はい、前回が今年最後とか言っておきながら仕事が今週から急に落ち着いたのとモチベーションが上がったので筆が乗りました。
今日の主役は花音ちゃん先輩です。
文字数がいつもより少ないのでさらっと読めると思います。
では本編です!!
皆さんお久しぶりです。
松原花音です。
ナレーションにお邪魔しています。
私は今、羽沢珈琲店に単身乗り込んでいます。
何故かって?
それはここ最近の千聖ちゃんの様子がおかしい事とこのお店の店員さんが関係しているようなんです。
最近の千聖ちゃんは珍しくボーッとしてる事も多く、羽沢珈琲店の話を始めるとソワソワしたり落ち着かない様子です。
そんな千聖ちゃんを見て私は気づいてしまったのです。
そう!!
千聖ちゃんはこの店員さんに弱味を握られているのです!!
そんな千聖ちゃんを放ってはおけません。
だって千聖ちゃんは私の大事なお友達だから。
今日は店員さんの様子を監視・尾行して店員さんの本性を暴き、悪事を明るみに引きずり出します!!
でも店員さんがとんでもない大悪党だったらどうしよう??
…………その時はこころちゃんのお家の黒服さん達に頼ってみよう……。
私は彼の監視を続けます。
今のところ怪しい仕草はありません。
やはり簡単には尻尾は掴ませてくれないようです。
ちなみに私の今日の飲み物は紅茶ではありません。
コーヒーです。
今日は名探偵なので大人なコーヒーなんです。
「あの!これ受け取ってください!」
店員さんが何かの暗号のような物を書いている紙を渡されました。
怪しい取引なのでしょうか?
「スミマセン、お気持ちは嬉しいのですがお断りするようにお店のルールで決まっておりますので受け取れません」
どうやら交渉決裂のようです。
ますます怪しいです。
「おや?君は確か……千聖とつぐみのお友達だったよね?」
「は、ひゃい!」
「ちょっと待っててね♪」
そう言うと彼は店の奥に行きました。
それより千聖ちゃんを千聖呼び!?
ますます怪しくなってきました。
「お待たせ!これ秋の新メニューの試作で食べて感想を聞かせてくれないかな?」
「これは何のケーキですか?」
「梨のロールケーキ。これから梨が旬を迎えるから色々試しているんだ。砂糖とレモン汁で煮た1cm角の梨をクリームチーズに混ぜてロールケーキにした。トッピングに梨を砂糖・レモン汁・白ワインで煮詰めた梨のコンポートを添えてキャラメルソースでデコレーションしてみたんだ♪」
食べなくても分かる。
これは美味しい。
「い、いただきます……」
し、視線が痛い……。
「どうかな?」
「とても美味しいです」
「良かった♪ゆっくりして行ってね♪」
正直、探偵としてこの店に来ていなければ骨抜きにされているくらい美味しいです。
もしかして!?
このケーキをちらつかせて女の子をタブらかしているのかな!?
「母さん、買い物に行ってくるね」
「えぇ、行ってらっしゃい」
どうやらお出掛けのようです。
私も急いで会計を済ませて慌てて彼の後を追います。
いました!!
山吹ベーカリーの店長さんと何か話しています。
「よう御曹司!何か用事か?」
「9月9日の朝に食パンを二斤予約したいんですが?お願いできますか?」
「いいぞー。他に細かい注文無いか?」
「そうですねー。調理用なので水分少なめで香りが強い小麦粉を使っていただけると幸いです」
「"はるゆたか"ってブランドの小麦粉を最近仕入れてな?それを使って作ってやるよ?特別だぞ?」
「いいんですか?」
「おう、いいぞ。その代わり今年のウチのクリスマスケーキ頼んでもいいか?やるんだろ?」
「限定数個で親父が受注販売するらしくて……。俺に相談も無く決めちゃったんですよ?」
「それだけ御曹司の腕を見込んでるって事さ。ワガママ言って悪いんだが沙綾がお友達とクリスマスパーティーやるだろうからケーキは2つお願いできるか?」
「分かりました。それでは9月9日の朝に受け取りに参ります」
「持っていってやるよ♪ついでに羽沢珈琲さんと商談もしたいしな」
「だったら母がいいですよ?父は権力ありませんから」
「アハハ、その時は色々頼むな!」
食パン?
小麦粉?
クリスマスケーキ?
何かの隠語でしょうか?
ますます怪しいです。
どうやら次のお店に向かうようです。
後を追います。
続いては刃物屋さんの前で立ち止まりました。
彼は子供のように瞳を輝かせています。
「み、雅の包丁セット……。ほ、欲しい……55000円!?む、無理だ……」
包丁が欲しいとはやはり怪しい趣味です。
店内に入って店員さんと何か話しています。
「兄ちゃん、雅の包丁が欲しいとは通だね」
「でも俺の懐が寂しいので無理ですね」
「兄ちゃん料理すんのか?」
「はい、家族のご飯を作ってます。あと職業も一応パティシエをしてます。実家が珈琲店でそこでケーキを作ってます」
「そうかそうか♪偉いな兄ちゃん♪それで?何で雅の包丁が欲しいんだ?」
「切れ味が素晴らしいんですよ。自分の師匠がフランスにいるんですが、師匠も雅の包丁に惚れて店で使っていました。切れ味がいいと見かけや口当たりが全く違うんですよねー」
「見る目あんな♪お金が貯まったらまたおいで。その時は安くしてやるよ」
「よろしくお願いします」
刃物屋さんを出ました。
ここでも怪しげな取引を……。
きっと武器を増やそうと計画しているようです。
おや?今度はベンチに座っている兄妹に声を掛けました。
「どうしたんだい?」
「夏休みだからおばあちゃんの家に遊びに来たんだけど、迷子になっちゃって……」
「それで?」
「妹が泣いちゃったから僕のオヤツをあげてたんだ」
「そっか……お前いい兄貴だな」
彼は自分のカバンからクッキーを取り出すと兄妹に一袋ずつ渡しました。
どうやらいい所もあるようです。
「じゃあ、一緒におばあちゃんの家探そうか?この辺なんだろ?」
「うん!!」
彼は兄妹と手を繋ぐと歩き始めました。
もしかしたら彼はいい人なのかもしれません。
…………違う!千聖ちゃんの弱味を握るような人だもん!
私が本性を暴かなきゃ!!
10分後
「お兄ちゃんありがとう!!」
「本当にスミマセン」
どうやらおばあちゃんの家を見つけたみたいです。
一安心一安心。
「お兄ちゃんは妹を守ろうとしっかりしてました。良いお孫さんですね」
彼はお兄ちゃんの頭を撫でて微笑んだ。
「良く頑張ったな。妹を大事にしろよ」
「うん!兄ちゃんも妹大事にしろよ!」
「おう!神に誓うよ!」
彼はお兄ちゃんと固い握手を交わすとその場を去った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ハァ……どうしよう……」
氷瀧を見失った上に履いていたサンダルの紐が切れ花音は途方に暮れていた。
「足も靴擦れで痛いし、迷子になっちゃったしどうしよう……。そうだ!スマホ!」
スマホも充電が切れている。
泣き面に蜂とはこの事だ。
「おや?君はさっきの?」
「あ、店員さん……」
「こんな所でどうしたんだ?」
「ふぇぇぇぇ!?」
(店員さんを尾行してたなんて言えない……)
「靴擦れしてるじゃないか」
氷瀧はカバンから絆創膏を取り出し靴擦れしている箇所に貼った。
「大丈夫か?」
「あ、ありがとうございます。いつも絆創膏持ってるんですか?」
「何かあったら困るからねっと!」
氷瀧は中腰になって花音に背を向けた。
「あの……何してるんですか?」
「サンダルの紐も切れて歩けないだろ?だからおんぶだ」
「は、恥ずかしいです!」
「ここで君を見過ごして行くのは男が下がる」
「それに……私迷子なんです……」
「だったら尚更このままにはしておけないよ。君はつぐみの友達だしね」
「うぅ……」
花音は観念して氷瀧の背中に乗る。
氷瀧は花音の様子を伺いながら歩き始めた。
「家はどっちだい?」
「○○駅まで行って貰えれば分かります」
「了解した」
しばらく黙っていた花音だったが氷瀧の安心感に当てられたのか口を開いた。
「私、いつもいつも迷子になっちゃって本当にダメダメなんです。今日だって迷子になってとても不安で……。それにサンダルまで壊れちゃって今日はついてないです」
「迷子になるのは嫌なのかい?」
「当たり前です!!」
花音は語尾を強めてしまった事に気づいた。
「す、スミマセン……」
「…………ちょっと寄り道してもいいかな?」
「ふぇ?」
氷瀧におんぶされている為花音は拒否できない。
(も、もしかして怪しいお店やホテルとかに連れて行かれるのかな?ふぇぇぇ!)
「よし、着いた!」
氷瀧が寄り道したのは靴屋である。
そこから今日花音が着ている水色のワンピースに合う白色のパンプスを用意した。
「履いてごらん?」
「は、はい…………」
「うん、ちょうど良さそうだ♪スミマセン、このパンプスこのまま購入させてください」
「ふぇぇぇ!?」
氷瀧はスマートに支払いを済ませると花音を連れて店を出た。
「これでウチに帰れるな?」
「えっと……どうしてこれを買ってくれたんですか?」
「これはお守りさ」
「お守り?」
「さっき迷子になって不安になるって言ってただろ?俺は迷子を治してやることはできないから、せめて不安にならないようにと思ってこのパンプスを買った」
「どうしてパンプスなんですか?」
「ヨーロッパには『靴が幸せになれる場所へ連れて行ってくれる、だから女の子は素敵な靴を履くと幸せが訪れる』って言い伝えがあるんだ。だから迷子になってもこの靴が幸せになれる場所に連れて行ってくれるぞ!」
氷瀧は花音に微笑んだ。
(そっか……そういう事だったんだね千聖ちゃん)
「あの……店員さん?もう1つお願いしてもいいですか?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おはよう千聖ちゃん♪」
翌日学校に登校した花音は千聖の席に向かっていた。
「おはよう花音♪何か用事?」
「はいっ!これ!」
花音は名刺のような紙を千聖に渡した。
「これは?花音、メールアドレスでも変えたの?」
「違うよ!つぐみちゃんのお兄さんのRINEのIDだよ!!応援してるからね千聖ちゃん!!あっ、揚げパン買いに行かなきゃ!」
花音は小走りで教室を出ていった。
千聖は花音が出ていった扉を顔を真っ赤にして見つめ、しばらくそのまま動けなかった。
いかがでしょうか?
今回は花音ちゃん先輩のお話でしたねー。
次回は一応第二回お菓子教室を予定しております。
皆さんの好きなあの子達も出るよ!!
それとバンドリでもう一作書いてるので次はそちらを執筆しますのでこちらは少し更新が遅くなるかもしれません。
ではこの辺で失礼します。
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それではまた次回!ほなっ!(^^)ノシ