1話を見ていただきありがとうございました。
かなりの反響があったみたいで喜ばしい限りです。
まさか1話でお気に入り登録が100人越えるとは……。
みんなつぐみが大好きなんですね(笑)。
わかりみが深いです。
今後とも継続してご愛読していただけると幸いです。
では本編です!!
「えぇ……コホン。それではお兄ちゃんの帰宅を祝いまして…………」
「「「「乾杯!!」」」」
つぐみの可愛い挨拶と共に、羽沢家での氷瀧お迎えパーティーが開始された。
「お兄ちゃんが帰ってくるなんて知らなかったから、ビックリしたよー」
「親父が内緒にしたいって言ってたからな」
「お兄ちゃん、フランスでの修行どうだった?」
「正直、勉強になったよ。ただ師匠のお店は忙しすぎて休みは無かったな」
「それは大変だね……。そうだ!今度お店のお菓子教室手伝ってよ♪」
「いいぞ。ただし簡単なやつな?」
「うん♪」
続いて氷瀧の前に肉料理が並べられる。
氷瀧はそれを見て母に飲み物を催促する。
「母さん、赤ワインある?」
「あるけど何に使うの?」
「母さん……赤ワインは飲み物だぞ?飲むに決まってるじゃないか」
「お兄ちゃん未成年だよね!?」
「甘いぞつぐみ。フランスでは16歳から3%以下のアルコールが飲めるようになるし、18歳になればワインなどの度数の高いお酒も飲めるようになる。実際に師匠の家でも毎晩ワインを飲んでた。ワインなんてブドウジュースみたいなもんだぞ?」
「お兄ちゃん!!ここは日本だよ!!お兄ちゃんは日本では未成年なんだから飲酒は禁止!!」
つぐみはプリプリしながら氷瀧のワインを没収した。
「…………まさかつぐみがそこまで真面目に育っているとは……」
それからは家族水入らずの楽しい夕食となった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「それでね、その時モカちゃんがね♪」
「うんうん」
夕食後、つぐみは氷瀧がいなかった間に起きた事を楽しそうに話し始めた。
(うん、イキイキしてるつぐみはやっぱり可愛いな)
「ねぇお兄ちゃん、ちゃんと聞いてる?」
「聞いてるよ」
「ホントに?ボーッとしてたよ?もしかして長旅で疲れてる?大丈夫?」
「大丈夫だよ。つぐみはやっぱり可愛いなって思ってただけさ」
「もう、お兄ちゃんは変な事言うんだから」
軽く照れながらつぐみは話をはぐらかした。
「何か飲もうか?」
「うん♪私コーヒー淹れようか?」
「つぐみ、コーヒーは寝る前に飲む物じゃないぞ?午前8時~9時くらいに飲むのが一番で、それ以外に飲むとカフェインを摂取したくなる原因になるんだ」
「お兄ちゃん詳しいんだね?」
「少し勉強したからな。よし、俺が飲み物を作ろう」
氷瀧は冷蔵庫からリンゴ・おろし生姜・豆乳・ハチミツを取り、ミキサーにかける。
その後にミキサーにかけた物を鍋に移し、暖かいくらいまで加熱しマグカップに移した。
「リンゴホットジンジャースムージーだ。リンゴと生姜には身体を暖める効果があるし、豆乳に含まれる大豆ペプチドは美容効果があるからな。コイツはオマケだ」
氷瀧は慣れた手付きで果物ナイフを走らせると、余ったリンゴの一部をヒマワリの花のように飾り切りした。
「可愛い!!ありがとうお兄ちゃん♪」
(こちらこそ可愛い笑顔をありがとう)
つぐみは満面の笑みを浮かべると、スマホで写真を撮りグループLINEのような物にその写真を送っていた。
一通り写真を撮り終えて満足したのか、今度はつぐみが氷瀧に質問をし始めた。
「そういえばどうしていきなりこっちに帰ってきたの?」
「ん?理由言ってなかったかな?」
「うん、さっきは蘭ちゃん達がいて違う話題になって話してなかったよ?それにお兄ちゃんはひまりちゃんに鼻の下伸ばしてたし」
「の、伸ばしてないぞ!俺は決してやましい気持ちなんてこれっぽっちも無かったぞ!決してだ!」
「二回……。ホントかなぁ……」
(正直一番聞かれたくなかった質問だ……。さてどう誤魔化したものか)
氷瀧が日本に帰ってきた理由は勿論つぐみの為だ。
しかし氷瀧の兄としてのプライドがそれをつぐみに素直に話す事を許さない。
しかし大好きな妹に隠し事や嘘を付く事はしたくない。
二律背反な感情に氷瀧は頭を抱えていた。
「そんなに言えない事なの?」
つぐみは氷瀧の様子を心配そうに覗いてきた。
つぐみなりにいきなり家に帰ってきた兄を心配しているのだろう。
そんなつぐみの優しさを受け、嘘を付くことは優しさではないと思った氷瀧は素直に理由を話す事にした。
「親父からつぐみの話を聴いてな?」
「私の話?」
何かしたっけ?とでも言うように首を傾け上を見る。
少し考えた後、つぐみ恐る恐る口を開いた。
「私……何か悪い事してた?」
「心配しなくても悪い事なんて何もしてないよ」
「良かったー」
つぐみは安堵の声を漏らす。
さっきまで強ばってた表情がすっかり緩くなり、その場の空気も緩くなるのを氷瀧は感じた。
「それじゃあ、お父さんにどんな事言われたの?」
「……前につぐみ倒れたんだろ?親父がつぐみに負担を掛け過ぎてたって反省してた。それを聞いて心配になっちゃって帰って来ちゃった」
氷瀧は優しく微笑む。
それとは対称的につぐみの表情は困惑していた。
「そんな……お兄ちゃんが心配して帰ってくる程のことじゃ無いよ!?それに私、そんな理由でお兄ちゃんの夢の邪魔をしてるなら嬉しくないよ!!」
「心配するに決まってるだろ!!」
少し強い言葉でつぐみの言葉を遮った事に気付いた。
「ごめん…。だけどなつぐみ。大切な妹が倒れて、心配しないなんて俺には無理だ。それにな?つぐみの為じゃない、俺がつぐみのやりたい事を応援したいんだ。この気持ちがつぐみが俺の夢を応援したいという気持ちとどう違う?」
「……ゴメンねお兄ちゃん。心配かけちゃって…」
今にも泣きだしそうなつぐみの頭に氷瀧は掌を乗せる。
「つぐみが謝る必要なんてないさ。元はと言えば家を放ったらかして、つぐみにお店の事を全て背負わせた俺が悪いんだから」
"お兄ちゃんは悪くない"
"それでも私が悪い"
つぐみがそう口にしようと顔を上げるが、その言葉を言わせないと言わんばかりに氷瀧は言葉を重ねた。
「あのなつぐみ。何事も一生懸命やり通すのはつぐみの良い所でもあり、悪い所でもある」
「悪い所?」
「そう。何もつぐみ1人が頑張らなくても良いんだよ。もっと周りを信頼して頼れ。周りを見てみろ。いつも通りみんながそばにいてくれるだろ?蘭達がつぐみを助ける事を嫌がると思うか?…………モカはちょっと分からないけどな」
「アハハ」
つぐみは氷瀧の問いかけに軽く笑みを浮かべるとそのまま首を横に振る。
「だろ?それに今は俺が帰ってきたんだ。これからは1人じゃ大変な時はお兄ちゃんを頼ってくれよ?」
「……迷惑じゃない?」
「妹から頼りにされるなんて、兄貴にとってご褒美でしかねーよ」
「ホント?」
「ホントにホント!だから笑ってくれよつぐみ」
微笑みながら言ったその言葉は、つぐみの塞き止めていた感情を溢れさせるには十分だった。
「…ウゥッ……ヒック………」
嗚咽が混じり声まで泣き乱れそうになりながらも、不器用な妹は必死に最高の笑みを浮かべて言った。
「ありがとうお兄ちゃん」
「どういたしまして」
「それと…………」
「ん?」
「おかえりなさい♪」
「……ただいま」
いかがでしょうか?
今回は羽沢兄妹の話を書かせていただきました。
次回からは少しずつ常連さんなどを出して行きますよ♪
ただ筆が乗らなければ投稿も遅くなると思いますので気長にお待ちください。
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それではまた次回!ほなっ!(^^)ノシ