普通過ぎる妹とおかし過ぎる兄の話   作:テレサ二号

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どうもテレサ二号です!
お久しぶりになって申し訳ございません!!

バンドリ四周年おめでとうございます!
( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆
めでたい今日に最新話を上げられてとても嬉しいです♪

今回は氷瀧の誕生日です!!
バンドリの誕生日に氷瀧の誕生日って運命かな?(笑)

では、本編です!!
今回は2話構成です!!


Order 18:~はぴはぴばーすでー~前編

 

暦は10月24日、羽沢氷瀧の20回目の誕生日というおめでたい日に、羽沢珈琲店では恋する乙女達による絶対に負けられない闘いが始まろうとしていた。

 

「それでは!!ただ今より、氷瀧さんとのデート券を賭けた、Afterglow対Pastel✽Palettesの料理対決を始めます!

司会はアタシ、Roseliaの今井リサが行います☆

今回の特別審査員はこちらの御二人です!!」

 

ノリノリで進行を務める今井リサによって二人の審査員が紹介される。

 

「Roseliaの音を守る、最強風紀委員長!氷川 紗夜ー!!」

 

「今井さん、悪ふざけが過ぎますよ?」

 

「いいじゃん☆いいじゃん☆これくらいしないと盛り上らないって!!」

 

「おねーちゃーん!!」

 

Pastel✽Palettes席に座っていた日菜より大好きな姉である紗夜へラブコールが送られる。

『静かにしていなさい』と言う意味を込めて紗夜は口の前で人差し指を立てた。

 

「続きまして!!ハロー、ハッピーワールドが誇るふわふわ迷い姫、松原 花音!!」

 

「ふ、ふぇぇぇ!?」

 

「花音!?どうして審査員なんかに!?」

 

「り、リサちゃんから頼まれて断れなくてー」

 

『ふぇぇぇ』と再び戸惑いを見せた所で、本日の主役が登場する。

その主役をリサが紹介する。

 

「最後に本日の主役の登場です!!ショコラにマカロン、タルトにクッキー何でもござれ!!その両手から生み出す数々のスイーツと爽やかな笑顔に堕ちた女性は数知れず!!羽沢 氷瀧ー!!」

 

「・・・・・」

 

ノリノリのリサを他所に『本日の主役』と書かれたタスキを肩からかけている氷瀧はあまり乗り気では無い。

 

「どうしてこんな事に……」

 

料理対決に至った経緯は遡る事、前回のライブの終了後である。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「氷瀧さんの誕生日!?」

 

「はい♪来週がお兄ちゃんの誕生日なんです♪だから皆さんが集まって祝ってくれたらきっと喜ぶと思って。それにお兄ちゃんの20歳の誕生日だから特別な1日にしたいなって」

 

つぐみからの思わぬ情報提供に千聖は少しばかり動揺している。

そんな千聖よりも先に彩が動いた。

 

「私達も参加するよ!!」

 

「彩ちゃん!?」

 

こういうときの彩の決断力はパスパレでも群を抜いている。

そして彩は即座に外堀を埋め始める。

 

「やっぱり、みんな羽沢珈琲店にはいつもお世話になってるし、ちゃんとお祝いしたいって思わない!?」

 

「確かにこの間、自分がプライベートでお店を訪れた際も、羽沢さんのお兄さんからマカロンをサービスしていただきました。『妹がいつもお世話になってます』って」

 

「確かに私もつぐちゃんのおにーさんから、いつも差し入れ貰ってるしね」

 

「氷瀧君からの差し入れ!?日菜さん、どういう事ですか!?」

 

日菜の発言に蘭が食いつく。

氷瀧と日菜の間柄にそこまで進展があるとは思ってもいなかったからだ。

 

「この前、休日につぐちゃんと二人で生徒会の仕事をする日があってね?その時につぐちゃんのお弁当美味しそうだったから『次回から私の分も作ってね♪』ってお願いしたら、休日の生徒会活動の時はおにーさんのお弁当が届くようになったんだ♪この前のカツサンドスッゴく美味しかったんだ☆ねー?つぐちゃん♪」

 

「そうですね。お兄ちゃんも『日菜ちゃんが喜んでくれて良かった』と言ってました」

 

「ひーくんの作るカツサンド!?きっと食パンには山吹ベーカリーのパンが使われているはず!?日菜先輩、羨まし過ぎますよ……およよ……」

 

『氷瀧のお弁当』

モカ程ではないが、蘭と千聖も遠慮を知らない日菜の図々しさが今回ばかりは羨ましくなった。

 

「私はいつも氷瀧さんには実の妹のように可愛がって貰っていますし、バイトでもとてもお世話になっていますので個人的にもお祝いしたいと思っていました!」

 

「わ、私も常連客として氷瀧さんにはお世話になってるから……」

 

本当はとても参加したい気持ちをグッと内に秘めて千聖もこの提案に乗ることを賛成した。

しかしその試みに蘭が待ったを掛けた。

 

「でもさつぐみ?氷瀧君の誕生日だよ?あまり面識がない人がいない方が氷瀧君も楽しめると思うんだけど?」

 

「そんな事無いよ!皆さんお兄ちゃんとは面識あるし、それに千聖さんはお兄ちゃんと二人きりでおでかけに行った事もあるくらい仲良しだよ?」

 

「二人きり!?」

 

蘭が千聖に鋭い視線を向ける。

千聖は恥ずかしさと戸惑いから視線を背ける。

恋する乙女の洞察力は鋭い。

蘭はたまたま千聖の手に握られていた、スマホのマカロンのストラップに目が行った。

 

「その……ストラップ……」

 

千聖は咄嗟にスマホを自らの後ろに隠した。

蘭は過去の氷瀧とのやりとりを思い返していた。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「マカロンのストラップ?」

 

氷瀧から差し出されたケーキを口に運びながら、カウンターに置かれていた氷瀧のスマホのストラップが気になっていた。

氷瀧はスマホについては機能性を重視しており、過去にもストラップを付けている所を蘭は見たことが無かった。

 

「可愛いだろ?」

 

「誰から貰ったの?」

 

「……それは秘密だ。とある筋からとだけ答えておこう」

 

「それだと怪しいルートからの入手になっちゃうよ?」

 

『アハハ』と誤魔化すように氷瀧は微笑んだ。

蘭は昔からこの氷瀧の無邪気な笑顔にとても弱い。

こうやって誤魔化されると蘭はそれ以上追及できなくなってしまう。

その時も蘭は結局話をはぐらかされた。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

このままだとマズイ。

もし本当に千聖さんが氷瀧君に好意を寄せていて、本気でアプローチされたら、女優兼アイドルである千聖さんに私が敵う訳がない。

この人は早くどうにかしないと。

 

蘭の心に心配が重くのしかかる。

そして蘭の口から思わぬ提案が出た。

 

「勝負しましょう……」

 

「勝負?」

 

「AfterglowとPastel✽Palettesで勝負しましょう」

 

「何を勝負するの?」

 

彩が不安そうに蘭に訊ねる。

蘭自身も口から出ただけで何も案は無い。

苦し紛れの提案に新たな言葉を発する為に唇が重く動こうとしない。

しかしそんな蘭に思わぬ助け船が現れた。

 

「話は聞かせて貰った」

 

「お父さん!?」

 

物影から氷瀧とつぐみの父が現れた。

いつものように某泥棒のようなポーズを決めている。

 

「ならば氷瀧の誕生日当日に料理対決というのはどうだ?」

 

「「料理対決ですか??」」

 

「勝ったチームの代表者には氷瀧との一日デート券をやろう。氷瀧にも拒否はさせない」

 

「勝ち負けはどう決めるの?」

 

「氷瀧本人にどちらが美味しかったか決めて貰おう」

 

「その話、面白そうですね?」

 

「……リサさん?」

 

氷瀧の父の反対側の物影からRoseliaの今井リサが現れた。

リサのポーズは相棒のガンマンのようなポーズをしている。

二人は案外気が合うのかもしれない。

 

「ではその闘いの司会進行はアタシが引き受けます☆特別審査員も私が用意しますので♪」

 

「リサ先輩!?」

 

「あー、リサさんノリノリだー。こうなったリサさんはモカちゃんでも止められないよー」

 

「うむ、では会場は羽沢珈琲店!日時は10月24日、氷瀧の誕生日の午前10時からだ!!」

 

「お、お父さん!?お店はどうするの!?」

 

「臨時休業だ!!」

 

こうして羽沢珈琲店にて料理対決が行われる運びとなった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

話は冒頭に戻る。

 

 

 

「どうしてこんな事に……」

 

「ご、ゴメンなさい。私が止められたら良かったんですけど……」

 

「いや、花音ちゃんは悪くないよ。俺も親父からの命令に逆らえなかったし」

 

氷瀧は基本的に父には強い。

しかし過去のウェディングケーキ創作や風邪をひいてお店を休んだ事をあげられ、今回の話を了承することでチャラにすると言われた為に、氷瀧は断る事ができなかった。

だてに20年氷瀧の父をしていない。

氷瀧の退路の断ち方を心得ている。

 

「氷瀧さん、お誕生日おめでとうございます。つまらない物ですが、こちらを受け取ってください」

 

紗夜は黒のプレゼント包装がされた袋を氷瀧に手渡した。

 

「これは?」

 

「誕生日プレゼントです。ルームフレグランスなので良ければ使ってください」

 

「へぇ、ありがとう。嬉しいよ」

 

「いえ、氷瀧さんにはいつもお菓子作りのアドバイスをいただいていますから」

 

つぐみは氷瀧と紗夜の仲がいつの間にか良くなっている事に驚きはしたが、同時に嬉しくなって二人を見つめながらほほえむ。

一方の蘭は『いつもお菓子作りのアドバイスを貰っている』という言葉が引っ掛かったが今回は大人しくしている事にした。

 

「あの、これ私からの誕生日プレゼントです。ハンドクリームなので良かったら使ってください」

 

花音は黄色のプレゼント包装された箱を氷瀧に手渡す。

中身は5種類のミニハンドクリームのセットになっていた。

 

「ハンドクリームは消耗品だから助かるよ。ありがとう」

 

「氷瀧さんの指って、男性なのにとても手入れがされていて綺麗ですよね?」

 

花音の言葉を聞いて、紗夜は氷瀧の指を確認する。

 

「本当ですね。パティシエを含む料理人の方は、手荒れや調理器具などで多少の傷があるイメージでしたが、氷瀧さんの手はとても綺麗だと思います」

 

「「なっ!?」」

 

無自覚である紗夜は氷瀧の手を取ると、マジマジと観察している。

そんな紗夜の行動に蘭と千聖は反応してしまう。

しかし、二人に待ったを掛けたのは日菜だった。

 

「ストーップ!!」

 

日菜は紗夜と氷瀧の間に入り、紗夜を守るように背中に隠して氷瀧と正対する。

 

「おねーちゃんを口説くなんて、おにーさんイエローカードだよ!?あと一枚で退場!!」

 

「ちょっと日菜!?ストップストップ!!氷瀧さんを退場させたら主役がいなくなっちゃうじゃん!!」

 

「そうですよ!!それに氷瀧君が紗夜さんを口説く訳ないじゃないですか!?紗夜さんが氷瀧君を誘惑してるんじゃないんですか!?」

 

氷瀧の手を触れられた事が蘭の忌諱にふれてしまったようで、ヒートアップしてしまう。

そんな場の空気を冷ます為に紗夜が謝罪する。

 

「日菜、急におかしな事を言わないで。美竹さんが混乱してしまうでしょう?氷瀧さん、悪気はありませんが不躾に手を取ってしまいスミマセン」

 

「いや、俺も嫌だった訳じゃないし紗夜ちゃんが謝る事じゃない。蘭、いきなりヒートアップしてどうしたんだ!?怒る事じゃないだろ?」

 

「……鈍感」

 

蘭は頬を膨らませながら自分の持ち場に戻った。

何とか落ち着いてくれた蘭に氷瀧は胸を撫で下ろす。

 

「ではでは、あらためて……料理対決開始!!」

 

モカが予め準備していた銅鑼の音源が鳴り響いた。

『準備してたの?』というリサの問いに『えへへ~♪』と可愛らしく返事をした。

そんなモカを気に求めずに各バンドが料理を開始した。

つぐみだけが『モカちゃん、こっちも始めるよー』と声を掛けた。

 

食材は事前にそれぞれが用意しており、羽沢珈琲店の広いキッチンを使って料理をする。

 

そして最重要である何を作るかは、事前の話し合いで決められていた。

 

 

~~~~~~Afterglowの場合~~~~~

 

 

 

 

「さてさて~、私達はひーくんに何を作ろーか?」

 

「まず、私達には大きなアドバンテージがあるからね!」

 

ひまりが両手をつぐみに向けて広げる。

"ババーン"と効果音が付きそうな紹介である。

そんなつぐみを中心に会議が進められる。

 

「氷瀧君って何が好きなの?」

 

「うーん……お兄ちゃんは当然スイーツが好きだけど、他の食べ物も何でも食べるよ?ただ辛い物だけは絶対に食べない!」

 

「辛いの苦手なのか?」

 

「辛い物を食べると甘さの軽微な差が分からなくなるおそれがあるから食べないんだって。ウチのカレーも甘口と中辛の間くらいだし」

 

「おぉー。やっぱりひーくんは徹底してるねー」

 

「だったらカレーとかは無しかな」

 

「どうせだったら家庭的な料理がいいよな?」

 

「なんで?」

 

「氷瀧君に家庭的な所をアピールするチャンスだろ?」

 

「でもさ?ひーくんって結婚しても料理はしてくれそうだよねー」

 

「「「「確かに……」」」」

 

つぐみを含む全員が納得してしまった。

 

「ラーメンなんてどうだ?」

 

「それは巴が好きなだけでしょ?」

 

「パンがいいんry……」

 

「モカっ」

 

以下同文と言わんばかりに蘭がモカの発言を抑える。

そんな二人とは対照的にスマホで色々調べていたひまりが蘭に提案する。

 

「オムライスなんてどう?」

 

「確かにオムライスはいいかもな」

 

「つぐみ、氷瀧君ってオムライス嫌いじゃない?」

 

「うん、大丈夫だよ!お兄ちゃんも私もオムライス大好きなんだ!!」

 

しかしつぐみは知らない。

確かに氷瀧はオムライスは嫌いでは無いが、つぐみが大好物であるオムライスを食べる機会が増えるようにと、オムライスが大好きだと家族に公言しているだけである。

 

「それにオムライスならお兄ちゃんに教えて貰った事があるからちゃんと出来ると思う」

 

「おぉー!つぐってるねぇ~」

 

「それじゃ、オムライスに決まりだね」

 

「よーし!!みんなで氷瀧君を唸らせるオムライスを作ろうね?……えい、えい、おー!!」

 

「「「「・・・・・」」」」

 

「言ってよー!!」

 

 

 

 

 

 

~~~~~~Pastel✽Palettesの場合~~~~~

 

 

 

 

 

「私達は何を作りましょうか?」

 

パスパレの事務所にてレッスン後に5人で話し合いを行っていた。

 

「うーん……おにーさんが何が好きか分かんないし、つぐちゃんに聞いてみる?」

 

「日菜さん、それじゃ意味が無いです」

 

『えぇ~なんで~?』と日菜が駄々をこねる。

集中力が途切れてきたようだ。

日菜は天才故に飽きっぽい所が玉に瑕である。

 

「ふっ、ふっ、ふっ。私に名案があるよ?」

 

「彩ちゃんの場合、名案って言うよりは妙案だからな~」

 

「そんな~。酷いよ日菜ちゃ~ん」

 

「それで?彩ちゃんの言う、名案って何?」

 

「えへへ~。ジャジャーン!!」

 

彩は背中に隠していた女性ファッション誌の1ページを開く。

そこには『彼氏が選ぶ彼女に作って欲しい手料理ランキング』と書かれていた。

 

「彼氏が選ぶ彼女に作って欲しい手料理ランキング?」

 

「そう!この雑誌によるとね?男の人はハンバーグが一番好きなんだって!?」

 

確かにランキングの1位にはハンバーグが上げられている。

 

「でも彩ちゃん?これはあくまで世論であって、氷瀧さんが本当にハンバーグが好きか分からないのよ?」

 

「それなら大丈夫だと思います」

 

「イヴちゃん?」

 

「私がバイトの時に、何度かまかないでハンバーグを作っていただいた事があるので嫌いという事は無いと思います」

 

「いいじゃん♪いいじゃん♪ハンバーグにしよう!るんってするし♪」

 

「では役割を決めますね?彩さん・千聖さん・イヴさんでハンバーグを作って貰って、自分と日菜さんで付け合わせを作りましょうか?」

 

「付け合わせなんているかな?」

 

「それはいると思います!氷瀧さんはいつも『料理は細部にこそ心が宿る』と言っていますから」

 

千聖は今日ほどイヴが羽沢珈琲店でバイトをしていて良かったと思うことは無かった。

 

「それじゃ、みんなでがんばりゃりゃ……うぅ……」

 

彩が噛んだ事で場は静まりかえった。

千聖は咳払いをしてから音頭をとる。

 

「パスパレー!!」

 

「「「「おぉー!!」」

 

「ブシドー!!」

 

 

 

 

 

 

こうして各バンドのメニューが決まり、いよいよ調理が開始した。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇Afterglow Side◇◇◇◇◇

 

厚切りのベーコン150gを5mm幅に切る。

そして切ったベーコンをオリーブオイルを敷いたフライパンで炒める。

 

「流石はつぐみだな」

 

「羽沢さんの炒めているベーコンに何か秘密があるんですか?」

 

「いや、オリーブオイルが俺が好きなメーカーだなと思ってね?しかし……」

 

氷瀧はおもむろに腰を上げるとつぐみの側に行き、火力を確認した。

 

「つぐみ、中弱火より中強火くらいの方がいいぞ。その方が旨味が外に逃げずにカリっと仕上げる事ができる」

 

「もう!お兄ちゃんは審査員なんだから!黙って席に座ってて!」

 

「ガーーン……」

 

氷瀧はトボトボと自らの席に戻り俯いた。

あまりの落ち込みっぷりに咄嗟に花音がフォローを入れる。

 

「えっと……つぐみちゃんは正々堂々やりたいだと思いますよ?その上でお兄さんに美味しい料理を食べて貰いたいじゃないでしょうか?」

 

「花音ちゃんは優しいな……。君の彼氏になる男はきっと幸せ者だろう……」

 

その刹那、千聖と蘭は氷瀧の前に走り出していた。

 

「いくら氷瀧さんでも花音は絶対に渡しません!!」

 

「は?」

 

「いくら松原さんでも氷瀧君は渡しません!!」

 

「ふぇ?」

 

「・・・・・」

 

その場に何とも言えない空気が漂う。

その空気を整える為に氷瀧が状況を整理する。

 

「ちょっと待て。俺が花音ちゃんに手を出す訳無いだろ?」

 

「そうだよ!千聖ちゃん落ち着いて?」

 

「……ご、ごめんなさい」

 

千聖は渋々と自分の担当スペースに戻る。

それに続いて蘭も戻った。

 

(今日はみんな言葉に敏感になってるな。それほどまでに料理で負けたくないという情熱が凄い……。俺も余計な事を言わずに料理に集中しよう)

 

的外れではあるが氷瀧が決意をした所で料理を再開する。

 

 

炊飯器の釜に水でといだ米3合と水450ml、トマトケチャップ大さじ6杯、オイスターソース大さじ1.5杯、バター40g、塩小さじ1杯、こしょう少々を加え、最後にローリエを1枚乗せてから炊飯器を起動する。

 

「なるほどな。つぐみ達が何を作ろうとしたか分かったぞ?」

 

「何ですか?」

 

「オムライスだな」

 

「オムライスですか?」

 

「そう。あれはオムライスのケチャップライスを作っている」

 

「ケチャップライスって、ミックスベジタブルとベーコン・ご飯にケチャップを入れてフライパンで炒めるんじゃないんですか?」

 

「そのやり方が最もポピュラーだが、そうするとケチャップの分量や炒める時間・火加減なんかでケチャップライスがべちゃっとした仕上がりになりやすい。予め、ご飯を炊く際にケチャップを入れて炊くと失敗しないケチャップライスが出来上がるんだ」

 

「「なるほど……」」

 

料理に詳しいリサと紗夜ですら、氷瀧の知識に感心してしまう。

 

ご飯が炊けるまでは特に急いでやることもないので、今のうちに卵液を準備しておく。

 

玉子3個をボウルに割り入れ、泡立て器でしっかりと溶きほぐす。

その後、塩、こしょうを少々加え更によく混ぜる。

よく混ぜた卵液をザルでこす。

 

「混ぜた玉子をザルでこすのは何故ですか?」

 

「卵液のキメを細かくするのとカラザを取り除くのが目的だ。忙しい時はしなくてもいいが、それをするとしないとでは焼いた後の玉子の口当たりがまるで違う」

 

「カラザとは?」

 

「玉子の黄身に付いてる白いやつだ」

 

「玉子かけご飯する時に取っちゃうやつですねー」

 

「カラザ自体は栄養の塊だから取らない方がいいんだが、口当たりに拘る料理を作るときは取った方がいい。俺も当然取っているしな」

 

『なるほど』と再びリサと紗夜は口を揃える。

花音は氷瀧の知識に感心するばかりで全く口を挟めずにいた。

 

そうこうしているうちにご飯が炊き上がった。

 

「味見する人~」

 

「はいはーい。味見ならモカちゃんに任せて~」

 

「ちょっとモカ?食べ過ぎちゃダメだよ?」

 

ひまりの忠告を聞くやいなや、モカはつぐみがよそった味見用のケチャップライスを丸飲みにする。

 

「おいひー。間違いなく美味しいケチャップライスだと美少女であるモカちゃんが保証しまーす」

 

「美少女は関係ないじゃん」

 

「えへへ~」

 

「ほらっ、ふざけてないで玉子を焼いていくよ?」

 

フライパンにバター10gを入れ、中火にかけて溶かす。

バターが全て溶けたら先程の卵液を一気に流し入れる。

 

「オムライスを作るときのフライパンは比較的に小さいフライパンがオススメだ」

 

「何故ですか?」

 

「家庭で出てくるオムライスは玉子がフライパンに広がり過ぎて薄くなりがちだ。あとは卵液の量が少ない。ふわふわ玉子のオムライスにしたければ必ず玉子を多めに使うこと」

 

「目安はありますか?」

 

「玉子3個に対して20cmのフライパンくらいだ。それより大きければ卵液を増やしてやるといい」

 

「なるほど……」

 

いつか家族に作ろうと思っているのか、紗夜はいつも持っているメモ帳に氷瀧の言葉をメモする。

こういう几帳面な所は紗夜が料理人に向いていると氷瀧は感じさせられる。

 

続いて、フライパンを前後にゆすりながらゴムべらで絶えず卵液を混ぜて火を通し、スクランブルエッグ状態にしていく。

 

「卵液を入れたら絶えずかき混ぜる事で、半熟の細かいスクランブルエッグができる。この作業を怠ると表面に凸凹出来て美しいオムライスに仕上がらないんだ。家庭のオムライスって薄くてボコボコしがちだろ?予め、ちゃんと玉子を焼かないといけないと勘違いしている人が多いんだ」

 

「確かに……お母さんがオムライスを作るときはそうしてるかも」

 

花音は自分の家のオムライスを思い返していた。

『それはそれで味があっていいんだけどな』と氷瀧は付け加える。

 

ある程度半熟状になったら、火から外し、濡れ布巾の上でに乗せ、フライパンをトントンと上下に動かす。

この時に、フライパンの側面についた焦げ目が玉子はゴムべらでトリミングして綺麗な状態にしておく。

 

ケチャップライスを器に入れ、端に寄せて形を半月状に整え、フライパンの中央にのせる。

 

「ライスは卵の上にのせてから形を整えると、下の卵が破れてしまうおそれがあるから、形を整えてから乗せるんだ」

 

「氷瀧さんってオムライスに詳しいんですね?」

 

「あぁ、あのオムライスの作り方は殆ど俺が教えた作り方だからな」

 

「近いうちに料理も教えていただけませんか?」

 

紗夜は氷瀧に料理教室を開いてくれないかと懇願する。

しかし氷瀧は首を横に振った。

 

「俺はパティシエだから本職では無いし、今のところ料理はつぐみにしか教えるつもりはない。ただアドバイスが欲しい時はいつでも言ってくれ。それには答えよう」

 

「どうしてつぐみには料理を教えてるんですか?」

 

「つぐみの花嫁修業としてだ」

 

氷瀧の表情が険しくなる。

 

「つぐみの様な気立てが良く、可愛いお嫁さんを貰う男はよっぽどの男で無ければ認めんがな。将来設計までしっかりしており、性格も良く能力も高い男で無ければならない!」

 

「あぁ!そろそろ玉子でくるんで行きますよ?」

 

この質問は藪から蛇だったと気づいたリサは、慌てて会話の内容をすり替えた。

 

フライパンを奥に傾けるようにして、手前から中心に向かってチキンライスに卵をかぶせる。

この時、焼き色はつけない方が綺麗なので、包むときは、火は消すか弱火にして作業する。

 

次に、フライパンを手前に傾けるようにして奥の玉子を被せる。

上手く被せる事ができたら、オムライスをフライパンの奥側に寄せ、フライパンの縁に沿って形を整える。

 

フライパンを逆手に持ち、皿を近づけてフライパンを返し皿に移す。

 

最後にソースとして、赤ワイン大さじ2杯をフライパンに入れて強火にかけ煮詰める。ほぼ水分がなくなるまで煮詰まったら、ケチャップを大さじ3杯加えてゴムべらで混ぜる。沸いたら火から外して先程のオムライスにかければ完成!

 

これを人数分、今回は氷瀧・紗夜・花音の三人分用意する。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇Pastel✽Palettes Side◇◇◇◇◇

 

牛豚合挽き肉500gを予め冷蔵庫で冷やしておく。

 

玉ねぎ1/4個をみじん切りにする。

 

「氷瀧さんってみじん切りってどうやってますか?」

 

紗夜が氷瀧に尋ねる。

 

「基本的に玉ねぎなどの球体は、縦半分にしてから面を下にして、端から細かく切り込みを入れる。この時に上端(刃先の方)を切らずに残しておくと崩れにくくなり、その後が切りやすくなる。

そこから玉ねぎを90°半時計回りに動かし、包丁を横から切り込みを2~3回入れる。この時も、先程切り落とさなかった部分は切らないようにする。

最後に縦に包丁を入れて、端から細かく切っていく」

 

氷瀧は手に持っていたスマホを玉ねぎに、右手を包丁に見立てて説明する。

紗夜にとってとても分かりやすかったようで、メモを取りながら何度も頷いていた。

 

(やっぱりこの二人って、生徒と先生としては相性いいよねー♪ただ本人達に言っても否定するだけだから、黙っておこっと☆)

 

「うぇーん、千聖ちゃーん……」

 

彩が涙を流しながら千聖に抱きついた。

 

「どうしたの彩ちゃん?」

 

「玉ねぎさんがいじめるー」

 

「……彩ちゃんはお皿を洗っておいてくれないかしら?」

 

「う、うん……」

 

彩のトチりっぷりに千聖は『ゴゴゴゴ……』と効果音が出そうな笑みを浮かべ、彩は恐怖で素直にしたがった。

 

フライパンを中火で温め、サラダ油を大さじ1杯入れて馴染ませる。

油が十分に馴染んだら玉ねぎを軽い飴色になるまで炒めて粗熱をとっておく。

同時にパン粉8杯強を牛乳大さじ6杯に浸たしておく。

 

「なるほどハンバーグか」

 

「玉ねぎとパン粉だけで分かるんですね?」

 

「そうだな。基本的な料理だからな?」

 

「あの氷瀧さん。私も質問してもいいですか?」

 

花音が左手を胸の前に置き、右手をちょこんと上げた。

かわいい。

 

「玉ねぎを飴色に炒める時の時短方法ってありますか?お母さんがカレーを作るときにお手伝いするんですけど、飴色なるまでに時間が掛かって疲れちゃうんですよね」

 

「だったら玉ねぎを切り終わってから耐熱皿に乗せて、ラップをかけずにレンジで3分程温めるといい」

 

「レンジでですか?」

 

「飴色になるのに時間が掛かるのは、玉ねぎの水分が飛ぶのに時間が掛かるからなんだ。だから予め、レンジで温める事で玉ねぎの水分を飛ばしてやるといい。あとはフライパンで炒める時は強火であまり動かさない。動かすと料理している感じが出るが、熱が逃げやすくなるから逆効果なんだ」

 

「分かりました!ありがとうございます」

 

(わ、私も会話に加わりたい……)

 

審査員席では氷瀧を中心にミニ料理教室が始まっている。

つぐみは自分もその輪に加わり、料理の知識を増やしたいと感じていた。

 

続いて、鉄製のボウルを2つ用意し、片方に氷水を入れて更に塩を加える。

 

ボウルに合挽き肉500gを入れ、底を氷水で冷やしながら、肉の粒がなくなるまでしっかりと捏ねる。

 

「合挽き肉ではなく牛挽き肉100%でも大丈夫でしょうか?」

 

「豚が入るとその分、豚肉の甘味が加わるからな。牛のみだと旨味が強いからそれはそれで美味しいぞ。俺は牛挽き肉のみの場合は、そこに牛バラ肉を100gくらいみじん切りにして混ぜる。そうする事で更に牛肉の旨味がプラスされ、食感のアクセントにもなるからな」

 

「それが氷瀧さん流のアレンジってやつかー♪」

 

紗夜とリサは忘れぬようにとメモをする。

審査員席というより解説席になってきてた。

 

「あ、あの……氷水を下に敷いてお肉を捏ねるのは何故ですか?」

 

「それは練るときの手の温度で肉の脂がどんどん溶け出してしまい旨味が逃げてしまうから、氷水で冷やしながら捏ねる事で肉の温度を下げているんだ。

また、塩を入れてからよく捏ねると肉に含まれるミオシンというたんぱく質が互いにくっつき粘りがでるから、より割れにくくなるぞ。

良く調べててちゃんと工夫がされている」

 

『へぇ~』と3人が声を合わせて唸る。

今後、調理師免許を取得しようと過去から少しずつ勉強している氷瀧にとってはこの程度の知識は他愛のない事である。

 

次に塩小さじ1杯・白こしょう、ナツメグ少々を順に加え、少し粘り気がで始めるまでさらに捏ねる。

そこに炒めた玉ねぎと牛乳に浸したパン粉、溶き卵1個分を加えてむらが無くなりトロっとした状態になるまで捏ねる。

 

捏ね終わった肉を3等分し、手にサラダ油を塗り、両手で投げ合うように10回ほど往復させて中の空気を抜く。

ふっくらと丸みのある楕円に整えたら、更に手に油を付けて表面を優しく撫でて滑らかに仕上げる。

 

「ここで表面を滑らかにしておくと、加熱した際に火が均等に当たり、割れにくくなるから肉汁をハンバーグの内側に閉じ込めることができる。だからここでは手を抜かないように」

 

(もうこれ、料理対決じゃなくて料理教室でいいんじゃないかしら?……私もあっちに加わりたいのに…)

 

そんな思いは口から出さずに千聖は自らの内に、グッと押し込めた。

 

フライパンを熱してサラダ油をひき、ハンバーグを3個並べて置き、中火で3分焼く。

ハンバーグの周囲が薄茶色になってきたらハンバーグをひっくり返し、両面に美味しそうな焼色がつくまで2分30秒~3分程度焼く。

そこから蓋をして更に弱火で5分蒸し焼きにし、火を止めて蓋をしたまま5分蒸らせばハンバーグの焼き上がりである。

 

ハンバーグの油が残ったフライパンに料理酒・ケチャップそれぞれ大さじ4杯、中濃ソース・砂糖・醤油をそれぞれ大さじ1杯ずつ入れ、弱火で一煮たちさせればソースの完成である。

 

「美味しそうー!!」

 

「日菜さん!ダメですよ!?これは紗夜さんと松原さん、羽沢さんのお兄さんの分なんですから」

 

「えぇーちょっとくらい、いーじゃん」

 

「さっき日菜さんは付け合わせのフライドポテト沢山食べたでしょ?」

 

「ぶー。麻弥ちゃんのいけずー」

 

「ほらっ日菜さん、私達が作った付け合わせを添えましょう」

 

「はーい♪」

 

お皿に乗せたハンバーグの端に麻弥と日菜が準備した、フライドポテト・モヤシのナムル・ブロッコリーのチーズあえを添えてハンバーグの完成!!

日菜の提案で、付け合わせの王道であるニンジングラッセはメニューから敢えて外されている。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「えーそれでは!!両チーム料理が出揃いましたのでいよいよ実食に移りたいと思いまーす☆」

 

リサの音頭でいよいよ氷瀧、紗夜、花音により実食と

審査に移るのだった。

 

 

 

 




いかがでしょうか?

ドタバタの誕生日ですが、美少女に囲まれて氷瀧は幸せな誕生日ですね(^^)

さて、個人的な報告になりますがドリフェスの結果はモカちゃん・紗夜さん・沙綾を御迎えできました!!
あとは倉田が来てくれれば完璧なのになぁ(笑)
ギリギリまで粘ってみますかね(  ̄▽ ̄)

では今回はこの辺で失礼します。
後編は内容まで煮詰まってるのでそこまで遅くはならないと思います!!

評価・ご感想・お気に入り登録ドシドシお待ちしております。

執筆の励みになりますので小さな感想でもとてもとても嬉しいです(^^)

それではまた次回!ほなっ!(^^)ノシ
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