秋晴れが続いてて毎朝気分がいいどうも若宮楓奏です。というのはちょっと嘘が入る。件の噂の収束向けていろいろ探ってみたけどいかんせん人脈が狭くて全情報掴めない。もはや神頼みで噂の発端となる人と偶然会うように神様が仕向けてくれないと無理なぐらい情報が少ない。まあ、意気込んだ日から1晩明けたぐらいじゃそりゃ情報掴めるわけないか。でも相模さんも意外なことに味方に付いてくれたのは嬉しい。1人より2人の方が見つかる確率高いしね。
「お、おはよ比企谷くん」
「おう」
この状況であいさつするのは気が引けるけど、しないのも気が引けるからあいさつはしておいた。
「なんだ。昼休みにお客さん来るんだっけか」
「うん。昨日の夜電話した通りだよ」
「ん。わかった」
◇
時間は経って今は4限目の後半に差し掛かっているところだ。しかし本当誰なのかさっぱり分からない。男子か女子なのかすら分からない。正直気になりすぎて授業の話あまり入って来なかった。
もしかして……告白かしら……なわけねぇだろバカか俺。あったとしても罰ゲームだよいい加減学べ比企谷八幡。
くだらないこと考えてたらチャイム鳴ってた。昼休みのお時間である。ベストプレイスにお客さん来るっていうからとりあえずいつも通り購買寄ってベストプレイス行くか。
☆
今のところ誰もいねぇか。まぁ飯食って待ってりゃ来るか。若宮は友達のところに行くつってたし。
どうでもいいけど秋はやっぱり過ごしやすい。爽やかな陽気に当てられ、飯食ったら安らかに寝れるような穏やかな気候。少し肌寒いときもあるがな。夏はゲリラ豪雨とかあるからアレはたまったもんじゃない。1回ベストプレイスで飯食うかてとこでポツポツ降ってきて、数分後にはナイガラの滝と化していたことがあった。
冬は寒い、春は風強いからよく目にゴミが入る。よって秋は最強。くだらない思考に耽るのが安定しているところで話しかけられた。え、デジャブなんだけど。
「比企谷」
え? 俺のことを苗字でぶっきらぼうに呼ばれるの平塚先生ぐらいなんだけど、でも声は若い。もしかして、平塚先生若返った? 葉山はヒキタニと呼んでるから知らない子ですね。
「あ? ……相模?」
「うん」
「なんの用だ?」
てかこいつもヒキタニって呼んでたよな。いつから比企谷と呼んでんたこいつ。
「用というか……うん用があるね。でも話少し長いからウチもご飯食べてからでもいい?」
「あ、あぁ……それは構わんが……」
うん。謎すぎる。こいつは俺のことを嫌ってるはずだ。何せ俺が泣かせた被害者だからな。なのに俺の隣で飯食ってやがる。しかも普通に苗字で呼ばれてる。こいつ誰だ?
「なぁ、ぶっちゃけお前は俺のこと嫌いだろ? 何せ文化祭のとき俺がお前を泣かせたんだ。今俺の隣で飯食ってる自体おかしいんだよ」
「……食べ終わったし、簡潔に言うね」
「あのときは本当にごめんなさい!」
「は?」
「そしてウチを助けてくれてありがとう!」
「いや何事? は?」
こいつに謝られることされてねぇし助けた覚えもねぇ。感謝される覚えもねぇよ。暑さにやられた? いや今秋なんだけどなぁ……
「唐突すぎてわからんし、謝られることされてねぇし感謝される覚えもねぇんだけど」
「文化祭のあと、ウチがあんたの悪評を広めた。それについての謝罪」
「そして文化祭のときの屋上での出来事。あれの本当の意味はウチを助けるために泣かせたんだよね?」
「は? いやまぁ悪評広めるのは分かるわ。何せ俺が泣かせたわけだからな。助けたってのがよくわからん」
「ウチを泣かせることによって、委員長が仕事を投げ出したという事実を上書きするため」
「なっ……!」
昨日の放課後の屋上で若宮が言ったこと同じだ。なぜこいつも俺の思惑分かってんだ? もしかして若宮と繋がってんのか? いやそんなわけない。現に若宮と相模で会話した様子見たことない。じゃあ裏で? それもない。2人とも接点ないからな。
「それは勘違いだ。俺はただお前に対して罵詈雑言を浴びせただけだ。助けるもクソもない」
「嘘だね。ウチ弟いるんだけど嘘ついたときの顔がウチの弟とそっくり」
「っ……」
◇
はぁ、比企谷ってほんっと捻くれてるなぁ……ウチが謝ってるのに素直になれないもんなのかな。でも嘘ついてるときの表情がマジで弟と似てる。表情に出てるの気づかないのかね。
「あーもう埒が明かないわね! とにかく! ウチがあんたの悪評を広めたについては謝るから!」
「助けてもらった云々はウチの捉え方だから! たとえ比企谷に覚えなくても素直に感謝の気持ち受け取れつーの!」
「ウチ教室に戻るから!」
◇
そう言って相模はその場から去っていった。なんだこいつ。まあそもそもぼっちだからいくら悪評広められたところで特に変わらない。なんなら学校に認知された有名人なまである。それより俺の思惑分かっているのがおかしい。やっぱり若宮と繋がりがあるのか……? まぁいくら考えたところでもう相模と関わり持つことはないだろう。全く嵐みてぇなやつだな。
☆
時はさらに流れて放課後。私は帰りの支度していた。え? 比企谷くんと帰らないのって? 実はメールで噂やら落ち着くまでしばらく一緒に帰るのはやめようと決めたのだ。確かにさらに変な噂増えたらめんどくさいもんね。でもなんか寂しいなぁ……でも終わったらギャフンと言わせるんだから。収束させたぞ! って。
「……ねー……」 「まさか……そん……になると……」
小さい話し声聞こえた。申し訳ないけど少し聞き耳を立たせてもらう。
「やっぱ最低野郎のネタ尽きないね! あいつが女とつるむとか面白すぎんだろ」
「今度はヤったことにする!?」 「それはやばいよー!」
こいつらか……最近運がいいな私。是非ともご対面したい方々にポンっと会えるとはね……ぶん殴ってやりたいけど私が悪いことになる。それに比企谷くんもそれだけはやめろと釘刺されたしね。
「横入りごめんなさいねー」
「は? あんた誰?」
「その例のあいつとつるんでる噂の女子なんだけども」
「は? なにお前調子に乗ってんの?」
はーこわっ。ここ進学校なはずなのにヤンキーみたいのおるわー。まあやられたとしら正当防衛としてやり返せるから。それに私こう見えて空手の有段者なんだよね。しかし化粧ちょっと濃いな……我がクラスにいる学年……いや学校のトップカーストの三浦さんを意識しているのかな? 勘違いしてる系女子ほどどきついものはないからね。
「とりあえずここじゃ目立つから屋上行きません?」
「お、やるてのか?」
☆
「かかってこいよ」
は? 誰がお前みたいなやつに手を出すか汚らわしい。こう見えてかなりキレ気味な若宮楓奏です。
「単刀直入に言うけど、その変な噂やめてもらっていい?」
「は? そんなん私らの勝手だろ?」
「そうだけど結構迷惑被ってるからやめて欲しいんだよね」
「お前なんなん? 人に屋上行こうとか言い出したクセに。説教かお前ぶっ飛ばすぞ?」
「やってみろよ。雑魚が」
あ、やっばい私かなり興奮してるわ。めっちゃ低い声出たわ。少年漫画の敵みたいなセリフ出ちゃったわ。
「っしゃオラァ!」
ふ、案の定右フックで来たね。予想通りすぎてつまらない。しかも私から見たらめっちゃ遅い。多分オラついてても喧嘩慣れてるまでは行ってないんだろうな。むしろ慣れてたらこの学校はやべぇ。
「遅いよ」
「んだとコノヤロ!」
怒りが上回っていて完全に上手く狙い定められてないなこいつ。それにしても空手やっていた私から見たら動きは遅い。
「ちょこまか避けやがってよ!」
喧嘩慣れしていないということは殴られることも想定されてないわけだ。まあいっちょケリをつけるか。ここまできてまだ1度も明かしてないけど……
───私は左利きなんだよね。
私から見て相手の顔の右側にわざと外して掠めるように左を入れた。
「」
「今の入ったら多分1発KOだね。あんたオラついているけど喧嘩慣れはしていないでしょ?」
相手はドサッと地面に座り込んだ。あれ? ちゃんと外したよね私?
「お前何もんだよ……マジで見えなかったぜ」
「ただ昔空手をやっていただけだよ」
☆
「なんでそんな噂流そうと思ったの?」
「だってあんな根暗野郎がしょっちゅう女子に囲まれっとかおかしいだろ? それでムカついた」
あぁ確かに……比企谷くん何気に女子に囲まれてることが多いよね……私もそれ疑問に思っているわ。
てかただの嫉妬かよしょーもな……ちなみにこの人の名前は「岩槻 美幸(いわつき みゆき)」。オラついてる以外は雰囲気としては平塚先生に似ている。
「え? 嫉妬とかそういうの?」
「はぁ!? ちげぇよバカ」
「まぁいいや。あと純粋な疑問なんだけどなんでそんなオラついてるの?」
「直球だなお前!?」
話に聞くと1年生の時は持ち前のルックスでかなりの有名人だった。そこまではよかったが2年生になった時、私のクラスにいる葉山くんと三浦さんがツートップに君臨したため、岩槻さんは普通の人に。
それで噂を流して少しでも目立ちたかったそうだ。はーしょーもな……ちなみにオラついてるのは少しでも権力を持ってるように見せたかった、だってさ。……もう……ここに通えるぐらい地頭は悪くないはずのになんでそうなるの……呆れを通り越して尊敬に値するわ……
「はっきり言って岩槻さんオラつかないで普通にしてたらモテると思うよ?」
「お前本当直球だな!? オブラートに包めよ!」
「……とりあえず気が悪くさせたのはごめん。もうしないから許して貰えるか?」
「うん。わかった。許す。そもそも噂って誰も幸せになんてなれないからね?」
「身をもって学んだわ……しかし最後の方って右腕なの? それとも左?」
「左だよ。こう見えて左利きなんだ」
「ドヤ顔うざ……でもドヤ顔似合ってんの腹立つな」
「まぁもうそういうことしないなら私は許すよ。ほい」
「うわっとっと……あぁすまなかった。飲み物サンキュな」
「くっそ甘いやんけ……」
「なぁ!」
「うん?」
「連絡先貰っていいか?」
「いいよ……はい」
「あぁありがとな。それとくそ甘いんだけどこれ」
「え? 疲れた身体にはそれが一番だよ。そろそろ下校時間だから私は帰るね」
「あぁ……じゃあな……くそ甘い……」
昨日の敵は今日の友。いやもはや今日の敵は今日の友か。こんなことわざようなことを身をもって体験するとは思わなかった。まあ動機こそくだらないけど、もう二度としないと言うなら私は許す。ちなみにドン☆パチ(?)したあと、私と岩槻さんがお互い落ち着いてから比企谷くんのいつもの場所をお借りして話していた。あそこなら人あまり通らないし自販機もあるからね。
あと噂の収束とまではいかなかったけど実はいまさっきトレンドが上書きされた。それは「あの岩槻が知らない2年生に仕えてる」という内容だ。屋上から降りていつもの場所へ移動してるときに、部活に残っているほかの生徒さんに見られていたから多分トレンド入りしたかもしれない。まぁ気性荒……ゲフンゲフン。オラついてるイメージのある岩槻さんが私の後ろ歩いてるわけだからまあそうなるよね……
とまあ私は解決したと思っている。でも疲れたから明日比企谷くんに報告しよっと♪
自分で書いてて意外な展開というか力技になったなぁと思いました。次は後日談のような感じにしようと思います。それでは。