普通過ぎる妹とおかし過ぎる兄の話   作:テレサ二号

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どうもテレサ二号です!!
御愛読ありがとうございます。
最近寒くなってきたので風邪には充分気をつけてくださいね。
私は絶賛風邪です……。ハナミズヤバイ

さてさて今回はアフグロにスポットを当てました!
文章はいつもより少しコンパクトです。

それでは早速本編です!!



Order 7:キミが胸を焦がしたり焦がさなかったり

どうも羽沢氷瀧です。

皆様いかがお過ごしでしょうか?

いきなりナレーションにお邪魔してスミマセン。

 

皆さんは夏と言えば何を思い浮かべますか?

 

夏祭り?

いいですね。花火を眺めながら熱々のたこ焼きを食べてラムネをきゅっと行きたいものです。

 

夏期講習?

受験生の皆さん今が大事な時期です頑張ってください。

 

里帰り?

田舎の実家の縁側でホタルでも眺めたら最高ですね。

 

え?私は何を思い浮かべるかって?

俺は暑いとしか思い浮かべません。

暑いのは苦手だから涼しい部屋でアイスティーを飲みながら雑誌でも読みたいものです。

 

 

そんな俺は今……

 

 

 

 

 

 

プールに来ています。

とても人が多く、正直帰りたいのですが可愛い可愛い妹達の保護者兼ボディーガードとして付き添いで来ています。

 

何でこうなったのだろう……。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「ひーくんがつぐってる?」

 

アフグロの練習後の恒例となっているファミレスでつぐみはみんなに相談をしていた。

 

「そんなに無理してるの?」

 

「お兄ちゃんが日本に帰ってきてから1ヶ月以上経つでしょ?その間の休日が帰国した次の日とこの前どこかに出掛けてた1.5日だけなんだよね」

 

「労働基準法無視してるな」

 

「氷瀧君。いつお店に行っても接客してるもんね」

 

「お兄ちゃんの一日のスケジュールはね」

 

4:00  起床

4:30  身嗜みを整えケーキなどの下処理の手伝い

6:00  一家全員の朝食とつぐみの弁当作り

7:00  朝食

7:30  ケーキなどの調理開始

11:00 羽沢珈琲店開店 

13:00 母と入れ替わりで昼食

13:30 休憩終了

18:00 羽沢珈琲店閉店

18:30 片付けを終え夕食準備

19:30 夕食

20:00 夕食の後片付け

21:00 翌日の営業に備えて仕込みや補充

22:30 入浴

23:00 お菓子メニューの考案

24:00 就寝

※早朝の仕入れがある場合は3:00起床。

 

 

 

「こ、これは……」

 

「社蓄だな」

 

「ひーくんスーパーつぐってるー」

 

「これじゃあ身体を壊すのも時間の問題だよ!」

 

「だからね?お母さんがお兄ちゃんに休みを上げたいって言ってたんだけど」

 

『ん?休みなんていいよ。接客楽しいし。それよりつぐみの負担を軽くしてやらないと』

 

「って言ってるらしいの」

 

「それで私達に相談?」

 

「うん!お兄ちゃんを休ませるにはどうしたらいいかなって思って」

 

「氷瀧君の趣味って何だっけ?」

 

「…………お菓子を作ってるイメージしかないね」

 

「ひーくん根っからのパティシエだからねー」

 

「ラーメンに連れていくのはどうだ?」

 

「巴じゃないんだから」

 

「ふっふっふ……」

 

「ひーちゃんに秘策ありと言った様子だね」

 

「「「秘策?」」」

 

「みんなでプールなんてどう!?」

 

「「「「おぉぉぉ……」」」」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

こうして今に至るという訳である。

 

「俺泳ぐの苦手なのに……」

 

「ジャーーーン!!」

 

ひまりの大きな掛け声と共に水着に着替えた女性陣が更衣室から出てきた。

 

「どうひーくん?モカちゃんセクシー?」

 

水着はそれぞれ

モカ:白地に水玉のクロスホルターネックのビキニ

蘭:黒地に赤ラインのシンプルなビキニ

ひまり:ピンクの大きく胸元が開いたビキニ

巴:赤地のセパレートタイプの水着

つぐみ:黄色地にフリルのワンピースタイプの水着

 

(ひ、ひまりのひまりの主張が激しい……)

「みんな肌の露出高くないか?」

 

「感想が父さんみたい」

 

「みんな日焼け止めはちゃんと塗ったか?」

 

「はーい」

 

「汗をかいていないようで汗をかくからマメに水分補給をすること。何かトラブルに巻き込まれたら近くの監視員に助けを求めること。迷子になったら必ずここに戻ってくること」

 

「はーい」

 

「では、お昼まで各自自由行動で……。解散!」

 

氷瀧は日傘で作った日陰に入ると早速雑誌を読み始める。

その横に巴が腰かけた。

 

「行かないのか?」

 

「氷瀧君こそ泳がないのか?」

 

「苦手なんだよ、泳ぐのが」

 

「意外だな。何でもできそうなのに」

 

「運動全般はあまり得意じゃない。理系も苦手だしな。得意な事より苦手な事の方が多い」

 

「そっか……誘う場所間違えたかな?」

 

「いや、お前達の楽しむ姿も見られるしゆっくりもできて正直ありがたいよ」

 

「つぐの水着も見られるしな」

 

「そういうこと。ほらっ!ひまりが呼んでるぞ。行ってこい!!」

 

氷瀧は笑顔で巴を送り出した。

しばらく雑誌を読んでいた氷瀧だった連日の疲れとそよ風の心地よさに意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『カシャッ』

 

「ん……」

 

氷瀧が目を覚ますと目の前には蘭がいた。

 

「……俺寝てた?」

 

「みたいだね」

 

「そっか……」

 

蘭の顔はほんのり赤い。

氷瀧はお茶を飲み始める。

 

「ねぇ……」

 

「ん?」

 

「氷瀧君って巨乳が好きなの?」

 

「ブッーーー!ゲホッ!ゲホッ!!」

 

「汚い!!」

 

氷瀧は飲みかけていたお茶を全て吹き出してむせた。

 

「な、何言ってんだよ急に!!」

 

「だってさっきひまりの胸を見てたじゃん」

 

「み、見てねぇ!!」

 

「見てた!!」

 

「み、見てたとしても不可抗力だ!」

 

「それで?どうなの?」

 

「別に好きでも嫌いでもねーよ。大事なもんは他にあるだろ?」

 

「大事なもの?例えば?」

 

「性格とか笑顔が可愛いとかさ!」

 

「じゃあ、性格のいい貧乳と性格のいい巨乳どっちがいい?」

 

「・・・・・」

 

「最低……」

 

「ばっ!バカ野郎!変な質問すんじゃねー!!」

 

「私も頑張らないと」ボソッ

 

「何だって?」

 

「何でもない!!」

 

「まったく……」

 

氷瀧は読んでいた雑誌に再び視線を戻した。

 

「週刊パティシエ……。ブレないね……」

 

「何とでも言え」

 

「あ、でもこのケーキ可愛い」

 

「そうか?こっちの方が良くないか?」

 

「そっちは可愛いって言うよりオシャレだよ」

 

「女の子の感性は良く分からんな」

 

「その言葉そのままお返しするよ」

 

「そういえば蘭」

 

「ん?」

 

「この前はありがとな」

 

「いいよ別に。たまたま会っただけだし」

 

「また機会があれば誘ってくれ」

 

「いつでもいいよ」

 

氷瀧はページを捲っていく。

そんななんて事はない時間が蘭には心地よく感じていた。

 

「なー蘭?」

 

「なに?」

 

「将来はやっぱり華道の家元を継ぐのか?」

 

「さぁどうだろ?父さんはそれを望んでいると思うけどね」

 

「そっか……。そういえば親父さん元気?」

 

「元気だよ?ただ氷瀧君が帰って来たって伝えたら『何っ!?あの男が帰って来ただと!?』って凄く嫌そうにしてた」

 

「何故か俺は親父さんに嫌われてるからな 笑。何でだろ?」

 

「それは自分の胸に聞いてみれば?」

 

「心当たりが全く無いんだよな」

 

「ハァ……。鈍感」

 

「何か言った?」

 

「別に」

 

「そうだ蘭?」

 

「なに?」

 

「もし俺が自分の店を持てたら、花を生けてくれないか?」

 

「とびっきりのを生けてあげる♪」

 

氷瀧ははにかんだ。

花を生けてくれることが嬉しいのではない。

氷瀧が自分の夢を叶える事を微塵も疑っていない蘭の返事が嬉しくて照れたのだ。

しかし蘭はその事には気づいていない。

 

「こっちからも質問してもいい?」

 

「いいぞー」

 

「…………氷瀧君って好きな人いないの?」

 

「好きな人?つぐみやお前達の事は好きだぞ?」

 

「そういうのじゃなくて!!異性として恋愛対象として見ている人はいるの!?」

 

「…………今はいないかな」

 

「今は?前はいたの?」

 

「まぁ俺だって男だし?それなりにはね?」

 

「どんな人だったの?」

 

「いつも真っ直ぐな人だったかな?」

 

「付き合ったの?」

 

「付き合って無いよ。そもそも始まっても終わってもいないし恋とも呼べないような気持ちだから、これは時効なのかもしれないな」

 

「だったら!!」

 

「???」

 

「次の質問。もし私の好きな人が氷瀧君だったとして、私が好きだって言ったら困る?」

 

「蘭みたいな可愛い女の子に好意を抱かれるなんて光栄な話だね」

 

「模範解答みたい……」

 

「相手を想う気持ちに良いも悪いも無いんだよ。蘭にもそんな相手と出会えるといいな。俺は応援するぞ」

 

氷瀧は蘭に微笑んだ。

蘭は色々と言いたい事があったが全て飲み込んだ。

 

「つぐみに彼氏ができたら同じセリフが言えるかな?」

 

「ゴフッ!!」

 

「つぐみは可愛いし?性格も良くて社交的だし、守ってあげたい感じがして男は放っておかないと思うよ?」

 

「つ、つぐみに彼氏だと!?もしかしてつぐみに好きな男がいるのか!?」

 

「さぁ?本人に聞いてみたら?」

 

「つぐみと付き合う男は甲斐性があり将来設計までしっかりしてる男しか認めんからな!!」

 

「どこの頑固親父だよ」

 

蘭とくだらない話をしているとモカ達が戻ってきた。

 

「ひーくんお腹空いたー」

 

「確かにそろそろお昼だな」

 

氷瀧は持ってきていた重箱を広げる。

おにぎりがメインに玉子焼き、唐揚げ、ウインナー、アスパラのミルフィーユ風カツ、蓮根のはさみ揚げ、鶏おからバーグ、きんぴらごぼう、ほうれん草のおひたしなどなど。

 

「こ、これが噂の氷瀧君の手作り弁当」

 

「つぐのお弁当はいつも美味しそうってクラスでも話題なんだぜ?」

 

「そうなのか?それは嬉しい事だな」

 

「いつも美味しくいただいてるよ♪ありがとねお兄ちゃん♪」

 

(あぁ、心がつぐつぐするんじゃ~)

 

氷瀧がそれぞれ紙皿に取り分けるとモカを中心に手を合わせた。

 

「「「「「いただきます!」」」」」

 

「召し上がれ」

 

蘭がおにぎりを食べる。

 

「あ、これ昆布の佃煮だ」

 

「蘭、それ当たりだそ?」

 

「モカちゃんはツナマヨがいいなー」

 

「ツナマヨが昆布に勝てるわけないだろ?」

 

「なんで当たりなの?」

 

「その昆布の佃煮は商店街の魚屋さんからいただいた最高級品だからな」

 

「お魚屋さんに何かしたの?」

 

「この前、彼氏に手作りのクッキーを渡したいって魚屋の娘さんが言ってたらしくてクッキー教室を頼まれてな?そのお礼にいただいたんだよ」

 

「あれ?魚屋さんの娘って何歳?」

 

「今年小学校4年生」

 

((((私達よりませてる……))))

 

「いつしたの?」

 

「つぐみが学校に行ってる間に店のキッチン使ってな?」

 

「そうなんだ。私もお兄ちゃんにクッキー作り教えて貰いたかったな」

 

「また近い内にお菓子教室やろうか?」

 

「私参加します!!」

 

ひまりが食いぎみに挙手をした。

 

「氷瀧君って凄いよな」

 

「なんで?」

 

「こっちに帰って来てから1ヶ月ちょっとしか経ってないのに、もう商店街に溶け込んでるしさ」

 

「それはみんなの人柄の良さだよ。決して俺の力じゃない」

 

「あはは、そういう謙虚な所も氷瀧君は格好いいと思うぜ?」

 

「さ、サンキュ……」

 

氷瀧は照れて頬をかいた。

 

「あぁー!ひーくん照れてるー!」

 

「照れてない!!早くご飯食べちまえ!!」

 

氷瀧はおにぎりを食べ始めた。

 

「商店街で思い出したけど、今度商店街にテレビの取材が来るらしいぞ?」

 

「えぇ!?どこに来るの!?」

 

「ウチと山吹ベーカリーと北沢精肉店」

 

「どっ!どうしよう!?わ、私その時間はお店にいない方がいいかな!?」

 

「おぉ~つぐってますな~」

 

「ホントだ。つぐってる」

 

「笑ってる場合じゃないよ!!」

 

「つぐみはウチの看板娘なんだから当日は店にいてもらわないと困る」

 

「えぇ!?お兄ちゃんが取材されるんじゃないの!?」

 

「調理風景が必要になったら俺の出番だな」

 

「ど、どうしよう!?私上手くできるかな?」

 

「大丈夫、俺がついてる」

 

「お兄ちゃん……うん!!」

 

氷瀧は腕まくりポーズを見せた。

 

「こ、これが……」

 

「「「「頼れる兄オーラ!!」」」」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「それで?これからどうしよっか?」

 

「せっかくだからみんなで何かしたいよね?」

 

「ひーくん泳ぐの苦手なんだっけ?」

 

「金槌という訳ではないが長い距離は泳げないぞ」

 

「だったらウォータースライダーとかどう?」

 

「ウォータースライダー?」

 

「ここのウォータースライダーは有名らしいよ?」

 

「決まりだね!お兄ちゃん大丈夫?」

 

「大丈夫だ問題ない」

 

「それ死亡フラグだよー?」

 

氷瀧を含めた6人はウォータースライダーの入口へ向かう。

 

「え?ゴムボートを使用するんですか?」

 

「はい、当プール一番の人気アトラクションです!」

 

(ボートならそんなに怖くないか……)

 

「お兄ちゃん大丈夫?」

 

「大丈夫だよ……。さぁ行こう」

 

六人がそれぞれボートに乗り込みいよいよスタートした。

 

「しかし六人で乗ると狭いな!これ五人で乗った方が良かったんじゃないか!?」

 

「大丈夫大丈夫ー。みんなでくっつけば落ちないから大丈夫ー」

 

「わ、私少し怖い……」

 

蘭が無意識に氷瀧に抱きつく。

その柔らかい感触に氷瀧の全神経が集中する。

 

「般若波羅蜜多心経」

 

「つぐ!氷瀧君が壊れた!!」

 

「思ったよりスピード出てないね?」

 

そしてコースは連続カーブに差し掛かる。

 

「モカちゃんのマ◯カーで鍛えたドリフト技術を見せてやるー」

 

「それゲームの話だろ!」

 

「きゃあああ!!!」

 

「みんなしっかり掴まってろよ!!」

 

蘭に続きひまりが氷瀧に抱きついた。

 

「俺にじゃねー!!ボートにだ!!」

 

氷瀧も色々とヤバくなってきているようだ。

 

「カーブが終わったみたいだな」

 

しばらく直線が続いている。

安心していいようだ。

 

「あぁ、怖かった」

 

「ちょっとひまり!氷瀧君から離れて!」

 

「蘭だって抱きついてるじゃん!」

 

「二人とも落ち着いて!?」

 

「ねーねーみんなー」

 

「「なに!?」」

 

「先が見えないよ?」

 

モカが指さした先を見るとコースが無くなっている。

どうやらボートが落ちるようだ。

 

「みんなボートに掴まれ!!」

 

氷瀧の指示も虚しく、ボートは急降下でプールに落ちて行った。

 

「きゃあああああああああああああ!!」

 

黄色い悲鳴が響くとボートはプールに着水した。

 

「さ、流石に怖かったな……」

 

「もう二度と乗らない」

 

「私も怖いのはこりごり」

 

「でもいい思い出にはなったよね?」

 

「ひーくん大丈夫だった?」

 

「・・・・・」

 

「ひーくんよ…………。気を失ってもなお君臨するのか……」

 

氷瀧が自我を取り戻すのはそれから30分してからだった。

 

 

 




いかがでしょうか?

今回は特別編としてお店の外に出てみました!!
これから色々学園行事とかにも少しずつ氷瀧を絡ませて行けたらいいなと思ってます(^^)

ではこの辺で失礼します。
評価・ご感想・お気に入り登録ドシドシお待ちしております。
特に高評価・感想は執筆の励みになりますのでとても嬉しいですm(_ _)m

それではまた次回!ほなっ!(^^)ノシ

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