いつもそれでみんなが振り回されてるのを彼は聞き入れようとしない。
仲間想いな性格なのに、何故こうも彼は人の話を聞かないのか。
朝日に照らされて目が覚める。そこは知らない俺らの家とは違う天井だった。起き上がり周りを確認する。外では雀が囀っているのが聞こえる。ちょっと癖があるがまともなベッドに俺は寝かされていた。部屋は片付けられておらず、変な荷物が置きっぱになっていたり、実験したあとの器具などが散乱していた。あとは女の子っぽい部屋ということが分かる。何となく想像つく人はいるが、ここは多分・・・魔理沙の家だろう。服はメイド服ではなく、いつもの黒パーカーに黒ズボンになっていた。ベッドの横には俺の愛刀2本が掛けてあった。
「一安心...じゃねぇよ─ッ!」
俺はサグメが殺されたことを思い出し、ベッドから飛び降りようとすると全身に電撃が走る。それもそのはずだ。俺は昨日、命儚に骨を蹴られて粉砕されている。だから痛いんだな。
目を閉じると昨日の生気のないサグメが脳裏に浮かぶ。身体の震えが止まらない。もうこの世にはいないと考えると俺も死にたいと考えてしまう。だけど、俺の見た感じのことが合っているならば...
「......まだサグメは生きている...?」
「よぉ、起きたか。」
「うぇあっ!?」
急にドアが開いて魔理沙が俺を呼びに来た。真剣に考えていたから余計驚いてしまい、ベッドから転げ落ちる。俺が声を上げて驚くから魔理沙が心配そうに近づいてきた。
「だ、大丈夫か?お前、4日は眠っていたんだぞ?」
「ちょっと待て...今なんて......?」
「
4日・・・?サグメが殺されてから4日経っているのか・・・・・・『サグメは死んでいる』と余計にそう考えてしまう。ダメだ、早く行かないと。でもどこに・・・そうだ、あの白装束の奴が話していた。“月の使者”だって。なら月に行けば・・・・・・。
俺はむくりと立ち上がり魔理沙をスルーし、無意識に俺の愛刀2本を持ち、体がフラつきながらもこの部屋から出ていく。後ろから魔理沙が何かを叫んでいるが、今の俺は聞き取る気すらなかった。玄関まで来てドアノブに手をかけようとすると、脳内に声が響く。
『お主、その状態で挑む気か。』
「......うるさい...」
その声に反感し、ドアを開け外に出る。朝日が眩しい、まるで何も無かったかのように平和な朝だ。しかしそれも昨日だと思っていた4日前の出来事。確認しなくちゃ。どんな結末になろうと受け入れなければ。そう
月へ行くために、俺のスキマを開こうと何も無い空間に人差し指と中指を合わせて、横スライドでなぞる手前で、急に目の前が草原へと変わった。何も無く、ただ風が吹き草を揺らしている。永遠に草原が遠く続く中、空には水色で黒や白のヒビが入っていて翡翠色の太陽のようなものが浮いている空間だった。見た瞬間に理解できた。俺自身がここへ来たことはないが、ここに居たことは覚えている。
「俺の精神空間...」
「そうだ。」
後ろから声がしたので振り向くと、そこには腕を組んで仁王立ちしている夢司人命神改め、“
俺は鞘から邪楼剣を抜いて夢に向かって斬りかかる。
「邪魔立てすんな。早く行かねーと間に合わねぇんだよ!」
「ッ!?」
いきなり斬りかかって来る友人を見た夢は、不意打ちなのにも関わらず、影を使い邪楼剣を薙ぎ払う。俺はその瞬間に雨叢雲剣に風を纏わせ夢に向かって放つ。影で防ごうとするがその防御は虚しく、影を貫通し夢の腹部を貫通する。あんぐりと開く口から血を流す。腹部は丸い穴が空き、そこから血が流れる。これで・・・いいんだ。
そう俺は自分自身に言い聞かせると夢はニヤリと笑う。
「何が可笑しいんだ。」
「いやぁ?我を殺めるほどそんなに女が大切だと?」
「......言ってる意味がわかねーよ。死に損ないが。」
そう言って夢に払われた邪楼剣を拾い直し、スペルカードを2枚使用した。夢は未だ笑ったままだ。何がそんなに可笑しいのか理解ができない。避けれないように夢との距離を詰める。そして両刀を構えた。
「せめて今のうちに引いとけばいいものを...」
「ハハッ...!誰が悪だったかもう理解し難いなァ!」
「黙れ。」
バツ印で夢の胸を血に染める。耐えきれず地面に倒れるのを確認する暇なんてない。そう思い、その場を離れようとすると、夢が俺の服の裾を掴んで引き止めようとした。見ると呼吸が荒れているが死ぬことはなさそうと感じた。
「一つだけ......聞かせろ...!」
「何を聞いても止まる気なんてないぞ。」
「......お前は何を救いたいんだ...?」
「俺の妻だ。それ以上もそれ以下もない。」
「そう、か...置いてかれた、者たちのことは......考えないのか...?」
「...俺がやらかしたことだ。俺が全てを片付ける。」
「......勝手にしろ...」
そう言い残すと裾から手を離し、その場で気を失った。精神世界の中だ、簡単にくたばるような奴じゃない。俺は精神世界から現世へ戻る。その場で留まっていたようで、時間も周りの景色は変わらずだった。
『何を救いたい』、か。今はサグメを救うことだけを考えてる。零愛や苅亜に関しては姉ちゃんが居るから安心して任せられる。だから俺は妻であるサグメを救って家にまで連れて帰ることが俺に対しての贖罪だ。
「早く月に向かわないと。」
「待てよ!」
声がした方向を見ると、ぐしゃぐしゃの髪にしっかりとボタンを締め切れていない正邪の姿があった。足には靴までも履いていない。息も荒く全力で走ってきたのだろう。おおよそ、起きたら俺が出ていったと魔理沙から聞いてすぐに追いかけてきたって感じだろうな。魔理沙の話だとどうやら正邪が俺を助けてくれたらしいし。
「サグ姉を助けに行くつもりだろ...!」
「それ以外に何があるんだよ...」
「まさかと思うが一人でか...!?」
「そのまさかだよ。」
「返り討ちに遭うのが目に見えてるがなァ~?」
「......関係ない。サグメを連れ戻せるなら何でもしてやるよ。」
「......苅亜と零愛はどうすんだよ。」
「姉ちゃんに任せる。」
「ッ!...ッざっけんなよ!!息子娘を置いて一人で月に挑みに行くなんざ死にに行くようなもんだ!もし死んだらどうすんだ!苅亜と零愛は!?もしお前が居なくなったらどうすんだよ!!」
「......それでも俺は行くよ。」
そう言って俺は正邪に向けて落ち着いた表情を浮かべる。その顔を見た瞬間、正邪の目から涙が流れた。涙に気づくとすぐに服で拭いている。
神司は正邪に背を向けて空気を十字に切り分けてスキマを開く。そのまま中に入っていくが、正邪が走って俺を止めようとする。あと一歩のところでスキマが閉じられ、神司の姿が幻想郷から消えた。一人残った少女はその場で泣き崩れ、魔法の森には神司に向けての怒りと虚しさの泣き声だけが木霊していた。
彼の行先は地獄あるのみ。怒りや憎しみが生むのはそれもまた怒りと憎しみだけだろう。
『負の連鎖』というは決して何も生まないのに。喜楽も幸福なんて夢のまた夢。
どうしてこうも人という生き物は感情だけで動いてしまうのか。