2日目の朝。あれから割とすぐに眠りについた。なんか夢で小町いた気がする……生八つ橋やらあぶらとり紙やらお土産を催促されてるような……あとお土産に俺のステキな思い出か……あざとかわいいよ小町……
「はちまーん……はちまんってばー……」
「んぁ……? ……うぉ!」
目が覚めて数秒、目の前に戸塚が寝ていたから驚いて自分の身体起こした。辺りを見回すとトランプで遊んだのか少しカードが散乱していて男子どもは布団とか関係なく寝ていた。
「……はーちまーん……」
「あ?」
「UNOって言ってなーい……いぇーい……」
「いやお前別のクラスだろ」
☆
暗くて変なうめき声が聞こえる。そう、俺らは今史上最恐のお化け屋敷にいる。前に葉山グループの4人、ここに俺と戸塚と由比ヶ浜と川崎の4人が居る。
川崎が怖がってるからめっちゃブレザー引っ張られた。もう左肩からずり落ちてるぐらいにね。大天使トツカエルは全く動じていない。やっぱり天使は世界を救うんだな……
「い、今なんか変な声が」
「私こういうの苦手ー……」
「お化け屋敷の幽霊は怖くねぇだろ。怖いのは人間だ」
「出た捻くれ……でもちょっと頼りになるかも」
「つまり人が驚かすタイプのお化け屋敷が1番怖い」
「だめだー! ぜんぜん頼りにならないー!」
「戸塚はぜんぜん平気そうだな」
「うん。僕こういうの好きだから」
流石に大天使トツカエル。頼りになるわ。あれか、普段からホラー映画とか嗜むのか。うん可愛い。
「うがぁぁぁぁぁ!!」
「うわ──ー!!!」
「ぐはぁっ!」
由比ヶ浜がお化けに驚いた勢いで由比ヶ浜の後頭部が俺の顎にクリーンヒットした。クソいてぇ。川崎はいきなり走り出して、それを戸塚が追いかけて行った。ちなみになんか聞き覚えのある声の悲鳴が聞こえたのは気のせいだ。
「終わったー……結構怖かったー……」
「すっごく楽しかったねー!」
結論を言うと由比ヶ浜はお化け屋敷らしいリアクションで、戸塚は全く動じずなんなら楽しんでいた。そして川崎は軽いグロッキー状態。てか川崎がお化け屋敷ダメとか意外だな。川崎がメンチ切ったら幽霊が裸足で成仏しちゃいそう。あ、幽霊さん足どころが下半身なかったな……成仏してクレメンス……
☆
「よっこらせ」
「あら、奇遇ね」
「あぁ、お前もこっち来てたの」
「えぇ、虎の子渡しの庭という別名があるそうよ。どのあたりが虎だと思って」
あぁ虎もネコ科だから気になっているんですね、わかります。さすが猫大好きフリスキーだわ。てか雪ノ下の隣の女子生徒がめっちゃ「なにこいつ」と訴えるように見てくる。すみませんね……仕事があるもんで……
「あ、ゆきのーん」
「場所、変えましょうか」
「……どう? 依頼の調子は?」
「けっこう難しいね」
「あんまやりすぎて海老名さんに嫌がられてもなぁ、それに」
1人解せない行動を取ってるやついる。
「それに、何?」
「あ、あぁなんでもない」
「任せきりで申し訳ないわね」
「ぜんぜん大丈夫だよー」
「代わりになんだけどこっちも色々考えてきたわ」
「何をだ?」
「京都で女性が好みそうなスポットをまとめてみたわ。役に立てるといいのだけれど」
「わぁーありがとうゆきのん!」
「それではそろそろ戻るわ」
「うん! また明日ー」
「えぇ、また明日」
☆
夜、宿の夕飯と風呂を済ませ、なんとなく宿近くのコンビニに赴いた。ちょっとサンデーでも読むか、と雑誌コーナーに向かった。そこにすでに雑誌を読んでいる金髪の女性がいた。縦ロール。うん三浦だ。
「ヒキオじゃん。あんさー、あんたら何してるわけ?」
「あんま海老名にちょっかい出すのやめてくれる? 聞いてんの?」
「聞いてる。それに別にちょっかい出しているわけではない」
「出してんじゃん。見てればわかるし。それに迷惑なんだけど」
「迷惑か……そうして欲しいやつもいるからなぁ。それに三浦が直接的な被害を受けるわけでもない」
「はぁ? これから被害受けんの」
「?」
それから三浦は語りだした。てかキモいって言い過ぎですよ泣いちゃいます。
海老名は黙ってれば男ウケいいらしい。そこで紹介してくれってやつが結構いるそうだ。だが三浦が紹介しようとすると海老名さんはやんわり断っていた。三浦は海老名さんが照れてると思って強く勧めた。そうしたら海老名さんは笑いながら「じゃあもういいや」って言って三浦に対して他人行儀のように接した。海老名さんは自分のことは全く話さないし三浦も聞く気もないらしい。そういうの嫌いなんだと思う。と付け足して三浦は語り終えた。
それは少し違うと思う。何かを守るためにいくつの犠牲にするぐらいなら諦めて捨ててしまうのだろう。今手にしている関係さえも。
「あーしさ、結構今を楽しんでいるんだ。だから余計なことしないでくれる?」
「それなら心配ない。葉山はどうにかするつってたしな」
「なーんそれ。まあ隼人がそう言うならいいけど」
「じゃ、あーし先に戻る」
「あぁ」
俺も今手に持っているサンデーを買ってそろそろ宿に戻るか。そろそろ就寝時間も近いしな。俺はレジで会計を済ませてコンビニから出た。そしたらちょうど若宮がこちらに向かっていた。
「あれ? やっほー比企谷くん」
「おう。もう時間ないから買い物は早く済ました方がいいぞ」
「んーん。なんとなくふらっと出ただけだから買い物は特にないよ。買うとしもあればって感じ。……時間がもうないなら一緒に戻ろっか」
「あ、あぁ……」
特にお互い言葉を発することなく、宿への道のりを歩む。正直気まずいわけではない。こう沈黙していても落ち着いていられるこの若宮との距離感は俺は嫌いではない。一応明日のことについて話しておこうかと迷っていたが、周りは若宮以外誰もいない。道路に乗用車がたまに通り過ぎるぐらいだ。
「なぁ若宮」 「ねぇ比企谷くん」
同じタイミングで沈黙を破った。
「な、なんだ?」
「え、あっ先にどうぞ〜……」
「おう……そのなんだ。明日のことなんだが、お前との約束を破ってしまうかもしれない」
「約束……って?」
「前、屋上で話してたろ? 自分を傷つけるなとかお前に頼れとかな」
「覚えて、たんだね」
「あぁ……今回の奉仕部の依頼でその約束を破るかもしれない」
若宮は俺の裾をつまんできた。
「それって、そうしないとダメなの?」
「あぁ、これ以外方法が思いつかない。詳細は言えんが2つの依頼を解消するにはこれしかないと思ってる」
◇
そっか……多分その2つの依頼うちひとつは戸部くん関連だよね。修学旅行初日の新幹線でそれっぽいこと話していた。
もうひとつはよく分からない。でも少なくとも比企谷くんがこう話すということは多分また自分を傷つけるってことだよね。もっと別の方法ないの? と聞けるほど私に案があるわけでもない。
そもそも私は奉仕部でもなく、依頼の内容も分からない。だから頭ごなしに否定して止めるわけにはいかないよね。そのやり方を否定してしまったらそれは比企谷くんを否定しているに変わりないのだから。
「そっか。もうそういう方法しかないんだね」
「あぁ……すまない」
「謝んなくていいよ……。まず解消法を思い浮かぶことが出来るのはすごいと思うよ?」
「え?」
「私だったら多分何も出来ずに立ち尽くしていると思う。だから比企谷くんはすごいんだよ! だからね、比企谷くんらしいやり方でスパーン! と解決して見せてよ!」
「あ、あぁ……」
「そして疲れたら私に話してよ。愚痴でもなんでも聞いてあげる!」
「あぁ、ありがとな若宮」
「どういたしまして。じゃおやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
比企谷くんはロビーの自販機で飲み物買ってから部屋に戻ると言ってたから私は先に部屋に戻った。
布団に潜って考えた。奉仕部の依頼が無事解決できるのだろうか。比企谷くんのやり方で解決に導いたとしてもその後どうなってしまうのかと少し不安を抱きながら眠りについた。
次は修学旅行最終日です。今日か明日には上げようと思っていますのでお待ちください。
それでは。