装束を着て白いフードを深く被った男性のような人が立っていた。

 ・・・こいつには妖気も無く殺気もない。だが、俺らの前に誰か(・・)はいる。声質的に光矢ではない。しかし聞いたことのある声だった。

 黙っていたがこの場から離れそうにないので俺はそいつに問う。

 

「...誰だ。」

 

「さぁな。」

 

 サグメの方が震えてるのが俺の腕から伝わってきた。恐怖しているのだろう。サグメが恐怖する人物・・・となると俺が会ったことある()だけだろう。

 俺は無言で神剣『千本刃』を展開し、警戒する。俺の愛剣の2本は更衣室替わりの部屋に置いてある。だから能力頼りの戦闘になるのだ。目を瞑り予知を見る。そこには、明らかに紅魔館からの脱走に成功したアイツの顔が浮かんだ。アイツがここで暴れまくる余地が見えたのだ。更にこの場には息を潜めているがまだ数人いるようだった。

 

「...流石にここではダメだろ!」

 

「っ...!?///」

 

 サグメをとりあえず両手で抱え上げて紅魔館から離れる。後ろを確認すると8人程の白装束で白いフードを被った人達が追いかけてくるのを確認してから全ての刃を敵に向かって放つ。何人かはちゃんと刺さって倒れる音まで聞こえた。

 とりあえず人里まで走ってきた。雨にも関わらず人が多く混雑している。

 

「しめた...!」

 

 俺は人混みの中に入っていき俺とサグメの周りに『音無結界』を張り、俺から出る音を全て消す。入った後にすぐ俺の下だけにスキマを開き中に入ろうとすると、誰かに俺の長髪を引っ張られ外に無理なり投げ出される。

 

「ぐあ゙っ─!」

 

 道の真ん中にまで投げ飛ばされるが、サグメを守るように抱きしめて俺は背中から着地してしまった。

 この周辺にいるみんなが俺に注目する。心配そうに俺らに声をかける人たちやキャーキャー叫ぶ人たちもいる中、白装束の人たちが俺らの前に7人が歩いて現れた。どうやら1人は倒せたようだな。

 

「神司っ...!!」

 

「俺は大丈夫...!サグメは...?」

 

「擦り傷一つもないわ...」

 

「なら良しだ...!」

 

 心配してくれるサグメを横に俺はアイツらに邪気を放つ。周りにいた普通の人たちは俺の邪気に当たりどんどん倒れていく。白装束のヤツらも3人は倒れて残り4人になった。3人がその場で止まると1人だけ倒れている俺らの前までやってきた。

 

「...無様な姿だよ、全く。」

 

「お前のせいでせっかくのメイド服が破れてしまったじゃねーか。」

 

「気に入ってたのか?」

 

「多少な...」

 

『・・・・・・』

 

 数分間の沈黙が流れる。お互いいつでも殺し合える距離にいているため誰も動かない。雨の音が鮮明に聞こえる中、母親らしき女性の声が聞こえ、小さい男の子がこちらに走ってくる音が聞こえた。俺はサグメに耳打ちすると直ぐに立ち上がって子供の方へ駆けていく。それをアイツが見逃すわけがなく、サグメの方に殴りかかろうとしていた。

 

「邪脚『ブラッドストーム』!」

 

「なっ...!?」

 

 右足に風を起こし白装束の方に脚を向ける。すると逆風を使い引力によりこっちに引っ張られ、子供を逃がすサグメから遠ざかって元いた位置まで戻されようとしていた。

 しかし、くるりと俺の方向に向き直すとお互いの脚同士をぶつけ合い、お互い一度後ろに退く。その際に風の勢いでアイツの素顔を目にすることができた。

 白髪にエメラルドグリーンの眼、更に背中から蝙蝠に似た黒い羽根、何年も前の姿と全然変わらない姿だった。あの落ち着きのないような狂った様子まで昔のまんまだ。

 

「今更俺たちに何用だよ、命儚(みょうむ)!」

 

 ニヤリと奇妙な笑みを漏らす命儚。まるで宿敵と再会できたかのような嬉しさとの反面にやっと殺せるという強い憎しみにも取れるような狂気染みた笑みを零していた。

 

 

【挿絵表示】

 




とうとう出てきちゃったなぁ
次回久々の戦闘回です。久しぶりすぎて書ける自信が少々ありませんが()
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