普通過ぎる妹とおかし過ぎる兄の話   作:テレサ二号

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どうもテレサ二号です!!

ハンバーグ食べたい……。

では本編です。


Order 3:ハロー・グッバイ

『チュンチュン……』

 

「ん……朝か」

 

時刻は午前4時半。

パティシエの朝は早い。

特にセドリックの仕入れに付き合っていた氷瀧の朝は特に早く目が覚めるように習慣づいていた。

 

「二度寝するか?いや、習慣を変えるのは良くない事だからな」

 

氷瀧は体を起こすとカーテンを開ける。

まだ外は暗く新聞配達のバイクしか通っていない。

 

「そっか俺日本に帰って来たのか……」

 

氷瀧はスマホを開くと、セドリック夫妻にフランス語で

『日本の実家に無事着きました。また機会があればそちらに帰ります。それまでどうか御体を大切になさってください』

と送った。

 

氷瀧は窓を開ける。

生ぬるい風が窓から部屋に入ってきた。

 

「やっぱり東京の空気は綺麗じゃないし空も狭いよエルメ……」

 

しばらく空を眺めていた氷瀧だったが窓を閉め、着替えを始めた。

フランスから持ち帰った荷物の中から十数種類の香水ケースを取り出し、その内の一つを首筋とハンカチに付ける。

これは氷瀧にとってジンクスのようなものである。

香水も自分で買った物は殆どなく、誕生日プレゼントでお客さんから貰った物が殆どだ。

香水を付けるとクローゼットの中からシャツを取り袖を通した。

 

「さて、これからどうしたもんか……」

 

一階からいい匂いがする。

匂いに誘われて一階に降りると母親が朝食とお店で出すケーキの下処理をしていた。

 

「おはよう」

 

「あらおはよう。氷瀧は早いのね」

 

「修行時代からずっと起きるの早かったから習慣になってるだけだよ。エルメは食材の目利きにはうるさかったから何度も付いて覚えさせて貰ってたんだ。フルーツの下処理手伝うよ」

 

氷瀧は近くにあった果物ナイフを取ると、近くにあったリンゴを剥き始めた。

母は氷瀧の慣れた手つきに驚きながらも、そのまま下処理と会話を続けた。

 

「それで?目利きは身に付いたの?」

 

「んー半年くらい前から仕入れ時の目利きは俺の仕事になったから、エルメ的には合格って事だと思ってる」

 

「だったら今後は氷瀧にも仕入れを手伝って貰おうかしら?きっとお父さんも助かるわ」

 

「少なくとも親父よりはいいと思うよ。そもそもこのリンゴだってもう少し寝かせた方がいいし、品種も加工向きじゃないから親父にはもう少ししっかりして貰わないと」

 

「ねぇ氷瀧?」

 

「ん?」

 

「無理してない?ホントは向こうに残っていたかったんじゃないの?」

 

「………………」

 

氷瀧は言葉を詰まらせた。

確かにフランスに残って自分の店を持ちたいという夢はあったが、それは決して日本に帰って来たくなかったという理由ではない。

 

「大丈夫、母さんは心配し過ぎだよ。俺だって羽沢家の一員なんだから、羽沢珈琲の為に頑張らないとね?」

 

「これから進路はどうしようと思ってるの?」

 

「少なくともつぐみが大学に入るまでの約3年間はこの店で頑張るよ。それまでに羽沢珈琲が潰れそうなら俺がこのお店を貰って、パティスリー羽沢にでも改装しようかな」

 

「うふふ。もう氷瀧ったら面白い事言うんだから」

 

やっと母が微笑み、安心した氷瀧にも笑みが溢れた。

 

「それで?今日はどうするの?」

 

「どーするもこーするも、お店を手伝わなきゃだろ?」

 

「久しぶりに日本に帰ってきたのよ?今日くらいはオフでいいわよ。お父さんともそう話してたのよ」

 

「じゃあ、お言葉に甘えてそうさせて貰うよ。そうだ!お店の材料使わせて貰ってもいいかな?」

 

「いいわよ?何を作るの?」

 

「ご近所さんへの挨拶も含めてマカロンでも作ろうかと」

 

「あら♪可愛らしくていいじゃない♪」

 

母からの承諾を受けると氷瀧は材料を用意する。

 

グラニュー糖34g

卵白100g

乾燥卵白5g

アーモンドプードル100g

粉糖180g

食用色素数種類

味付け用のパウダーや果物数種類

 

氷瀧の両手がまるで魔法をかけたように材料が形や色を変えていく。

ダンスを踊る子供のような無邪気な表情とそれに反する正確性の高い指先はいとも簡単に小さな芸術を作り出した。

 

氷瀧は時計を確認した。

気がつけば時刻は7時前。

二時間近く作業に没頭していたようだ。

その成果もあり、チョコレート・抹茶・レモン・紅茶・イチゴ・コーヒーの七種類が準備できた。

個数もかなりあり100個近くはあるようだ。

 

「凄く作ったわね」

 

「配るのは50個くらいあればいいから、残りはお店に来てくれたお客様に先着で配ってよ。俺は包装したやつを持ってご近所さんに挨拶に行ってくる」

 

「おはよ~」

 

起床したばかりだと思われるつぐみがパジャマ姿のまま厨房に顔を出した。

髪の毛は少し寝癖が付いていてパジャマは少しはだけている。

 

「おはようつぐみ。黄色のパジャマが似合ってて凄く可愛いとは思うけど、胸元が少しはだけてる。顔を洗って着替えておいで」

 

「おに……ちゃん?パ……ジャマ?………………////」

 

つぐみの顔がみるみる真っ赤に染まっていく。

 

「お、お兄ちゃんのエッチ!!」

 

「ちょっ!!ちょっと待て!!俺は何も悪くないだろう!?」

 

「き、着替えて来るから!!」

(お、お兄ちゃんが帰って来てるの忘れてた!!油断してたよ~///)

 

つぐみは顔を真っ赤にさせて化粧台に向かった。

 

 

「「「「いただきます」」」」

 

家族揃って朝食を取る。

これは羽沢家のしきたりであり、羽沢家に帰って来ている氷瀧も例外ではない。

氷瀧は味噌汁を口にした。

 

「美味しい……」

 

久しぶりの日本食、久しぶりの母の味に思わず氷瀧の表情が緩む。

 

「あ、お兄ちゃん笑ってる」

 

「笑ってない。ただ懐かしいと思っただけだ」

 

「えへへ、ホントかな~?」

 

つぐみは横に座っている氷瀧のほっぺをつついた。

久しぶりに家族全員が揃っての朝食に大変ご機嫌なようだ。

そんな二人を微笑ましそうに見ていた父が氷瀧に声を掛けた。

 

「ところで氷瀧。今日は何をするんだ?」

 

「その話は先程母さんに済ませているから、親父に報告する義務は無いな」

 

「氷瀧……前から思ってたんだが、父さんに冷たくないか?」

 

「ん?今頃気づいたのか?」

 

「ガーン!!」

 

父は俯くとショボショボと卵焼きを口に運んだ。

 

「お兄ちゃん、今日はどうするの?」

 

「マカロン作ったから、挨拶がてらご近所さんに配ってくる」

 

「つぐみには素直だな!?」

 

父とつぐみの扱いの差に父は抗議の声を上げた。

 

「私も行きたい!!」

 

「???。つぐみはいつもご近所さんに会ってるだろ?」

 

「いきなり声を掛けてもお兄ちゃんって分からない人もいるかもよ?それにお兄ちゃんがいない間にできたスポットも紹介したいし!」

 

「ん~。まぁ一人で行きたいって訳でも無いしつぐみに案内をお願いしようかな?」

 

「やったぁ♪」

 

「ただつぐみ、無理はしてないか?お前に無理をさせてまで案内してもらう事を俺は望まない」

 

「大丈夫だよ!最近そこまで生徒会もお店の手伝いも忙しくないから」

 

「そっか。だったらお願いするよ」

 

「うん♪」

 

「久しぶりのデートだな」

 

「う、うん……そうだね」

 

つぐみはほんのり頬を赤らめた。

 

それから二人の挨拶巡りが始まった。

 

「まずはいつも買い食いしてた山吹ベーカリーに行くか」

 

「そうだね。ウチからも近いしね」

 

つぐみを連れて氷瀧は山吹ベーカリーを訪れた。

 

「いらっしゃいませ~。ってつぐ♪」

 

「沙綾ちゃんおはよー♪」

 

「おはよ♪それよりどうしたの?男の人なんて連れて?彼氏?つぐも隅に置けないなぁ~」

 

「彼氏じゃないよ!お兄ちゃんだよ!」

 

「よっ!沙綾。いい女になったな」

 

「もしかして氷瀧君?氷瀧君も凄く大人になったね!」

 

「アハハ、おじさんやおばさん、弟達は元気かい?」

 

「元気元気♪元気過ぎて困るくらい」

 

「そっか、それは良かった」

 

「おぉ!!誰かと思えば御曹司じゃねぇか!!」

 

沙綾達の声に釣られて沙綾の父もやってきた。

 

「お久しぶりです、おじさん」

 

「久しぶりに見たら顔付きも変わってんじゃねーか。腕を上げたみたいだな」

 

「おじさんこそ、パンの腕上げたんじゃない?入って来た時の香りで分かったよ」

 

「ふん、イッパシの口叩くようになったじゃねーか」

 

職人同士の熱い握手が交わされる。

 

「あはは……久しぶりの再会なのに意気投合しちゃってるよ」

 

「あはは……お互い困ったものだね」

 

愛娘と愛妹は半ば飽きれ気味に笑ってみせた。

 

「ところで今日はどうしたんですか?」

 

「久しぶりに日本に帰ってきて、これから店で働く事になってるから、今日はご近所さんへの挨拶」

 

氷瀧は黒のトートバッグからマカロンを取り出した。

 

「これお土産」

 

「わぁ♪綺麗♪どこで買ってきたんですか?」

 

「これは俺が作ったの!!」

 

「えぇ!?お店に売っててもおかしくないレベルの完成度ですよ!?」

 

「実際お店で売ってたんだけどな……」

 

「貰ってもいいんですか?」

 

「あぁ、貰ってくれると嬉しい」

 

氷瀧の爽やかな微笑みに沙綾は少し顔を赤くした。

 

「あ、ありがとうございます。弟達も喜びます」

 

「そうだ御曹司!ウチのパンを持ってけよ!好きなの持って行っていいぞ?」

 

「ありがとうございます!でもこれから二人でお出かけなので帰りにまた寄らせて貰ってもいいですか?」

 

「いいぞ!取り置きしといてやる。どれがいいんだ?」

 

「そうですね……。つぐみ、明日の朝はフレンチトーストとかどうだ?」

 

「お、お兄ちゃんが作るフレンチトースト……」

 

つぐみは小さくヨダレを垂らしたがすぐさま首を振り冷静を取り戻した。

 

「た、食べたいです……」

 

「なんで敬語なんだよ」

 

氷瀧は笑いながらつぐみにツッコミを入れた。

 

「それじゃあ、食パンを一斤いただいてもよろしいですか?」

 

「おう、家族全員分が賄えるように大きいやつな!」

 

「ありがとうございます。それではまた後で」

 

「「バイバーイ」」

 

沙綾とつぐみはそれぞれ手を振り合うと別れを告げた。

 

「次は北沢精肉店だな」

 

つぐみと氷瀧は北沢精肉店を訪れた。

 

「あぁ!つぐとひーくんだー♪」

 

つぐみと氷瀧ははぐみに手を振った。

 

「四年ぶりなのに良く分かったな」

 

「うん!ひーくんには良くキャッチボールの相手になって貰ってたもん♪」

 

「なるほどな♪」

 

「父ちゃん父ちゃん!つぐとひーくんが来たよー!」

 

「おういらっしゃい!氷瀧君は久しぶりじゃねーかい?」

 

「はい、お久しぶりです」

 

「今日はどうしたんだ?」

 

「かくかくしかじかで」

 

「なるほどな。これからご近所さんとしてよろしくな」

 

「はい、よろしくお願いします。これお気持ちだけ」

 

氷瀧はマカロンを取り出しはぐみ父に手渡した。

 

「ありがとよ。ウチのお肉持って帰るといい」

 

「では御言葉に甘えさせていただきます。今からお出かけなので帰宅時に寄らせてもらいます」

 

「ゴクリ……」

 

「さてつぐみ、何が食べたい?」

 

ゴゴゴゴ……

氷瀧から強者のオーラが漂い始めた。

 

「び、ビーフシチューが食べたい……」

 

「オッケー!!じゃ、おじさん牛スジを500gお願いしますね」

 

「中々手間の掛かるのを選ぶな」

 

「えぇ、つぐみには美味しいものを食べて欲しいので」

 

「はいはい、ごちそうさま」

 

「ねーねー、ひーくん。ハロハピのメンバーにもお裾分けしたいからもう少しマカロン貰える?」

 

「あぁ、いいよメンバーは5人かな?」

 

「ううん、六人だよ?」

 

「そっか、だったら1人3つずつで18個な」

 

色とりどりのマカロンを取り出すと、氷瀧は更に持ち歩いていた宝箱型の包装箱にマカロンを納めた。

 

「わぁ可愛い♪」

 

「何かの役に立つと思って持ってきてて良かったな」

 

「ありがとう!!」

 

はぐみの満面の笑みに氷瀧は心が満たされるのを感じた。

 

「どういたしまして♪」

 

「それじゃあ、帰りにまた寄ってくれ。いいスジ肉用意しとくよ」

 

「よろしくお願いします」

 

二人は羽沢精肉店を離れるとそのまま街へ向かった。

 

「昼飯でも食うか」

 

「そうだね♪」

 

「近場に良いところ無い?」

 

「だったらサークルのカフェテリアに行こうよ!」

 

つぐみの案内で氷瀧はサークルのカフェテリアへ向かった。

 

「えっとメニューは……。ミートソースパスタ、アサイーボウル、マカロンタワー、フルーツタルト、チョココロネ、極上コーヒー。って6つだけ!?偏りも凄くないか!?」

 

「き、きっと大人の都合があるんだよ!!ここのミートソースパスタ美味しいから食べよっ!!」

 

ミートソースパスタを2つ注文して二人がけのテーブルで待つ、待っている間につぐみが話題を提供した。

 

「ねぇお兄ちゃん」

 

「ん?」

 

「私も蘭ちゃん達にマカロン上げたいんだけど一つずつ貰えたりしない?」

 

「お前らだったら残り全部やるよ」

 

「ホント?」

 

「ホント」

 

氷瀧は先ほどとは違う箱に残ったマカロンを色違いに並べて納めた。

持っていたリボンでバタフライボウに結び、つぐみに渡した。

 

「お兄ちゃんって絶対私より女子力高いよね……」

 

「ふふ、こう見えても一応プロだからね。侮って貰っては困るのだよつぐみちゃん♪」

 

「ねぇねぇお兄ちゃんお兄ちゃん♪」

 

「今度は何だ?妹よ」

 

「今度、可愛いラッピングの仕方教えてくれない?」

 

「あぁいいよ」

 

「やったぁ!!これでひまりちゃんみたいに可愛くお菓子が作れるよ♪」

 

コロコロ喜び妹を氷瀧は微笑ましく見ていた。

 

「ねぇお兄ちゃん。今度のお菓子教室でみんなにマカロンを教えるって言うのはどうかな?カラフルで可愛いし、きっとみんな喜ぶと思うんだけど」

 

「却下だな」

 

「えぇ~!?」

 

「マカロンは初心者が作るには難易度が高すぎる。クッキーと同じで焼き菓子だから簡単そうに見えるが、メレンゲの表面を潰すマカロナージュって工程の加減がとても難しい。潰し過ぎると形が崩れたり綺麗に膨らまないし、足りないと割れたりツヤが出なかったりする。生地の乾燥時間も温度や湿度で変えないといけないしな」

 

「そ、そうなんだ……」

 

「マカロンって小さいのに単価がクッキーと比べて圧倒的に高いだろ?あれは手間が掛かっている証拠さ」

 

「やっぱりお兄ちゃんってお菓子の事になると妥協しないよね」

 

「嫌いになったか?」

 

「ううん、逆だよ。尊敬する!!」

 

つぐみの屈託のない笑顔に氷瀧は少し照れながらも、可愛い可愛い妹からの尊敬の眼差しを受けまんざらでも無かった。

 

「お菓子教室は俺が何を作るべきか考えておくよ。それとつぐみ、お前にはいつでもお菓子作りを教えてやるから何でも聞いて来い」

 

「うん、よろしくお願いします!」

 

この後、運ばれてきたパスタを仲良く食べて二人は帰路に着いた。

 

この日は氷瀧の作るビーフシチューとフランス料理の数々に羽沢家はおおいに盛り上がるのであった。

結果的につぐみは兄の手料理をデザートまでしっかり食べてしまうのであった。

 

 

 

「うぅ……今晩体重計に乗りたくない……」

 

 

 

 




いかがでしょうか?
今回はご近所さんへの挨拶ということで氷瀧に商店街をブラブラさせました。

今回はつぐみの可愛さを引き出せていない自分の文章力にガッカリです……。
まぁ今後に期待してください。

ではこの辺で失礼します。
評価・ご感想・お気に入り登録ドシドシお待ちしております。
特に評価・感想は執筆の励みになりますのでよろしくお願い致しますm(_ _)m

それではまた次回!ほなっ!(^^)ノシ
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