ベストプレイス   作:自由人❀

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ちょっとシリアスというかあまり明るい話ではないです。それではどぞ。


ココロの支え

 噂とは、辞書によるとそこにいない人を話題にしてあれこれ話すこと。また、その話、世間で言いふらされている明確でない話。風評。という意味だ。大半は後者の意味合いで使われる単語だと思う。大抵はいい話聞かないのが定石だ。噂の当事者なら嫌な気分でしかならない。

 そもそもなんの噂かと言うと、「よく分からないぼっちが学校一の最低な野郎と付き合っている」という噂だ。恐らくよく分からないぼっちに話題性はあまりなく、学校一最低な野郎が誰かと付き合っていることに話題性が顕になっているなのだろう。

 じゃあ最低な野郎って誰かって? 俺だよ。

 そもそもなぜこうなったかそこそこ見当はついている。まずは昼休み。

 まずはベストプレイスでよく若宮といるようなったことだ。あの一帯は誰も通らないということはない。ごく少数だが通る人はいる。

 もうひとつは下校時もよく若宮といるようになったことだ。簡単に言うと俺の普段の日常の一コマにに若宮が足された、ということだ。なぜ学校一最低な野郎が可愛い女の子といるのかということでこういう噂目立ち始めただろう。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「よく分からないぼっちと学校一最低な野郎と付き合っている」これを最初に聞いたときは真っ先にピーンときた。

 よく分からないぼっち=私だ。友達は少数でほかのクラスいるのだからF組の人から見たら私はぼっちだろう。では学校一最低な野郎= ……言いたくないけど比企谷くんだ。なぜ彼は学校一最低な野郎と評されているかというと、文化祭での出来事だろう。

 男子が屋上で女子を泣かせたという、普通に聞いたら男子が悪いに聞こえる。が、彼には彼なりに理由があってそうしたはず。だって長い付き合いではないけど、彼と関わってからそういう酷いことはするわけないと分かっているのだから。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 正直、私はこういう噂は嫌いだ。子供じみてるし男女一緒にいるだけで付き合っているとか言っていいのは小学生までだと思う。とにかく早く収束させたい。彼には申し訳ないけど今日はいつものところは行かない。まずは文化祭でのことの顛末を知りたいから私は数少ない友達のところに訪れることにした。比企谷くんに一言メール送ってB組の教室へ向かった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 メールに書いてある通りあいつは来ないか。まぁそうだよな。あんな噂立たれちゃあ近寄りたくもないわな。短い付き合いだったけどまあ楽しかったぜ。まあ人の噂も七十五日って言うがそうとも限らないしな、あとは……

 

 

 

 ☆

 

 

 

「はぁ……はぁ……ごめんください……戸田さんと蕨さんいる?」

「いるよ……? とだわらー! お客さんよー!」

「「はーい!」」

 今呼ばれた「とだわら」は私の数少ない友達の「戸田 美笹(とだ みささ)」と「蕨 夏鈴(わらび かりん)」の2人の略称みたいなものだ。なぜ2人合わせて「とだわら」と言われてるかというと2人は保育園からの付き合いでいつも2人で行動しているところから、2人の苗字から取って「とだわら」とコンビ名のように呼ばれるようになったそうだ。

「やっほー楓奏ちゃん」と最初に声掛けてくれたのは戸田美笹。髪は黒くてセミロング。雪ノ下さんを少し幼くして言動も柔らかくしたような感じの女の子。

「おーどしたん?」と次に声掛けてくれたのは蕨 夏鈴。同じく髪は黒で美笹と正反対でショート。少しボサボサのくせっ毛で元気っ子の代表みたいな子。ぶっちゃけると少しバカ。

「ちょっと3人で話したいんだけど一緒にご飯食べない?」

「楓奏ちゃんが誘うなんて珍しいねー」

「そうだよなーどうしたの?」

「出来れば人少ない場所にしたいんだけどどこかあるかな?」

「屋上でいいんじゃね? 天気悪くないし」

「こらこら、じゃね? は言葉遣い悪いわよ」

「ちぇーっいいじゃん別に」

「……じゃ、屋上行こうか」

 美笹と夏鈴のやりとりを聞くだけでもほっこりするから、この2人実は結構好きなんです。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「それで、誘うほどというのはよほどのことだよね楓奏ちゃん」

「単刀直入に聞くね。この噂って知っている?」

 私はこの噂について全て話した。

「たしかに最近チラッと聞くようになったわね」

「あぁ、その例の男子云々な」

「……」

 それでね、と前置き付けて私と比企谷くんの関係などを包み隠さず話した。そして文化祭のとき屋上でのあった出来事をなにか知らないかと2人に聞いてみた。

「それ、私自身が気になって1回葉山くんに聞きに行ったことあるよ」

「え、マジで?」

「ホントなのそれ!?」

「う、うん純粋に気になってね。葉山くんがその時屋上にいたという情報を聞いてね。それでまあ話してくれはしないだろうなと思ってたんだけど案外あっさり教えてくれた」

 そして美笹は文化祭、あの時屋上で何があったのか教えてくれた。聞けたはいいもののあまりいい気分のものではなかった。

「私も聞いた時その比企谷くん? 可哀想だなと思ったもん。委員長を一刻も早く動かすためにやったのにね」

「その相模って人ひでぇよな、仕事投げ出した挙句のそれだぜ?」

「あまり人のことを悪く言うんじゃあありません」

「あーい」

 なるほどね。相模さんって私のクラスにいるわ。意外なキーパーソンだわ。ありがとう美笹。ありがとう夏鈴。やっぱり2人には感謝しきれないや。ありがとう最高の友達。

「ううん。だって私たち」

「ははは! 情報屋のとだわらだもんな!」

「ありがとう! 2人とも! 今度何か奢るよ!」

「じゃあー今度サイゼ行かね? 普通に飯食うとか」

「うん! 行こ!」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 放課後。俺はいつも通りカバンを引っ掴み奉仕部の教室へ行く。結局1度も会話せず、昼のメール以来何も無い。この関係は短いが終わったのだ。それだけのことだ。そう考えながら特別棟を歩いていたら若宮が居た。左側は窓でオレンジの空が眩しい。そこで俺は思考に反して、反射的に口にしていた。

「若宮、ちょっと屋上いこうぜ」

「……うん」

 屋上。今は夕日が射し込まれていて、さらに空気も澄んでいて東京湾を一望できるほど景色のいい場所だ。だが決していい思い出の場所ではない。何せ俺が相模を泣かせた場所だからな。

「若宮、話がある」

「うん」

「短い間の付き合いだったが楽しかった。ありがとな若宮。これ以上お前と居たらそのうちお前にも嫌な思いにさせるかもしれない、だから」

「この付き合いは終わらせないよ」

「え?」

 私は被せるように言った。屋上に行こうと言われた時に何となく分かっていた。比企谷くんならこういうことを言うだろうと。だから被せるように言った。「この付き合いは終わらせない」と。

「だって比企谷くん、辛そうじゃん? 目を見れば分かるよ。嫌だけど仕方ないって伝わるよ?」

「……っ」

「短い付き合いなのに偉そうなことは言えないけど、それなりに比企谷くんのこと分かってるつもりだから。私は比企谷くんがあんなことをするのは理由があるのは知っているから。だって、比企谷くんは優しいんだもん」

「……あんなことって……知ってんのかよ」

「最初は噂だけ聞いた。男子が屋上で女子を泣かせたってね」

「それの事実、比企谷くんには申し訳ないけど私の友達から聞いたんだ。本当は一刻も早く相模さんを動かしたかった。そして泣かせたことによって相模さんが仕事を投げ出した事実を上書きするためにやったんだよね?」

「……」

「自分を傷つけてまで人を守るって簡単なことじゃないんだよ? だからね、私はすごいなって思った」

「……っ」

「また、そうだね。半月あったかどうかぐらいの付き合いだけどね、もっと私を頼ってほしい」

「比企谷くんからするとそんなのすぐは無理かもしれない。そして無理にとは言わない。でも辛かったら頼ってほしい」

「だって、辛そうな比企谷くんは見たくないから」

「……すまん」

「違う。謝るじゃないでしょ?」

「ありがとな……若宮」

「……どういたしまして。」

 私は最高の笑顔を送った。彼の癒しにでもなれればいいなと思った。半月ほどの付き合いだけど、私は彼の心を支えられる人になりたいと思ったから。そして心の底からの付き合いをしたいと思っている。

「比企谷くん。私がこんな事実無根な噂を収束させる」

「え?」

「私がどうにかする。だからこの付き合いは絶対に終わらせない。そして比企谷くんはもう自分を傷つけないでね」

 

 

 

 ◇

 

 

 

「いや……だからってな……分かった。すまんが頼むわ」

 これ以上言っても無粋な真似だしな。と自分を納得させた。

「うん! 任せて!」

「すまん……」

「だーかーら謝らないでよ。全部悪いのはこんな事実無根な噂を流した人なんだから」

「そうなんだがな……」

「? どうしたの?」

「話をほじくり返すような感じになるが、俺は小中までまともに人間関係築いたことがない。だから正直若宮には悪いが信用しきれない部分もある。もちろん理解しようとしているし、若宮からそう言ってもらえるのは嬉しい。だが心の奥では信用しきれない部分がある」

「そっか。でもね、理解してくれるだけで私は嬉しいよ。だっていきなり信用しろって言われても私だってできないよ」

「だって半月ぐらいの付き合いだもん、仕方ないって」

「だからさ、私が解決してみせる。そしたら信用持てるかな?」

「できるならそりゃ……

「よし! 私は絶対に解決させる! だから私に任せて、比企谷くんは待っていて!」

「すま……いや、頼むわ若宮」

「はい! 若宮、たしかに承りました!」

「ふっ……手荒いことはしないようにな?」

「そんなぶっ飛ばしてくるとか考えてナイヨ?」

「思ってもやるなよ?」

 若宮がじわじわきたのか分からないが、次第に笑い出した。そして俺もつられて笑ってしまい、屋上で2人の笑い声が響き渡った。やっぱ若宮には感謝してもしきれないな。こんな俺の心を支えようとするなんてな。ここは大人しく待っているとするか。はは、空ってこんなにも綺麗なもんなんだな。ちなみにこのあと奉仕部の部長さんに軽く怒られた。部室の近くまで行ったのに直接用があるから遅くなると言わなかった俺が悪いですねごめんなさい。




何とか書きました。続きはさっさと上げるので少々お待ちください。今後関わりの多いオリジナルキャラは原作に則り、苗字は神奈川県の地名や名所などから取り、時々関わりあるようなキャラは埼玉県の地名から取っていこうと考えております。それでは。

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