ビギニング・オブ・ザ・ナイトメア ~深紅の絶望は、ここに~   作:暁葵

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第二章 破滅の吸血鬼

第二章 破滅の吸血鬼

 

 

 俺が第一のスペルカード、罪符【ルシフェルの暁光】を獲得した後――。

 

「よし、これでスペカの作成方法が分かった。ありがとな、パチェ。これから頻繁に来るだろうが、宜しく頼むな」

「どういたしまして」

 

 パチェは一言そう言って図書館を徘徊する。俺も大図書館を出ていくのだった。

 

 あとは能力を上手く使いこなすこともしなければいけない。能力を行使ししなければ恐らくこの世界の住民に殺されかねない。

 

 俺は決心した。護衛として働くためには、もっと”力”を手に入れなければいけないというコトを――――。

 

  †

 

「――というわけで咲夜さん、俺に戦闘の仕方を教えてください!」

 

 咲夜が銀のお盆を持ち歩いている中、俺は頭を下げて懇願していた。

 

 やはり結構困惑している咲夜は、此方に体を向ける。

 

「……何故、私なんでしょうか?」

「いやぁ……さっきのナイフの投擲が物凄く速くて、強そうだな…って」

 

 正直ただの偏見だ。あんなプロ野球選手ばりの剛速球のようなナイフ、あれは常人では為せない神業だ。

 

 俺を拘束していた美鈴という人も強かった。体術も結構汎用性はあるだろうが、正直拳で戦うのは俺のコンセプトに反するものだ。

 

「……分かりました。貴方に戦い方を教えます」

「ありがとうございま――」「ただしっ!」

 

 俺が謝礼をしようとしたその瞬間、咲夜がそれを遮る。何か問題でもあっただろうか?

 

「私の仕事に協力してください。それが終われば特訓してあげます」

「え――具体的に何をするんですか?」

「そうですね――――簡易的なもので、門前の掃除をしてもらおうかしら?」

 

 なんだ、ただの掃除か。それならチャチャっと済ませればいいか。

 

 ――そう思っていた俺だったが、咲夜は塵取りと箒、ブラシだけを持たされる。

 

「では、早速移動してくださいね」

 

 咲夜は何か目論見があるような笑みを魅せる。俺は冷や汗を額から伝わせる。

 

  †

 

「………うん、何だこれ」

 

 唖然としてしまう。門前と言っても――広すぎる。おおよそ百メートルはある。どうやら範囲は玄関前の小庭と門を全てらしい。

 

 こんな場所、最速でやろうとしても最低三時間は浪費するだろう。

 

 しかも渡されたのは箒と塵取りとブラシ…正直これだけで掃除できるとは到底思えない。

 

 幸い、小庭には掃除道具入れがあるからまだ良いが、それがあっても時間は短縮されないだろう。

 

 

「さっさとやるか」

 

 俺は息を大いに呑み込み、気合を入れる。

 

  †

 

 四時間後――俺はやっとの思いで掃除を終えた。

 

「やっと終わったぁぁぁぁぁ‼ 今すぐ戻ろう、んで寝たい……あれ?」

 

 俺の脳内にふと疑問が浮かび上がる。それは、”俺の寝床”のことである。

 

 そういえば、何故か”寝床”だけは案内されていなかった。紹介されたのはあくまで持ち場であって、寝床は一切として紹介されていなかったはずだ。

 

 俺は急いでレミリアの部屋へと走り出す。事情を聴取しなければいけない…そんな使命感に駆られる。

 

「お嬢ッ‼」

「何? そんなに息を切らして…はっ! もしかしてワタシに早く会いたいって思っていたのかしら?」

「違う! 俺は寝床について知りたいんだ!」

 

 俺は流石にレミリアの冗談に苛立ちを覚え、主を叱咤してしまう。

 

 レミリアは「フフッ」と反省する気もない笑いをこぼす。そして俺の首元を指さす。

 

「貴方の首筋を見てみなさい? そしたら答えが分かるわ」

「首筋……? 何を――――」

 

 と、不信感を抱きながらも首筋の方に視線をやる。

 

 すると、首筋には深紅の華のような紋章が刻まれていた。――何だこれは? 何故こんなものがあるんだ? 

 

「これは《輪廻の烙印》っていうの。まぁ、これはあくまでランダムな効果なんだけどね」

「で、その《輪廻の烙印》とやらは、どういう効果を持つんだ?」

「主に”寿命の大幅遅延”と”不眠”ってところかしらね? 簡単に言えば軽く七百年生きられて、尚且つ寝なくて済む……ということよ」

 

《輪廻の烙印》…恐らくレミリアに血を吸われたときに付けられた紋章なのだろう。しかもさしづめ吸血鬼のような寿命を遅延し、更には寝なくていい……これで業務に励める――訳もなく。

 

「『ということよ』じゃ、ないんだよなぁ! 勝手に何してんだお嬢! 人間の三大欲求の一つを壊しちゃダメだろ!? 寝たいんだよ俺‼」

 

 あまりの身勝手さに流石に堪忍袋は耐えられなくなったらしく、俺は憤慨してしまう。

 

 俺の叱咤にレミリアは涙目になっていた。

 

 流石に言い過ぎたか……俺は後悔しながらもレミリアを慰めようとしたその時――。

 

「触んないでッ! 主人に逆らう下僕なんて要らないわっ‼」

 

 完全に拗ねたようだ。ここまで高慢で我が儘なお嬢様だ、歯向かう下僕なんて論外なのだろう。

 

 そしてレミリアは子供らしくそのまま部屋を全速力で出ていく。

 

「このままじゃ、終われねぇわな」

 

 俺は後頭部を掻く――――。

 

  †

 

「チィッ! どこ行ったんだお嬢?!」

 

 俺は紅魔館内を疾走する。レミリアを探すためだ。

 

 咲夜と約束した訓練のことは、当然が如くすっぽかした。レミリアが拗ねたなんて聞いたら、俺は間違いなくクビ(を刎ねられる)だろう。

 

 だからこのことは誰にも言っていない。言えば大騒動、一人で捜索し、そして説得しなければならない。

 

 俺は兎に角、レミリアを必死に探す。だが、どこを見てもいない地下を探しても、何もない。

 

「困ったなぁ………ん?」

 

 俺が路頭に迷っていると、一つの部屋を見つける。

 

 その部屋には、鎖と南京錠で頑丈に封鎖されており、まるで危険なものを収容している部屋の様だった。

 

「ここは……?」

 

 俺は何となくでその封鎖された部屋の封印を解いてみる。今は誰もいないから、大丈夫だろう。

 

 そして扉を開け、中を見渡すとそこにはボロボロに砕け散ったぬいぐるみがそこら中に散り散りになっており、まるで世紀末の様だった。

 

 俺は呆然としながらも足を踏み入れる。

 

 すると横から「ヒッ」という怯え竦んでいるような声が聞こえる。

 

 振り返るとそこにはレミリアに類似するようなドアノブカバーのような帽子を被る金髪のロリが震えながら座っていた。

 

 どうやら初めて見る顔だったのか、相当警戒しているようだ。

 

「あー……ちょっといいか? その、レミリア・スカーレットっていう奴を探してるんだが――知らないか?」

「え……貴方”お姉さま”の知り合いなの?」

 

 金髪の幼女が首を傾げる。お姉さまだと? どういうことだ……まさか。

 

「お前、お嬢の妹なのか!?」

「そうだよ、アタシの名前はフランドール・スカーレット。フランって呼んでね」

 

 フランドール・スカーレット…本当にレミリアの妹なんだな。それであって違うのは羽だけか。宝石がぶら下がっている。

 

「で、だが――俺はお前の姉を探しているんだ。実は――」

 

 ………これまでの顛末を説明した。

 

「へー……お姉さまと喧嘩しちゃったんだ。――つまり、アタシにお姉さまを説得する方法を知りたいってことなんでしょ?」

「そうだ。フランは物分かりが良いな。どこぞのおぜうとは似ても似つかないな」

「あははは……」

 

 フランは愛想笑いをする。何か乾いた笑いだった。

 

 俺はフランがなぜこんなところに居るのかを問い質す。

 

「何でフランは此処に居るんだ?」

「……実はアタシ、”ありとあらゆるものを破壊する程度の能力”を持ってて、それで幽閉されてるの」

「幽閉? 誰に?」

「…お姉さまに」

 

 俺は深い闇を見てしまった。何でレミリアは自分の妹を幽閉するなんて言う極悪非道な行為をするんだ?

 

「…事情は分かった。一応聞くが、対処法は?」

「あーえっとね、『何でも言うこと聞くから』って言ったら機嫌は少し治してくれるね」

 

 意外とチョロい対処法に笑おうとしたが、そんな猶予は無かった。急がないとどっか行きそうな可能性がある。

 

 俺は急いでフランの部屋を出ていく。

 

「あ、フラン」

「?」

「今度、お菓子持って遊びに行くから、覚悟しておけ」

 

 フランの顔が燦然とした雰囲気を帯びる。どうやら喜んでくれたらしい。

 

 俺は全力で疾走する。

 

  

 

 

 

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