普通過ぎる妹とおかし過ぎる兄の話   作:テレサ二号

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どうもテレサ二号です。

新年明けましておめでとうございます!
今年もよろしいお願い致しますm(_ _)m

前回から約1ヶ月経ってしまいスミマセン。
年明けから体調を崩していましたが復活したので筆が乗るままに一気に書き上げました!

それでは早速本編です!!


Order 10:隠し味はチョコ?キャラメル?それとも○○!?

「いただきまーす!!」

 

「はい、どうぞ召し上がってください」

 

「うーん!美味しいです!!」

 

Roseliaの練習の休憩中、氷川紗夜はメンバーに自作のチョコブラウニーを配っていた。

 

「紗夜、このブラウニー本当に美味しいわ」

 

「そうですか、湊さんのお口に合ったのなら幸いです」

 

「ホント紗夜のお菓子作りの腕前メキメキ上がってるよね!私もウカウカしてられないなぁ~」

 

「今井さんはお菓子作り上級者です。私なんてまだまだ足元にも及びませんよ」

 

「そんな事ないよ。最近急成長してるじゃん♪。もしかしていいレシピ本でも見つけたの?」

 

「そういう訳ではありません。ただ……」

 

紗夜は言葉を濁した。

それを見逃さずリサは更に追及をした。

 

「なになに~?そんな言い方されたら気になるじゃん♪」

 

「レシピ本ではありませんが、お菓子作りを羽沢さんの御兄様から御教授いただいています」

 

「つぐみのお兄さん?つぐみってお兄さんいたんだ?」

 

「はい、最近までフランスに留学されていたみたいで今は羽沢珈琲店でパティシエをなされています」

 

「ふーん、何か面白そうじゃん!今日の練習終わりに一緒に行ってみない?」

 

「私は構いませんが氷瀧さんが嫌がるかもしれませんよ?」

 

「氷瀧さん!?名前で呼び合う仲なの?はは~ん?もしかして紗夜付き合ってるの?」

 

リサがジト目を紗夜に向けると紗夜はとても嫌そうな視線を返した。

 

「あり得ません……。理由は分かりませんが私は氷瀧さんから嫌われているんです」

 

「それなのにお菓子作りは教えてくれるの?」

 

「あの人はお菓子作りにはとても真摯な方ですから」

 

「オッケー♪じゃあ練習後に行こうね♪」

 

「紗夜、リサ、練習を再開するわよ」

 

「はーい♪」

 

約束を交わしたリサと紗夜はRoseliaの練習に戻るのだった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

練習中終了後、リサと紗夜は羽沢珈琲店を訪れた。

 

「あっ♪いらっしゃいませ、紗夜さん、リサ先輩♪」

 

リサと紗夜はつぐみの天使の笑顔で迎え入れられた。

 

「やっほ~つぐみ♪。今日はお兄さんいる?」

 

「お兄ちゃんですか?お兄ちゃんなら今はいませんよ?クリーニング屋さんに頼まれてた誕生日ケーキをお届けに行ってます」

 

「羽沢珈琲って誕生日ケーキのサービスあるの!?」

 

「いえ、お兄ちゃんと面識がある商店街の方限定でお兄ちゃんがサービスで作ってるんです♪あっ、もしかしてリサ先輩もお兄ちゃんのケーキ食べに来たんですか?」

 

「も?」

 

「はい♪今朝は蘭ちゃんとモカちゃんとひまりちゃんがお兄ちゃんのケーキ目的で来ていたので」

 

「氷瀧さんがお作りになったケーキはまだ残っていますか?」

 

「今日はもう完売しちゃってて……。でもお兄ちゃんが作ったマカロンならありますよ?」

 

「いいじゃん♪マカロンとコーヒー貰える?」

 

「私も同じものを」

 

「はい、少々お待ちください♪」

 

つぐみが店の奥に向かうのを確認してから紗夜とリサは会話を始めた。

 

「つぐみってホントにいい子だよねー。可愛いくて頑張り屋さんで健気だし」

 

「確かに素直で相手の良さを尊重してくれる羽沢さんは素敵だと思います」

 

「ほほぅ、君達見る目があるねー」

 

「いえ、思った事を述べたまでです」

 

「「・・・・・」」

 

「誰ー!?」

 

いきなり同じテーブルに座り会話にナチュラルに参加してきた氷瀧にリサはとても驚いた。

 

「初めまして羽沢氷瀧です。紗夜ちゃんはそろそろお帰りかな?」

 

「こんにちわ、今来たばかりだからまだ帰りません」

 

「は、初めまして今井リサです」

(うわぁ……イケメンだ。でも確かにつぐみの面影あるかも)

 

「今日はどうしたんだ?」

 

「氷瀧さんのケーキを今井さんが食べたいと言ったので来ました。それとこれを……」

 

紗夜は先程Roseliaのメンバーに配った者と同じブラウニーを氷瀧に差し出した。

 

「採点をお願いします」

 

氷瀧は査定するようにブラウニーの観察した。

 

「包装袋はいいけどリボンはもっと工夫した方がいいぞ?」

 

「はい、分かりました」

 

(えぇ!?包装から指導されるの!?)

 

氷瀧はブラウニーを袋から出すと口に運んだ。

 

「うーん、今回はチョコの湯煎の温度が高いね。夏はチョコが溶けやすいから湯煎の温度はあと5℃は低くていい」

 

紗夜はメモを取る。

 

「あとは夏だからな、チョコだけってのは味気無い。もっと工夫した方がいい。スライスナッツやスライスオレンジを入れると口当たりが変わっていいと思う」

 

「点数は?」

 

「55点」

 

(うわー、厳しいなぁ……)

 

紗夜は肩を落とした。

そこへコーヒーとマカロンを持ってつぐみが戻ってきた。

 

「お待たせしました!コーヒーとマカロンです……って紗夜さん大丈夫ですか!?お兄ちゃん、紗夜さんをいじめたの?」

 

「いえ、ブラウニーのアドバイスをいただいていただけです」

 

「そうなんですね。お兄ちゃん、紗夜さんをいじめたらメっ!だからね!」

 

(あぁ……可愛い……ツラい)

「そういえばいつも紗夜ちゃんにはお菓子をいただいてばかりだから、俺のケーキ食べて行ってよ。ちょうど秋に向けての試作品を作ってて」

 

氷瀧はケーキを取りに店の奥に向かった。

 

「私達はマカロン食べておこっか?」

 

リサはマカロンを口にする。

サクッとした食感としっとりとした食感、さらにはピスタチオの香りが口に広がる。

 

「お、美味しい……」

 

「ホントですか?お兄ちゃん『マカロンは俺が初めて任されたメニューだから自信ある』っていつも言ってるから喜ぶと思いますよ?」

 

リサは軽い感動に襲われた。

自身もお菓子作りをするから分かるがマカロンは見た目以上難しい。

特に表面のツヤと滑らかさを出すのは素人には無理だ。

そしてこのマカロンはリサが食べたマカロンの中で一番美味しいと感じた。

 

「お待たせー」

 

「こちらのケーキは?」

 

「焦がしバターのマロンケーキだ」

 

ガトーショコラやブラウニーのような生地のケーキに粉砂糖をまぶしたケーキである。

 

「マロンと言えばモンブランじゃないんですか?」

 

「モンブランって他の店でも当たり前にあるだろ?ウチでしか食べられないケーキを作りたくてさ、とにかく食べてみてくれよ♪」

 

「「いただきます」」

 

リサと紗夜がケーキを口にした。

見た目とは裏腹にとてもしっとりしていて焦がしバターと栗の風味が一気に押し寄せてくる。

中に入っていた大粒のマロングラッセの甘味と旨味が広がる。

更に添えてあるクリームは生クリームとモンブランクリームの二種があり、一皿で三度美味しい仕様になっている。

 

「うーん…………」

 

あまりの美味しさにリサは悶えた。

 

「どうかな?」

 

「とても美味しry」

 

「あの!!私にお菓子作りを教えてください!!」

 

紗夜の言葉を遮り、リサは氷瀧にお菓子作りを教授してくれるように懇願した。

 

「えっと…………リサちゃん?」

 

「私もお菓子作りするんですけどこんなに美味しいケーキは作れません!!だから私を弟子にしてください!」

 

(俺が弟子入りを志願したときもエルメはこんな気持ちだったのかな?)

 

氷瀧は苦笑いを浮かべる。

 

「気持ちは嬉しいけど俺もまだまだ一人前として認められてないから弟子を取ることはできない。今回はこのケーキを教えるって事で手を打ってくれないかな?」

 

「…………分かりました」

 

「それとこれは企業秘密だから、レシピをSNSとかには載せないでね?」

 

「もちろんです!」

 

「あの!私も一緒に教えていただいてもいいですか!?」

 

「断る」

 

「私と紗夜さんも一緒に教えてくれないの?」

 

つぐみが悲しそうな瞳で氷瀧を見つめる。

 

「くっ……世界一可愛いウチの妹に免じて紗夜ちゃんにも教えてやろう……」

 

「ありがとうお兄ちゃん♪」

 

氷瀧が承認するとつぐみはパァっと笑顔になった。

 

(あぁ、やっぱりウチの妹が一番可愛い……)

「では今週の日曜日がウチの定休日だから、その日にしようか?」

 

「はい、承知しました」

 

「よろしくお願いします」

 

リサと紗夜は頭を下げると店を後にした。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

来る日曜日、氷瀧はケーキ作りの準備を済ませ紗夜とリサを迎えた。

 

「今日はよろしくお願いします」

 

「あぁ、君の指導は一筋縄では行かないからね」

 

「分かります?紗夜って加減を知らないからやり過ぎちゃう所があるんですよね~♪」

 

「今井さん!!」

 

「アハハ、ゴメンってば♪」

 

二人の会話から氷瀧は仲の良さが伺えた。

 

「さて、それじゃ始めようか」

 

「「「よろしくお願いします」」」

 

今回のメニューは焦がしバターのマロンケーキである。

氷瀧は予め用意していたレシピを三人に手渡した。

 

【生地作り】

 

型にペーパーをセットする。

 

アーモンドプードル60gと栗粉40gを合わせた物をふるいにかける。

 

「目詰まりしやすいから指の腹で押すように切ってくれ。今回はアーモンドプードルと栗粉を混ぜた物を使うが面倒ならアーモンドプードルだけでもいい」

 

「何故アーモンドプードルと栗粉を合わせたんですか?」

 

「その方が栗の風味が出るからな。ただ二種類用意するのが面倒ならアーモンドプードルだけでいい」

 

「分かりました」

 

紗夜はレシピの余白にメモをした。

 

(この二人案外相性いいのかな?)

 

氷瀧は紗夜を嫌っていると聞いていたリサはふとそう思ったが、二人の機嫌が悪くなっても困るので触れない事にした。

 

玉子Lサイズを4つを卵白と黄身に分け、卵白に砂糖80gを3~4回に分けて入れる。ハンドミキサーでホイップしてメレンゲを作っていく。

 

「メレンゲ作りはみんな慣れてるな」

 

「ホントだ!紗夜も上手くなってる!」

 

「メレンゲ作りは自宅で練習しましたので」

 

「ホントだ♪紗夜さん上手♪」

 

「つぐみも上手いぞ。手首を痛めないようにしっかり握ってろよ?」

 

「うん♪ありがとう♪」

 

メレンゲの角が立ってきたら、最後にハンドミキサーを低速にして気泡を小さくしてキメを整え、滑らかなに仕上げる。

 

「低速にする理由は何故ですか?」

 

「気泡を小さくすることで焼き上がりをしっとりさせるんだ。逆に気泡が大きいとふんわりした焼き上がりになる。どちらに仕上げたいかはその時の気分次第だ」

 

「なるほど」

 

メレンゲを作り終えたら焦がしバターを作る。鍋にバターを入れて火にかける。濃い茶色になるまで加熱したら、茶こしで濾しておく。

 

「火力はどれくらいがいいですか?」

 

「そーだな……中火くらいかな。強火だとバターの風味が飛んじゃうし、弱火だとバターに香ばしさが移らない」

 

更に紗夜はメモを書き加える。

 

卵黄4つに市販のマロンクリーム200gとラム酒小さじ2杯を加えて良く混ぜる。

 

「ラム酒は香り付けだから入れても入れなくてもいい。俺は入れた方が好きだから入れる。市販のマロンクリームはどのメーカーでもいいが、個人的には"クレマン・フォジエ"というフランスの老舗メーカーがオススメだ。ウチの師匠のお店のモンブランのマロンクリームもこのメーカーに極秘で特注していたからな」

 

「今回もそのメーカーの物を使用しているんですか?」

 

「いや、今回は近くのショッピングモールで買ってきた物だ。今回のケーキは君達にもできることが最優先だからな」

 

「先程仰っていたマロンクリームのレシピは氷瀧さんも知らないんですか?」

 

(流石にこの子は鋭いな)

「極秘のレシピだからな。俺の師匠とメーカーの担当者しかレシピは知らない。俺は教えられていない」

 

先程のマロンクリームに焦がしバターを少しずつ加えてかき混ぜる。

この時バターの熱で黄身が固まる恐れがあるのでかき混ぜる手は止めない事。

 

この注意書に流石の紗夜も手を止めずに一生懸命にかき混ぜる。

 

先程ふるいにかけたアーモンドプードルと栗粉の混合粉を加えてホイッパーで滑らかになるまでよく混ぜる。

 

先程作ったメレンゲは1/3程度加えてゴムベラで底からすくい上げるようにさっくり混ぜる。

その後に残りの半分、更に残りを全て加えても加え、段階を踏んでさっくり混ぜる。

 

「何故数回に分けてメレンゲを入れるのですか?」

 

「一気に加えるとメレンゲと生地が上手く混ざらないし、力を入れすぎるとメレンゲの気泡が潰れて口当たりが悪くなるからだ」

 

生地を型に入れていく。

軽く左右にふり、軽くトントン底を叩きつけ空気を抜き市販のマロングラッセを敷き詰めた生地に乗せる。

 

「ここでの空気抜きはあくまでも型に生地を入れた時の空気を抜くだけだから、強く叩いて気泡を潰し過ぎないように注意だな」

 

「軽くと言うのはどれくらいですか?」

 

氷瀧は定規を持ってきた。

 

「1cmくらいの高さから、3~4回程度落とすくらいだな」

 

(この人、紗夜へのお菓子作り指導の免許証貰ってもいいんじゃないかな?)

 

リサはあまりの氷瀧の紗夜への教え方の細やかさに驚いた。

リサからも氷瀧に質問してみた。

 

「マロングラッセじゃなくて栗の渋皮煮や甘露煮じゃダメですか?」

 

「いやいいと思う。そういうのはアレンジだから色々試してみるといい。タルト生地を土台にしてこの生地を合わせて栗の甘露煮を刻んで入れても面白い食感になるかもな」

 

リサはレシピにメモをした。

リサの手際の良さには正直氷瀧も感心している。

 

(この子相当料理慣れしてるな。手つきを見れば分かる)

 

型をオーブンに入れて180℃で30分、その後150℃に下げて20分焼く。

型によっては焦げやすくなるので都度様子を見ておき、焦げそうなら上からアルミホイルをかける。

 

この待ち時間の間に使った料理器具は片付けておく。

 

余った時間は恒例の女子会トークだ。

氷瀧はこの時間だけは紗夜とつぐみにちょっかいは出さない。

氷瀧は三人を労ってアイスティーを差し出した。

 

「そういえば氷瀧さんって彼女いないんですか?」

 

「女子会のテンプレートみたいな質問だな」

 

「いいからいいから♪」

 

「いないぞ。今はこのお店とパティシエの仕事が恋人みたいな物だ。それこそリサちゃんはいないのか?モテそうなのに」

 

「アハハ……そんな事初めて言われましたよ」

 

「かなり料理慣れしてるだろ?手際を見てたら分かる」

 

「私は今はバンドが恋人みたいな物なので……。つぐみはいないの?」

 

氷瀧が般若の様な表情を浮かべてつぐみを見つめる。

 

「い、いませんよ!!私、リサ先輩と違ってモテませんし!!」

 

つぐみが顔を真っ赤にして否定すると氷瀧は般若から菩薩へ表情を変化させた。

 

「紗夜ちゃんは妹とは仲良くやっているのか?」

 

((その質問は地雷だー!!))

 

「日菜とは可もなく不可もなくやれていると思います」

 

「ふーんそうなんだ」

(これは何かありそうだな)

 

「そういえばこの間の収録後に、日菜が氷瀧さんからいただいたとクッキーをいただきました。ごちそうさまでした」

 

「いやいや、お粗末様でした」

 

「えぇ!?紗夜お土産貰ったの!?日菜私にはくれなかったよ?」

 

「ほとんど一人で食べてしまったようで、私も2枚いただいただけです」

 

「氷瀧さーん!今度クッキーの作り方教えてくださいよー!」

 

「今度な?」

 

「ねぇねぇお兄ちゃん?来年のバレンタインにまたお菓子教室やるのはどうかな?」

 

「そうだな。チョコレート作りは意外と難しくて失敗してる人も多いだろうし、申し込み人数をもう少し絞ってやるか」

 

「その時は私と紗夜さんとリサ先輩もヨロシクね♪」

 

「つぐみの頼みなら断らねーよ」

 

そんな談話を交わしているといよいよケーキが焼き上がった。

 

竹串を刺してみて生地が串につかなくなったら焼き上がり目印。

オーブンから出したらすぐ30㎝ほどの高さから型ごと落として蒸気抜きする。

 

粗熱が取れたら型から外してペーパーを剥がし、網の上で冷ます。

冷ます際には乾燥防止に濡れた清潔な布をかけておく。

 

ある程度冷めたらラップをして、冷蔵庫で数時間休ませる。

冷蔵庫で冷やす事で生地が落ち着き風味も増して美味しくなる。

 

このまま羽沢家の冷蔵庫で冷やし、二人を数時間拘束する訳にはいかないのでそれぞれの自宅で冷やすように指示をして帰路に着かせた。

幸い二人の家には粉砂糖があるようなので、中央部が凹んだ事を確認してから粉砂糖をかけるように指示した。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

数時間後、完成したマロンケーキをラッピングしてリサは友希那の自宅を訪れていた。

 

「今日はマロンケーキを作ってみたから食べてみてくれないかな?」

 

「リサの手作り?」

 

「そうだよ~♪」

 

「それは楽しみね」

 

リサはケーキを切り分けると持参した甘めに仕上げた紅茶を紙コップに注いだ。

 

「いただきます」

 

「召し上がれ♪」

 

友希那はケーキを口に運ぶ、しばらく味わってから感想を述べた。

 

「とても美味しいわ」

 

「それは良かった♪」

 

「でも……」

 

「でも?」

 

「いつものリサの味付けとは違う気がするわ」

 

「!!?」

 

リサは驚いた。

今回の味付けは氷瀧が決めている友希那はそれを見抜いたのだ。

 

「やっぱり友希那は誤魔化せないか~」

 

リサはこのレシピが氷瀧の考案でリサがそれを指導してもらいながら作った事を説明した。

 

「やっぱ友希那にはバレちゃうか」

 

「ほとんど毎日食べてるリサの手作りだもの間違える訳無いわ」

 

「口に合わなかったかな?」

 

「初めは少し違和感を覚えたけど、食べていくといつものリサの味を感じて美味しいと思ったわ」

 

「っ!良かったー!気に入ってもらえて!」

 

「えぇ、それに今回も隠し味の『愛』が入っているのがとても好きだわ」

 

「も〜、友希那からかわないでよ〜」

 

リサは顔を真っ赤にして友希那の弄りを受け止めた。

その後は二人でケーキをつつきながら楽しい時間を過ごした。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

紗夜は数時間後再び羽沢珈琲店を訪れていた。

 

「いらっしゃい。今回も採点かな?」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

氷瀧はケーキを口にした。

 

「うーん、味は美味しいが気泡が潰れてしまってて口当たりが少し悪いな。52点」

 

紗夜は再び肩を落とした。

 

「氷瀧さんの作った物とどう違うんでしょうか?」

 

「悪い所は教えるがどうすれば良くなるのかは自分で考えな♪そうすることで別の発見があるかもしれないしね。お菓子作りに正解は無いんだから」

 

氷瀧は自分の作ったケーキを眺めた。

 

「このケーキどうしよう……。つぐみは幼なじみの子らと食べるってひまりの家に行っちゃったしなぁ」

 

「氷瀧さんが上げたいと思う人に上げたらいいのではないですか?」

 

紗夜はごく当たり前の事を言っただけだが、鳩が豆鉄砲喰らったような表情を浮かべている。

 

「それじゃあ紗夜ちゃん。1つ頼まれてくれないかな?」

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

翌日、学校に登校した紗夜は千聖と花音を訪ねた。

 

「白鷺さん、松原さん、今お時間よろしいですか?」

 

「紗夜ちゃんおはよう。大丈夫だよ?」

 

「つぐみさんのお兄さんからマロンケーキをお二人に渡してくれとお願いされましたのでお渡しに参りました」

 

"つぐみさんのお兄さん"という紗夜の口から思わぬ人物の名前が出たので千聖は少し顔を赤らめた。

 

「マロンケーキ?」

 

「はい、この間今井さんと一緒に氷瀧さんからご教授いただきました。私と日菜は私が作った物を食べているのでお二人は遠慮せず召し上がってください。それはお兄さんが作ったものなので間違いなく美味しいです」

 

千聖は自分の名前が書いてあるシールが貼ってある方のケーキを取った。

包装袋には小さな鷺の折り紙が貼られていた。

千聖はケーキより氷瀧のこういった心配りが嬉しかった。

 

「ねぇ紗夜ちゃん?氷瀧さんって優しくて思いやりがあってとても素敵じゃない?」

 

千聖は思わず自分の口から出てしまった本音に更に顔を赤らめ咄嗟に口を抑えた。

 

「白鷺さん……」

 

千聖は恐る恐る紗夜の表情を伺った。

 

「誰の事を仰っているんですか?」

 

 

 




いかがでしょうか?

今回はリサちゃんを招いての第二回お菓子教室でした!
個人的には公式にもさよつぐのイベント第二弾が来ないかなぁといつまでも楽しみに待ってます……。

次回はまた千聖にスポットを当てようと思ってます!
まぁ予定は未定ですが(笑)

ではこの辺で失礼します。
評価・ご感想・お気に入り登録ドシドシお待ちしております。
特に高評価・感想は執筆の励みになりますのでとても嬉しいですm(_ _)m

それではまた次回!ほなっ!(^^)ノシ


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